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ハルガダ(Hurgada)→ルクソール(Luxor)
2006.12.16 |
エジプト国内移動 |
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移動内容 |
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09:04-09:11 |
ハルガダの宿からアッパーエジプトバスターミナルまでタクシーで移動。
タクシー運賃 EGP5(=US$0.84)/人 by 現金 |
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11:17-16:30 |
ハルガダからルクソールのバスターミナルと町の間までバスで移動。
バス運賃 EGP30(=US$5.07)/人 by 現金 |
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16:34-16:49 |
バスを降ろされた所から宿近くまでタクシーで移動。
タクシー運賃 EGP10(=US$1.69) by 現金 |
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16:49-17:09 |
タクシーを降りた所から宿まで徒歩で移動。 |
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※2006.12.11現在、US$1= EGP5.92で計算。EGPはエジプシャン・ポンド。 |
いよいよエジプトの中でも特に「うざい特区」と言われるルクソールに入る時がやってきた。バスを降りるなり客引きに囲まれる体験は、ダハブとハルガダで練習済み。ルクソールは、この客引きが嘘を付くという噂もあり、更に気を引き締めて行った方がいいといわれている。
客引きがつく嘘というのは、旅行者が向かおうとしている宿を告げると、その宿とは関係ないのに「自分はその宿の者だ」とか「その宿はもうつぶれた」とか「今日は団体が入って満室だ」とか言ってくるらしいのだ。
さぁ、ルクソールのお手並み拝見だ。
宿泊させてもらったサーラ・ダイバーズショップのトミエさんにお別れを告げてバスターミナルにタクシーで向かった。徒歩15分ほどの距離なのだが、ローカルの通りはまるで舗装されていないガタガタの道。スーツケースを引きずっていったら壊れてしまいそうな予感がしたのでタクシーにしたのだった。短い距離なのでEGP5を支払うといったらタクシー運転手は上機嫌だった。車も新品でいいスタートだ。
アッパーエジプトバスはターミナルにオフィスを構えているものの、チケットは販売していない。バスは遠くスエズが始発で、ハルガダで空き席があるかどうかはオンラインがつながっていないのでバスが来ないとわからない。だからチケットを事前に販売することはできないというのだ。
「満席の場合は乗れない人も出てくる。」
バスのオフィスがこんな情報を流した後で、都合よく長距離タクシーの運転手が声をかけてくる。
はなからタクシーを利用する気はないので、金額は忘れてしまったが4人集まれば一人数千円でルクソールまで乗せていってあげようというオファーだった。スエズからのバスが満席かもしれない、バスに乗れたとしてもあちこちのターミナルに寄って時間がかかる上にルクソールのバスターミナルは町から相当離れているというのが、タクシーへの誘い文句だった。
私たちの近くにはオーストリア人だという肥えた50代の女性がいた。ハルガダの高級ホテルに滞在しているそうで、「こうしたパブリックバスでしかも1人で行動するのは初めてなの」と興奮気味に語っていた。テンションの高さは女子高生のようだ。タクシーの勧誘がくると「あなたたち、どう思う?」とタクシーに乗りたげだったが、私たち二人ともう一人の年配白人パッカーが全く乗る気がないのを見て、彼女も腹をくくったようだった。
バスは10時半にくるはずなのに、11時近くになっても来ない。旅行者の数はどんどんと増えていく。ここで、白人4人組みの短期旅行者らしい若者達がタクシー運転手の甘言に落ちた。これを機にタクシー運転手の勧誘はなくなり、それから15分ほど経ってからバスがやってきた。脅されていた旅行者は我先にとバスに詰め掛けたが、心配することもなく全員が着席できるだけの空き席はあった。
おそらく毎回こんな流れでタクシードライバー一人だけが儲かるくらいな割合になってるんだろうなぁ。ドライバーの勧誘の登場のタイミング、勧誘の去り時などは絶妙のタイミングで、演劇を見ているかのようだったもの。
バスは左手に紅海をのぞみながら一路南下。ハルガダの南には他の人から勧められていたサファーガがあり、ここも通りかかった。確かによさそうなビーチリゾートホテルが並び美しい浜辺も見られたが、すぐ近くにコンビナートのような工場地帯があり、その前の海は大変濁っていた。サファーガ、どうなんだろう?ちょっと疑問が残る。
この辺りからバスは進路を変えて、西側の内陸へと入っていった。海辺から入り込むとすぐに殺伐とした砂漠のような風景になったが、午後2時近くにドライブインで休憩を済ませた後からは、オアシスらしい緑の多い景色になってきて、いよいよルクソールが近いという感じがしてきた。
午後4時半頃、バスはターミナルでも何でもない砂利道の十字路で停車。ハルガダのアッパーエジプトバスターミナルでクルージングの客引きに来ていたおっさんと雑談していた時、おっさんが、「バスはバスターミナルと町の中間の道を横切るんだ。ここから左折してバスターミナルに行くのではなく、この十字路で降りて右手方向に町に行けば半分の距離だから便利なんだよなぁ」と教えてくれていた。アッパーエジプトバスは、何の説明もしないからこのありがたみが他の人に伝わらないのだが、実は道の真ん中で降ろしてくれるのは親切な行為なのだった。
来たーーーー!バスから降りて、荷物を運び出している時から「マダーム、ルクソールに行くんだよね、マダーム」とうるさいったらありゃしない。タクシー運転手の客引き猛攻撃だ。ここから町までならタクシーEGP10で行けることを知っていた私たちは、高い料金を言ってくるタクシードライバーを追い払い二人でEGP10で行くといったタクシー運転手に決定した。ハルガダのバスターミナルでしゃべっていたドイツ人の若い会社員パッカーも一緒に連れて行ってくれというので、3人で車に乗り込んだ。
やれやれ、第一関門突破。と思ったら甘い。運転手の横の助手席には見知らぬローカルがちゃっかりと座っている。車が走り始めると、そいつは、クルッと後部座席を振り返ってパンフレットが入ったクリアーケースを見せながらいきなり営業体制に入った。
彼はシェリフホテルの客引きなのだそうだ。宿泊費、設備をとうとうと説明し、私たちが向かおうとしている宿に行く前にちょっとだけでも部屋を見ていかないかと誘ってくる。その手に乗るものかと、頑として断ると彼は黙った。タクシーは徐々に町中に入ってくる。簡単な町の作りなので、ガイドブックの地図圏内に入るとすぐに自分がどの位置にいるのかおおよその見当がついた。目的の宿にはちゃんと向かっているようだ。
シェリフホテルの客引きはどこぞに電話をかけたり運転手としゃべったりしてかしましい。まぁ、営業してこないからいいか。
やがて目的の宿にはまだ至っていない所でタクシーが停車。ここで降りろという。車を降りると、シェリフホテルの客引きが自分のホテルはここから右の路地に入った方向にあるから、これから見に行こうと誘ってきた。ははーん、運転手もグルになっていたのか。もし私たちがシェリフホテルの客引きに連れられて宿泊することになった暁には、運転手にもリベートが入るのだろう。もし宿泊しなくても、とりあえず正規料金は手に入る。運転手は、タクシー代金は正規料金にしておいて、私たちが客引きの手に落ちてホテルのリベートが入る方に賭けたのだった。
ドイツ人会社員パッカーがタクシー運転手に支払っている場面。
カメラに向かって「てめー、何写してるんだ」とガンを飛ばす運転手。
私に向かってはシェリフホテルの客引きが最後の営業活動。 |
ところがどっこい、私たちは絶対に客引きの手には落ちたくないと思っていたので、「いーや、行かないっていってるでしょ」とシェリフホテルの客引きを振り払って、とりあえずタクシー代金だけを支払って勝手に歩き出した。
この状況を見たタクシー運転手は、こいつらからはホテルのリベートは取れないと踏んだのか、私たちからは当初の言い値の二人でEGP10を受け取ったものの、ドイツ人会社員パッカーには一人EGP10を請求した。ドイツ人会社員パッカーは、そりゃぁ話が違うとごねたが、どうやら運転手の迫力に負けてEGP10を支払っているようだった。
こんなゴタゴタをやっていると、シェリフホテルの客引きが「ああ、君たちが行こうとしているフォンタナホテルの人が偶然にもやってきた!」と指差す。ここで第三の男が登場だ。「いかにも僕はフォンタナの人間だ。しかしねぇ、今日はドミトリーに団体客が入っちゃって、今晩の宿はあるけど明日はもう予約でいっぱいなんだよ。一泊だけしか宿泊できないけど、いいかな?」と言ってくる。
あー、こいつもグルだ。だってフォンタナホテルにはドミトリーはないんだよねー。リサーチが甘いっつーか、アホ丸出しっつーか。しかも、こんなに偶然にホテルの人が通りかかるのがおかしいし、今別の宿に連れて行こうと猛烈に客引きしていた奴が、ライバルの宿の人間が来たとわざわざ教えてくれるなんてあり得ないだろう。更に更に、さっき携帯で電話をしていた時に、「フォンタナ、フォンタナ」と大きな声で連呼しすぎ。グルの男に電話して、フォンタナという宿の人間を装ってタクシーまで来いっていう筋書きにぴったりなヒントがいくつも転がっていた。
しかし、ここで「お前がフォンタナの人間だとは信じられない」などといっても水掛け論になる。こういう場合は、一応信じているふりをしながらわが道を行くしかない。そう、白人のドイツ人なんて、この第三の男が現れた瞬間に「僕は独自で宿を探すから、じゃーねー」とさっさと去っていってしまっていた。会社員はこうじゃなくっちゃ出世しない。
ざっくりと周りを見回しながらヒントになる指標を必死で探した。第三の男についていくフリをしながら、正しい位置を把握しなければならない。大通りから男が路地に左折して「こっち、こっち」と招いた路地に見えた安宿の看板、これがヒントになった。この安宿の看板のある道じゃなく、もう2本先の道で左折するのが正しい道だ。やったー、把握した!
だからここで男にはついていかず、まっすぐに大通りを進むことにした。男は最初、「違う、違う、こっちだってば」と私たちが聞こえなかったのかと大きな声で繰り返したが、やがて私が男を無視していることに気づき、だんだん柄が悪くなってきた。「そっちは工事中で道が通れないんだよ、ばかやろー、俺が信じられないのかー!こっちに来いって言ってんじゃねーか!」とまぁ汚い英語でこんな内容になってきた。ついにボロが出た。演劇もここまでだと男の罵声を背に浴びながら「お前なんか信じられるわけねーだろー!」と真っ直ぐに進んだ。野良犬のように男の動ける範囲は決まっているようで、それ以上は追いかけてこなかった。
いやー、ルクソールは噂にたがわずヒドイ客引きがいるもんだ。こんな演劇のような策略の渦中に身を置いたのは初めてだったので、ひどく疲れもしたが、最後まで策略に引っかからなかったのは痛快で、陽気で快活な気分になって宿に向かった。
宿に到着して主人にこのいきさつを言うと、第三の男はプリンスという宿の客引きに違いないと言った。後日、プリンスのロビーにこの男がいたのを私も見たので間違いない。プリンスとシェリフがグルになってフォンタナの客を横取りしようとしているのは、私が最初ではないらしかった。
やれやれ、大変な町に来たけど、ちゃんと目的のフォンタナにたどり着けてよかったなぁ。とホッとしたのがまずかった。フォンタナのおやじはお茶を入れて、長い時間をかけてツアーの勧誘を行い、ツアーを断ると宿の料金を通常の倍額以上にふっかけてきた。一難去って、また一難。フォンタナの宿のおやじが「いい人」だなんて誰も言っていないのに、悪人を振り切ってきた後だけに勝手に自分の中で善人と決めつけていたのだった。結局おやじの言いなりの値段から少し下げた値段で手を打つことになってしまった。何でもっと粘らなかったのかーーー!
最初のタクシー運転手との交渉で1勝、シェリフホテルの客引きについていかなかったので2勝、偽フォンタナの客引きを振り切ったので3勝、そして本当のフォンタナホテルで1敗。ルクソールの第一歩は3勝1敗。「負けで終わったのが悔しいけどさ、振り返ってみればまずまずの勝負だったんじゃない?」と何度も自分に言い聞かせることで己の精神力の弱さに対する憤りを鎮める夜となった。あーあ、もうちょっとだったなぁ。
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