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2007.05.08
牛車で行くバオバブ見学ツアー
マダガスカル:イファティ |
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昨日の浜辺の売り込みの中で私が興味を持った「牛車で行くバオバブ見学」。
今朝もビーチで寝転がっていると、さっそく売り込みの青年2人がやってきて、昨日の人たちと全く同じ内容の売り込みを始めた。二人のうち一人は英語が話せたのだ。最後まで聞いて、「で、その牛車のツアーだけやったらいくらなの?」と聞いてみた。
そういう要望は今までなかったのか、二人はしばらく相談した後、「二人でAr40000(=US$21.09、2007年5月7日現在のレートUS$1=Ar1896を使用)でどうか」と言ってきた。丸一日のツアーで一人Ar80000だから4分の1にしてきたのだろうか。しかし、牛車といっても平安時代の豪華絢爛貴族の乗るような御所車を仕立てるのではなく、荷物を運搬する荷台に乗るわけだし、バオバブまで30分だって言っていたし、一人US$10は高い。
トゥリアーラからここまでバスで1時間半乗って一人Ar5000だった、トゥリアーラで市内のプスプスは二人でAr1000だったという値段を引き合いに出して、「二人でUS$5、つまりAr10000なら行くよ」と言うと、いきなり二人でAr20000まで値段は下がった。「いやいや、別に行かなくてもいいのだからAr10000じゃなきゃやらないよ」というと、「自分達二人と牛車の持ち主に各Ar5000でAr15000は欲しいなぁ」と言う。Ar15000、US$7.91まで下がった。一人500円くらいである。この辺りが潮時だろう。Ar15000で話をまとめた。二人も納得。
二人は午後3時半に迎えに来るからと、その場を去っていった。
洗濯をしたり、村をぶらついたりして午後3時半。宿のバンガローから浜辺を見ると、ちゃんと二人は待機していた。
さぁツアーの始まりだ。
こうした物売りの人々はホテル敷地内に入ってはいけないと厳しく言われているらしい。ホテル敷地内は通らずにホテルとホテルの間の道を歩いてホテルの裏側に駐車してある牛車に向かうことになった。
それにしても日差しが強い。3時半なのでピークよりは少しやわらいではいるものの、それでも強烈な太陽だ。
ホテルの裏手に広がる野原の始まりに、今日のツアー車が停まっていた。うーん、ホイールもしっかりしているしサスペンションのバネもいいねぇ。
でも牛がいないなぁと思っていたら、野原の奥からおじさんが2頭の牛を追いながらこちらにやってきた。
「フルシブシッ、シャラバラッ」っていう感じの掛け声で牛はよく言うことを聴いて車へと静々と近づく。この掛け声は、この後訪れたトゥリアーラでもムルンダヴァでも共通だった。牛はこの掛け声で動くことになっているようだ。
牛にくび木をかけてエンジン装着終了。御者台におじさん、二台に2人のガイドと我々が乗り込むと、「フルシブシッ、シャラバラッ」という掛け声で牛車が動き始めた。
ホテル・ムラムラから村のメインストリートに入って左2本目の細い道を入っていく。目指すバオバブはこのずっと先にあるようだった。
しばらくは民家の生垣が並んでいる住宅地だった。どの家も広い庭があり、庭には鶏が駆け回ってある家ではカマドに湯気を立てた鍋がかかっていたりする。
のどかなイファティーの村の風景だった。
やがて両脇は、バオバブやこの地方に特有の蛸の足にトゲトゲがたくさん生えたような木が生える野原の景色になってきた。
砂地の道はだんだんに狭まり、牛車がようやく通れるくらい。それに従って両脇の樹木が道に張り出す勢いで生えてくるので、手で樹木の葉を押さえながら進むこともしばしばだった。
バオバブは当たり前のように生えている。この時季のバオバブは葉はなく、実がなっている状態だった。あと一ヶ月もすれば実は熟して食べられるようになるんだって。バオバブの実が食べられるなんて知らなかった。
こうして牛車の旅を楽しみ、きっかり30分で目的地に到達した。なかなか時間に性格な人たちである。ここから徒歩で少し入った所に、幹の周囲が12mというバオバブがあるのだそうだ。
バオバブは独立して生えているのではなく、周囲にも様々な草や木が生い茂った中にあった。これは村人の案内なしで見つけるのは難しい。
いやぁ、立派なバオバブだった。
別の角度から。見上げて撮影しているので、あまり高さがないように感じられてしまうが、幹の太さはこんな感覚だ。7人の大人が両腕を広げて囲んで丁度いいくらい。
幹にポツポツと黒い点が付いているのは、幹に穴をあけて棒を差し込み、それを足がかりにして上に上って実を取るためなんだそうだ。なんてぇことをするんだ。そんなことをしたら木が傷んでしまうだろうに。
最後にもう一度、別の角度から。こうやって見ると、このバオバブの幹は円というよりは楕円で一方に長いことがわかる。
幹はパサパサと乾いたような表面で薄く皮がめくれたようになっているのだった。
もう一ヶ所、ピローグを作っている場所があるというので案内してもらった。
途中で、棒状になった葉が枝から生えている変わった樹木があった。変わっているなぁと見ていると、ガイドが葉を一本取ってちぎってみると、中から乳白色の液がたっぷりとでてきた。ガイドの説明によると、この近辺の人は虫歯が悪化して腫れ上がった場合は、この液を葉に塗るのだそうだ。そうすると腫れがひくのだそうだ。
先日イサル国立公園のトレッキングでは、同じように白っぽい、しかし棒状ではなく普通の平たい葉を持ったタンゲーナという植物を知った。同じように葉にはミルクのような液があり、こちらは体内に入れると死に至るという毒物だった。
今見せてもらっているこの植物も、ある種の毒性があるのではないだろうか。毒をもって毒を制す、じゃないけど、この植物の毒性で虫歯の毒を殺しているのかもしれない。マダガスカルにはこうした薬草がたくさんある。
ピローグの製作現場まではすぐだった。木を切り倒して、その場で削りだして作るのだ。
「使われているのはバルサという木です」とガイドに言われて、夫は「バルサ、バルサ・・・・。そうかぁ、バルサかぁ」と何かを思い出したようだった。
夫は子供のころバルサと呼ばれるとても軽い木の板を買ってきて、船の模型を作って遊んでいた記憶があるというのだ。削りだされた木片を持ってみると、確かにとても軽い。どうやら同じ素材のようだ。夫が子供の頃に遊んだバルサはどこから来たのだろうか。遠い過去と現在がつながった瞬間。これもまた旅の面白さである。
以上で牛車のツアーのメインイベントは終了だ。牛車に戻ると、牛たちはくび木から開放されて自由に草を食んだりしていた。
牛にくび木をつけている間に、ガイドの一人が足元の木片をブーメランにして投げ、上手にバオバブの実を1つ落としてくれた。思ったよりも大きい。美しいビロードのような短い毛に覆われた実は、落ちたときの衝撃で一部が削られて、中から鮮やかな黄緑色が見えていた。
再び牛車に乗り込んで、同じ道をゴトゴトと帰る。出発地点に戻ってきたのは午後4時52分。約1時間半楽しませてもらった牛車のツアーが終了した。ゆっくり、のんびり、なかなか味のある旅だった。
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