夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
目次Today's imagesTravel sketch食の楽しみPeopleAccommo旅行費用
Excursion移動の記録旅先で住むとしたら更新履歴日誌問合せAbout usENGLISH
北米
アメリカ合衆国
メキシコ
中米
ベリーズ
グアテマラ
コスタリカ
南米
ペルー
ボリビア
アルゼンチン
チリ
ブラジル
ヨーロッパ
スペイン
フランス
イギリス
オーストリア
ハンガリー
ブルガリア
中近東
トルコ
シリア
ヨルダン
北・東アフリカ
エジプト
ケニア
インド洋
モーリシャス
北・東アフリカ
マダガスカル
タンザニア
南アフリカ
マラウィ
モザンビーク
スワジランド
南アフリカ
レソト
ナミビア
ボツワナ
ザンビア
アジア
インド
ネパール
タイ
オセアニア
オーストラリア
 
2007.10.24
ABCへのトレッキング第四日目

ネパール:ポカラ

 チョムロンの宿に掲示されていた下の地図は距離の縮尺が正しくないようで、ヒマラヤホテルからマチャプチャレ・ベース・キャンプまでがかなり長い距離のように書かれている。しかし、実距離の忠実だと思われる「地球の歩き方」の地図を見ると、今まで歩いて来た区間と比べるとこの区間の距離はかなり短いはず。

 しかし、ヒマラヤホテル(2873m)からマチャプチャレ・ベース・キャンプ(3650m)までは高山病の症状がでるかもしれないと予想して、今までよりは短い距離なのだが、今日はマチャプチャレ・ベース・キャンプで一泊することにした。


 出発は朝7時半。ハイシーズンのマチャプチャレ・ベース・キャンプではベッドがなくなることもあるというパッサンの助言もあって、バラット君には先に行って部屋を確保してもらうことになった。


 ヒマラヤホテルを出ると、まずは上れ上れの30分となる。とはいえ、上っていく目の先にはいよいよ大きく見えてきたアンナプルナV(7555m)があるのだから、この坂道もかなり勇気づけられる。

 出発する時は半袖Tシャツ、中綿ジャケット、厚手のウィンドブレーカーを着込んでいたが10分も歩くとすぐに暑くなってTシャツだけになれる。私たちは、脱いだ衣類は背中のリュックに入れることにしていた。

 50分後の8時23分にデオラリDeorali(3231m)に到着。いよいよ3000mを越えてきた。高山病は3000mを越えたあたりから感じると聞いていたのだが、今の所は問題ない。

 以前、飛行機で海抜0mの海岸地帯からいきなり3600mの場所に飛んだことがあった。到着して5時間くらいしてから、頭痛が始まって夜間は呼吸困難と頭痛でよく眠れない3日間を体験したことがある。

 頭痛が始まるとしたら今夜ということになるだろう。歩いている最中はまだ問題がないようだ。でも、できるだけ水を多く飲むようには気をつけながらあがった。


背景部分と手前の歩いている部分を合成している
ので、多少妙な色合いの部分があります。
 デオラリのある山を回り込むように歩くと、右手にモディ・コーラ(川)沿いの道になる。森という感じではなくなり、ゴツゴツとした岩場に草が生えている場所を歩く。

 歩いている時にはあまり感じなかったが、こうして写真で見ると両脇にそそり立つ岩山が切り立つようで、その先に白く光る山が見えて、人間がとても小さい。こんな大自然の中を自分が歩いていたのかとあらためて気づいた。


 途中には人の背丈ほどもある巨大な岩がゴロゴロと川の中に転がっている場所もあり、理由なしに圧倒的な自然を感じさせてくれる。こんな巨石がどうしてここにこうしてゴロゴロしているのか。上から落石してきたのか、上流から激流で運ばれてきたのか。なぜこんなにスッパリとサイコロのように切断面が平らなのか。色々な疑問を口々に問いかけながら歩く道は楽しかった。

 そういえば、今日は上り道はあるが下ってはいない。

 仕事をした分だけ成果があがって、逆戻りしないというのは精神衛生上、非常にいい。

 川べりでちょっと休憩。ごつごつとした岩山の向こうに白く輝くマチャプチャレがくっきりと見える。

 マチャプチャレに焦点を当てて写真を撮ると手前が真っ暗になるし、手前に焦点をあてると奥の山が真っ白に飛んでしまうので、どうにか画像調整をしたのが左の写真。どっちつかずでぼけた写真になってしまったが、こんな風景でもっと色々な色が鮮やかだと思ってほしい。

 このマチャプチャレを見ながら川岸を歩いて行くと、道はいつしか左に折れて、10分後には目の前にアンナプルナVが見えてくる。

 いやー、今日は本当に歩き甲斐のある道だ。すごい景色が目の前にどんどん展開していくのだから。

 道は徐々に上り坂になってきた。30分も上った9時半頃に後ろを振り返ると、自分が歩いて来た川沿いに岩山が見える。横を通り過ぎている時には見えなかった頂上には粉砂糖のように雪が積もっているのだった。

 地層がそのまま盛り上がってできたような形だが、その規模があまりにも巨大で迫力があり、思わず何度も振り返って見とれてしまった。

 更に30分も坂道を上っていくとグレーシャードーム(7193m)を背景にマチャプチャレ・ベース・キャンプが見えてきた。ここの地点で午前10時7分。歩き始めて2時間半だ。おお、今日は楽勝なのではないか?


 もう20分も歩くと左手にアンナプルナサウス(7219m)がばっちり見える絶景ポイントになる。今まで雲や山に隠れて見えなかったアンナプルナサウスがこんなにも大きく、そしてくっきりと目の前に見えるのには、かなり感動した。

 ベース・キャンプは直前に上がる階段がかなり急でしかも長い。私はとうとうパッサンに背中のリュックを持ってもらうことになり、再び空身で最後の階段を上がった。

 楽勝とは思っているものの、体は疲れているようだ。

 バラット君は余裕で到着していて、すぐに部屋にチェックインすることができた。とりあえず、高山病対策としてコカコーラを1本購入した。ここまで来ると350ml一缶でNRS100(約200円)もするのだが、コカコーラを飲むと水よりも水分が体に吸収されやすい気がしている私たちは薬だと思って飲む。

 私は2800mのあたりで頭に鈍痛を少し感じていたのだが、高度があがっていくにつれ慣れてきて、MBC(マチャプチャレ・ベース・キャンプ)では頭痛は感じなかった。夫は全く問題なし。よかった、よかった。

 で、落ち着いて景色を見だしたのが10時44分だった。

 すごい。すごいの一言だ。MBCから見てマチャプチャレは東側にあるので午前中は逆光になってしまうのだが、溢れんばかりにふりそそぐ太陽の下で、冷たく大きく存在する山は私たちにのしかかってくるように見える。お湯をもらってキリマンジャロコーヒーを飲む。かー、これ以上の贅沢があるだろうかと思えるくらいの満足度が押し寄せてくるのだった。


 で、宿の下の方角、自分達が上がってきた景色もこれまた素晴らしい。

 眼下にはトレッキング道がずーっと遠くまで見えて野原になっていて、その左側にそびえる岩山に雪がうっすら積もっている。これらは名もない山なんだけれども、近くにある分迫力を感じる。その山頂とまではいかないがかなりの高度まで自分が上がってきたと思うと、これまた嬉しさが沸々としてくるのだった。

 「ねぇねぇ、あたし達ってすごいと思わない?」と夫に言うと、「たくさんの人が同じことをしているのだから、別にたいしたことじゃなんじゃない」と言う。いや、相対的な問題ではなく、絶対的な気分として「あたしってすごい!」と思えると言いたかったのに。相手にしてもらえないので、素晴らしい景色の中で「あたしってすごい!あたしって偉い!」といい続けたのだった。ほんと、ここに来るとものすごい満足感が押し寄せてくるから。

 しかし、こんな素晴らしい景色は10分もしないうちに、物凄い勢いで流れてきた雲に覆い隠されてしまって、辺りは真っ白。さっきの景色が嘘だったかのように、何もかもが霧の中に埋まってしまった。


 こうなると、もうおしゃべりをするか、本を読むくらいしかすることはなくなった。

 こんな時にイェーティーの話などは格好の材料らしくパッサンが山に住むという幻の生物イェーティーの話をしてきた。

 パッサンは以前日系の観光会社に勤めていたのだが、その時に日本人団体客が山で遭難する事故があった。1人を除いては無事に帰ってこられたのだが1名だけ亡くなった人がいた。彼の遺体のそばにあったカメラに残っていたフィルムを現像したら、何とそこにイェーティーが写っていたのだという。昔からイェーティーを写真におさめると命を奪われるという伝説があり、この時も地元の人は「やっぱり伝説は正しかったのだ」と思ったのだと言う。

 「ええ?、じゃぁパッサンはイェーティーの写真を見たの?」と聞くと、自分は見ていないのだが親しい同僚が見たと言う。そうなのだ。イェーティーの話は、ほとんどが「俺の友人が体験したことには・・・」とか「隣村で起こったってばあさんから聞いたんだけど」とか自分の体験ではないのが笑える。でもパッサンは真顔でニコリともせずに「イェーティーはいるんだよ」と言うのだ。どこまで本気で思っているんだろうか。

 部屋は今までと比べると一段と狭く簡素だが狭い方が温かいという配慮だと思われた。今までの宿もそうだったが、ここもパリッとした白いシーツが敷いてあって気持ち良さそうだが、いかんせん部屋にいるとジンジンと寒くなってくるので、人が集まっているダイニングでお昼ご飯を食べ、そのままお茶を飲んで午後を過ごすことにした。

 費用についてはツイン共同シャワー・トイレで一部屋NRS200、別途ダイニングのヒーターチャージが一人NRS70(=US$1.06)、シャワー用のお湯5リットルがNRS120(=US$1.82)だった。お湯がとても高いので、風呂に入らなくても気にならない人々はここではシャワーを浴びないと宣言していた。

 皆、暇そうだ。高度は3650mあるのだが少しくらいなら大丈夫だよと地元の人に勧められてロキシーという地元の強い酒を飲んだり、ラムを飲んだりし始めたフランス人は段々と杯が進んでいくが、なかなか酔いつぶれない。なかなか強い人らしかった。


 彼はもうネパールでのトレッキングも数回目ということで、前回使ったガイドを雇ってここに来ている。気心も通じているし便利なのだろう。

 私たちも次回はエベレスト・ベース・キャンプに行きたいと思っていて、パッサンにガイドを打診したのだが、パッサンの得意エリアがアンナプルナ山域ということで友人なら紹介できると言われた。ところが、このフランス人のガイドの若い青年はアンナプルナもエベレストもこなすという。パッサンと同じシェルパ族で、どちらかというとエベレスト方面を拠点にお兄さんと一緒にガイド業をやっているのだそうだ。パッサンに相談すると「シェルパの人間なら大丈夫だ」と言うし、もしかしたら次回お世話になるかもしれないと連絡先を聞いておいた。

 そんな風におしゃべりをしていると、本当に突然辺りの雲が切れて午後4時から5時15分くらいまでの間にマチャプチャレやアンナプルナサウスが再び姿を現した。


 午後になるとマチャプチャレに日が当たって、それは美しく青空に聳え立つ。もう1時間も晴れてくれると、ここに壮大な夕日があたってオレンジ色に染まるマチャプチャレを見ることができるそうなのだが、私たちの滞在中は曇ってしまって残念ながら見えなかった。

 夜、パッサンと明日のアンナプルナ・ベース・キャンプ(ABC)への出発時間を決めた。私たちは1時間半くらいで上れるというので朝7時半くらいに出ればいいかなぁと思っていたのだが、パッサンは朝4時半の出発を提案。というのも、ここの所天気が不安定なので明日の朝とABCに宿泊した翌朝の2回、朝日をみるチャンスを作ろうという計画だ。

 今日はせっかくMBCに来たにもかかわらず1日の大半が曇ってしまったことを、私たち以上にパッサンは悔しいと思っているらしかった。だから、明日からのMBCでは絶対にベストビューを見せてやりたい。そういうガイド心でパッサンが言ってくれているのがわかった。よし、明日は4時半出発だ。

 この日の食事については「本日の献立2007年10月24日」をご覧ください。


このサイトを友人に知らせる
目次About Us免責事項著作権とリンク
(c)2005-2006 海外生活実践研究会 All rights reserved