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2007.07.16
ダマ・ズールー村を訪ねて
南アフリカ:シュルシュルウエ |
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南アフリカの北東一体の地域はクワズールー・ナタルKwazulu-Natalという地方名にも見られるように、もともとズールー族が住んでいた地域である。
現在は、この辺りに点在するゲーム・リザーブ(野生動物保護区)や国立公園を訪ねて多くの観光客が訪れて、それら観光客を相手にするズールー族以外の人々が仕事でここに住んでおり、ズールー族も昔ながらのスタイルで生活している人はかなり減ってきているのだそうだ。
私たちがここを訪れた目的は、このズールー族の文化や生活スタイルに触れてみたいと思ったからだ。そういう意味もあって、ズールー族の文化や生活を見ることができるダマ・ズールー村の隣にある宿を選択したのだった。宿に到着した翌日、早速隣のダマ・ズールー村を訪ねてみることにした。
ダマ・ズールー村では午前11時からと午後14時からツアーを行っていると宿の人が前日に電話で確認してくれた。隣の敷地といっても、宿から車が走る道路まで約1kmあり、そこから左折して更に500mくらい先にダマ・ズールー村の入り口がある。余裕を見て10時に宿を出ると、ダマ・ズールー村には10時22分に到着した。
大きな看板のある場所が駐車場になっていて、そこにはダマ・ズールー村の伝統的な家屋を模した門番の小屋があり、中から元気良くズールー族の装束を身につけた人が「ウォーッ!」と出てきた。
ズールー族が身につける動物の毛皮を巻きつけたハチマキをかぶって動物の皮の縦と槍を持たされて、まぁ、とりあえず記念撮影したいでしょうからとポーズを取らされる。おお、しょっぱなから無理やりなテーマパーク的展開だ。
このやたら元気なおっさんが、「ショーの開始は11時なので、それまでにこの先の小道を奥に行った土産物屋でショーの代金を支払ってレシートを持ってこの場所に戻ってきてくれ、ウォー!」と言うので、小道を伝って奥に行くと、奥は宿泊施設とレストランと土産物屋のある場所になった。
土産物屋の商品はなかなかセンスも良く、高級感のあるアフリカンテイストのステーショナリーなどもあって魅力的。
荷物が多い私たちは決して買うわけではないが、他にお客さんもいないし、まだ午前中で店員は全くセールスに身が入らないモードなのをいいことに、一つ一つ手にとってはホホーと感心したり、帽子をかぶって写真撮ったりして楽しんでいると、すぐに11時になったのだった。
おっといけない。土産物屋のレジカウンターで今日の入場料金一人R95(=US$13.55、2007年7月16日現在の換算レートUS$1=R7.01を使用。Rは南ア・ランド)を支払って領収書をもらい、先ほどの駐車場に戻った。
元気なズールーのおっさんの他にスーツを着た係員の女性も来ていて、彼女の持っているリストによると私たち以外に4人のお客様が来る予定らしかった。しばらく雑談などをしていたが、南アの国家の話になると彼女は「えっへん、じゃぁ一緒に歌ってみましょう。私について1フレーズずつご一緒に!」と南アの国家をフルコーラスで歌ってくれたのだった。素晴らしいサービス。しかも彼女は声がよかったし、南アの国家は明るくて前向きな長調の美しい曲だった。
思いもかけぬサービスはとても楽しかった。
しかし、フルコーラスが終了してもまだ他のお客さんは現れない。結局、今日の午前中のツアーは私たち二人だけで行くことになったのだった。
はい、じゃぁツアー出発の前にポーズをとって「ヤー!」。ってこれ、さっきも撮ったんだけどねぇ、別のズールー族の人と。これやらないと、先に進まないみたいなので、もう一回やりました。
マサイ族の村もそうだったが、ズールー族の村もいくつかの家屋が集合した敷地が生垣で囲われている。外部の敵と見分けるために、生垣の外で大きな声で合図をすると生垣の中に入れてくれることになっているのだそうだ。
中に入ると、反時計回りに鍛冶場があり、動物の皮で盾を作る作業場があり、陶器の製作所があり。小さな集落だが、様々な工房が寄せ集められてズールー族の文化を説明している。各作業場には2人〜4人がいて、私たちが近寄ると急に手を動かして作業しちゃったりするのだった。
全体的にゆる〜い雰囲気が漂っている。作っている槍の切っ先や、動物の皮を剥いで作っている盾という野生に満ちた物質と、それを作っている人間の緩さの乖離があまりに激しくて、「おいおい、作っているものにそぐわないだろう」とつっこみを入れたくなる光景だった。
もっと言えば、南アという地域で、かつては本気モードで行っていた自分達の伝統的な生活の一部を、今は白人が主導のテーマパークで、一定の賃金をもらって見世物として披露しているちょっとした哀しささえも漂っているようにも見える。これに比べると、マサイ族の方が虎視眈々と先進国の観光客から金を巻き上げようという気迫に満ちていて、かつてライオンと戦った(今も?)という闘争心が今は観光客に向けられているという意味では、変わらぬ部族の意気込みが感じられた。
ツアーはやがて女性達の作業場の場面に移ってきた。女性達は陶器を製造したり、籠や皿を編んだりする作業に従事している。
未婚の女性は上半身裸。結婚すると衣類をまとうのだそうだ。
なんで?
未婚の女性は上半身裸で男性にアピールしているってことがその理由だそうだ。むむ、非常にわかりやすい。
お次はお医者さんとシャーマンのコーナー。
お医者さんは草や木の皮などを調合したり煎じたりして薬を作って処方する。漢方薬にも似た感じで、これは共感が持てた。私たちに子供がいないと言うと、「旦那さんに特別に薬を調合してあげましょうか」と本気で言われたのには参った。
シャーマンは顔にも髪にも赤い塗料を塗って特別な様相をしている。性別は特に問われず、ある日神が憑依した人がシャーマンになるのだそうだ。彼女の前には動物の骨などが展示してあり、こういう物を使って未来を占っていたということなのだろう。
こうして1時間程で村を見回って、最後に村の中央にあるダンスショーの会場でダンスを見せてもらった。
ショーの始めに村で作っているというビール(原料は不明)を飲ませてもらった。発酵して炭酸のような泡がある飲み物でやや酸味と苦味がある。アルコールも多少はあるようだ。この頃になると、他にも2組くらいお客さんがいてショーを見ることになったのだが、ビールを飲んだのは私たちだけ。あとの2組の白人客は、お腹を壊すのを恐れてか口をつけようとしなかった。いやいや、大丈夫ですって、こんなにツーリスティックな場所なんだから。
部族の男性ダンサーの衣装は可愛い。これは気に入った。しかし、歌も踊りもちょっと覇気がない。
ダマ・ズールー村。テーマパークのやらせムンムンのノリは入り口だけで、中は皆やる気が感じられない所だった。このユルさがズールー村っちゃぁそうなんだろうけど、もうちょっと頑張った方がいいんじゃないかなぁ。因みにズールー族のテーマパークとしてはシャカ・ランドの方が大規模でダーバンに近いこともあって有名なようだ。そういう意味でも、ますますやる気をなくしているのかもしれないねぇ。
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