夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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テキーラ、お酒の産地訪問(2005.05.10 訪問)

 テキーラという街がある。そう、あの強いお酒のテキーラの生産地で、街の名前がテキーラ。グアダラハラで出会う人ごとに「テキーラには行ったか?」と聞かれるので、酒飲みではない私たちだが、must go プレイスらしいならということで、行ってみることにした。

 テキーラには大きく3種類の行き方がある。一つはテキーラ列車ツアー、一つはバスツアー、そして独自にバスで行く方法。

 テキーラ列車ツアーは、通常、貨物を運んでいる線路を使って特別列車を走らせてテキーラに行くもので、車中ではテキーラ飲み放題、マリアッチの演奏、ダンス大会などが開かれるらしい。現地では、テキーラ工場見学、博物館見学、昼食が付いて、一人US$70だそうだ。

 先日会った、ポサダ(メキシコの民宿)を経営するゴージャスなママも、夫の歯科医の先生も、テキーラ列車ツアーを経験しており、メキシコ人にも人気が高いようだ。ゴージャスママが参加したツアーでは、日本人の40代カップルがダンス大会に参加して、第二位を獲得したらしい。恐るべしジャバニーズ・パワー。

 バスツアーはテキーラ列車と同じ内容だが、車中の飲み放題やイベントがなく、料金は一人US$25。バスターミナルからの出発となる。

 上の2つだったらテキーラ列車の方が面白そうだ。しかし、私たちには、テキーラに行くついでに済ませておきたい用事があった。テキーラに自力で行くには、バスターミナルからバスに乗っていく。今いるグアダラハラの次の目的地、グアナファト行きのバス会社と発車時刻と金額の確認も一緒に行いたかった。

 で、同じバスで行くのなら、わざわざバスツアーに参加するまでもないだろうと、自力で行くことにした。バスターミナルまでは、先日のトナラへのバス旅行の途中で見かけたので問題なく行けた。市バスで30分弱、一人片道N$4(約40円)だ。

 バスターミナルはかなり大きなもので、数社のカウンターがある建物が、横並びにいくつも並んでいる。とりあえず、一番手前の建物に入ると、運よくグアナファト行きのバス会社のカウンターがあった。更に、隣の建物にも、ガイドブックに掲載されている会社のカウンターが見つかった。2社目のある建物で、グアナファト行きを出していない会社のカウンターに行って、「グアナファト行きのバスを探している」というと、今見てきた2社のみだ、という答えだったので、調査は2社で終了することにした。で、ついでに「テキーラ行きのバスは、どこから出ているでしょうか?」というと、メキシコ人に特有の(と、私がこれまで会ったメキシコ人から感じている)、感情がたっぷりこもった表情をした。言葉を発する前から「バスは出ていないんですよ」という答えは想像できた。

 しかし、そんなはずはない。日本の優秀なガイドブックは正しいはず。こんなことは以前も何回もあった。そこで、向かいのカウンターに行って、同じ質問をすると、「あ、テキーラ行きね、隣のバスターミナルのNST社から出ているわよ」と言う答え。やはりバスは出ているのだ。でも、ガイドブックにあったテキーラ社ではないが、まぁいいとしよう。隣の建物にいくとNSTではなく、TNSだったがテキーラへのバスが見つかった。これもまぁ、いいとしよう。とにかく目的地に着けばよいのだから、細かいことは気にしないでいこう。運賃一人N$40(約400円)を支払い、ようやくテキーラへの旅行が始まった。

 平日午前10時半のテキーラ行きのバスは、私たち以外には仕事風のメキシコ人数人しか乗っていない。グアダラハラ南東のトラケパケ付近のバスターミナルから出発して、グアダラハラの周囲を取り囲むフリーウェイ沿いの北側から入って時計回りに走り、時計でいうと10の数字のところあたりで、円周を抜けて北東に進むとテキーラがある。ポツリポツリと工場がある郊外の風景が終わると、土肌の見えるやや殺伐とした風景となった。気が付くと、隣を列車の線路が走っている。テキーラ列車の線路だろう。外側から見るパーティー列車というのも面白いかもしれないが、残念ながら、今日は平日なのでパーティー列車は走っていない。

 バスターミナルを出て、1時間を過ぎると徐々に青い物が畑に見えてきた。テキーラの原料に使われる、リュウゼツランの一種、青アガベだ。目に映る青アガベの量は見る見る増えていき、ついには横の斜面を覆いつくすような光景となった。「来てますねー」「はいはい、来てます、来てます」と2人とも意味なくはしゃいできた。

 青アガベの風景を縫って、バスは山を登り、そして山の向こうの眼下に見えてきた街がテキーラだった。12時過ぎ、「はい、到着でーす」と運転手に言われてバスを降りた。幹線道路沿いに下ろされたのだが、いったいどちらの方向が街の中心だかわからない。

 バスの見送りに来ていた親切そうなおじさんに、街の中心を聞くと、スペイン語でたぶんこう言っていたと思う。「ああ、そんじゃぁ、今から街に帰るから、このピックアップの後ろに乗ってけよ、連れてったるから」。こうして、我々夫婦は、人生初めてピックアップバンの後ろにのって、堂々のテキーラ入場となったのだった。皆が見ているような気分がしたが、どうにも大爆笑がとまらなかった。だって、こんなこと、初めてですから。

 走ること5分くらいで、ソカロのある教会の前に止まった。教会前にツーリストインフォメーションが出ていると、おじさんは、一生懸命に英語で言ってくれた。この熱い歓迎に、大変感謝しておじさんとわかれた。後で写真を見たら、あんなに柔和な顔立ちのおじさんは、えらいニヒルな顔に映っている。まぶしかったのか、写真というとこういうニヒルな顔立ちでキメルのかわからないが、とても親切な方だったことは確かだった。

 すぐに、若い女性と男性が近寄ってきて、ソカロの一角に設けた「Information Tours」と看板が出ているカウンターへと誘導された。女性から話を聞いているうちに、これは市などが主催しているビジター・センターなどではなく、ツアー会社のカウンターだということが分かった。ここから車で、工場見学と農場見学などに連れて行ってくれて、N$60(約600円)だという。一番大きな農場はSauza農園というのだが、そこに行きたいというとN$75(約750円)と値段が上がった。まぁいいや。取り合えず何も食べていないので、食事をしたいというと、お兄ちゃんは「時間がないから早くしてね」という。目の前の屋台のタコスをかじって昼食を15分で済ませた。Sauzaの工場は歩いていけるので、早速行くことになったが、お兄ちゃんは「時間がないので、先に行って手配しているね」と走って行ってしまった。残ったお姉ちゃんの案内で、歩いていくこととなった。

 お姉ちゃんの名前はジェシー。英語は3ヶ月習ったそうで何とか話はできる。話をしながら歩いていたら、さっきのお兄ちゃんが向こうから戻ってくる。何事かと思ったら、今日は母の日でSauza農園の見学はお休みだというではないか。おいおい、何でその手に持っている携帯で、農園に電話して聞かなかったのかな?私たちは、さっきソカロで、祝日でも農園見学はやっているのかと念を押したにもかかわらず、これだ。やれやれ。結局、最初にお兄ちゃんが提案したN$60の農園を見学することになった。ということは、お金、返してもらわなきゃね。お兄ちゃんに「300円返して」というと、「いや、これから行くツアーも値段は同じです」などというので、「いやいやジェシーとは600円で話が付いているから」と言うと、お兄ちゃんはジェシーに確認して、お金を返してくれた。

 たった数百円のことで、こんな会話をしなければならない。自由旅行をしていると、こうしたつまらないことが、だんだんストレスになる場合もある。何だか、自分が吝嗇家みたいで嫌になってくるねぇ。こんな時に、夫のようなキャラと旅をしていると、非常にいい。「何を言っているんだ、コストコンシャス、コストパフォーマンスの追及。これが我々のテーマなんだ。いくらお金を持っていようとも、誤った金額に対しては、きっちりと返金してもらう。これが正しい態度なのだ」。この発言に大分救われた。たとえ、こうした交渉ごとになると、なぜかちょっとステップバックするとしてもフォローアップしてくれるから、良しとしよう。

 さて、ソカロに戻る道すがら、子供が近寄ってきてジェシーに「ママー」と擦り寄った。何とジェシーは一児の母だった。とすると、「このお兄ちゃんがパパなの?」と自然の流れで聞くと、ジェシーは「やだー、違いますよ、やだー。ねぇ、聞いた?あなたがこの子のパパだって!違うのにね、本当におかしいったらないわね」と、猛烈な勢いで反論してきた。この時はまだわからなかったが、この彼女の態度は後に解明されることになった。

 ソカロに戻ると、ツアーのバスの時間までに、あと40分ほどあるので、どこかで時間をつぶして来てくれと言う。だからぁー、そんなことなら、ゆっくり食事もできたではないか。「何のためにその携帯が・・・」と再び怒りがこみ上げてきたが、昼食代金とツアー代金が安くすんだことを思い出し、心を静めた。教会の隣には市場があり、市場の外では露天がたっていて、のんびりとしたテキーラの祝日風景が見られた。

 時間になったので、ソカロに戻ると、我々以外にフランスから来たというカップルがいて、2組でバンに乗り込んで農園に向かった。ドライバーは、フランスから来たカップルにスペイン語、我々に英語で説明をしながら、10分ほどでCofradiaという農園に到着。ドライバーは、別の農園に勤めているのだが、今Cofradiaを応援するために、この観光ツアーガイドを買って出ているのだという。あまりに有名なSauzaに対抗して、他の中小零細農園が結託しているのかどうか、その辺りの事情まではわからなかったが、この小さなテキーラの街でも、脈々とビジネス戦略と競争が行われているのだろうと想像された。

 農園に着くと、まずは工場見学。青アガベは8年経つとテキーラの原料として使えるまで糖度が高まる。葉を切り去って株の部分だけになったアガベを高温で蒸し、そこからエキスを抽出したものを発酵させて、蒸留するとテキーラができあがる。その工程を見せてくれるものだった。下の写真は蒸しあがった切り株で、試食のために、上の方がかなりむしり取られた状態。手で簡単に取れるほど、柔らかくなったアガベ切り株を試食させてもらったが、さつまいものような、ふっくらした甘みがあった。



抽出されたエキスは、大きな入れ物で発酵される。奥が一番若いもので、手前になるに従って日を経たもの。それでも一番手前が3日目ということで、案外早く発酵するもんだと思った。3日目ともなると、ブクブクと泡を立てて元気に発酵していた。日本の醸造所というと、「女の入るところじゃない」とか「神聖な場所」というイメージなのだが、ここは音楽がかかっていて、祝日のせいか、数人いる作業員もリラックスして、手なんか振っちゃったりしている。

 さて、蒸留したてのテキーラは、アルコール度数が60度あるそうだ。試飲させてもらったが、さっき試食させてもらったアガベの甘みを残したまま、かなり強いお酒になっている。これを、水を加えて40度までアルコール度数をさげて出荷するそうだ。青アガベ100%のテキーラは、糖度が充分高いのでそのままのアルコール度数で出荷されるが、青アガベの含有量が低いと糖度がでないので、さとうきびなどを加えて甘みを出す。そのため、アルコール度数も少し下がるのだという説明だった。

 次に入った博物館では、テキーラという酒の名称について、世界中でどの国がテキーラを輸入しているかについてなどを見て回った。



博物館の一番奥は、大きな窓。青アガベの栽培風景を借景にしている所が気が利いている。
 テキーラ街のあるハリスコ州とその周辺の5州で栽培された青アガベを、51%以上使用した物のみ、テキーラという品名を使用できる。フランスのシャンパンみたいなのだ。メキシコの他の地域でもリュウゼツランを使用した蒸留酒はあるのだが、それらはメスカルと呼ばれ、テキーラとは言えないのだそうだ。この5州で栽培された青アガベが特に良いのだろうか?それとも、最初にこうしたブランドを確立してしまったテキーラが賢かったのか?今では、世界中にテキーラが輸出され、こののどかな街テキーラにも、世界中から人が集まってきているというわけだ。

 輸出世界地図をみたら、テキーラを世界で一番多銘柄輸入している国は、何と日本で13銘柄だった。ついでアメリカが12銘柄。隣のアメリカよりも多い銘柄を輸入しているというのが、マニアックな日本らしくて面白かった。日本でメキシコ料理店やバーや酒店を経営していたら、「うちはこんなに多銘柄揃えています」って言いたいじゃない?そして、雑誌もそうしたことをキャッチコピーにしがちじゃない?で、私自身もそんなキャッチに魅かれがちじゃない?そこまで考えると、私もマニアックな日本人の一人なんだなぁと、地図を見ながら思った。

 さて、最後は試飲及び販売のコーナーだった。酒樽の並ぶ倉庫で、若いテキーラから10年ものまでの3種類と、100%ではないがお手頃価格のお勧め品の4種類を試飲。ふーん、へー、なるほどぉ、と言いながら、たっぷりと試飲した後に、「いや、お酒はあまり強くないので、購入は遠慮しときますわ」と、やり手の商人みたいなことを言って、何も買わなかった。「日本人は、いつも買います。お二人で1本ずついかがですか?」と言われたが、断った。財布の紐が堅い日本人は初めて見たのかもしれない。日本人も色々なんですよ。

 ツアーを終了してソカロに戻ると、強いテキーラのせいで頭がクラクラしてきた。大粒とうもろこしの皮を剥いで蒸したマサ(トルティーヤのネタでもある)というものを発酵させた飲み物、Tejuinoテフイノというものを知って飲んでみた。塩と氷とライムを入れてくれる。発酵の舌を刺激する酸味があって、体に良さそうだった。

 テフイノをチューチューしていると、ジェシーとその母親らしき人がいたので、声をかけた。「ツアーは面白かった?」何ていう会話をしていたら、突然ジェシーが、「さっきの男の人、私の夫じゃないの」と話を始めた。男の子のお父さんは別の男性なんだけど、今はもういなくて、さっきの男の人は今はボーイフレンドなんだけど、もしかしたら将来は男の子のお父さんになるかもしれないと語り始めた。なに?何でそんなディープな事情を、この行きずりの私に話すのだろうか?きっと、毎日、思ってるんだろうなぁ、彼のこと。それで、その思いが見知らぬ私に向けても溢れてきちゃってるんだろうなぁと、話を聞いていた。さっきの彼女の反応も、それで理解できた。

 さて、帰りのバスに乗るべく、バス停に向かうと、当初私たちが乗ろうとしていたテキーラ社のバスがあるという。それよ、それ。値段もガイドブックにあるようにN$30(約300円)だった。同じく1時間半ほどかけて、グアダラハラに戻ってみた。でも、あれ?到着したバスターミナルが違う。ここはどこ?そこら辺にいた人に地図を見せて、現在地を確認すると、私たちが乗ったトラケパケのバスターミナルではなく、グアダラハラ市内の旧バスターミナルに到着したようだ。それで、朝、大仰に「テキーラ行きのバスは、このバスターミナルからは出ていないんですよ」と説明してくれた男性の発言の根拠がわかった。確かに、テキーラ社のバスはここからしか出ていないようだ。日本のガイドブックが間違っていたのだった。ま、行けたから問題なかったけど。

 テキーラは、小さな街だけれど、世界中にその名を知られた街。熱い恋の話も聞けたし、ツアーでない楽しみに恵まれた小旅行だった。


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