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2007.10.22
ABCへのトレッキング第二日目
ネパール:ポカラ |
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昨日1日の私たちの歩くペースを見ていたガイドのパッサンと、昨晩のうちに今後の予定をだいたい決めてみた。2日目の今日は、ランドルックLandrukから出発して、ニューブリッジを過ぎ、ジヌーJhinuで温泉に入ってチョムロンまでたどり着くのが目標だ。出発は朝7時ということになった。
朝7時の出発なので朝食は6時半でいいかとパッサンが聞いてくるが、私たちは常に出発の1時間前に朝食を摂ることにしているので朝6時に朝食としたいというと、少しがっかりした表情でわかりましたと下がっていった。
どうしてがっかりしたのかなぁと考えていたら、22日の朝になってその理由がわかった。ガイドやポーターはどうやらお客さんの朝食時間に合わせて自分達の分が用意されてしまうことになっているらしい。出発ギリギリまで寝ていたいのだが、お客である私たちが6時といったので、パッサンは起きて朝食を同じ時間に摂っていた。実は今回が初めてのポーター体験であるバラット君は初日の疲れがたまっているのか、朝食が冷めるのもかまわず6時半まで起きてこなかった。
私たちはメニューから朝食を選んで注文するが、彼らの朝食は決まっているものが出されるようだった。そのかわり格安。宿泊費もお客を連れてくれば無料で宿泊ということになっている。ただし、空き部屋がないとダイニングで寝るなどを強いられるのだが。
だから、1日目の宿を出る時に私たちが宿に対して支払った宿代と食費の合計は二人でNRS1200くらい(約2090円)だったのに対して、パッサン一人が支払った金額はNRS80(約140円)だった。山では一定の標高ごとに食堂のメニュー、値段、宿の値段が決められていて、それよりも安い値段で外国人に食事や宿を提供しないことにしている。その代わりに、ガイドやポーターに対しての負担を軽くすることになっているようだ。一種の談合かもしれないが、この人々の生活を見ているとまだ自由競争の段階ではなく、こうして保護しないと生活が成り立たないのだろうということがわかるので、このシステムは今の所適当なんだろう。
昨日到着して曇り空にがっかりした私たちに、明日の朝になったら山が見えるかもしれないと慰めてくれた宿のシェフ。
彼の言葉通りとまではいかなかったが、朝6時から見ていると所々雲間から雪を山頂に抱いた山が見えた。全部すっきりと見せてもらえないのが何とももどかしい。
雲間から見えるだけでもかなりの迫力を見せているので、これが全部すっきりと見渡せたら、どんなに見事な景色だろうと思われた。
そうこうするうちに朝7時の出発時間となり、宿のシェフ(右から2番目)や宿のスタッフの女性(左から2番目)と記念撮影をした。このシェフは以前はダンプスのレストランで働いていたそうで、食事の盛り付けもシャレているし、日本人のお客さんから教わったそうだが、なかなか日本語も話せるし、とても感じが良かった。
さて、7時18分に本当に出発。ランドルックから最初の目的地ニューブリッジまでは高低差300mほどの下りになる。昨日の後半から上りと下りを繰り返しているものの、各地点の標高を見ると一番高い地点から500mほども下ってランドルックに来たことになる。今日更に300m下ってニューブリッジは1340mだ。
私たちの最終目的地は4130mにもなるのに、初日から800mも下るのかぁ。登山と違ってトレッキングは常に上をめざすばかりでないというのは、他の場所でのトレッキングで経験済みなのだが、今回は随分と標高の高い場所に行くので、800m下るのは誠に惜しいというか、折角積み上げた仕事がやり直しになるような、そんな気分もちょっとする。
ランドルックの村の眼下にはエメラルドグリーンに光るモディ・コーラが見えるが、一旦そこまで下りる。
上から見ていると、あんな所まで下るのかと残念に思う気持ちが強いのだが30分で川が近くに見える高さにまで下がってしまった。下るのは早い。エメラルドグリーンの美しい川だが、水は冷たそう。
午前8時8分に初めてつり橋を渡るのだが、これはまだニューブリッジ村の由来になった橋ではないそうだ。
手すりが上に行くほど開いているつり橋で、なかなか斜めになる感じがほどよく恐ろしい。
この橋を渡って村へと向かう道の向こうには大きなアンナプルナが雲の隙間に見え隠れしている。そんな景色に向かって歩くトレッキングというのは、今までにない興奮に満ちたものだった。
写真は手前のトレッキングコースがやけに暗く写っているが、雪山のアンナプルナに焦点をあてるとどうしても手前が暗くなってしまう。それくらい前方の雪山の輝きの力が強いってことだ。
お陰で、私が乾かない洗濯物をリュックの背中に洗濯ばさみではさんで歩いているという貴重な部分が暗くてよくみえないのが残念だ。この方式は事前に相談したOn
the globeという新婚旅行で世界一周した夫婦の旦那さんに教えてもらったのだ。トシオさん、やってみましたよん!
前方の見える村はニューブリッジの下村で、この村を越えるとニューブリッジ村の名前の由来となった橋を渡ることになる。
こちらの橋の方が長くて下の川も轟々として迫力満点なのだった。
8時半にニューブリッジに到着して30分の休憩。
ニューブリッジから1760mのジヌーJhinuまでは、今度は一転して上りの世界になった。とはいえ、山腹の民家も見かける場所もあり、庭先にとうもろこしが束になって干してある。ひなびた風景に心が和む場面もあった。ジヌーが見えてきて最後に上りの階段。ジヌーに到着したら温泉に飛び込むことだけを楽しみに、階段を一歩一歩上がった。
ジヌーに到着するや、私たちは温泉に直行することにした。パッサンとバラットは荷物を置いて後から来るという。
ジヌーの村のある場所から温泉までは森の中を下り続けて(いや、所々上りもあったなぁ)15分もかかる。帰りは20分もかかるだろうか。
その為に、今日の私たちのようにトレッキングの途中で来ることを好まない人も多いようだ。温泉まで往復するくらいなら休憩時間に回したいというわけだ。
しかし、私たちは日本人。温泉を素通りするなんて、この血が許さない。ということで、ここで体力を使ってしまうことになろうと、温泉にはきっちり入って先に進むことにした。
勢いよく道を進んだもののかなり遠い。まだかまだかと思いながら歩いていると清いせせらぎの音が大きくなり、やがて眼下に川、川べりに温泉が見えてきた。温泉到着は10時5分。
事前にガイドブックで別の場所の温泉を写真で見ていたが、あまり美しいとはいえない風呂に大量の人が芋洗い状態でつかっていたので、そういうものだと思っていたら、ここの温泉は人も少ないし何よりもとてもきれいだ。
というのも近年の大雨により川が決壊して温泉が崩されてしまって、新しく作り変えたばかりだからだという。 着替え小屋近くには監視の村人がいる。新しく作った風呂にかかる費用を寄付金でまかないたいということで、ここでいくらかの寄付金を支払うことになっているのだ。
坂道を下りきった場所に1つ、そこから右手に進むと着替えの小屋ともう2つの温泉がある。2つの温泉の間にはパイプで温泉水を流している打たせ湯もしつらえてあった。
新しい石張りの風呂には隣を走る川と同じエメラルドグリーンの湯が満々と張られ、日本の高級旅館もいかばかりかと言う程高級感があった。お湯の温度も温からず熱からず丁度いい。
パッサンとバラットも後から追いついてきて早速入浴。
ここの温泉は無色だが少しだけ硫黄の匂いがする。効能はあるようで、こわばった足の筋肉がほぐれるのがわかった。本物のお湯だ。
パッサンにこの匂いは気にならないかと聞いたところ、初めてポーターとして温泉につれていってもらった時はもっと強い硫黄の匂いだったので、こんな卵の腐った臭いの中にどうして入りたいのか理解できなかったといって大笑い。今では温泉が大好きになっているそうだ。
もっとゆっくりしたいが、今日はまだトレッキングの途中。10時40分には湯船から引き上げて着替えて村まで上がって休憩し、11時半からトレッキング再開だ。
温泉につかって筋肉もほぐれて体調万全!とはいうものの、ジヌー(1760m)を出てから1時間半先のタウルンTauling(2180m)までは一気に400mの上昇だ。
村を出る所から既に登りの階段が始まっていて、そこから上る上る上る上る。容赦ない上りの道のりだった。
休憩で振り返る度に見る見る川が走る山間の渓谷が遠のいていき、結構あっという間に高い所まで上がれてしまうものなのだなぁと感心してしまった。
タウルン手前40分くらいからは、野の花が咲き乱れる可愛らしい丘が始まる。この丘をじぐざぐに縫う様にパスが通っているが、この道が可愛らしくない。ぜーぜーと息をきらしながら上ることになった。ここでは上から下りてくる旅行者ともすれ違った。アンナプルナ・ベース・キャンプまで行きたかったのに膝を痛めて途中で引き返してきたという人に2人も出会うと、私たちにできるのだろうかと不安にもなってくる。
「大丈夫かなぁ」とパッサンに聞くと「なーに、大丈夫、大丈夫」と答える。気休めみたいなものだが、パッサンが大丈夫ってんだから大丈夫なんだろうと、妙に心強い。
12時41分にタウルンだと思われる一番高い地点に到着。ひやー、疲れた。さっき温泉で休ませたのを忘れてしまいそうに疲れた。
しかし、この疲労感はある種心地よくもあり、自分達が1時間前にいた川を遥か下に眺めながら、谷あいを渡る風にふかれていると達成感が押し寄せてくる。これがトレッキングの魅力の一つだ。ちまちまと自分の足で歩いてきたという達成感は何よりも満足度が高い。
ここから本日の宿泊地であるチョムロンまではやや下り気味で10分くらいか。私たちが目指す宿はチョムロンの最初の宿を通り過ぎてから更に10分くらい先にあったので、宿到着は午後1時10分となった。本日のトレッキングはこれにて終了。
昨日、洗濯物が乾かなかった経験から、宿に到着したらまずシャワーを浴びて洗濯、それから昼食にしようと言った舌の根も乾かぬ先に「飯、飯」と今日も食欲優先。ま、いずれにせよ乾かないからいいか。
今日の宿はInternational Guest House。シャワー・トイレ共同の部屋でツインルーム一泊NRS160(=US$2.42)。
宿は若い兄さんと妹が運営していて、兄さんは韓国のレストランで、妹は何と東京は麻布の喫茶店で働いていたことがあり、韓国人と日本人歓迎の宿だそうだ。メニューには韓国料理の文字も並んでいた。妹さんの日本語は昨日のシェフを上回る本格派。ネイティブスピードで話ができるし、相槌の打ち方や感嘆の表現も含めてよくここまで学んだものだと感心。
この宿には二層式の洗濯機があって、自分で手洗いした後に有料で脱水だけしてもらうサービスをやっていた。ところが、この「脱水」という言葉が彼女のボキャブラリーになかったようで「ドライできます」という。私は昨日の洗濯物も乾いていないので、ここは一つお金を払っても乾燥だけしてもらうことにした。ところが、実際に見てみると「乾燥」ではなく「脱水」。おお、違う、違う。脱水ならしなくていいですといったのだが、すでに彼女は洗濯物を脱水層に入れてしまっていて、「あ、じゃぁ無料でいいですから」と無料で脱水してくれた。お陰で、昨日よりはましな具合に乾いたのはいうまでもない。ありがとうございました。本当は有料だったのに。
宿は前方に私たちが今後進むべき道が開けた景色に向かって立っている。
天気がよければ気持ちのいいテラス席や、ガラス張りのダイニングから、山間の向こうにアンナプルナサウス(7219m)やマチャプチャレ(6993m)がどーん、どーんと見えるという話だった。またもや曇りで残念
景色は今一つだが、夫はコーヒーでご満悦。そう、「ヒマラヤでキリマンジャロ!」っていうのをやりたいということで、アフリカで買ったキリマンジャロコーヒーとコーヒーカップ、湯沸しコイル、コーヒーを入れるフィルターとロートをここまで運んできていたのだった。そろそろ「ヒマラヤでキリマンジャロ!」にふさわしい風景になってきた記念で、第一弾のコーヒーを淹れたというわけだ。
部屋は2階に割り当てられたが、白い壁と天井で床にフェルトのグレーのカーペットが敷いてあり、シンプルだけれど広さも明るさもあって十分な部屋だった。宿代はこの部屋でNRS160(=US$2.42)。
共同の和式トイレもシャワールームもあの妹さんがきっちりと掃除しているのかタイル張りできれい。ただし、「ホットシャワー出ます」といううたい文句は厳しい。どこの宿も「ホットシャワー出ます」というがソーラーパネルに頼っているので、曇っている日はどうしても「温い」くらいが限界となる。
今日はとってもエネルギーを使って疲れたので、張り込んでステーキや肉料理を注文してみた。しかし、あまり満足できるレベルの料理ではないし量も少なく、結局焼きそばを追加注文することになった。やはりダルバート(カレーと豆スープとご飯のセット)が一番コストパフォーマンスがいい。それでもダルバートばかりでは飽きてしまうし、特に白人さんは肉が食べたい。ということで、この宿でステーキを注文している人はかなり多かった。そして焼きそばなどを追加注文する人もまた多かった。
お腹一杯になり午後7時には部屋に戻って9時に就寝。明日は1000m上昇してヒマラヤホテルまで行く。予定歩行時間も今日より長いので体力を回復しておかねば。
この日の食事については「本日の献立2007年10月22日」をご覧ください。
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