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2007.05.17 Vol.1
マナンブル川クルーズ
マダガスカル:ベクーパカ |
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昨日ホテルのレストランで夕食を食べていたら、フランス人の女性2人組みがやってきた。
ここに宿泊しているエステルさんとエミリーさんだった。私たちが帰りの足がなくて困っていると言うと、エステルさん(ピンクのシャツ)は、自分もできればタクシー・ブルースなどで来てみたかったと言って、自分達は明日帰るので残念ながら乗せてあげられないが、朝ANGAPのオフィスまでなら乗せて行きましょうと提案してくれた。
何という親切な!
17日の朝、4人で車に乗り込んで出発すると途中の村で更に村人二人が助手席に乗ってきた。この村人も彼女たちの親切によって途中まで乗せてもらうということだった。
昨日苦労して歩いた道も、今日は何と楽チンに移動できていることだろう。あっと言う間にANGAPのオフィスまで到着してしまった。
彼女たちとはここでお別れ。車は渡し舟に乗せられて人間とともに渡っていくのだ。
朝7時はムルンダヴァに戻るチャーター車の一斉出発時刻なようで、他にも数台の車が待機していた。中には彼女たちの車と同様に白人客は2人しか乗せていない車もある。ああ、こういう人に出会えればなぁ。
しかし良く見ると、白人客は2人しか乗っていなくても、残りの席にはローカルが座っている場合がほとんどだった。
つまり、こうして二人だけで訪れたりしている旅行者の空き席には、必ずローカルが便乗していくことになっているようだ。おそらく礼金も支払わないのだろう。旅行者のご好意という名の下に。
ああ、だからかぁ。だから、ベクーパカに来るタクシー・ブルースがないのだなぁと、ここで納得。ベクーパカからベロ・チリビーナに向けての交通の需要はそこそこあるのだが、ここに来る高額のチャーター車の空き席に座らせてもらうことで、その需要は吸収されてしまっているに違いない。だからタクシー・ブルースが走らないのだろう。外国からの旅行者のチャリティーの心が、周りまわって節約タイプの旅行者の足を奪っている。もっと安価な交通手段があれば、もっと多くの旅行者が来て、結果的には村人は潤うようになるだろう。それは、単純に車に同席させてあげるよりも大きな意味での親切になるのだが。親切というのは本当に難しい。
やがてステルさんとエミリーさんの番になった。私たちもお見送り。2日後に私たちは帰れるのかという不安を持ちながら。
ANGAPのオフィスは7時半にオープンする。さぁ、今日はここの時点で2日後に帰る人を見つけなくては。自分達のチケットを買う前に集まってきた人に先に買ってもらって、3組に声をかけてみた。3組とも明日帰るということで全員没。もう次の客は来なかった。
この3組のうち2組は3日間の滞在で帰るようだ。4日が定番だと思い込んでいた私たちだが、やはりチャーター車の高さが響いて3日に抑えてしまう人が多いようだ。3組のうちの1組の年配フランス人ご夫婦はテント持参で宿泊費を抑えて、さらに3日間にすることで車のチャーター代金を抑える戦法に出ていた。皆、苦労していますねぇ。
ということで、私たちは車確保に失敗したので翌日に望みをつないで今日のトレッキングを楽しむことにした。
ANGAPオフィスのチケット販売の男性は、私たちのように勝手に訪れる旅行者に全く慣れていなかったので、どんなコースがあるのかの説明もなく、2日間の公園入園チケットを買いたいというと、同時に「それじゃぁ1日目にピローグのクルーズと小ツィンギーの4時間トレッキング、2日目には大ツィンギーのトレッキングでしめて***になりますね」と勝手に領収書に書き込んで、バリッと破って私たちに渡した。
いや、「今日トレッキングして足が痛くなっちゃって明日は2時間トレッキングしかできないかもしれないし、今日は2日券とピローグクルーズと小ツィンギー4時間コースだけを購入して、明日の分は明日に購入したい」というと、物も言わずに、私たちに渡した領収書を引ったくり、不機嫌そうにもう一回領収書を書き直した。逆切れだ。お客さんが何を要求しているのか確認もせずに、勝手に売りつけようとして拒否されるとムッとする。いかに自由な旅行者になれていないのかを、この男性は露呈していた。他のお客さんを見ていると、一緒に付いてきているガイドがマダガスカル語でこの男性と話をしてからチケットの販売に及んでいるから、マダガスカル語ならこの手順を踏んでいるのだろう。英語だとまだ駄目なようだ。ベマラハ国立公園、レベル低いなぁ。
まぁ、ムッとされようとどうしようと、自分達のやりたいようにやるだけだ。私たちに非はない。
この国立公園では、ANGAPのオフィサーがガイドを指名するようになっている。ガイドがフリーなのかANGAPの職員なのか定かではないが、もしフリーならばオフィサーの胸三寸でガイドの収入が決まってきてしまう。気に入ったガイドには多く客が割り振られるし、そうでないガイドに客が回ってこない。こういうやり方では賄賂などが横行しやすいし、客がガイドと話をしてフィーリングが合うとか英語の能力が大丈夫かという判断をすることができないのもよくない。
ラヌマファナ国立公園ではANGAPオフィス周辺にフリーのガイドがたむろしていて、客はまずガイドを決めてからガイドと共にANGAPのオフィスに行くことになっている。こちらは自由競争が働いている分、規定のガイド料金じゃやらないという高飛車な商売に出るガイドも出てくる弊害があるものの、ガイドのモーチベーションは高く、トレッキングが終了した後はANGAPのアンケート用紙にガイドの評価を書き込むようにもなっていて、ガイドの育成に力を入れている様子が見て取れた。それに比べると、ベマラハはあまりレベル向上を考えているとは思えなかった。
オフィサーが任意に選んだガイドはラヌヴェルーRanu Veloさん。ラヌは水、ヴェルーはlive。Live
Waterという国立公園のガイドにはぴったりの名前だった。英語はあまりうまくはないが、意思の疎通はできる程度。人柄はおっとりしていて、悪い人じゃぁないなぁという第一印象。
さて、今日の朝一発目はマナンブル川のクルージングだ。乾季に入ってからのマナンブル川のクルージングは水位の高い朝しかできないので、こちらが先になるのだそうだ。
昨日川を渡ったのと同じく2艘のピローグを並べた間に板を渡した舟だ。
ただし今日は板の真ん中に2艘にまたがって座るのではなく、どちらかの舟に入って板に座るように指示された。
舟は左手に向かって漕ぎ出した。川上に行っている。マナンブル川はずっと遡ると首都のアンタナナリヴまで通じているということで、この地点で随分海に近い下流の割には川幅が狭いのだけど、実は長い河なのだった。帰りの足がない私は、「じゃぁ、このままアンタナナリヴまで戻ってもらおうかなぁ」というと舟頭さんは「そりゃ、勘弁してくださいよ」と大笑いになった。半ば冗談ではなかったのだが。
マナンブル川の両脇には大きな岩が根元を見せていて、その上に草木が生えている。
この辺りはそもそも海の中で、今見えている岩はサンゴ礁なのだそうだ。
マダガスカルはそもそもアフリカ大陸にひっついていて、そのもっと前はインドやオーストラリアともひっついていた。それが大きな地殻変動によって切り離されて、その後に海中になった部分にサンゴ礁が形成されて、それが陸地になって今のような川の両岸として地上に姿を現している。この風景が出来上がるまでに、いったいどれほどの歳月が流れたのかを軽く考えても、この光景は見るに値すると思わせるものがあった。
チリビーナ川と同じくこの川も茶色一色なのだが、進んでいく方向の光の加減によっては、川が鏡面になって上空の空を川面に映し出してとても美しく見えた。
左側の森の中からは、生き物たちの朝の忙しい声が賑やかに聞こえてくるが、それとは対照的に川の上は他に人影もなく、チャプーン、チャプーンと櫂を水に入れる音だけが響く。スイーッと波をつくりながら静かに進む朝の舟路はとても気持ちのいいものだった。
40分川上に遡っていった所でUターンして戻ることになった。
今度は反対側の岩壁の近くに寄って川を下っていく。途中で岩と岩の間に大きな切れ込みのある部分に舟はスーッと近づいて行き、ここで洞窟探検をすることになった。
私たちとガイドさんで洞窟探検に出かけて舟頭さんはしばし休憩だ。
洞窟の入り口はまるで砂浜のように砂の地面だった。ここがかつて海底だった話を裏付ける。
ここからぐっと砂の坂道を上がっていくと、やがて平らになった場所に出るのだった。そこから先は2階建てのような構造になっていて、真ん中に鍾乳洞の垂れ下がっている岩の先は、天井の低い1階部分になっている。左手に作られた階段を登ると2階部分に行けるようになっている。
まずは、この垂れ下がった石の向こう側に潜入していくことになった。しかし、この先いったいどこまで行くのだろうか。
このトレッキングが始まる前に持って来いと言われていた懐中電灯がここで活躍。といってもエジプトで購入した中国製のものでその光は悲しいほど弱いのだが。
垂れ下がった岩を洞窟の1階部分から振り返ってみると、まるで、大きな動物の喉ち○こ(国語辞典的には口蓋垂あるいは喉彦というらしい)の奥に入ってきたような不気味な感じがある。
で、その先はすぐに行き止まり。つまりここで1階の洞窟探検は終了。ちょっと子供だましみたいだが、巨大生物に食われて食道を見学して戻ってくるみたいな想像が働いた。ちょっと不気味である。
口蓋垂の所に戻り、今度は左手の階段を上っていく。石段がついていて、横の岩壁にはロープも張ってあるので見た目よりは上りやすくなっている。ここは60代くらいのヨーロッパ人も観光に訪れる場所なので、容易に歩けるようになっているのだろう。
ステップを上ると、更にちょっと勾配を上るようになっていて、ここもすぐに突き当たりになる。
突き当たった場所の頭上には、上から垂れ下がるシャンデリアのようになった鍾乳洞が形成されていて、よく見ると尖った岩の先には次の石を作り出すしずくが見えた。
私は子供の頃から、どこかは忘れたが家族旅行で鍾乳洞をいくつか見に行ったことがあり、その不気味な形や雰囲気には接してきたので、ここで1つ見せられてもどーってことは感じないわけだが、ガイドさんの「どーです、すごいでしょうー」という得意満面に思わず「ホー」と一うなりしてしまう私だった。
以上で洞窟探検は終了だ。砂の坂道を降りて舟に向かう。両側に迫った黒い岩陰の向こうに見える舟の姿がなかなか面白い光景だった。
舟は再び出発地点に向かって川くだりを始める。
大きな岩を観察したり、川上に向かっていく旅行者とすれ違ったり、ゆったりとした時間を楽しむことができた。
そうそう、洞窟探検をしている時に、ガイドのラヌヴェローさんにこうもりはいないのかと訪ねていた。探検した洞窟にはいなかったのだが、この後通りかかった岩の隙間にこうもりが集まっている箇所が2つあり、違う種類のこうもりを舟を停めて見せてくれた。
1つは小さなこうもりでフルーツバットと呼ばれるものでフルーツを主食にしているのだそうだ。
これは食用でもあり、そういえばどこかのレストランでメニューに「フルーツバットあります」と書かれていた。こんなに小さいと食べる所が少なそうだなぁ。もう1種類の方が大きなこうもりだが、こちらは食用ではないそうだ。
こうしてゆったりとしたクルーズを終えて、出発地点のANGAPオフィスのある場所に戻ってきたのが、9時半。1時間半のクルーズだった。
短い時間で済むし、ほとんど歩かないコースなのであまり体力を使わないために、ムルンダヴァに帰る日の朝にこのコースを訪ねてから帰る人もいるようだ。ムルンダヴァから来るのに1日、2日目に小ツィンギーと大ツィンギー、3日目にクルーズを行って帰るという予定になる。これも一つの方法だ。2日目がちょっとつらいけどね。
さて、お次は小ツィンギーのトレッキング。ANGAPオフィスの裏手にコースが広がっている。
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