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2007.02.21
ワタムビーチ
ケニア:ワタム |
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ワタムビーチにたどり着くにはちょっとコツがある。
メインロードを歩いて行くと、Watamu Beachという高級リゾートホテルにぶつかる。このホテルの左手にある細い道を入り、村の民家と民家の間の洗濯物なんかぶら下がっている小道をグネグネと通って行くのが近道なのだ。車の通れる道から行こうとするとかなり大回りになってしまう。
一応観光客も通っていい道らしく、こうした家の人に「ビーチはどっち?」と聞くと、通るなとも言われずに「あっち」と指差して教えてくれる。あまりに人の家の軒先を通るのがちょっと気が引けるのだけど。
最終的にワタム・ビーチホテルの敷地の左側をすりぬけてビーチに出る。朝9時55分のワタムビーチは・・・。あれ?というくらいちょっと汚らしい感じだった。ワタムビーチはバラクーダビーチと違って海草が多い。夜の間にこうした海草が岸に寄せられてしまうのだ。高級ホテルの前では、この海草を掃き寄せて美しい海岸にしようと努力していた。
ちょっと期待はずれだったかなぁと思いながらも、遠浅の海をジャボジャボと沖に向かって歩いていく。私たちはワタムビーチの右端から歩き始めたのだが、もっと左手に行くと大きな岩が点在していて、その辺りはまだあまり水に覆われずに砂地が見えている場所になった。
ワタムビーチはこの辺りからもっと沖に向かった所が、朝の時間帯にもっとも美しい場所だったのだ。大きな岩に近づくにつれて、持ち上がって海草が生えている岩棚の部分と下の砂地が見えているもう一段階深い場所が入り組んでいる所が見えてくる。
ここからもっと沖の方に行くと、岩棚がなくなりひたすら白い砂が広がっている所に5cmくらいの深さで水が満たされている。ここも朝の時間帯は干潮なので、水は小さなさざなみを伴って水の上を波紋を作りながら海の方に流れだしている。
このなんとも形容のし難い気持ちよさは誰もが感じる所らしく、多くの観光客が集まっては思い思いのポーズで写真を撮影していた。
真っ白な砂の上に流れる透明な水、その向こうには碧い海が広がっていて、奥に白い砂浜のビーチとやしの木。ありそうでない、ワタムならではの写真ができあがるのである。
陽気なイタリア人のご夫人たちがあまりにも長時間さまざまなポーズを取って撮影しあっているのに影響されて、私たちも写真を撮ってみたくなった。この人たちにお願いすると「スィー、チェ〜ルトォ〜(ええ、もちろん)」と歌うように快諾。
イタリア人というのは根っから芸術家の国民性があるのだろうか。手にはサンダルや荷物や脱いだワンピースなどを持っていたのだが、「そんなの持ってちゃだめだめ」と傍らのおばちゃんが私たちの荷物を持っていてくれた。「もう少し寄り添って、そうそう、旦那さんは後ろに手を付いて」と写真館なみに注文がくる。で、できあがったのが上の写真。さすが。お願いする人によっては、もう人物中心主義でまわりの景色なんか全然関係なく、面積の大半を人間が占めないと気がすまない写真の撮り方をされる場合がある。このイタリア人女性はこの景色の魅力が最大限に写真に入るようにしてくれている。いやー、気に入りました。
ここからもっと沖に行くと、昨日散策したリアス式海岸のような崖が右手に見える。この先からはもう濃い青が広がる深い海になる。その先端の部分まで来たのだった。
まだ潮が引ききっていないこの時間帯は、ここも天然のプールのようになっていて、主に年配の旅行客が、温泉よろしくゆったりと水に浸かっておしゃべりを楽しんでいた。
かと思うと、もっと先の海が深くなり始めている部分まで行って、波に向かってわけもなく体当たりをくらわしている人もいる。
ここは様々な表情の海があり、人それぞれ、その時々の気分に応じた海との付き合いができる。
岸から見えていた大きな岩の一つで、海が深くなる直前にある岩には登れるように階段ができていたので、上がってみることにした。
岩の上から見ると、この不思議な地形の全体像がよく見える。ホテルなどが建っているビーチからこの岩のある辺りまで、ほぼ一定の標高というか高さと言っていいほど傾斜の少ない超遠浅の浜である。この岩のある所から左手になると、ぐっと海は深くなっていくのだ。
超遠浅の部分は、ほぼ一定の高さとはいえ所々に低くなった所もあり、そのような部分に水がたまって、真っ白な砂浜に水色の水溜りを作っているのだ。
深くなっている海に向かって左を見ると、同じような位置に大きな岩があり、そのずっと向こうにも大きな岩が見える。岩の前もしばらくは浅いのだが、その先になるとぐっと深くなって濃い青のインド洋が広がっている。
目の前の海は、青いことは青いのだが一様ではなく、濃くなったり薄くなったりして様々に深さが変わっているのが見える。
ここから見る海側の景色は、黒い岩、その上に生える鮮やかな緑、岩の下に生息する赤や紫や緑の海草、そして様々に変化をつけている海の青。まさに色の氾濫で、音楽に例えるならまさにオーケストラの交響曲ということになるだろう。
今度は浜辺の方を向いてみると、こちらは真っ白な砂にブルーの水溜りや海草の生えている薄いグリーンに見える水溜りが見える。時間が経つにつれて、これらの水溜りはどんどんと水が流れ出して小さくなり白い砂の部分が増えてくるのだ。先ほどの海側の風景と比べると、静かでひそやかだ。
岩の上からの見物を終えて下に降りると、12時を30分も超えていた。いつの間にこんなに時間が経ってしまったんだろうと思えるほど、朝のワタムビーチは見所満載。立ち位置を変えると見えてくる風景が全然違ってくるのが面白いし、天然プールのような所がたくさんあるので風景を楽しみながらプールでまったりしていると、どんどん時間が過ぎていってしまうのだっが。
くんくん、くんくん。岩の下では高級リゾートホテルの仕出し、というかケータリングBBQをパクついている観光客が数組いた。黒人スタッフがその場で炭火を起こしてBBQをしてくれるサービスらしい。こんな所でシーフードBBQとはなかなかいいアイディアだ。先ほどまで海の方で遊んでいた人たちは、このBBQを横目でグッとにらみながら、どんどんと浜に戻っている。もうお昼の時間だ。
私たちも午前中の散策をこれくらいにして宿に引き上げて昼食を食べることにした。
午後4時、たまには夕方のワタムビーチも行ってみようと再びワタムビーチを訪れた。
午前中は白く見えていた部分はすっかり海になっていた。バラクーダビーチと比べて角度のせいか、こちらの方が青色が美しく見えると思った。しかし波が強く、そのせいで海草と砂が巻き上げられてしまって、あまり海に入りたいという気分が起きない。海に入りたくなるのは断然バラクーダビーチの方だ。本当はワタムビーチで海に入ろうと思ったのだが、この様子を見てすぐにバラクーダビーチに引き返した。
ワタムでの滞在でわかったのは、朝の潮が引いていく時の散策はワタムビーチが良く、潮が満ちた時の海水浴はバラクーダビーチがいいってことだ。
ワタムには海洋公園があるのだが、旅で知り合ったダハブのダイビングインストラクターのフミさんいわく、「私が紅海を職場に選んだのは間違いじゃなかったことが確認できた」そうだ。つまり紅海の方が魚の種類も珊瑚の色も素晴らしいということだ。ワタムでフミさんに出会ってこの話を聞くまでもなく、私たちは海洋公園には行かなくっていいやという気分になっていたが、フミさんの話をきいてますます行かなくていいと確信したので行っていない。
ワタムの魅力はシュノーケリングやダイビングではなく、この2つのビーチの変わった地形が作り出す様々な表情だ。シュノーケリングはこれを味わいつくしてからでも遅くない。
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