夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2007.08.12
オカヴァンゴデルタのモコロツアー 第一日目

ボツワナ:マウン

 朝、滞在しているアウディ・キャンプのバーで氷の塊を買ってクーラーボックスにおさめたら、最終準備が完了(氷は5リットルくらいありそうな大きな塊でBP15=US$2.35 。2007年8月13日の換算レートUS$1=BP6.38を使用。驚いたことに、この氷は握りこぶしくらいまで解けたが最後までクーラーボックスを冷やし続けてくれた)。

 あとは、モコロ乗り場に向けて7時半に出発する車を待つばかりとなった。

 やってきた車は装甲車のような改造トラック。後ろに荷物用の車を引いていて、私たちは早速ここに借りたテントやらテーブルやら椅子やらを詰め込んだ。

 一体何人がモコロツアーに出かけるのだろうと思っていたら、トラックは出発間際になって満席に近い状態に。さすがにハイシーズンのことだけはある。

 アウディキャンプからだけでも、こんなにたくさんの人がモコロツアーにでかけようとするなんて、思ってもみていなかった。

 日中は半袖でも暑いくらいだが、朝晩は冷え込むマウン。朝7時半にオープンカー状態で疾走するトラックの上はかなり寒く、私は中綿のジャケットを着て丁度いいくらいだった。フリースだけの人などは鼻水をたらすくらい寒かった。

 1時間くらい舗装された幹線道路を走ってから、突然未舗装の道へ左折。ここからはスピードががっくり落ちるとともに、朝日も周囲の空気を温めてきたので、冷え切った身体が徐々にほぐされていくようでホッとした。

 途中にはキリンの家族が見られ、はやくも車内にはサファリの興奮の気運が高まっている。アメリカ人のお年寄り軍団が一番ハイテンションで、車がでこぼこ道をジャンプするたびに、フォッフォフォーと嬉しそうに叫び声をあげた。

 9時44分に途中の村で一旦停車。ここの村の人々が私たちのガイドとモコロの漕ぎ手を務めてくれるらしい。既に観光客で満席なトラックに、村人が更に乗り込んで鈴なり状態でトラックが走ることになった。

 ここから15分ほど先にいった場所がモコロの出発地点で、全員下車して荷物を降ろし、モコロに積み替えることになった。

 車を降りると、これから3日間を一緒に過ごすガイドを紹介された。彼の名前はMB。20代と思われるおっとりした感じの青年だった。よろしく、よろしくと挨拶を交わす。

 「まずは日帰りツアーの人から舟に乗り込んでくださーい」と言われて、大多数の人が動いた。そうか、多くの人はアウディキャンプからの日帰りモコロツアーだったのだ。どうりで荷物が少ないと思った。

 宿泊の客は私たちと南アから来た4人連れの2組だけだった。南アの人はモコロツアーについての情報をたっぷり仕入れてきていたらしく、荷物は少なめで、しかも真新しいとても大きなビニール袋を取り出してきて舟の大きさに合わせて荷物を一まとめにしてヒモでまとめあげていた。何と用意周到な!確かにモコロ内部にはグジュグジュと水が染みこんでくるので、どうしても荷物を濡らしたくなかったら、こういう用意は必要だろう。こうして、4人と荷物で2艘におさめてしまった。

 モコロは人間は2人乗ったら、あとは船頭さんで一杯になってしまうくらいに小さな舟だった。私たちはそんなことも知らずに、テント、クーラーボックス、テーブルや椅子まで借りこんでしまっていた。一艘にはとうてい乗り切れないだろうなぁと思っていたら、案の定荷物用にもう一艘借りる必要があると言われた。

 一艘の借り賃は一日BP120(=US$18.81)。3日間でBP360(=US$56.43)の増額出費になるが、その分はツアーから戻ってから支払えるということなので、もう一艘お願いすることにした。

 ということで、一艘は人間用。テント内部にしくマットレスを折りたたんで器用に簡易シートをMBが作ってくれて、夫が前、私が後ろに座った。もう一艘には、巨大なクーラーボックス、テント、テーブル、椅子という家財道具一切を積み込んで女性の漕ぎ手で出発することになった。

 湿地帯ってどんな風になっているのだろうと思ったら、所々に他の部分より深くなっている(あるいは人間が掘り出したのか?)細い水路があって、その水路をモコロでゆっくりと遡っていくのだった。

 この水路とモコロは、そもそも湿地帯に生えている葦を収穫して運ぶために使われていたのだが、水路の先の島で野生動物も見られることがあり、これを観光に使えないかと考えた人が始めたモコロツアーが今では村の大きな収入になっていると、あとからMBに聞いた。

 チャポーン、チャポーンと水に櫂を差し込む音、さわさわと草が風に揺れる音、顔にまとわりつく羽虫の羽音。人工的な音が全くしない中で、静かにすべるようにモコロは奥へ、奥へと進んでいく。水は薄い紅茶のような茶色だが濁っているわけではなく、ときどきとても浅くなると川底の砂も透けて見えたり、めだかのような魚の群れがスーッと通っていくのも見えた。

 朝はあんなに寒かったのに、10時過ぎの今は日差しが痛いくらいに強く暑くなってきていた。舟を漕ぎ出してから30分の地点で日帰りツアーの人とはお別れだ。彼らはここから上陸して、しばらく森を散策してピクニックを楽しんでから帰るのだそうだ。

 私たちは、ここから更に45分程先まで漕いだ先で上陸することになった。

 まずは2艘に乗せた荷物を全て降ろして、ここから徒歩3分ほど先にあるキャンプ場まで手分けして運んだ。


 キャンプ場といっても、今まで利用してきた所とは違って電気も水道もない。木や草に囲まれた円形の空間があり、座るのに都合がよさそうな大木が横たわっている他には何もない場所だった。

 それでも、ここにテーブルと椅子を設置しただけで、キャンプ地らしく見えてきた。更に木陰にテントを設営するとますます落ち着いて見える。

 時刻は12時近く。まずは昼食だ。ナミビアでキャンプ生活を体験していたのがここで役立ち、クーラーボックスから必要なものを取り出してサンドイッチの準備に取り掛かった。ガイドのMBが少し離れたきれいな水場から、野菜を洗ったり食器を洗うのに必要な水を用意してきてくれた。

 また、もう一艘の舟の女性も炊きつけに必要な草木を拾ってきて、あっという間に火をおこしてお茶の準備を始めた。一体どうやって、こんなに早く火をおこせたのだろうか。これは是非とも彼らから学んで帰ろうと思ったのは、この時だった。

 クーラーボックスのお陰で、パリッパリに冷えた野菜とハムとチーズでサンドイッチ。薪で沸かしたお湯で紅茶も飲めた。うーん、快適なスタートだ。

 正午から午後3時半くらいまでは日差しが強いので休憩にするとMBから伝えられ、それまでお昼寝となった。

 各々、木陰の涼しい場所にテントを設置してお昼寝。何て気持ちがいいのだろうか。

 午後3時半、昼寝から目覚めて午後のウォーキングサファリへと出かけることになった。

 正午と比べると多少は太陽の傾きが出て日差しはやわらいだものの、歩き始めるとすぐに暑くなってくる。朝晩の気温差が大きい所だ。

 ウォーキングは枯れたような草の中に所々樹木の生えている原っぱを歩いて行く。こんな所に本当に野生動物がいるのだろうかと思っていると、すぐに象のフンが見つかった。いるんですねぇ。期待感が高まる。

 大きな木の下には長細いサヤに種を収めたものが落ちて散らばっていた。サヤが枝から垂直にぶら下がっている様子からソーセージツリーと呼ばれているこの木は、今までにもアフリカの各地で見ることができた。ネーミングとサヤがぶら下がっている様子が面白いためか、必ず足を止めて説明される木である。

 道を歩いていてMBがふと傍らの草を手折って「これ、何だと思う?」と私たちに渡してきた。スパイシーですがすがしい香りがする。ワイルドセージと聞いて、ああ、セージねぇと思い当たる。でも料理に使うのではなく、焚いて蚊除けにするのだそうだ。ワイルドセージだけでなく、先ほど見た象のフンも焚くと蚊除けになるのだそうだ。

 「サファリは野生動物を見るもの」と頭から思い込んでいた。今まで体験した車に乗っていくサファリでは、大型動物の姿を求めてどんどん車を走らせていたからだ。

 しかし、ウォーキングサファリでは、ガイドが運転しているわけではないので歩きながら草花の説明を受けたり、その効用を聞いたりできる。何も知らずにあるいていると単なる原っぱにしか見えない森が、ガイドから説明を受ける度に、そこだけ色づいて明確に見えてくるような気がする。1つ説明を受けると、その先にある同じ種類の木がパッと目に入ってくるから目が開いていくような感覚だった。

 次にMBが足を止めたのは、1つの株から上に向かって葉が広がった植物だった。

 これはララトゥリーといってパーム(やし)の仲間だそうだが、根から抽出した汁を1日置いておくと、夜には発酵してビールができるのだそうだ。

 この植物が160cmくらいに成長した段階でルーツを取り出して切り込みを入れて、そこに葉を差し込むと、汁が葉を樋代わりにして伝って落ちてくる。これをボトルで受けて日中置いておくとできあがり。現地ではパームワインと呼ばれて、町で1カップBP1(=US$0.12)で売っているんだそうだ。

 ララトゥリーは大きくなると高さ20mくらいまで成長してしまう。小さいララトゥリーだけがパームワインの対象になる。

 「パームワインっておいしいの?」と聞くとMBは「そりゃ、もう」といってイッヒッヒと笑った。この手の発酵酒は概してアルコール分はそんなに高くないはず。弱いお酒でMBは酔っ払ってしまうのだろうか。MBの話し方や歩き方と似て、のんびりとしたイメージにぴったりで微笑ましくなってきた。

 歩き始めて20分、かなり近い所でキリンに遭遇。そう、遭遇なのだ。

 車でのサファリでは遠くから動物の姿を見つけて、こちらから近寄っていくことが多いが、ウォーキングサファリでは歩いていると、木の陰からヌーッとキリンが出てきたりする。「発見」というよりは「遭遇」という驚き。これもまた、ウォーキングサファリならではの魅力なのだ。

 とはいえ、キリン君は私たちの姿を見るとサッと身を翻して優雅に走り去ってしまった。遭遇したからといって親しみ深く思ってくれているわけではない。


わかりやすいように象の足跡の輪郭を
指でなぞってみた。
 私たちはMBの森の植物や動物の痕跡解説でも十分に面白いと思っていたが、やはりMBとしては動物を必死で探してくれているようだった。

 午後4時頃に、象の足跡や象が木をなぎ倒した跡を発見。前足は真ん丸い足跡で、後ろ足は楕円形の足跡。まだ他の動物に上書きされていない所を見ると新しい足跡のようだ。

 木はかなり前になぎ倒されたようで、むき出しにされた根が既に乾いている。象はこの木の根が好きで、よく掘り出して食べるのだそうだ。この後もよく根がむき出しになった木を目にしたが、常に食べつくされてはいない。つまり掘り返すことは掘り返すのだが、ちょっと食べたらそれで満足。「デザート程度、あるいは食後の漢方薬程度に欲しかったのよねん」という象の美食家的な様子が想像される。掘り起こされた方の木にしてみたら、たまったものではない。文字通り根こそぎひっくり返されて「それだけしか食べないのかーーー!」と怒りたくなる気分だろう。

 ところで象のフン。

 この辺りのフンは押しなべて茶色くコロコロとした形状になっている。MBはその理由は、象が食べている物に関係すると教えてくれた。

 この辺りの象が好んで多く食べる物とは、椰子の実なのだそうだ。椰子といっても、東南アジアでよく見かける椰子の実とは違ってもっと小さくて固くて薄い外皮に覆われた実を持つ椰子の実だ。

 木は途中に全く枝を持たずに上の方だけに葉と実をつけている。象はこの木の幹に体当たりしたり、鼻を幹に巻きつけて木を揺らすことで実を下に落として食べるのだそうだ。

 MBは椰子の木の下に落ちている実を2つ拾って、かんかんと打ち合わせた。すると固い外皮にひびが入ってパラッと取れ、中から薄い茶色い実がのぞいた。と思うとMBは、その実をカリッとかじっているではないか。

 私たちもかじってみた。中はまったくジューシーではなくパサパサとしたスポンジのようになっていて、ほのかに甘い。フルーツというよりはクッキーを食べているような感じだった。観光客で十分に食料を持ってこない人がいても、こうした森の食べ物を紹介できるから大丈夫なんだとMBは誇らしげに笑った。

 次のチャレンジは、食料を持たずにオカヴァンゴデルタに入るというテーマになるのだろうか?いやいや、それは危険すぎる。

 こうして象の気配を感じながら森を歩いて1時間強、午後4時45分についに象に遭遇した。最初に見つけたのは、もちろんMB。「シーっ!」と人差し指をたてて口に当てておしゃべりをストップ。

 今までののんびりとした口調や表情から、ピリッとした表情の森のガイドの顔になった。足元の砂をすくってサラーッと地面に落として風向きを確かめている。象に気づかれないように風下で観察する必要があるようだ。うわー、なんだかMBがかっこいい。

 風下にあたるアリ塚の裏手に移動して、アリ塚越しに象を観察することにした。その距離20mくらいしか離れていない。近い、実に近い。

 象は椰子の木をワサワサワサワサーーーと揺すって実を落としては、一つずつ鼻で拾って口元に持っていっている。あんなに小さな実でお腹が一杯になるためには、一体何度拾って食べる作業をこなさなくてはならないだろうか。

 そんなこちらの心配をよそに、象は鼻歌でも歌っていそうな軽快な鼻の動きで椰子の実を口に運んでいった。明らかに楽しんで食事をしている様だ。

 こうして10分ほど食事風景を観察して、我々はその場を離れることにした。

 今日は最後に私たちの滞在している島の端まで行って川に浮かぶカバ見学。

 モコロで伝ってきた水路は川とはいえない細さだったが、ここに来ると対岸の島まではかなり離れていて立派に川と呼べる幅になっていた。カバは水中から目だけだして、こちらを警戒。それ以上の動きはなさそうなので、本日のウォーキングはここで終了だ。

 キャンプ地への帰り道、MBはよい薪になりそうだと朽ちた木を拾って担いで歩き始めた。薪といってもこんなに大きな木を拾っていく辺りがとってもワイルド。こんな木を拾っていこうという発想さえ、私たちにはなかった。

 午後6時7分に西の空を染めて夕日が落ちると、MBが作ってくれた焚き火の灯りと自分達のヘッドライトだけが唯一の灯りとなった。

 焚き火の火力はとても強くて、鍋に入れた野菜などは驚くほど早く煮えてしまい、思ったよりも時間がかからずに食事の支度ができてしまった。キャンプでは火が上手に作れるかどうかが大きなポイントだ。

 午後7時に夕食を開始していると、近隣から人が何人か来てMBたちとおしゃべりしている。近所の人、であるわけがない。彼らもまた他のキャンプ場に来ているスタッフなのだった。

 ここのキャンプ場は孤立しているように見えるが、細い道を伝っていくと実は3分と歩かない隣に別のキャンプ場、その3分先にも別のキャンプ場がある。お客さんが昼寝してしまったり、夜暇になると、私たちのキャンプ場がたまり場になっているのかよく他のスタッフが遊びに来ていた。

 私たちも夕食の片づけが終わるとキャンプファイアーに加わって雑談。とはいえ、午後から暑い中を長く歩いたので9時半にはテントに戻って就寝することにした。


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