夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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サンミゲル・デ・アジェンデ近郊の温泉(2005.05.20 訪問)

 ついに腰に来た。今の宿に来て3日目の2005年5月19日、より眺望の良い部屋へ移動する時、スーツケースを運んでいたら、腰がビビビっと痛んだのだ。1日経って、大分痛みは和らいできたが、お風呂に浸かれない生活なので、温められない。そうだ、温泉だ、温泉があるじゃないか、ということを思い出した。

 グアナファトからバスで1.5時間東に行くと、サンミゲル・デ・アジェンデという街がある。コロニアル建築が風化した様が美しいとガイドブックにあり、グアナファトと似たような所かもしれないが、行ってみようとは思っていた。ガイドブックの端の方の情報欄に、近郊にいくつか温泉があり、その一つの名前が紹介されていたが、メインはサンミゲル・デ・アジェンデで、余裕があったら温泉も行こうかな、というプライオリティーだった。

 しかし、こうなったら温泉最優先。早速、宿の主人に聞くと、サンミゲル・デ・アジェンデまで行って、そこからバスが出ているとのこと。ついでにサンミゲル・デ・アジェンデも見て来られるので、一石二鳥だわと思い、朝9時に宿を出た。バス停で中央バスターミナル行きのバスを待つが来ない。時間ももったいないので、タクシーに乗って行った。9時20分頃にバスターミナルに到着し、バスカウンターに行くと、サンミゲル・デ・アジェンデ行きのバスは9時半発だという。よかった。タクシー代金はN$40(約400円)でバス代は2人でN$5(約50円)だが、ここで長距離バスを逃したら、2時間くらいのロスになるところだった。

 今回は2等クラスのバスだった。1等と2等といっても、同じ時間に両方出るわけではないので、時間を優先に考えると、バスのクラスは選べないということになる。2等の方が利用しにくい時間帯なのかというと、そうでもない。バスシートにもあまり差はないし、乗っている人々もあまり差がないように思う。メキシコのバスの1等と2等の格差は、ジュース、お菓子、トイレ、車内映画サービスの有無ということになる。私たち旅行者にとっては、出発時間が優先されるので、1等にあたるのかか2等にあたるのかは、運みたいなところがあるなぁと思った。運賃は因みに、1等クラスはN$77(約770円)、2等クラスはN$58(約580円)。

 バスは、大きく波打つ大地にツーっと走る1本道を走っていく。ボツーン、ポツーンと家があって、調理の煙が上がっていたり、洗濯物が干してあったり、庭で馬や牛が草をはんでいる所がある。この辺りで農園をやっているのだろうか?お隣さんまで、何キロも離れていて、まさに大草原の小さな家のようだった。それでも、この長距離バスは、時々バス停で止まる。荒野に見える中に、ブロックで囲んだバス停が見えてくると、その周りには数人の客が待っている。いったい、この人たちは、どうやってここまでやって来たのか?不思議な光景。

 窓からの風景を楽しんでいたら、1時間半はあっという間だった。11時過ぎに、予定通り、サンミゲル・デ・アジェンデの中央バスターミナルに到着した。ターミナルには、ツーリストインフォメーションのカウンターがあり、ちょっと色っぽい目つきで、やる気のなさそーな若いお姉ちゃんがいる。中心地へは、ターミナルの目の前の道路から右方向に行くバスに乗ればよいと教えられ、見所マップをくれた。仕事はちゃんとしているのである。一人N$40(約40円)のバス代を払ってバスに乗って10分ほどで、バスは教会などの並ぶ街に着いた。

 さて、どうしようか?バスを降ろされた周囲にも、見所がいくつかあったので、見所を回りながら市場近くの食堂でサンドイッチを頬張り、街のインフォメーションブースのあるソカロに向かった。因みに、サンドイッチはたっぷりとチキンが入って60円。正味な商売をしているお母さんに感謝しながら、おいしく頂いた。ソカロは、これがサンミゲル・デ・アジェンデでございますと、ガイドブックの表紙にもなっているサンミゲル教会の前にあり、青々した樹木が植えられた涼しげで美しい公園だった。目的のインフォメーションブースは、人一人だけが入れる小さなもので、中をのぞくと誰もいない。と、そばのベンチに座っているおっちゃんが、「街のことを知りたいのかい?」と話しかけてきた。懐に手を入れて、地図を出すと「今、ここにいるだろ?」と続ける。ちょっと待った。あなたは誰?聞いてみると、インフォメーション係だそうだ。暑いので、ブースを出てこのベンチで休んでいたとのこと。このおっちゃんは、とても見やすい地図を持っていて、温泉行きへのバスと、バスの停留所と、降りる場所、そして降りてからの行き方を事細かに英語で説明してくれた。グアナファトのインフォメーションブースは、市の失業対策かと思うほど、やる気のない英語の話せない人ばかりだったので、このおっちゃんの的確なインフォメーションは素晴らしいと思った。

 さて、おっちゃんの説明によると、ソカロの西側から来た方向に伸びるReloj通りを北上し、Calzada de la Luz通りにぶつかったら右折してちょっといった左手から出るバスに乗ると行けるということだった。

 当初、ガイドブックに掲載されていたタボアダ(Taboada)温泉に行こうと思っていたが、おっちゃん曰く、タボアダ温泉は、バス停から3km離れているのでよくない。La Grutaだったらバス停から100mくらいなので、そちらをお勧めするということだった。

 バス停からは白いバス(Rancho Viejo行き)と黄色いバス(Santuario Atotonilco行き)が出ており、いずれもLa Grutaの停留所であるEl Cortijoを通るということだった。地図を見るとAtotonilcoは、17/18世紀の教会らしい。説明に従って歩いていくと、普通の道路なんだけれど、人が数人集まっているところがあった。聞くとバスを待っているというので、ここだと判断して待ち始めた。バスは1時間に1本だという。30分、40分待った。来ない。1本も来ない。時刻表なんてもちろんないし、周りの人もじーっと待っている。あー、腰が痛くなってきた。もう諦めてタクシーで行こうかと思ったとき、白いバスがやってきた。行き先にRancho Viejoとある。やったー、これだー。バス停についてから45分が経過して午後1時になっていた。

 早速バスに乗り込むも、発車する様子が全くなく、運転手は外で知り合いと話をしている。しびれを切らした夫が、出発時刻を聞くと1時半発だという。なんと!でも、ここまで来たらもう待つしかない。バスには徐々に人が乗ってきた。学校帰りらしい小中学生や、子供を抱えた近隣のお母さんたちなど、私たち以外は全員ローカルの人、それもスペイン系ではなくインカ系の人々だった。バス内ではチチャロン(豚の皮の揚げたもの)のいい香りも立ち上り、おしゃべりもつきない。待ち時間なんてもんは、イライラしている方が馬鹿らしくなるほど、誰も焦っていなかった。

 やっと1時半になり出発。バスは、街の北西方向に向かって走り始めた。途中で「タボアダへはここから3km」という看板が見え、インフォメーションのおっちゃんの情報が正しかったことが証明された。そして「El Cortijoまであと4km」という看板を過ぎてから程なくして、到着。乗車時間は18分くらいだった。おっちゃんの説明では、道路を渡るとコカコーラの看板があるので、そこを左に曲がって100m行くとあるということだった。一本手前の道を100m行って違うホテルに行ったりもしたが、結局コカコーラの看板の真下の道を左に行くとすぐに見つかった。正確には、駐車場が見つかったのだが入口が見つからなかった。

 ちょっと裏手の方に回ったら、正式な入口ではないが敷地に入ることができた。小奇麗な鉢植えの並ぶ小道を歩いていくと、入園料を払う小屋が見えてきて、手前におばあちゃんが植木に水をやっているのが見えた。「ブエノス タルデス」と声をかけると、振り返ったおばあちゃんは、めっちゃ怒っていて早口のスペイン語でベラベラしゃべり始めた。どうやら、入口でない所から入って来たので、不法侵入者だと思われているらしい。

 で、超低姿勢で、「ソーリー、ソーリー、私は知らなかったんです」と夫が英語で言うと、その表情がフッと和らいだ。おばあちゃんは、夫をメキシコ人不法侵入者だと思っていたらしい。「あんた、メキシコ人じゃないのかい?」と尋ねるので、夫が「ノー、ノー、ハポネ、ハポネ」とサングラスを取ると、いきなり彼女は笑い出し、「メキシコ人かと思ったよ」と言った。そして、夫の顔を見て「いやぁ、きれいだねぇ(muy bien)」と大変気に入った様子だった。それでは写真を撮りましょうということになったら、メチャメチャ夫に擦り寄ってポーズを取った。もてもての夫を持って幸せです、はい。

 さて、入園料一人N$70(約700円)を支払って中に入ると、小道の始まる角に、ロッカーとシャワーはあちら、プールはこちらと看板がかかっている。ロッカーの方に行き、デポジット代金N$50(約500円)と交換にロッカーの鍵を貰う。簡単な更衣室で着替えて、ロッカーに荷物を入れて、階段を下りていくと温水プールがあった。最初に見えてくる直径15mくらいの円形のプールはやや低めの温度だった。右手の奥には5m×10mくらいの深いプールがあり、こちらの温度は38度くらいといったところか。157cmの私だと爪先立ちしてもちょっと鼻に水が入るほど深い。プールの真ん中が高くなっていて、椅子がある。そこまで泳いで行って椅子に座ると、丁度肩まで浸かる恰好になった。



手前の温度の低い方のプール


奥の温度の高いプール
長方形のプールの左奥は、プールよりやや浅い深さで洞窟の通路になっており、20mほど通路を進むと、天井も壁もゴツゴツした石のドーム上の円形室内プールになっていて、オレンジ色の照明がついている。中の空気は温められ、柔らかなサウナにいるようだった。私たちは、ほとんどの時間を屋外の深いプールの椅子に座って過ごした。日本の温泉に比べると、温度は決して高くないが、長い時間浸かっていると体がポッポしてくる。プールサイドに上がって体を冷やして、また浸かる。これを繰り返しながら、腰のストレッチなどをして過ごした。水は何の臭いもしないが、この体の温まり具合から、何らかの効能はありそうだった。

 お客さんの8割はアメリカ人、その他にはメキシコ人が数組と、気づいた限りでフランス人が1組だった。サンミゲル・デ・アジェンデは10年くらい前に、アメリカの雑誌で「定年退職後にメキシコで過ごすのにベストな場所」として紹介されて以来、アメリカ人の定年退職者が押し寄せ、今では数多くの居住者がいるそうだ。私たちが泊まっている宿には、アメリカ人が多く滞在しているが、皆、口を揃えて「サンミゲルはアメリカ人が多くていやだ」と言って、敬遠している。今回の温泉訪問後に、宿で話していたら、やはり「その温泉には、アメリカ人はたくさんいたか?」「そして、そのアメリカ人は老人だったか?」という質問をされた。この会話の後、アメリカ人同士が会話しているのが聞こえた。「サンミゲル・デ・アジェンデには退職者老人が蔓延しているそうよ。」「へー、行こうかと思っていたのに。」「1日だけならいいんじゃない?」

 こうして、サンミゲルのアメリカ老人は、無意識のうちに、美しい街サンミゲル・デ・アジェンデからアメリカ人旅行者を遠ざけているようだった。

 なぜ、サンミゲルのアメリカ老人は好かれないのか?ちょっとしか滞在しない私たちは、本当の理由はわからないが、サンミゲルのソカロにいた時に、こんなことがあった。ソカロのベンチで休んでいるアメリカ老人に、カメラのシャッターを押してくれるように頼んだのだが、彼はハエでも追い払うように、無言で片手を振った。このような横柄な態度の人が多いとしたら、嫌われても仕方ないなぁと思う。日本でも、今、タイのチェンマイなどが退職後の定住地として注目を集めている。それは結構なことだが、もし定住した人々が集まって、ミニチュア日本社会を作り出してしまったら、また現地を含め日本人以外の人に対して知らず知らずのうちに横柄な態度をとっているとしたら、同じような現象が起こるのではないかと思う。自分たちも、海外に長期滞在しながら旅を続ける者なので、こうした点は充分に気をつける必要があると思った。

 さて、午後3時半になってきた。着替えをすませて、上のカフェで一休みしてから、バス停に向かった。今度は10分もしないうちにバスが来た。しかも、今度のバスは長距離用の大型バスだ。ラッキーだなぁと思っていたら、バスは、中央バスターミナルで終点となってしまった。また、振り出しに戻ったわけである。まだ、サンミゲル・デ・アジェンデの観光が済んでいないので、タクシー(N$20約200円)でソカロまで戻り、残りの観光をして、またタクシーでバスターミナルまで戻ってきて、17時半のバスでグアナファトまで戻った。帰りのバスは1等だったので、ジュースも、お菓子も、映画も、トイレもついていた。たった200円くらいの差なら1等の方が快適だ。



ソカロ脇にある、Palace of the Counts of La Canal。この日は、アウディ、ポルシェなどによるラリーが開催されており、街はゼッケンを付けた車がたくさん走っていた。大渋滞で、このあたりは、クラクションの音が鳴りっぱなしだった。
 サンミゲル・デ・アジェンデの街はグアナファトに比べると、地形的に面白みは欠けるかもしれないが、道路に面した入口から入ると中がショッピングモール風になっている所が数箇所あって、グアナファトよりもショッピングフリークにとっては気が利いたお土産品が見つかる場所かもしれない。今回は、温泉メインでサンミゲルは駆け足だったが、ショッピングにあまり興味がない ― というか、これ以上荷物が増やせない我々にとっては、充分だったといえる。

 行きには、姿勢をしょっちゅう変えていないと耐えられなかった腰の痛みが、帰りは同じ姿勢でいられるほどに回復した。温泉の効果なのか?温かいお湯の効果なのか?いずれにせよ、久しぶりにお風呂につかれて嬉しかった2人は、やはり日本人だなぁ。

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