夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2007.07.18 Vol.3
セント・ルシア大湿地帯ボートツアー

南アフリカ:セント・ルシア

 セント・ルシアの町からボートで出発して大湿地帯の南端を2時間ほどクルーズするボートツアーはセント・ルシアの町を訪れる観光客には手軽な観光として人気が高い。

 セント・ルシアのもっと北部の奥深くまで3、4日かけて行く本格的な湿地帯観光に比べるとお手軽だし、同じコースをカヤックで行くのに比べると楽チンだということで、子供からお年寄りまで参加できるのが人気の理由だそうだ。

 私たちは、セント・ルシアに到着した17日に宿から18日の午後の部を手配してもらった。聞いた話によると、カバは午後遅くなるほど動きが活発になるので、夕方の便があればそれにした方がいいそうだ。しかし、18日の一番遅いツアーといっても、午後2時の開始。それ以降はないということだったので、午後2時のツアーに申し込んだのだった。料金は一人R130(=US$18.54、2007年7月16日の換算レートUS$1=R7.01を使用)だった。

 午前中から午後にかけてビーチでピクニックをして戻ってきたのが午後1時40分。途中でちょっと道を間違えて、ぎりぎりの帰宅だ。さぁ、急げ、急げ。

 宿からボートの出る桟橋までは、徒歩5分。

 午後1時50分に船に到着すると、既に席は8割方埋まっていて、人気というのは本当らしかった。

 宿で支払った時の領収書を見せて船に乗ると、午後2時きっかりに船は岸を離れて左方向に動き出した。

 最初に見えたのは水辺にたたずむ水鳥だった。

 みんな水鳥にはあまり興味がないのか、ボートも停まらずにそのまま通過したが、スーッと立っている姿が美しい鳥だった。

 ボートはマングローブの島を迂回しながらどんどん進んでいった。

 ボートには舵を操る船長さんの他に、フィンランド人のガイドさんが乗船していて、この辺りの動物の生態について質問があったら何でも答えてくれるってことになっていた。船の中には偶然にもフィンランド人の観光客もいて、祖国の言葉で盛り上がっている。祖国から赤道を軸にひっくり返したような場所で、どうして観光船のガイドをしているのか、私もフィンランド語がわかれば是非聞いてみたかった。ワニの生態よりも人間の生態の方が大抵は面白いものだ。

 そういえば、この混雑した船の切っ先、そこは外から船に乗る時の階段にもなっている場所なのだが、船が動き出す前に乗船客がその階段を使って船に乗っている頃から、邪魔になろうがどうなろうが、その場所を陣取って動かない人物がいた。あ、この人、知っている。そう、それは私たちが密かに「先生」と呼んでいるスペイン人の初老の一人男性旅行者だった。

 彼とは、この前の滞在地のシュルシュルウエの宿でも一緒で、宿で餌付けしているブッシュベイビーという霊長類の生態について、いきなり専門的な話を披露してくれた人だった。

 彼は、私たちと同じバズバスに乗って来て、同じ宿に宿泊している。昨日の町案内のトラックでは、宿の人懐っこい犬が同乗してきた。先生は犬がお嫌いらしかったのだが、犬って奴はどうして、そういう人をめがけて行くものらしい。犬好きの他の人が手を出しても見向きもしないのに、先生には近寄ってじゃれつくのだった。先生は犬の方を向きもせず、車の外を見ながら犬の頭をグーッと手で押したりして、犬はかまってもらえたと思ってますます頭をすりつけたりして。私はこのトラックの中での小さな攻防戦を見て楽しんでいたのだった。

 そして今日は今日で、子供やお年寄りが階段を歩きにくそうにしていてもお構いなしに階段の半分を占拠して、船の切っ先を特等席と決め付けて、物凄い高価そうな望遠レンズのキャノンを構えていらっしゃる。「俺のこのボートツアーにかける情熱は、ここにいる全員の中で一番熱い。甘い気持ちで参加している観光客に負けてたまるか」。そんな燃える闘魂が背中から湧き出していた。いやー、目が離せない人だ。

 あんまり動物も見えないので、船の中の人物観察に興味を切り替えていたが、やがて船の向かっている先がだんだんわかってきた。それは、先ほど散策で通りかかったカバのいる地帯だった。なーんだ、ここ、さっき歩いてきた所じゃないか。しかも、さっきよりもカバは水中に沈んでしまっている上に、午後の日差しは逆行で全くよくない。

 あーあ、もしここがボートツアーのハイライトだったら、かなりガックリだなぁ。動かない水中のカバを見ながら思っていたら、ボートはここで旋回。もと来た道を戻り始めた。

 ボートはそのまま乗り場を通過して、今度は桟橋から右方面に。こちらは行ったことがないので価値がある。

 ボートの中では、ワニの頭の剥製が回ってきた。そんなに大きなものではないが、それでも歯が鋭くて、これに食いつかれたらひとたまりもないだろう。

 そういえば社会人になった初めの頃にアメリカの南部を旅行していて、やはり湿地帯にワニを訪ねるというボートツアーに参加したことがあった。その時は「ワニの専門家」がボートに同乗していて、これよりももっと大きな頭の剥製が回ってきた。どこもやることは似ているのだ。あの時のツアーは「ワニを見に行く」ツアーだったにもかかわらず、ワニが全く現れなかった。専門家の先生は最後はボートの先っちょにたって「ホー、ホー」とワニを呼ぶ鳴きまねまでしてくれた。シーンとした湿地帯に先生の鳴き声が虚しく響いたが何も現れず、一同無言で帰ってきたのだった。

 それに比べたら、セント・ルシアは歩いているだけで、カバや猿やマングースが見られるし、このボートツアーでもすでに水鳥もカバも見られた。そして、ボートが岸にググーッと近寄ったかと思うと、そこには2匹のワニがいるではないか。これでワニにも遭遇。やっぱり、アフリカってのはすごい。

 そんなに近寄って大丈夫なのか?というくらい近寄ってもワニは微動だにしない。もしかして本当に剥製なのかと疑いたくなるほど動かないのだが、良く見ると目だけはぐるぐると動いていた。

 そこから程ないマングローブの岸辺には、カバの群れがいた。

 先ほどの場所よりはずっと近くに見えるし、岸の近くで水深が浅いので体が良く見えて、ここはボートで来なくては見られないスポットだった。

 カバは40分くらい潜水していられるそうなのだが、それでも哺乳動物なので息をとめて水中にいるよりは、仲間の体に頭を預けて呼吸を気にすることなく休む方が楽なんだろうなぁ。

 頭を他のカバに乗せて休む姿はここだけでなく他でもよく見られるのだが、安心しきったように目を閉じている安らかな表情をしているカバを見ると、こちらまで平和な気分になってくる。

 ここでは岸に上がっているカバも見られた。これは珍しい。人の入らないマングローブの孤島だし、岸辺近くで安全だからなのだろう。

 また、すぐそばには水中でカバが動いていた。カバって泳げないんだって。だから、こうして水中にいるカバも底の地面に足をつけて歩いているんだそうだ。

 セント・ルシアの湿地帯はカバとワニの天国らしい。今日はワニをそんなに見ることはなかったが、カバはうんじゃり、そこここで見ることができた。

 こうして2時間のクルーズを行って、午後4時に乗船した桟橋に戻ってきてツアーは終了した。

 さて、このツアー、行く価値はあるか?

 サファリだと思って行くとがっかりする。野生の動物を探してあちこちに車を走らせるサファリと比べると、ほぼ定位置にいるワニとカバを見に行くだけのこのツアーは動物園に行くような感覚かつめちゃくちゃツーリスティックだからだ。

 しかし、エンターテーメントとしてクルーズを楽しむ気持ちがあるなら行く価値はある。セント・ルシア大湿地帯に身を浴し(といってもボートで漕ぎ出しただけだが)、水面を渡る風を感じながらマングローブの島を見たり、ワニやカバや鳥達を見たりするクルーズと割り切れば、このツアーは悪くない。ディズニーランドのジャングル・クルーズとは比べ物にならない本物の自然だしね。

 ボートの上ではアルコール類も含む飲み物やポテトチップスくらいは販売されているし、専門家のガイドがいるので思いっきり色んな質問もできる。

 各国から参加している人々の中には、遠くアフリカにやってきたという喜びでハイテンションになっている人もいる。長く旅行をしてテンションが落ちている時に、こういう旅の喜びのエネルギーに満ちている人に出会うと、今自分が行っている事がどんなに非日常ですばらしいことかを思い出す。そういう意味では、ボートの外の生物だけでなくボートの中の人間とのふれあいも、自力で歩いているだけでは経験できないことだ。


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