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2007.05.05 Vol.1
イサルトレッキング〜マキ・キャニオン周辺
マダガスカル:ラヌヒラ |
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朝6時50分にANGAPのオフィス前に待ち合わせ。
昨日のうちに宿の前にある商店に頼んで朝6時半にゆで卵4個作っておいてもらうことになっていた。6時半に行くと熱々のゆで卵が用意されていて、ちょっと感動。こんなに作りたてなら腐っている心配はないね。
6時40分にANGAPのオフィスに行くと7時からオープンって書いてあるじゃないか。じゃぁ早い時間に待ち合わせしても無駄だったってことじゃん、アルバート、最初に言ってよ。
丁度いいから、ここで朝ごはん。熱々のゆで卵っていうのはご馳走だなぁ。フランスパンもレベルが高いし、イサル国立公園のトレッキングはご機嫌なスタートを切ったのだった。ってまだ始まってもいないけど。
アルバートはちゃんと6時50分にやってきて、3人でANGAPのオフィスが開くやいなや事務所に一番のりして公園入園料を支払って手続きを行った。
今日の車は乗用車だ。4WDじゃなくて大丈夫なのだろうかとやや不安もありつつ、ドライバーとご挨拶。アルバートよりも更に年の若いマダガスカル人の青年は恥ずかしげに握手して車に乗り込んだ。
ガソリンスタンドはマキ・キャニオンへの途中にあった。約束どおりここで前金のAr20000(=US$10.55)を渡してあげる(本当は倍額欲しいといわれたのだが、ガソリン使用量と費用を考えたらこれで足りるはずだとこの金額にした)。
Ar200000のうち公園入園料にAr50000、今前金でAr20000を支払ったから残金はAr130000ね。私の手帳にその内容を記載してアルバートにサインを求めたら、神妙な顔でサインをして残金の数字を彼なりに納得のいく数字の書き方でぐぐっと書き直した。私たちのあまりにシビアな対応に「なんてぇ渋い客だ」とアルバートもやや渋面。しかし、私たちも騙されないためにはしっかりしなくてはいけなかった。
昨日イフシから来た道を途中まで戻り、そこから左へマキ・キャニオンへの未舗装の道に入っていく。
途端に深い轍、急に下ったり上ったりの坂道など難しい道になりながらサバンナの中を進むことになった。すでにアンドリンギチャ国立公園への道で経験済みだったので、あぁ又かという思いだったが、初めてここを訪れていたらあまりの悪い道に驚いたことだろう。
イサル国立公園の岸壁はサバンナの丘の向こうに高くなったり低くなったりしながらどんどんと近づいてきた。
やがて曇天の雲の切れ間から一条の光が差して岸壁の切れ目が指し示すように照らされ、偶然にもそこが我々の向かっているマキ・キャニオンへの入り口なのだった。
村から1時間。悪路を経てマキ・キャニオンの駐車場に到着した。ドライバー君とはしばしここでお別れ。私たちがトレッキングから戻るまで、ここで休憩していてもらうことになっているのだった。
マキ・キャニオンへのアプローチは、まずいきなり川を渡る所から。この川も踏み石が置かれているだけの所で、石をつたいながら川を渡る。
渡った川原の左手にはキャンプしているフランス人親子がいて、彼らはガイドを連れてキャンプをかついでイサルの中をグルグルとトレッキングしているらしかった。
駐車場からマキ・キャニオンの入り口までは30分ほど水田の中の道を歩いていく。
途中の道でアルバートは立ち止まって振り返り、遠くに見える村を指差した。
「あの村がそもそもラヌヒラ村だったのです」とアルバートが解説を始める。ラヌヒラ村にはバーラ族の王様と民衆が暮らしていて、村には別の名前がついていたのだ。ある日王様が森に行って、お決まりの場所で(King
Shower)水浴びをしていると、ヒラHira(バーラ族の言葉でレミューのこと)が来て水(マダガスカル語でラヌ)を飲んでいるのを見た。これがラヌヒラの村の名前の由来になったのだという話だった。おとぎばなしのような話である。
水田の中には首の長い姿のよい鳥がフーッと立っていたりする。鳥は、水田の中に生息している小さな蛙なんかを餌にしているのだと、アルバートはすぐ足元に小さな蛙を見つけて教えてくれた。緑色の小さな蛙は同じような草の足元に隠れて、言われてからも容易には見えない。さすがガイドのアルバートは目が慣れているなぁ。
こうして歩くうちにマキ・キャニオンの入り口が近づいてきた。
遠くから見ると、曇っていたせいもあるが一様に真っ黒に見えていた岩壁も近づくと様々な色合いを帯びていることが見えてきた。
この岩壁の手前には森林があり、ここにシファカやマキ(ワオキツネザル)が生息しているのだそうだ。アルバートは、「約束はできないけど」と念押しして、運がよければレミューを見ることができるだろうと説明してくれた。
私たちを森の中に残してアルバートはレミュー探しにでかけてしまった。なかなか熱心なガイドだ。「もしレミューが見つからなかったら木にぶらさがっている俺をレミューだと紹介しようか」とか夫が言っている間にアルバートが戻ってきた。
どうやら見つからなかったので、とりあえずマキ・キャニオンに先に行って後からまた森に戻ってこようということになった。
森を抜けると、清水が流れる小川や苔むした岩、そして鬱蒼と茂る木々の風景になり、熱帯ジャングルと呼ぶにふさわしい散策路になってきた。
さっきまで殺伐として全く水気の感じられなかったサバンナの風景とゴツゴツした岩壁だったのに、森一つ隔てて岩壁の隙間に入り込むと、こんなにも瑞々しい景色が広がっている。この突然のギャップがなんとも楽しい驚きをもたらしてくれる。
やがてちょっとした砂州になっている場所に出ると、先ほど川原でキャンプをしていたフランス人親子に再び遭遇。
彼らはマキ・キャニオンの足元の奥深くに入っていって、今日のキャンプ地を探すのだそうだ。
既に両側は切り立った岩壁になっており、岩壁から染み出した清水がザーザーと小さな滝を作って流れている所もある。ここが、最初にアルバートの話に出てきた王の滝、キング・シャワーだということだった。
この先は岩壁の間に水が流れている所を伝って奥に入っていくのだが、水が流れている所も大きな岩が落下して道をふさいでいたりして、その岩をよじのぼっては向こうに行くというようになっていた。
とはいうものの国立公園として整備されているので、こうした岩にも足をかけられるように切込みが入っていて、ちゃんと階段状になっている。
平坦な道ではないが、決して難しいトレッキングではない。
こうして岩を乗り越えて歩いていくうちに、両脇の岩壁の間にそびえる別の岩壁が見えてきた。それがマキ・キャニオンだということだった。
マキ・キャニオンが正面に見える所でトレッキングはストップ。この先の奥まで道は続いているが、マキ・キャニオンの足元で袋小路になっていて、その先抜けて行く事はできないのだそうだ。
イサル公園の内側からマキ・キャニオンへアプローチした場合と見える風景が随分と違っていることだろう。車でアプローチした場合は、こうした渓谷を歩くトレッキングになる。
マキ・キャニオンそのものというよりは、岸壁にはさまれた荒々しい水と岩を楽しみながら歩くコースだった。
ここから来た道を引き返して森に戻ると、他のトレッカーが来ていてそのガイドから森でシファカを発見したとの情報を得た。
ガイドの情報に従って森の中に入っていくと、おおおーー、いたいた。
木の上で朝の食事をしているらしい真っ白なシファカ。シファカの中でも知名度の高い(私の中で)ベローシファカだった。アンタナナリヴのレミューズパークにもいなくて、今まで見る機会がなかったベローシファカをこんなに間近に見ることができたのだった。
後ろ足でしっかりと木の枝にぶらさがり、真っ逆さまの格好で好みの葉を探しては、ひきちぎって食べている。人間が近くに寄っても全く気にすることなく朝のお食事中だった。
シファカは群れをなして暮らしているので、1匹見つかるとその近くには5〜6匹は見つかる。
こっちの枝でもお食事中のシファカ。手で葉を持って食べているしぐさがかわいらしかった。
この後ろにも木の枝にぶらさがっているシファカがいて、別の枝にも2匹のシファカがいる。もうあっちこっちにベローシファカがたくさんいて、まるで人間を恐れる風もなくごく自然に食事している姿が見られるのだった。
もちろん写真は望遠を使っているので手で触れられるほど近くにいるわけではない。しかし、高い木の上の方にようやく見られるという距離ではなく、肉眼でしっかりと表情まで見られるくらいの近さなのだ。
マキ・キャニオンへ向かうトレッキングはとびっきり面白いとは思っていなかったのだが、ベローシファカをこんなに大量に見られるのならここに来る価値はある。
最後に、こんな風に木にまん丸としがみついているシファカと、行儀よく両足を揃えて逆さまになってお食事中のシファカをもう一度観察してから、その場を離れることにした。
私たちの大満足ぶりにアルバートも嬉しそうだった。
イサル国立公園には他にブラウンフロンテッドレミューとリンクテイルレミュー(ワオキツネザル)がいるのだそうだが、マキ・キャニオン入り口の森ではこの朝ベローシファカだけを観察することができた。
車に戻ると、どこからこんなにと思うほど地元の子供たちがわいて出てきたように集まってきていた。
外国人が物珍しいのと何かくれないかなぁという期待で集まってきているのだった。
「頑張って勉強しなさいよー」といって、彼らに別れを告げてマキ・キャニオンを後にしたのは朝10時のことだった。マキ・キャニオン、シファカの登場でかなり充実。
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