|
|
|
|
2008.01.08
ブルーマウンテン観光
オーストラリア:シドニー |
|
シドニーから日帰りで行ける観光スポットにブルーマウンテンというのがある。大きく段差の付いた大地のある高原で景色も良くて涼しいのシドニーの人々の格好の避暑地としても人気があるという場所だそうだ。
宿泊しているバックパッカーの壁にはブルーマウンテン1日観光ツアーの各社のチラシが張り出されていて、一番安いツアーでA$60(=US$52.17、2008年1月7日の換算レートUS$1=A$1.15を使用)だった。私たちはこれを利用して行こうと思っていたのだが、ダイニングで雑談していると白人女性のバックパッカーが「そんなのツアーを使う必要なんて全然ないわ!シドニーから電車で行って自分で回ることができるんだから」と言う。それはいい情報だ。
ここ数日、シドニーの無料で配布されている情報誌をたくさん見てきたが、ブルーマウンテンのツアーの広告はたくさんあるが自力で行く方法は誰も紹介していなかった。当然だ。そんな方法を紹介しても一銭にもならないからね。今まで情報と言うと日本人宿の情報ノートなんかを参考にしてきた私たちは、文字にされた情報というのが私たちにとって有益だという錯覚に陥っていたんだけど、先進国で無料で手に入る資料というのはすなわち広告で、必ずしも私たちの要求する情報じゃないんだってことをこの時に気付いたのだった。
昨日、午前10時に中央駅に到着した時に、シドニー往復と現地での周遊バスをセットにしたチケットを販売していることを知った。値段は一人
A$48.8(=US$42.43)。シドニーからブルーマウンテンエリアに一番近い駅カトゥーンバKatoombaまでの往復列車チケットとブルーマウンテンエリアにある20箇所の停留所に好きなだけ乗り降りできるBlue
Mountain Explorer Busというバスチケットが組み合わせになっていた。
結論から言うと、私たちにとってはこのチケットはあまりに割高で必要ないものだった。シドニーからカトゥーンバまでの往復列車チケットだけを購入すればよかったのだ。
ブルーマウンテンというのは大地に段差のある場所で、地図で見ると長く数十キロに渡っているように書かれている。確かにその通りで、ドライブしながら宿泊して長い時間をかけて楽しむこともできる。しかし日帰りで皆が行っている場所となると、カトゥーンバとその手前の駅ラウラLeuraの間に見所が固まっているだけである。
ラウラ駅はマイナーな無人駅だが、ここから段差のある場所までは楽に歩いて行け、この段差の上段の部分に沿って歩いていけば有名なスリーシスターズなどを含めたビューポイントをほぼ見て歩くことができるのだ。このコースで行くと、最後のカトゥーンバに近いあたりに段差の下の部分に急角度で下りていく登山電車とケーブルカーで谷を下っていくアトラクションがある場所まで到達する。ケーブルカーや登山電車は全て別途有料で、下に降りると洞窟を散策するコースがあるようだ。もちろん下に降りる階段もあるのでいずれか一方向を自分の足で行き、片道だけ乗り物を使うこともできるようだ。
私たちはラウラから歩き始めてケーブルカーの出発点に到達して、そこからカトゥーンバ駅に行く時のみバスを使った。シドニーからカトゥーンバまでの往復列車チケットがA$16くらいしかかからないので、この20分くらいのバス代金にA$33近く支払ったということになる。シーニックワールドからカトゥーンバに向けて公共のバスがあるかどうかは調べていないのでわからないが、ここの交通だけ何とか手配できれば、ずっと安く楽しめただろう。やれやれ。
もっとも、あまり歩かずにこのバスを有効活用して乗り降りすればこのバスも利用価値があるとは思う。
さて、ではどうして私たちはこのバスを有効活用しなかったのだろう。
それはこのバスがカトゥーンバ始発で半時計回りにしか巡回していないバスでラウラから始めようとするとものすごく時間のロスになることに気付いていなかったからだった。あーあ、やってしまった。
シドニー発カトゥーンバ行きの列車は朝6時42分、7時25分、8時25分と3本あり、その後は11時台になっている。朝7時25分発に乗り込んだ私たちは、地図を広げてカトゥーンバではなく一つ手前のラウラで降りて歩き始めようという計画を立てたのだった。
どーして?
いやー、何となくその方がいいかなぁと思って。
列車を下りてみると曇り空の下のラウラはとても寒かった。ここが高原であることを認識していなかったので、上着を持っていなかった私たちは一刻も早く歩いて体を温めなくてはと焦ったのだった。
さて、バス、バス。ここからバスに乗って最初の見所に出かけようとバスの停留所を探すのだがどこにも見当たらない。近所の人に聞いても知らない。ようやく開けかけた旅行代理店の人に聞いたら、バスはカトゥーンバ発で巡回してきて、この駅に最初に到着するのはあと1時間も後になるという話にがっくり。バス、使えないじゃーん。チケットを購入した時にもらった路線図をよく見るべきだった。これで、今日1日の計画が全く変わってしまったのだった。
ラウラの街は晴れた日なら、避暑地らしい涼しさを伴って、このひなびた感じも温かい目で見られただろうが、バスを使う計画が大失敗した私たちの目には薄寒い田舎としか映らなかった。いや、本当は感じよかったんですけどね。
小さな町を通りずぎると、あとは住宅地の中を歩くようになる。目指すGoldon
Fallsに到着したのは、駅を出てから25分後だった。
住宅街になっちゃった時は本当にこの道で合っているんだろうかと不安にかられたが、Goldon
Fallsの看板を見て、ようやくブルーマウンテンに来たという実感が沸いてきた。
看板から先は森の中に入っていって雰囲気も良さそうだ。おお、いよいよ国立公園チックになってきたではないかと落ち込んだ気持ちが再び上向きになってくる。「森の中の小道を歩いて行くのは気持ちいいねぇ」なんて会話も出てきた。
しかーし。
展望台に到着して、再び暗黒の闇に突き落とされた。霧で何一つ見えないのだった。
「今日来たのは失敗だったのかもしれない・・・」
少し上向きになった気持ちがみるみると再び萎んでいく音が聞こえそうになりながら、私たちは次の見所を目指すことにしたのだった。
ここから先はずっと森の中に遊歩道が続いていると地図に書かれているので進んでいく。
途中には変わった岩が見られ、そのオレンジ色とも茶色ともつかない交じり合ったアースカラーに緑色の草木が絡みついているのがいかにもオーストラリア的な配色で面白かった。
しかし、この遊歩道も10分も歩かないうちに樹木で覆われて道がなくなってしまっていた。
どうもあまり歩く人がいないし、整備もされていないようだ。
しかたなく車道を歩くことになった。
しかし、再び遊歩道への入り口を見つけて入ってみると、今度はちゃんと整備された遊歩道になっていて、ここから先はなんとなく先に歩いて行けるようになっていた。
道はどんどんと下っていくので、このまま崖の下の部分まで行ってしまうのだろうかと思ったのだが、そうでもなく、ある一定の所まで下ると小さな滝が流れている場所に出て、そこからはこんどは上っていく道になっていた。
天気は相変わらずはっきりとしないのだが、霧に濡れた草花が瑞々しく、滝の落ちる岩が苔むしている様が熟成した森の時間を感じさせる。何よりも新鮮な空気を吸いながら歩くのは街と違ってそれだけで楽しい。
この辺りの散策路は地図通りでないためにわかりづらく、途中で出会った人も「よくわからないけど、歩いたらここまで来たのよねぇ」みたいな事を行っている人が多かった。
大きな目的はスリーシスターズと呼ばれる崖が大きく3つにくびれてドレスを着た巨大な女性が3人立っているように見える場所。そちらの方面から歩いて来た人にも出会ったので、この道であっているのだろうと歩き続けたのだった。
途中にはいくつかのビューポイントがあり、相変わらず霧に覆われてはいるものの、少しずつ晴れてきていて近くの滝などは見えるようになってきていた。
中にはタワシのような植物が見られたり、巨大なシダ類の根株が面白い場所などもあった。目と同じ高さに見えていた滝が眼下に見える所まであがってくると、溶岩が覆いかぶさって冷えて固まったような化石岩Fossil
Rockという場所に到着する。
きのこのように盛り上がった岩など、とにかく硬い岩にもかかわらず曲線で縁取られた景色は硬いような柔らかいような不思議な景色を作り出していた。
ガウディの建築みたいだ。
今歩いているパスはプリンス・ヘンリー・クリフ・ウォークという名前のパスらしく、化石岩の先からスリーシスターズがよく見えるエコーポイントまでは2.4km、その先のシーニックスカイウェイ乗り場までは4.8kmという表示があった。やっと歩く指標となる看板を見つけたってわけだ。
もう少し先に行くとBurrabarrooというビューポイントがあり、ここで持参のお弁当を広げることにした。
ここも先ほどの化石岩と成り立ちは同じなのだろう。岩が波打っている。
ここまで来て、崖の上やら下やらに行きつ戻りつクネクネとした崖の上の方伝いに来たということがわかる。
霧がだんだんと晴れてきて、深い谷をはさんでくねった崖が向こう側に見えてきたのだ。
もうしばらく歩くと、だんだんと向かい側の岸壁の様子があらわになって楽しい景色になってきた。
崖は円柱を並べたようにもこもことしていて、途中で生えた草がのっかっているのがユーモラスな感じ。目の下から向かい側の崖までは深い森林に覆われている。
今回、私たちは上の道を歩いて来たが、この森林の中をずーっと歩くコースもあるようだ。
エコーポイント、エコーポイントと探しながら歩いてくると、突然門構えのある小道への入り口にぶつかった。
門にはスリーシスターズ・ジャイアント・ステアウェイThree Sisters Giant
Stariwayとある。つまり、ここからスリーシスターズの足元に行けるらしかった。
私たちはスリーシスターズを遠目で見ることばかり考えていたので、足元に行けるというのは嬉しい驚きだった。
門をくぐってやや下ると、すぐにもスリーシスターズ岩の横側が見えてきた。岩の下の方にとても小さく人影が見える。目の前で見ると巨大で迫力のある光景だった。
どんどんと急になる階段を下っていくと、下にはたくさんの人がいてびっくり。今日こんなに人を見たのは初めてだ。
ブルーマウンテンはツアーや私たちが買ったような現地バスで移動する人がいかに多いかということを物語っていた。
岩の足元にパックリと開いた裂け目が通路の終点。見上げると変わった色合いの岩が層になっている。スリーシスターズやこの周辺の岩はこうした層が気の遠くなるほど重なってこんな巨大な岩を形成しているというのが間近に見られた。
午後1時半にエコーポイントに到着。ここは広い駐車場を構えた展望レストランや土産物屋やトイレがある観光休憩スポットで、バスや車でのりつけた多くの観光客がいて、一際賑わいでいた。
アボリジニのおっさんもディジルドゥーを吹いて一稼ぎ。
このエコーポイントに到着するころには少し青空ものぞいて太陽の光がさしてきた。いやー、バスに乗ってさくっと到着していたらこんな天気はのぞめなかったから、結局歩いてきて良かったってことになる。災い転じて福となすってことですね。さっき足元まで行ったのは一番左の岩。そこから先にまだ2人も姉だか妹岩が続いている。
スリーシスターズから右に目を移すと深い森がこんもりとした丸屋根を連ねながらずーっと先まで続いていて、その先にはまた崖が見えている。森の屋根には雲が影を落としてゆっくりと動いているのが見える。
いやー、ダイナミックで気持ちのいい景色だ。
白人さんの真似をして、私も柵を乗り越えて写真を撮影してもらった。後ろは断崖絶壁なので振り返るとこ、怖い。
このエコーポイントから美しい野の草花をみつつ10分も歩くとゴンドラ乗り場に到着する。シーニックワールドという名称を付けたゴンドラは空中散歩しながらスリーシスターズを見られる。ゴンドラは、この先の終点で崖の下に降りる登山電車やケーブルカーの入り口に接続していて、全部のチケットを買えばバラバラに買うよりもお得ななんちゃらセットチケットなどが販売されている。
ネパールのトレッキングというと、ひたすら何もない自然の中を歩くことになっている。正直、「ちょっとくらいゴンドラくらい作ろうよぉ」と文句を言いながら歩いていたこともある。
しかし、ここのように、「はい、この乗り物に乗ったら次はこれですから。セットで買うとお得よん!」とか言われるて妙に便利になってお膳立てされてしまうと、自然との直接の触れ合いを阻害されたようで興ざめする。便利で楽には違いないが、体を使ってこそ楽しいというのもあるのになぁと。
このゴンドラはそんな気持ちを呼び覚ましたので、ゴンドラには乗らずに相変わらず崖沿いの道を歩くことにした。
ここの道中には滝が見られる所がある。今日は今まで見た中で一番美しい滝だった。というのも、太陽の光が燦燦とあたって滝の上に虹が出ていたからだった。これを思うと、朝からずっと晴れていたら、もっと景色が楽しかったろうにと思う。
ゴンドラはもう終点に入りかけているのだが、遊歩道はここからまた下って上る600mのFurber
Stepsという散策路に入る。
少し下っただけなのに、上の乾いた太陽の当たる世界とは全く違って、鬱蒼としたシダ類や苔むした岩の間を滝や小川が流れる湿った昼尚薄暗い世界になる。
この散策路はこの明るい世界と下の森の世界が短い距離で楽しめるようになっているのが魅力だった。
そして、再度上に上がると、スリーシスターズから次の崖のウネリを越えて、もう一つウネッた場所に出たてくる。
そして5分くらい歩いたところがゴンドラの終点であり、ここから下の森の世界に深く入るケーブルカーと登山電車の入り口になっていた。
ここもエコーポイントと同じく、土産物屋とレストランと売店とトイレのある場所。
ここに到着したのは午後3時45分頃のことだった。途中で1時間の昼食休憩やポイントごとで少しずつ休憩を入れながら歩いてきたので全行程12kmくらい歩いたかなぁ。
これから下界にくだっても時間があまりないし、ここで観光終了で帰ることにした。
バスは1台遅らせて1時間後にして、ここでスムージーを飲んで体の火照りを取りながら休憩。たくさん歩いた後の満足感が体の隅々まで感じられる心地よい日になった。
帰りはスムーズにバスに乗って、今日ずっと歩いて来た道を逆走してラウラ駅まで行き、そこから折り返してカトゥーンバ駅まで戻って列車に乗った。因みにシドニーとの往復はいくらだったんだろうかと調べてがっかりしたのもこの時点である。
歩くことを厭わない人は、シドニーからカトゥーンバの往復列車チケットだけ買って「晴れている日に」ブルーマウンテンにでかけよう。朝は寒いから長袖も忘れずにね!満足できる1日が約束されている場所だ。
|
|
|
|