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2007.09.14
トラッキング成功でゴリラに大興奮!
ウガンダ:キソロ |
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いよいよ今日はゴリラ・トラッキングを行う日だ。ここに来てからというもの天気が崩れがちで、昨晩からは大雨になり、「明日大丈夫かなぁ」と心配でなかなか眠れなかった。
朝5時半に起きて支度を整える。昨日買っておいたパンと持ってきていたチーズをはさんだ朝食と昼食のお弁当は昨日の晩のうちに作っておいたし、水もペットボトルを1本買っておいた。あとはタオルをリュックに入れたら準備完了。そうそう、一応、虫除けスプレーと雨用ポンチョも入れておこう。パスポートはコピーだけ持った(コピーで大丈夫だった)。
昨日、この宿にチェックインしたカップルに「もしかして、ゴリラ・トラッキングですか?」と声をかけてみるとそうだという。私たちとタクシーをシェアしないかという提案は喜んで受け入れられた。
ということで、約束通り朝6時に来たタクシーに4人で乗り込むことになった。向かう先はブウィンディ国立公園の「Nkuringo」入口。昨日の大雨でぬかるんだ山道を走って1時間半。公園入口のUWAオフィスに到着した。
事務所から見える山々は濃い緑に包まれていて、「この中にマウンテン・ゴリラが生息するのか」と思うとワクワクしてくるのだった。
他のパーティーが到着するまで、トイレ休憩をしたり、持ってきたサンドイッチを食べたりして待っていた。
今日のメンバーの中で60代くらいのアメリカ人夫婦がいるのだが、彼らは今回の旅でブウィンディに4回入るパーミッションを取得してきている。予約は何と15ヶ月前に行ったのだそうだ。私たちが1週間前に予約したと聞くと目を丸くして驚いていたが、キャンセル待ちだったと聞いて納得。4回も続けて取得しようとするとキャンセル待ちというわけにはいかないだろう。
全員が集まると、持ってきたパーミッションとパスポートのコピーを提出してチェックを受け、ブリーフィング。マウンテンゴリラはとても繊細な動物で、人間とDNAが97%まで同じなので、人間の病原菌を受けやすい。今、現在、実は下痢とか発熱をしている人はパーミッション代金の75%を返金するので速やかに申し出てほしいと言われた。UWA側がこんなに何回もこの事を言うというのは、過去にそういう事があったからだろう。今日のメンバーは全員が健康体だったので、誰一人ここでリタイアする人はいなかった。
観光客がトラッキングするゴリラのグループは「Habituation」(人間に慣れる訓練)をしてあるのだそうだ。Habituationには大体2年くらいかかるそうなのだが、雨の日もカンカン照りの日も毎日毎日同じグループを追跡しては同じ場所で時間を過ごすということを繰り返すのだそうだ。ゴリラが人間に対して脅威を感じないように、静かにしているのはもちろんのこと、葉っぱを食べるふりをしたりして自分達も別種の野生動物であることを見せたりするんだそうだ。やがてシルバーバックという背中の白いボスゴリラが徐々に姿を見せ始め、他のメンバーも彼の判断のもとに姿を見せるようになり、やがては5mまで近づいても大丈夫になるまで慣れさせる。これをHatituationと呼んでいる。
長い年月をかけて観光と研究用に慣らしたグループなので、慎重に見学してほしいのだということだった。
トラッキングを引率するガイドは2手に分かれている。先発隊は既に出発して昨日ゴリラが観察できた地点に向かっているそうだ。そこから追跡を始めて、私たちと一緒に行動する部隊に無線で場所を連絡してくるのだそうだ。
最後に今日のトラッキングでポーターを雇った方がいいのだが、どうするかと聞かれた。私たちはポーターを雇うとは聞いていなかったので、お金を一銭も持ってきていない。私たちと一緒に来たフランス人のカップルも体力に自信があるのでいらないと思っていたようだった。しかし、アメリカ人のカップルがポーターを雇った方がいいとしきりに勧めてくる。
彼らは昨日もこのNkuringoからトラッキングを行ったのだが、山を越え、谷を越え、時には足元の不安定な斜面をよじ登ったりすべり降りたり、とにかくここのトラッキングは大変な道のりで、いくら若い人でもポーターなしに進むのは難しいと言うのだ。旦那さんは「私はポーターからマージンをもらって言っているわけじゃなくって、本当にそう思うんだから」と真剣にポーターを勧めるので、フランス人カップルと私たちは各組1人、30代と思しきオーストラリア人カップルとアメリカ人カップルは各組2人を雇うことになった。お金は一緒に来たフランス人に借りることにしたのだ。
ということで、ブリーフィングが終わる頃には、既に今日向かうべき場所に当たりがついていることになる。今日の地点に向けて車で移動するということになり、8人は事務所を出た。
外に出ると4人のアメリカ人らしき若者グループがいた。
実はこの時点でのリタイアを期待して、ここに来たのだ。しかし、、今日は一人もリタイアがでなくて全滅。ここまで来る交通費と労力を考えるとリスクが高い行動に出たなぁと思う。キャンセルはカンパラでつかまえるのがリスクが一番少ないのだ。がっかりした表情で、車に乗り込んでアメリカ人はサッサと去っていった。
外では各組につくポーターが紹介され、一緒に車に乗り込んで出発だ。ポーターは年齢が皆若く、レンジャーになる予備軍なのだろうか。
私たちについてくれたポーター君も非常に若い。英語が少しだけ話せるが、動植物についての説明をしたりという難しい話はちょっと無理だったなぁ。
皆で車に分乗してトラッキングの出発地点まで移動。20分くらい離れた場所だった。
一人ずつストック代わりの木の棒を持たされ、足元はヒル対策として靴下の中にズボンの裾を入れたほうがいいと言われ、だんだんとこれから進む道の厳しさを覚悟しろと言われている気がした。
9時6分にトラッキング開始だ。車の走る道からいきなり獣道のような細い道に入って、縦一列になって歩くことになった。
右手は急な斜面になっていて、その向こうには別の山が見えていた。マウンテンゴリラはあの山に生息しているので、少なくとも向こう側の山に行くことになっているのだそうだ。
昨日参加したアメリカ人は、向こうに見えている山を越えて、そのまた向こうまで歩いたのでとても大変だったという。ゴリラはそんなに大移動をしないと聞いているので、もしかして私たちもあの山を越えなければならないのか?
道は途中から急な斜面を下ることになり、足場の悪い場所ではツルッと滑りそうになる。ストックが大変役に立った。
と、急に森の中の斜面から右手にそれて畑の中を歩くことになった。このまま下った方が距離が短くて済むのになぜ水平に歩くのだろうかと、この時は疑問に思ったのだが、トラッキングが終了してから、仲間のガイドから無線でゴリラが移動したと連絡が入って、急遽路線変更したのがこの時だったのだと知らされた。
この急斜面や畑の中の道なき道で夫は何度か転倒。履いているNIKEの靴の裏には全くストッパーになるものがなくツルツルとしているので、滑って転んで仕方ないのだ。結局、ポーター君にその都度助けてもらって、雇ってよかったなぁということになった。
私たちはアドベンチャーをしているつもりでも、地元の人が畑を耕している所を通ったりして、案外人の手の入っている場所を歩いているらしいと気づき、何だか拍子抜けする。しかし、本来はこうした畑の道を通らないことになっているようで、今日は無線連絡により特別に畑の中を通らせてもらっているということだ。
こういう所を歩くと、どうしても育てた農作物を踏み潰してしまうことになる。そういう意味も含めて、私たちが支払っているパーミッション料金の一部は周辺の住民に還元されているということも聞いた。
10時18分。小川に到着。ずっと下ってきた斜面の一番下まで来た事になる。小さな川だが水量は豊富で流れも速く、踏み石がちゃんとあるわけではないので、ガイドが「次の足はここに乗せて」と一人ひとり指示してもらいながら渡った。それでも私は片足を川につっこんで、ぐっちょぐちょになってしまったのだが。
川を渡ってから再び別の山の斜面を上って5分後。丈の高い樹木がなくなり斜面の草原のような場所に出てストップ。
何とここから3分の場所にマウンテンゴリラがいるのだという。先発隊はゴリラグループを監視しながら、無線で連絡を飛ばしてきている。
ここから先はストックと荷物を置いて、カメラとタオル程度で行くように指示されて荷物を置いた。ストックはゴリラには凶器に見えるらしい。アメリカ人カップルは「今日はみんなラッキーだぞ!こんなに早く見つかるとは」と言って、皆を喜ばせた。
10時25分。本当に3分歩いた場所に第一ゴリラ発見。うわっ、可愛い顔だ。
そしてもう少し先では食事を楽しむもう一頭がいた。「あーん」と口を開けて植物の実を口に運んでいる姿は、とても食事を楽しんでいる様子で、顔がとても楽しそうだ。
ボツワナでも象が食事を楽しんでいる風景は目にして楽しそうだなぁという印象を受けたが、それは耳や尻尾をパタパタとさせたり、顔をうんうんとうなずくしぐさから思った印象で、顔の表情そのものからの印象ではなかった。
しかし、ゴリラというのは顔に表情がある!
もう少し先に進むと、お花畑の中にあっちにもこっちにも黒い背中が見えていた。
私たちの存在に気づいているはずだが逃げようとしない。これには本当に驚いた。今までアフリカのサファリでは、どの動物だって人間が近づくと逃げる(あ、マサイマラで見た満腹のオスライオンだけは逃げなかったが)。あんなに観光客が来ていたって、いつでも逃げる。
「逃げない」というのがどんなに凄いのかは、これまでサファリしてきたからこそわかることだった。
群れの中に背中が白い毛に覆われているゴリラがいる。12歳くらいになると背中の毛が白くなってくるのだが、さらに3年くらいは体が成長する。15歳以上でシルバーバックのオスがグループを率いるリーダーになる。上の写真のシルバーバックはリーダーではなく、まだ若い方のオスらしい。
ああ、今日も来てますねー。 |
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ガイドに言われて左斜め後ろを見ると、そこにももう一頭が座っていた。 |
右斜め前には若い2頭もいる。どうやら私たちは、このグループの真ん中でゴリラを見ているらしかった。こんな風になるとは思ってもいなかった。9頭なら9頭のグループを脇から見るのだろうと思っていたのに、グループの只中に入って前後左右取り囲まれて見物することになるとは。
この時、私たちは横一列になって観察するように言われていたのだが、ガイドがみんなの袖を無言で引っ張って下がるように指示。すると、私たちの目の前を一頭のゴリラがドッドドドドーーーと走り抜けたのだった。
手を伸ばしたら確実に届く距離をゴリラが走りぬける。もう、一同は叫びだしたいくらい大興奮で大喜びなのだが、声を出してはいけないので、皆思いっきり目を見開いて嬉しさを表現しあったのだった。
ルールでは7m以上近づいてはいけないことになっているのだが、ゴリラから近づいてきた場合は逆に逃げてはいけないことにもなっている。ということで、今の場合は私たちは黙って固まっているしかなかったのだ。
しかしまぁ、遠くから見ている分には表情も豊かでかっわいいーなんて思っていたが、近くでみるとすごい迫力。毛も長いし。脇を通り抜ける際のドッドコという地響きでその重さを感じることができた。
10時44分、ついにリーダー登場。他の個体よりずっと大きな体で風格があった。リーダーは私たちの背後の斜面にあらわれ、斜面の下にいる私たちに「いやー、ようこそ、わがグループへ」と挨拶でもしているかのように立ち止まってポーズを取ってから、こちらにゆっくりと降りてきた。
風格なのか年なのかわからないが、ゆっくりと物怖じしない動きは人間の翁を思い起こさせる。
ちょと面白かったのは、リーダーのすぐ後に、まだ背中も黒い若い固体が来て、同じようにポーズを取って立ち止まってからこちらに降りてきたことだった。
まるでおじいちゃんの真似をする孫みたい。
再び左手のゴリラを観察。お気に入りの木が見つかったのが、葉をわしづかみにしてバリッとちぎっては口に運んでいる。
細い枝もムシャムシャと食べる。
時々、感嘆したように舌なめずりしたりするのが面白かった。
ひとしきり食べてしまうと「いやー、旨かったー」みないな仕草をして去っていた。この個体の背中もシルバーになっているので、年齢が上らしい。後ろから見ると、背中の部分だけが白くなってお尻は黒いままだ。白いベストを着ているように見えるのだった。
やがて、グループ全体が斜面の下の方に移動を開始したので、私たちもついて斜面を降りていくことになった。
しばらく降りた所でグループが停止したので、私たちも停止。
今度は寝っころがって草を食べる個体と座り込んで草を食べる個体が間近に見える。
若い固体は毛並みもツヤツヤしているし、顔も子供らしさが抜けていない所があって、とても可愛らしかった。
そのうちに、私たちの背後から、またしても別の個体が超至近距離を通り過ぎる。今回の距離は2mくらいだ。
次にもう一頭、まだ子供の個体が同じように木をまたいで行こうとしたのだが、こちらを固まって見つめる人間に興味を示して、倒れた木の上で遊び始めた。
おお、近い、近い。
木の陰からこっちを見て「えっへへー」とでも言っているような感じ。人間の子供みたい!
こんな至近距離にいて、私が思っていたのは「ハリウッド映画の特殊メイクって凄いなぁ」なんてことだった。だって、本当に今見ているゴリラは中に人間が入っているんじゃないかと思えるほどだからだ。こっちが本物でハリウッドが作り物なんだけど、最初によく見ていたのがハリウッドだから、どうしても本物の中に人間が入っているという想像をしてしまう。最初に見た方を主だと思ってしまうんだなぁ、人間って。
それにしてもブウィンディのマウンテンゴリラ・トラッキングは想像していたのよりも、ずっと楽しい。こんな至近距離で会えるなんて思ってもみなかった。
この子が去っていった所で、観察を始めて丁度1時間が経過。
いくら人に慣れているとはいえ、人間が近くにいるのはマウンテンゴリラにとってはストレスになるので、観察は1時間が限度だと決められてるのだった。
荷物を置いてある場所まで戻ると、皆、堰を切ったように興奮を口々に語り合った。8人が8人ともパーフェクトに満足しているのがわかった。
興奮冷めやらぬまま、荷物をかついで元来た斜面を下って小川まで。上っていく時も足場が悪かったのだが、こういう道は下りがもっと大変だ。慎重に足を運んでいたら、後ろで「ズサッ」という音がした。振り返ると夫がいない。滑って転んで、脇道から斜面に滑り落ちてしまったのだった。おお、大変だ。手だけが道に見えている。ポーター君に引きずり上げてもらって、洋服が泥だらけになっただけで事なきを得たのだが、本当にこの靴は駄目だ。その後も、数回転んで、小川にたどり着いた時はズボンがドロドロになってしまっていた。
小川のそばで昼食。
朝は曇っていた空にも青空が戻り暑くなってきた。小川の水で顔を洗うととても気持ちが良かったが、興奮と暑さと体を酷使したせいであまり食欲が沸かず、もってきた少量のサンドイッチで丁度いいくらいだった。
小川から先は反対側の山を、車道の通っている高さまでひたすら上る。日も照っているのでこれが結構きつかった。
ある程度の高さまで上ってくると、マウンテンゴリラを見た斜面が見渡せた。ガイドに私たちがいた場所を教えてもらうと、意外に低い場所で、やはり今日は運が良かったようだ。
さらに何度も休憩をはさみながら、上へ上へと登っていった。オーストラリア人のカップルの女性は、暑さで日射病状態になっているらしく辛そう。私も帽子がないので、ハンカチで頭を覆いながら進んだ。帽子が必要だ。
12時42分に車道に到着。50分くらいずっと登りづめだった。はー、きつかった。
ここから車に乗って事務所に戻る。事務所に戻ったら、「皆さんにスモールプレゼントがありますよー」と言われて、冷たいビールが用意されていたら嬉しいなぁと考えたのは私だけではないだろう。
残念ながらスモールプレゼントは冷たいビールではなかったが、一人ずつに名前が入った「ゴリラ・トラッキング達成証明書」がもらえた。一人ずつ名前を呼ばれて、賞状をもらうようにうやうやしく受け取る。いいですえぇ、この達成感。
皆で記念撮影をして、ポーター君にフランス人から借りたお金でUs20000(=US$11.59)をチップとして渡した。この金額は標準だ。
キソロまで帰る車の中は何故か皆無言。夢のような体験を頭の中で回想するので精一杯だったからだ。
いやー、楽しかった。そして夢のようなひと時だった。
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