|
|
|
|
2007.07.15
夜の素敵なお客様
南アフリカ:シュルシュルウエ |
|
私達がガイドブックを見て滞在することに決定した宿Ishinkwe Backpackers
Bush Campは、その名の通り周囲を広大なブッシュに囲まれた宿だった。
宿の周囲にはミニトレッキングコースもあり、宿主催で夜のトレッキングを無料で行えるアクティビティーも用意されていた。(これはまぁ、無料ですから何も見られなくとも文句はいえない、という程度のもの)
ロッジやキャンプ場が取り囲む庭には大木が気持ちの良い木陰を作り、枝にはハンモックがいくつも用意されている。
レストランの前には青々と水をたたえたプールがあり、プールサイドのビーチベッドでビールを飲みながらペーパーバッグを読めば、最高の休日気分が味わえる。
このレストランとプールの一角に夜になると素敵なお客様がやってくることになっている。
それはブッシュベイビーという名の霊長類だ。午後7時に餌を用意するので見られる可能性が多いと、説明書きの看板に書かれてあった。
夕方6時半ともなると日が落ちてプールの周囲は、これまたいい感じにライトアップされる。
この時間帯にプールから宿泊棟やキャンプ場に降りる通路を通ったら、左手の樹木の枝に緑色に光る目玉がある。
どこの世界にも、午後7時からご飯だと言われると30分も前から一番乗りを決め込んでウロウロする奴がいる。枝に光る目玉は、そんな食いしん坊の一番乗りのブッシュベイビーらしかった。
午後7時、ブッシュベイビーだけでなく、それを待ち構える宿泊客も増えた。中でも、とても大きくて高そうなカメラを持った中年の白人男性と、一眼レフカメラを持った若い白人男性は、かなり本気モードで撮影しようと狙っているらしかった。二人に話しかけてみると、中年男性はスペイン人だということで、若い男性の説明によると霊長類に詳しいということだった。すると、いきなりスペイン人の先生(私達はこの人をこう呼ぶことにした)は、ものすごく詳しい霊長類の歴史と種別と進化について語りだすではないか。おお、何を言っているのか、専門用語多すぎてワッカリッマセーン!
ひとしりき先生の説明が終わった。
とにかくブッシュベイビーは人間の仲間だってことだけは理解。マダガスカルにもアイアイやシファカ(キツネザル)などの霊長類がいて、どう見てもネズミやリスに近い風貌なのに人間の仲間なんだと言われた。それと同じことらしいのだ。
あまりにわかっていない私達の反応に、先生はやや不満足気だったが、ふと7時を過ぎているのに餌が出ていないことに気づき、係員を促してバナナを用意させる方に意識を傾けてくれた。
ホッ。そうでもないと、徹底的に霊長類の講義をされそうな勢いだった。一体何者かも語らずに、いきなり専門的な話に入っていくあたり、本当に専門家の先生なのかもしれない。
7時15分にバナナが用意されると、樹木の枝で待っていたブッシュベイビーが一斉に餌台に降りてきて、いや飛びついてきて食事を始めた。そんなに腹が減っていたのか・・・。
ブッシュベイビーというネーミング、枝の上で待っているお行儀の良い姿や、フサフサしたしっぽから、大人から子供まで、その場で待っていた人は私も含めてちょっと可愛らしい動物を連想していたのだと思う。ところが、この餌場への駆け寄りぶり、そのガッツキぶりには一同唖然。
野生動物はそんなに甘いもんじゃないのだ。ブラジル側でイグアスの滝を見学しに行った時に、まだ一口も食べていない熱々のスナックを小動物に袋ごとかっさわれたことを思い出した。そうだった。こいつらは、そういう奴なんだった。
でもまぁ、手で持って食べている姿や立派な尻尾、耳の形はとても魅力的だ。こいつが毎晩、近くに姿をみせてくれるこの宿は、やはり来る価値がある。
ただし、周囲には本当に何にもないので、私達のように何も用意せずにやって来た旅行者はかなり不自由に感じる場所だ。レストランやバーで高い飲み物や食べ物を買わざるを得ないからだ。しかし、逆に車があって町まで自由に行き来できる人にとっては、人里離れた陸の孤島でありながら、快適な冷蔵庫やキッチンがあり、プールもあり、インターネットすらあるこの宿は、宿泊費から考えるとかなり贅沢な別荘の気分が味わえるのでお得だと言える。食料の装備と足回りを確保していったら、素晴らしい宿だ。
|
|
|
|