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2007.04.28
宿を決めて温泉へ
マダガスカル:ラヌマファナ |
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マダガスカル語で「ラヌ」は「水」、「マファナ」は「熱い」という意味だそうだ。ラヌマファナは村の名前自体が「熱い湯」、つまり「温泉」という意味になる。
ペルーのマチュピチュの麓にある村の名前も「アグアス・カリエンテス」、スペイン語で「熱い湯」という意味で、ここにはあまり熱くない温泉がある。
温泉の多い日本では「温泉」という名前の村がないと思うが、温泉が珍しい場所では熱い湯が湧き出すということ自体が村のシンボルとして村の名前になるということだろう。
さて、前置きはともかく。
フィアナランツァから心配していたラヌマファナへの道中は、ガイドブックにあるような悪路ではなく、ごくごく平穏に2時間で到着してしまう道だった。村は市場から始まるメインストリートを100mも行ったら終わってしまうような所だった。
乗せてきてもらったタクシー・ブルースのドライバーに目当てにしている宿(Chez
Gaspartd Bungralows)の方角を聞いたら、村の人に案内を頼んでくれた。といっても100mもしたら終わってしまうような村なので、タクシー・ブルースの停車した広場から出てメインロードを左手に20mも歩き、「この先に宿の看板が見えるから、そこを左に入って教会の裏手にあるから」という簡単な案内だった。
看板を左に曲がると、目の前に教会が見えてくる。その教会を左から裏手に回りこむと、裏の建物にシスターのような女性がいて、フランス語しか通じないながらも我々が部屋を探していることを理解してくれた。宿は教会による経営のようだった。我々はシャレーに宿泊したいというと部屋しか空いていないというので、部屋を見せてもらった。
とても清潔で広い部屋だった。シャワーとトイレがついてAr24000(約US$12)。シャワーブースもひびや錆びもなく、ステンレスの蛇口も磨かれてきれい。しかし、銀行のないラヌマファナには限られた予算できている。私たちが宿泊にあてた予算は一泊Ar20000だった。これでも多めに見積もっていたつもりなのに・・・。
再度シャレーが空いていないのかどうかを訪ねると、午後4時になったら空くという。というか、まだ清掃が終了していなくて午後4時になったら部屋が準備ができるというのだ。
それなら午後4時まで暇をつぶしているから、清掃前でもよいのでちょっと部屋を見せて欲しいと頼んだ。この時点ではシャレーの方が安い部屋だと勘違いしていたのだ。
シャレーは部屋のある建物から一段下がって川が目の前にある。一戸建ての三角屋根のシャレーは部屋よりも豪華なプライベート空間だった。そして、値段も高かったのだ。一泊Ar32000。そうかぁ、シャレーだったら安いと思ったのに、ここのシャレーは部屋よりもゴージャスだったのだ。
とても親切なシスターに予算が足りないので、申し訳ないが他のホテルを見てくる、もし他のホテルがだめならここに戻ってくると何とか告げてホテルを後にした。
2軒目に目指したのは、教会よりも更に300m程奥にいったメインロード沿いにあるマンジャ・ホテルMnaja
Hotelだった。レセプションで部屋の料金表を見せてもらうと、一番安いのが共同バス・トイレのシャレーでAr18000(約US$9)だった。
そう、普通はシャレーの方が安いんだよねー。マンジャ・ホテルのシャレーは価格にふさわしい草葺屋根のみすぼらしい外見だった。シャレーの裏手には2階建ての部屋があり、こちらは倍額くらいしている。
もし、あまりにもみずぼらしいようならシスターのホテルに戻ろうと思っていた。しかし外見とは裏腹に、内部は床張りで蚊帳付きシングルベッドが並び、ベッドの上についている照明や洋服ダンスも新しくてかわいらしい。あらあら、いいじゃない。共同のバス・シャワーを見せてもらうと、まだセメントの匂いさえする新しい作りで、トイレは珍しく漂白剤の臭いがきっちりとする掃除ぶり。いいじゃない、いいじゃない。フロントにいる御主人らしき人は英語も話せるし、全く問題なしだとここに宿泊することを決めた。
またもやギリギリの現金しか持ってきていない我々は、まず宿の御主人に今後利用する交通機関の値段、国立公園の入場料金、ガイド料金、温泉の値段などを聞いてみた。
ガイド料金が思ったよりもかかりそうだし、国立公園までタクシー・ブルースがつかまらない場合は、本物のタクシーを使うしかない。すると、またまた予算が・・・・。結局、昼食は村の市場で売っている揚げパンに牛ひき肉の具が入っているという、おそろしく胃にもたれそうな安いサンドイッチで済ませることにした。明日の国立公園トレッキングが終わってみないと、実際にはどのくらい食費に割けるかわからない状況になってきたのだ。
それでも、今日と明日の2回温泉に入るという計画を変更しようとは思わなかった。国立公園の楽しみよりも、お楽しみは温泉だといっても過言ではない私たちだったからだ。
宿から市場に戻ると、市場の目の前から左に曲がる道がある。その先は川を渡る橋があり、橋を渡った所にある小屋が温泉と温水プールのレセプションなのだった。ここでチケットを購入。ついでにペットボトルの水も購入。驚くことに、ここで売っているペットボトルはラヌマファナとフィアナランツァのどこよりも安いAr1000だった。他はAr1200とかAr1500とか言っているというのに。
この小屋から右手に50m程進んだところに温水プールがある。柵の入口でチケットを見せて入るようだ。プールはローカルの人が多いように見えた。もちろん水着を着ているがビキニの人はいないみたいし、黒い水着が多いように見える。ちょっと保守的な感じがした。
温泉はプールに向かう道の中ほどで左に上がる階段の上にある。
プールが一人Ar1000(約US$0.5)に対して温泉は一人Ar500(約US$0.25)。宿で聞いた時には一人Ar1500だと言われたので3分の1だったことにホッとした。これで明日も来られる!
階段を上りきった所に、個室の風呂場が横並びになっていた。どこからともなく現れる係りの男性にチケットを渡すと、2つの個室のどちらか好きな方を選んでくれと言っているようなジェスチャーをされた。
部屋は皆同じ形。天井が割合高くて左隅に縦長に浴槽があり、お湯がどんどんとたまっている。見せられたうちの1つ目は内部が白い浴槽だったが、2つ目は中の塗装がはがれて真っ黒になった浴槽だった。真っ白の方がいいかなぁと、こちらを選んだのだった。
床はレンガ色のタイルで、よく磨いてあるようで垢がこびりついているなんて事はなく、思ったよりもずっときれいだった。
時間制限については何も言われなかったので、ここは無制限で入れるようだ。お湯も前回のベタフ村に比べると見る間にたまっていくので、浴槽に半分くらい湯がたまった状態で木の扉を閉めて入ることにした。
湯加減はやや熱めのいい感じ。かすかに硫黄のにおいがする。湯船は人一人が寝そべって丁度いいくらいなので、寝そべって肩までとっぷりつかる。・・・そして5分。
ぷはーっ。扉はきっちり閉まっているわけではないが、段々蒸気もこもってきている。加えて、ここのお湯は本当に温泉らしく、体にびんびんと響くものがある。5分も浸かっていると、全身がものすごく温まり、それ以上浸かっているのが難しくなってきた。湯船から出て5分休憩。
それでも2回目に入った時は3分が限度だった。で、もう3回目は入る気がしなかった。
時間無制限とはいえ、もう限界だ。ということで、外に出て涼んだ。
観光客は誰もいなくて、地元の人ばかり。みんな石鹸を持ってきていて、浴槽の外で体を洗って流しているらしい。流した水は個室の扉から前に流れている溝にどんどん入って流れていくというしくみになっている。
一組の客が出ると、係員が浴槽を洗ってお湯をどんどん外にかき出して終了。浴槽には流れ出す栓がないので、正確に言うと多少は前の客のお湯が残っているってことになってしまうが、地元の人は湯につかっている風ではないのでお湯はとてもきれいだった。
翌日はトレッキングの後に行ったのだが、疲れが吹き飛んだ気がする。ベタフ村もそうだったが、この村の温泉も外国人用、観光客用なわけではなく、地元の人に向けたサービスだ。白人は見学に訪れるものの、設備が汚らしいと思うのか、入らずに戻っていっている。
だから、不必要に高額を請求されることがないし、お湯も薄めたりしない。ごく当たり前にいいお湯が味わえるのだ。商業主義に染まりきった先進国の温泉では貴重になってしまった本物の温泉が、ここマダガスカルでは簡単に味わえるというわけだ。
話が飛んでしまうが、ラヌマファナからフィアナランツァに帰るタクシー・ブルースでスペイン人の初老の男性に出会った。どういう経緯か知らないが、60絡みの男性は20代のマダガスカル人の奥さんと乳飲み子を従えていて、スペインではコンピュータの部品のブローカーの会社と自分の敷地に8部屋の宿泊施設を経営する会社と、他にもう一つ、計3つの会社を運営していると語った。
そして今手がけようとしているのが、このラヌマファナに一大保養地を作ろうとする計画。こんないい湯が出るのなら、もっと大々的にきれいな施設を作れば先進国からの観光客を呼べるのではないかという夢を夢中で語っていた。そんなことになったら、ここの温泉も水で薄めたものになるかもしれないと、ぞぞぞと寒気が走ったのだが、「マダガスカルの温泉は国が押さえているので話は難航する」というくだりで、ややホッとした。ラヌマファナの本物の温泉はまだ当分味わえそうな感じである。
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