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2007.05.21 Vol.2
バオバブ街道ツアー
マダガスカル:ムルンダヴァ |
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ムルンダヴァであと遣り残していることといえば、あのバオバブ街道ツアー。
ムルンダヴァの空港から街中に来る時、タクシーの運転手がバオバブ街道ツアーをアレンジしようかと言ってきていた。彼の提示する値段はAr50000(=US$26.19、2007年5月21日の換算レートUS$1=Ar1909を使用)だった。事前にケニアのワタムビーチで出会ったヒトシ君の情報によれば、バオバブ街道をタクシーで行う場合の相場は4WDをチャーターした場合はUS$50、タクシーの場合はその半額のUS$25ということだったので、相場通りの値段。
彼なら悪くないだろうということで、ベマラハ国立公園から戻って1日休息し、その日に宿のフロントから彼に電話してもらって翌日のバオバブ街道ツアーを行うことを決定した。
バオバブツアーは朝日か夕日に絡めてみるのがいいとされている。私たちはベマラハ国立公園に向かう時に日中のバオバブ街道を1分で通り過ぎ、帰りはバオバブ街道のかなり手前で夕焼けに染まるバオバブの木を見かけた。バオバブは、地面からすっくと立ち上がって枝もなく上までいってから根っこのような枝を上の方だけにわさわさと伸ばしている木である。だから、日中見るとやや平板な感じがして、夕日や朝日で陰影を付けた方が面白く見えるのだろう。
ドライバーとの約束は午後3時半出発。夕方に絡めて行くツアーにしたのだった。このドライバーは面白い人で、日本語もちょっとかじっていたりする。午後3時25分に宿の外に出てみると、もう来ていて「はいっ、はいっ、行きましょう」とどんなサラリーマンを見て研究したのか、直立不動でおじぎなんかしたりしている。5分前にきっちりきているのも、感心だった。
ツアーの前にもう一度確認。
ツアーの金額は二人でAr50,000。ガイドブックや情報ノートには
・愛し合うバオバブ
・聖なるバオバブ
・バオバブ街道
の3箇所に行くことを確認しようということになっているので、確認した所、聖なるバオバブでバオバブ街道の近くにあった木は数年前にサイクロンでやられてしまってもうないという話になった。え?それは聞いていない。もう一度、他の人から聞いた中で一番最新の情報をひもといてみると、確かに彼の情報には「聖なるバオバブ」が入っていなかった。
現在一番近くの「聖なるバオバブ」と呼ばれている木はムルンダヴァから80kmも離れた所にあり、キリンディー国立公園の近くになってしまっているのでこの料金では行けないし、行っていると夕日のバオバブに間に合わなくなってしまうと言われた。確かにキリンディーの近くまでいくのは大変だ。
じゃ、まぁいいや。
後に宿の人に確認しても同じ答えが返ってきた。更に、その倒れた聖なるバオバブは研究のために一部日本のどこかに運ばれていったというおまけの話も聞いた。そう、今「元聖なるバオバブ」は日本のどこかの研究室にでもあるらしいのだ。
「聖なるバオバブ」と呼ばれているのは、バオバブの中でもグラン・ディディエと呼ばれる種類で大きく成長するのが特徴。特に大きく成長したものは、ご利益のある木としてあがめられ「聖なる木」と呼ばれているのだそうだ。
バオバブ街道は2回も通っているし、道はだいたいわかっていた。ムルンダヴァを出てしばらく東方向に内陸に向けて入っていく道は、60年代に敷かれたアスファルトがメンテナンスされていないというひどい道だ。ここからキリンディー国立公園の真南くらいに差し掛かった時に、左折して北上する道に入る。こちらは未舗装だが、まだこちらの方がましな道。
ムルンダヴァを出て40分も走ると、右手の田園の向こうにバオバブの姿が見えてきた。
水田に入って新しい苗を植えるマダガスカル人の向こうにバオバブっていうのは、いかにもマダガスカルらしい風景だった。
そこから車で3分ほど進んだ場所には、途中から二股に分かれたバオバブとその裏手にもう一本のバオバブが生えている場所がある。
この写真をブログに掲載した時に、コメントで「立派なシメジです」と言ってくれた友人がいたが、確かに巨大なシメジにも見える。
折りよくマダガスカルにいる首の後ろにこぶのあるゼブ牛の牛車が通り、これまた牧歌的な風景に。別にエキストラを頼んでいるのでなく、バオバブはフツーに存在しているのだった。
ここからバオバブ街道は後に来る事にして、一旦通り過ぎて、しばらく行った先から更に左の小道に入っていく。こちらは行ったことがない。この先に「愛し合うバオバブの木」があるそうなのだ。
見えてきたこの木も大きなものだった。周囲の木が取り払われているようなのだが、できるだけ離れて全体をカメラにおさめようとしても、数枚に分割してから後で合成するしかない。ちょっと撮影が難しい時間帯とロケーションの木だった。
この絡み合うように育ってしまった木は、お土産物屋さんの格好なモチーフになっていて、木製の愛し合うバオバブ彫刻などをよく見かけた。人気なのだろう。
ドライバーが「この抱き合って愛し合うバオバブは結婚しているお二人にぴったりですね」とお愛想をいうので、「もしこの木が結婚しているのなら、これは抱き合っているのではなく、ガブリ四つに組んで戦っているのではないでしょうか?結婚前なら抱き合っていると言ってもいいでしょうがねぇ」と言ってみたのだが、ドライバーにこのジョークは全く通じなかった。残念!夫が隣で「不発だったねぇ」とニヤニヤ。ふーむ、なぜ通じない。
さて、刻一刻と夕刻は迫っている。「愛し合うバオバブ」での滞在を5分で切り上げて、今日のメインイベントである夕刻のバオバブ街道に向かうことにしよう。
来る時には気づかなかったが、愛し合うバオバブから並木道に戻る道中の右手には、この辺りに生活しているサカラバ族のお墓も見られる。
家のように大きなお墓にはピンク色とレンガ色で生前の故人を思い出す絵が描かれているのだそうだ。おばあちゃんは料理が上手な人だったとか、おじいちゃんはワニに食われた・・・、じゃなくてワニ獲りの名人だったとか。色合いと挿絵と墓の形のせいで墓につきものの不吉やおそろしいというイメージがわかない。なんだかいい感じですねぇ。
その他にも並木道に向かう道中には魅力的なバオバブがたくさん見られた。夕日は迫っているが、それでも「ちょっとだけ、お願いします」と車を停めてもらっては撮影にいそしんだのだった。
午後4時58分、バオバブ街道に到着。ポスターの撮影などはムルンダヴァに近い南側から撮影したものが多いようだ。私たちは街道の北側で車を降りて、南側まで歩いてみることにした。
バオバブ街道はそんなに長い距離ではない。夕日を待ちながらぶらぶらと巨木の間を歩いていくのは面白い。街道が終わりに近づいてくると、そんな風に面白がっている私たちを面白くなさそうに見ている白人カップルが、仁王立ちになってこちらを見ていた。
そう、刻一刻と変わり行くバオバブ街道を撮影したいのに、異国の東洋人がきゃっきゃ、きゃっきゃと嬉しそうに歩いては邪魔になるらしかった。んなこといっても、仕方ないじゃない。
私たちが彼らを通り過ぎると、「はぁ、やっと撮影できるわ」とでも言うように、ゴツイ望遠レンズをのぞいたものの、またもや仁王立ちのポーズ。今度は、白人のうかれバックパッカーがわーーーーい、と街道を向こうに向けて歩き始めたのだった。だーかーらー、超有名観光スポットで、来るのだって簡単な所なのだから、しかもシーズンが開けちゃったんだから観光客に怒っても仕方ないのにねぇ。
それでも、観光客の足がふと途切れる瞬間もある。
そんな時に、夕闇迫るバオバブ街道を野良仕事帰りの地元民が牛車で通り過ぎていくという場面に出会うのは、そんなに難しいことではないだろう。
だって夕方だから、みんな仕事を終えて帰るのは毎日のことだからね。右は夕焼けモードで撮影、下は普通のモードで撮影したもの。肉眼で見ると、普通モードで撮影したものに近く見える時間帯だ。
午後5時13分ともなると観光客の出足がピークに達した。ベマラハ国立公園からはるばる夕刻のバオバブ街道を目指して失踪する4WDが砂煙をあげて街道を通過したと思うや否や、中からぞろぞろと観光客が出てきて、思い思いのポーズで撮影大会。
ムルンダヴァ方面からもぞくぞくと車がやってくる。物売りはでるは、中には私の後ろでちゃっかり写真に写ってお小遣いをおねだりする小僧まであらわれて、街道はいよいよ賑やかになってきた。
街道の右手の沼地は、手前に白い蓮の花が咲き、水辺の向こうにバオバブが生えている風景なのだが、夕刻になるとそれこそ真っオレンジに染まり、巨大な人参が地面につきささっているように見える。シンプルな樹木だけに、様々な想像を呼び起こす魅力がバオバブにはあるのだった。
そして午後5時25分、一番夕焼けに染まった瞬間のバオバブ街道がこれだ。
のっぺりとした木肌に夕刻の陰影が色濃く写る姿は、写真で見るとなお更現実味がなく、二次元絵画のように見える。それでいて、木の足元の草原や道路の部分は普通に三次元に見えるので、まるで合成したコラージュをみるような気分にさせられる。現場にいる時はそんな風に感じなかったのに、不思議な事だ。
たっぷりと夕焼けのショーを楽しんでやっと帰ることにした。通りかかったある場所で、水面に黒々と移る姿、背景のオレンジ色の空に浮き上がる黒いシルエットが素敵だったので、「これが最後なので」とドライバーに頼んで停車してもらった景色。
ドライバーは終始、嫌な顔一つ見せずに私たちの要望に応えてくれた。人によると、早く帰りたがったり見所を飛ばす人もいるらしいが、彼は良かったのではないだろうか。
バオバブ街道、先日のベマラハ国立公園と比較すると拍子抜けするほどに簡単に行けてしまう見所だが、有名なことだけはあり、現場にいる時も楽しかったが、写真がこれまた面白い仕上がりになって2度楽しめた。ここは良かったなぁ。
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