|
|
|
|
2007.02.20
バラクーダビーチとワタムビーチの間には
ケニア:ワタム |
|
私たちの宿の客室棟の前にはサッカー場がある。夕方、暑さがやわらぐ時間帯になると、少年達が集まってかなり真剣な練習試合が繰り返されている。
このサッカー場の先は急な坂道、というよりも緩やかな崖といった方がいいのか、そんなものが立ち上がっている。登ってみると、この崖の下の海は右手のバラクーダビーチから左手のワタムビーチの間にあたる部分だった。
午前10時半、上から見ると全体的にうっすらと水に覆われてはいるがまだ水位は低く、この分だとバラクーダビーチからワタムビーチまでこの崖の下を伝って散策ができそうだった。
と、見ている間にもピチャピチャと水面を歩いて横切る人の姿が見える。ああ、やっぱりここは歩けるんだ。
かなり沖まで遠浅の海が続き、その先に波頭が立っていることから、そこから深くなっていることがわかる。
波頭が立っている所までは、所々が深くなって白い砂が見えていたり、緑や赤い海草が生えていてる。沖から風が吹いてくると、この色とりどりの水面の上を一様な波紋がさーっと現れる姿も、この高さから見ていればこそ見える風景だ。
後日、ナイロビに帰ってからお世話になっている旅行代理店のアフロスペースを訪ね、社長の蔦田さんに小旅行の話をしている時に、ここからの風景の話になった。蔦田さんはここの場所をよく知っていた。というのも、以前、何かの撮影で来たクルーを案内したことがあるというのだ。なるほど、ここからの眺めは絵になるから撮影に使われるという話もうなずける。
17日にこの風景を見てから、いつかあの崖の下を散策してみようと思っていた。ということで、今日20日はバラクーダビーチの左端から半時計回りに岬の下を伝ってワタムビーチへと向かう散策を行うことにした。
朝9時25分に、バラクーダビーチの左端地点。ここから、後ろに見える岩を右側から半時計周りに周りこんで裏側に行く。
岩を回り込むと、足の甲が隠れるくらいに薄く水の張った場所になった。振り返るとビーチが見え、左手はもう少し深い天然プールになっていた。
先日見たのと同じく、潮がどんどんと引いて川の中に立っているようなせせらぎの心地よさがある。朝の散歩を楽しむ人の姿もちらほら見られるようになってきた。
とても気持ちのいい所なので、歩き始めて15分しか経過していないけど、とりあえず第一回目の休憩。
後ろには青々としたインド洋が広がっているし、前にはエメラルドグリーンと紺碧を合わせたような色合いの海の向こうに白砂のビーチが広がっている。どこに目を移しても興味深い風景が広がっていて、ただ水に浸かっていても飽きがこない。
ここからワタムビーチの方角、つまりビーチに向かって立った時に右方向に歩いていく。左側には石壁が立ち上がり、右側にインド洋が広がる。
この崖はかつての火山の噴火でできた溶岩が固まったような、気泡の開いたゴツゴツとした石でできていた。
崖の下には一抱えよりも少し小さい穴がポコポコ開いている。大昔に大噴火があって、溶岩は海の水に出会ってここで踏みとどまり、もっと勢いのあった溶岩石が落ちて丸い跡をつけたのだろうか。
足元の岩盤に開いた穴は、芸術的に丸くくり貫かれていて、水位の低い所では、その穴だけに水がたまって気の利いた日本庭園の一角にある池のようにも見えた。
しかも、中にはわざわざ置いたかのように角のとれた石、海草が生えて、カニなどの小さな生き物がいる。自然が作った箱庭ならず箱海は趣があった。
ゴツゴツした崖に目を移すと、いろいろな種類のカニ、そして、これってムツゴロウの仲間だろうか、短いウナギで尾とヒレが手足のように発達した奴がピタン、ピタンと歩いている。カニは私たちが近づくと、等間隔で等スピードで同じ方向にサワサワと動く。通り過ぎると、またサワサワともどってくる。また、ピコッと岩の裂け目から顔を出したり、ひっこめたりもする。
よく目を凝らさないと何も見えてこないのに一度こうした物に気づくと、ここは小さな生き物に満ちた世界だった。自分が一歩足を踏み出す度に、壁のどこかがサワッと動くのが目の端に映る。そこを仔細にのぞくと、必ず何かが潜んでいるのだった。これが磯遊びってやつ。
磯遊びに夢中になっていると、いつのまにか強烈な日差しに肩を焼かれて体が熱い熱い。
そんな時は、崖からちょいと離れて沖へ出て天然プールで体を冷やせばよい。ああ、何て極楽的な場所なんだろう。
この天然プールから右手、ワタムビーチの方面に目を移すと、崖が出たり引っ込んだりしてリアス式海岸のような風景を作り出しているのが見える。
だから崖の引っ込んだ所が各々小さな湾のようになってユニークな空間になっているのだった。
その小さな湾になっている場所の一つに、崖の上の部分が尖った小さな山がたくさん立っているようなものがあった。一番奥から深い裂け目ができていて、その部分だけは岩ではなく砂地が出ていて、細長い浴槽みたいになっている。
せっかくですからと、浴槽気分で浸かってみると、中に生息している魚が群れになって目の前をツツツツーっと泳いだりして、これまた面白い所。
ここから先は、こうした天然プールのようなのが多い。17日に上から見ていた風景はこの天然プールのイメージだ。
所々に緑の海草、上の方に浮かんで見えるのは浮かんでいるのではなく高くなった部分に生えている赤っぽい海草だった。そして白く砂地が見えている部分がある。17日はもう少し遅い時間帯だったので全てが水に覆われていたが、今日はまだ水位が低く、覆われている部分とそうでない部分があった。
天然プールにカメラをつっこんで撮影してみると、中の魚が撮影されていた。多いのはギョロ目の魚だが、もっと小さくてコバルトブルーの美しい熱帯魚などもいる。
こうして散策を楽しみながらワタムビーチが見えてくるころ、時刻は午前11時を回っていた。
ワタムビーチもバラクーダビーチと同じく、岸から近い所に置き去りにされたような巨大な岩がポツン、ポツンと配置されているのが、面白い風景を作り出していた。
観光客の数はこちらの方がずっと多い。聞こえてくるのは圧倒的にイタリア語だ。そう、ワタムには妙にイタリア人が多いのだ。この松島のようなリアス式海岸が作り出す海岸沿いの景色がお気に入りなのかなぁ。ガイドブックには最近ワタムにはイタリアンマフィアが入り込んでいると書いてあった。ワタム沖を利用して、法律に抵触するけれど旨みのあるもの(麻薬かなぁ?)をアフリカからイタリアに持ち出しているという話も聞いた。想像をたくましくすれば、こうしたマフィアの表向きの堅気の商売として観光業を成り立たすために、ここへのイタリア人観光客の誘致を行って成功しているとも考えられる。ブゥオンジョルノ!と誰とでも明るく挨拶を交わすイタリア人の腕に錨マークのイレズミが入っていたりすると、「うわっ、もしかしてこの人・・・。」などとつい考えてしまうのだった。
ま、それはさておき、観光客で賑わう朝のワタムビーチってのも散策コースとして魅力的。明日の朝はワタムビーチに行ってみよう!
|
|
|
|