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2007.07.07
トーフといえばオーシャン・サファリ
モザンビーク:トーフ |
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オーシャン・サファリについては以前から夫が他の日本人旅行者のサイトで見知っていた。ロンプラにも書かれているし、他の旅行者からもその噂を聞いていた。
その名の通り、10人乗りくらいのボートで海にでかけていって、海の生物を発見したら、その場で海に入って一緒にシュノーケリングするという、まさに「海のサファリ」なのだそうだ。オーシャン・サファリはトーフのみならず南アフリカでも行えるが、トーフの魅力は甚平ザメと一緒にシュノーケリングできるかもしれないことだ。
甚平ザメは7mくらいもあるサメらしい。といっても食事はプランクトンなので、他であるような獰猛なサメを自分達が檻に入って見物するようなハラハラドキドキというのではなく、その雄大な哺乳類と一緒に海を泳ぐことができるという夢のような企画なのだそうだ。おお、やりたい、やりたい。
私達はトーフに到着した翌日、休憩をかねてオーシャン・サファリを企画しているダイブショップ、トーフ・スキューバTofo
Scubaを朝8時過ぎに訪ねた。そこはダイビングのツアーも行っている所で、いかにも海の男たちという感じのスタッフがきびきびと対応してくれるのだった。
ヴィランクーロで低気圧の影響を受けたために、一番の関心事は天気だった。オーシャン・サファリではここ5日間の天気予報をインターネットで取得したものをプリントアウトして壁に貼ってある。それを見せてもらうと、今日か明日がベストだろうという感じだった。今日ってのはちょっと急なので、明日の分に予約を入れてもらうことにした。前金はなし。支払いは明日10時半までにここに来て行うことになった。
ヴィランクーロでシュノーケリングツアーを行おうと2つのダイブショップを訪ねたが、1つは白人ダイバーが行っている家族的な雰囲気のショップで、彼の職人芸的な経験から今後の天気を推し量っていた。もう一つはローカルの黒人が経営するショップで、どうしても売り上げを上げたいのか天気は関係なく「とにかく予約を、前金を。日付の変更はいつでもできるから」と客の立場よりも自分の営業を前面に出した交渉だった。
いずれにせよ、ヴィランクーロのこれらのショップよりはトーフ・スキューバは近代的でシステマチックな感じを受けた。これは、よりトーフに多くの観光客が集まっているからだろう。
システマチックになると、客への対応がステレオタイプになって流されている感じはするものの、スタッフから得られる情報の質が安定していてこちらが質問しなくとも知りたい情報が網羅されている説明を最初から受けられる。安全基準についてもルール化されているので、ある程度安心できる気がする。
一方ツーリスティックでない場所は、情報が近代的でないかもしれないが、ヒューマンなコミュニケーションが密になるかもしれない。
どこにも一長一短はある。
予約を済ませて、ショップの目の前にある海の側のテラスに出てみると、オーシャン・サファリに使われるボートが用意されていた。
こ、このボートであの荒波の海に繰り出すんですか?海からボートにあがってくる時によじ登れるんだろうか?色々な不安がどーっとやってきてしまったが、もう予約は入れてしまった。甚平ザメは魅力的だし、やるしかない。
翌日、朝10時半にショップに向かう。私達の宿泊しているファティマズ・ネストからトーフ・スキューバまでは浜辺伝いに歩いて5分だ。
フロントで料金一人Mtc1050(=US$40.59、2007年7月2日の換算レートUS$1=Mtc25.87を使用、米ドルあるいは南ア・ランド払いが可能)を支払い、マスクとフィンを選んだら準備終了。ゴムボートは揺れが激しいので、荷物は全てフロントの内側に置いていくように指示された。メガネは最後まで迷って、結局かけていったのだが、ボートに乗ってすぐにはずしてガイドに預けたまま最後までメガネなしで終わってしまった。
時間まで海の見えるテラスで待機したり、ショップの中を歩き回ったり、高まる興奮と不安(私はどーもボートが不安だった)を紛らわしていると、ショップ内のフロントカウンターにいる東洋人が突然「晶子さんではないですか!」と声をかけてきてびっくり。
実はこの東洋人男性の存在は、今朝ショップに入って来た時から気づいていた。テラスの近くの砂地で、ものすごい真剣にストレッチ運動をしている東洋人男性がいるなぁと思っていたのだった。脇目もふらずにストレッチしているので、目を合わせる事もなく通り過ぎたのだがちょっと気にはなっていた。その男性に、突然名前を呼ばれたのでびっくりしたのだった。
で、顔を見ると「おおお、マサシ君じゃないのー!」
2年前、グアテマラのアンティグアにいた時に出会ったマサシ君との感動の再会だった。彼はもうかれこれ9年間も日本を離れて旅を続けている旅の大先輩なのだった。それからボートが出るまでは、これまでの旅の経緯やら再会の驚きなどを口々に語り合ってあっという間に過ぎ去っていった。
こうしてマサシ君と我々を含む10人が今日のメンバーが11時に呼び集められ、今日のガイドの若い白人女性の説明を受けた。オーシャン・サファリのボートはかなり揺れるのでしっかりとつかまってほしいこと、浜辺から出発する時は途中まで皆でボートを押し、最初に女性そして男性が乗り込むこと、あくまでサファリなので何が見られるかは保証できないこと、生物を見たら海に入るが静かに入って生物を脅かさないことなどが注意事項として語られた。
11時10分、浜辺に向かう。
まずはボートを押すところから。
フォバークラフトのように周囲が膨らんだ大きなゴムボートが浜辺に設置されている。
男性がボートの後方に集められ、女性はボートの脇に固められた。
ドッパーと波が来てボートの下に水が薄く入ったら、ガイドの女性の掛け声と共に一斉に押して前進するのだ。
「オーケー、オーケー、次の波が来たら皆で押すわよー!それー、ワン、ツー、スリー、プッシュ、プッシュ、ハード!」ハスキーなガイドの声が青空の下に響いた。
大学の体育会に入った気分になった。ほんの数分前までは口をきいたこともない見知らぬ外国人同士だったのに、今こうして一緒にボートを押している。それだけで、もう共に苦労をなめてきた仲間のような雰囲気が漂ってしまうのが不思議だった。
何度目かのプッシュで女性陣の膝丈まで水が来た時に、ハスキー声の女性ガイドが叫ぶ。「女子ー!ボートに乗ってー!」
それを合図に女性たちは一斉にボートに乗り込む。
ややあって「今度は残り全部ー!」と声がかかり、全員がボートに乗り込んだのだった。
ボートの最後尾には物見台がついていて、そこには男性ガイドが見張りに付く。かれが、高みから海の生物を見つけてはボートを誘導していく役割らしかった。
岸近くの波を超えてボートは安定するかとも思えたが、この辺りの波は結構きつくて、ターン、ターンと波を超えながら走っていくのだった。
オーシャン・サファリはかなり波がきついが、ボートの浮き沈みに抗わずに、乗馬をしている要領で波が高い時はやや立ち上がり気味に身を浮かせるようにすると、三半規管の水分があまり揺れずに酔いにくいような気がした(感覚ですが)。
岸から離れてボートを走らせること30分。最初の生物であるマンタを発見。「マンタと泳ぎたいー?」というハスキーガイドの声に皆は「オフコース!」と答え、マンタが遊泳する場所でボートは停止し、すぐに皆ゴーグルを付けて海にするりと入り込んだ。
海は深く、水は冷たかった。
その冷たい水色にマンタが3匹、ヒラヒラと泳いでいるのが見えた。泳いでいるというよりは、飛んでいるように見える。というのも、マンタは横に広がった腕のような部分を上下に羽ばたかせて泳いでいるからだ。
ぐんぐんと近寄ってくるマンタは思ったよりも随分大きかった。
一番近寄った時の感じから、広げた両腕の幅は3mくらいあったかもしれない。
その優雅に見える動きからの印象とは異なって、彼らはとてもスピーディーに動く。海の上に揺ら揺らと浮かぶ人間をおちょくっているかのように、右に左に深く浅くすばやく動いて、その度に私達は彼らの姿を見失うのだが、どこかに行ってしまうのではなく、すぐ真後ろにいたり、近くに浮かんできたりと遊ばれているような状況が続いた。
今までシュノーケリングというと、小さな美しい熱帯魚を数多く見るということが多く、大きなバラクーダや両手を広げたサイズのエイがたくさん見られた中米のベリーズはキー・カー・カーでのシュノーケリングでも、こういう風に一緒に遊ぶという感覚を経験したことがなかったので、ここのはとても新鮮で楽しい経験だった。
海の中をマンタを追っては戯れるシュノーケリングを10分か15分くらい行っただろうか。ついにマンタ3匹は「今日はここまで」という風に、深い海の底に消えていってしまった。
これで俄然、オーシャン・サファリへの期待が高まったのだが、それから望みのホエール・シャークはおろか、何も見つからなかった。ボートのメンバーはだんだんと焦りを感じてきて、双眼鏡をのぞきもせずに物見台にボーっと座っているガイドに「何か見えないのか?」と詰め寄る人もでてきた。まぁねぇ、一人US$40も支払っているから期待は大きい。
ついに南アから来た男性は立ち上がって前に座っているガイドと共に海を見つめて、自分で探そうという行動に出始めた。
すると、遠くに水柱が見えたらしい。
「鯨だ、鯨がいる!」
南アの男性は、鯨を見に行くべきだとボートの皆に呼びかけた。このまま何も見つからないでいるよりは、遠方の沖にいる鯨を見にいくことにしよう。お客さんにせきたてられて、ボートは最速で沖に向かい始めた。
12時40分、他に2艘のボートもいる場所に到達。
南アの男性が言う通り、そこには鯨が2頭いて、時々水柱をブシューッとあげながらくんずもぐれつ海面に出たり海に入ったりしていた。鯨を肉眼で見るのは初めてだ。しかも2頭も。
いまは繁殖の時期で、男女の鯨が繁殖のためにこうして連れ添っているのだとガイドが説明してくれた。
それにしてもスローモーションのようにゆっくりと巨体がわき腹から海の中に沈んで、最後にヒレで海面をバッサーンと叩いて海の中に消えていくのを見るのは壮大な景色だった。
これが私達と同じ哺乳類。あの大きさ、あのしぶき、あの大きな波の音。カメラにおさめるには遠すぎる距離だが、肉眼ではしっかりと見えるくらいの距離だった。
時には、その巨体の大半がガバーッと水面から出てくる場合もあり、巨体があそこまで露出するくらい海面から出る筋力を尾っぽに蓄えていることを示してくれ、ボートでは歓声というよりも感嘆の声があがっていた。
興奮の鯨観察は10分くらいで切り上げることにして、私達は再び沖から岸近くに戻ってホエール・シャーク他の生物探しをしたのだが、結局時間切れで、今日はマンタと鯨で終了。
オーシャン・サファリは通常岸から近い部分をサファリして沖には行かない。今日は特に強く希望する人がいたので沖に出たのだが、その分サファリの時間が削減されてしまったことを理解してほしいとボートの上で言われた。
今回はマンタと遊び、鯨を2頭も肉眼で観察できて、今回は今回で満足できる結果だったが、やはり期待のホエール・シャークが見られなかったのは残念だった。
今日が2度目だというカップルは、2回ともホエール・シャークに会えずに私達よりもかなりがっかり度が高いようだ。かと思うと、私達の翌日のサファリでホエール・シャークに出会えたという話も聞いた。
サファリなので運が左右する部分が大きいのだが、10月にトーフを訪れてオーシャン・サファリを行った人は、連日見たという話ばかり聞いたし、自分も7頭のホエール・シャークを見たと言っていた。年間を通じて生息はしているのだが、よく見える時期というものがあるようだ。
次回行くならば10月頃を目指して行こうと思った。
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