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2008.02.09
地球の鼓動と天然カラーマジック〜Wai-O-Tapu
ニュージーランド:ロトルア |
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Wai-O-Tapoはタオポ活火山地帯の中に位置していて、マグマによって温められた熱水の活動が広い範囲に渡って見られる自然保護区に指定されている場所だ。
Wai-O-Tapoに限らず、地表から熱い湯がボコボコと泥を押し上げたり、間欠泉と呼ばれる一定時間に熱い湯が地表から空に向かって吹き出る場所などがロトルアの周辺にいくつかある。観光案内所で見た中では、他にヘルズ・ゲイトHells
GateやテプイアTe Puiaという場所があった。いずれも公共の交通機関はなく、ツアーに参加して行くか、自分の車で行くことになる。
この3つの候補のどれにしようか?
宿ではヘルズ・ゲイトのツアーが通常価格N$50のところN$35にディスカウントすると書かれていた。テプイアは間欠泉とドロドロ地表の他にマオリの伝統芸能、キィウィを飼っている場所見学、ネイチャーウォーク、アートギャラリー、手工芸工房見学とテーマパークのようになっている。
ヘルズ・ゲイトが値下げしているのは人気がなくて人が集まらないから、テーマパークにしているのはどれか1つだけでは間が持たないからだと判断し、間欠泉とハイドロサーマルシステム(熱水系)の見学に絞って値下げもしていないWai-O-Tapuに行くことに決めた。
ツアーは宿とWai-O-Tapuの送迎と入場料金で一人N$50(=US$39.68、2008年2月4日現在の換算レートUS$1=N$1.26を使用)。自分の車で行く場合、観光案内所で10%の割引券を発行してくれて、Wai-O-Tapuの入場料金が通常N$25の所、N$22.5になるようだが、私たちには関係ない。宿ではWai-O-Tapuへのツアー受付を行っていなかったので、観光案内所で紹介してもらったツアー会社に電話して予約を行った。
電話では、名前と宿泊している宿名と参加人数を告げただけ。「はい、それじゃ明日、宿の前に9時に迎えに行くからねー!」で予約終了。支払いのこととか、前金としていくらかほしいからクレジットカード番号を言えとか全くなくて、こちらが拍子抜けするくらいに簡単だった。
そんなに簡単に予約すると、かえって不安になる。しかし、ちゃんと時間通りにお迎えがやってきて、しかも私たちの宿から乗り込む人も結構多かった。
あまり場所を把握していなかったのだが、車はロトルアからどんどんと南下して50分後に最初の見所に到着。
あまり公園の入り口っぽくないと思ったら、ここは地表にブクブクとあわ立つMud
poolという場所で、10分くらいの立ち寄り場所だった。
辺りにもうもうと硫黄のにおいを撒き散らしながら白煙があがっている沼は朝の光を受けてモノトーンに輝いていた。
そこここでボゴッと音をさせながら噴出す渦上の泥が見られ、勢いのあるものは泥の塊を空中に持ち上げるほどの力があった。
マグマがあるというのは頭で理解はしているものの、こうやって地表までその威力を見せ付けてくると、いやいやこれは本当に地球の真ん中はグラグラと煮えたぎってるんだろうなぁと思わざるを得ない。
ひとしきり写真を撮ってバスに乗ると、お次の停車場は間欠泉だった。ここもまだ、Wai-O-Tapuではなかった。
バスを降りてみんながぞろぞろと向かう方に歩いて行くと、森を背景に小さな土の山ができていて、そのてっぺんからモクモクと煙が噴出している場所に出た。
周囲は手すりで囲まれて、まるでステージのようになっていて、手すりの後ろの階段状の座席にはすでにオーディエンスが間欠泉のお出ましを待っているのだった。
10時15分に気楽な感じの男性がステージに登場。彼はこの周辺のマグマの活動やなぜ間欠泉が起こるのかという説明を行った後に、土山のてっぺんに開いた穴にサラサラと何かを流し込んだ。塩かなぁ?
それからも説明を続けていると、後ろの小山の穴からブクブクと泡と水が一緒になって流れ出し始める。ここからは彼と小山の掛け合い漫才のようになっていた。「おいおい、俺はまだ説明中なんだから、まだ出しちゃぁだめじゃないか」。
もう皆の目は、彼の後ろのだんだんと噴出している穴に釘付けた。
更に説明を続けていると、だんだんと穴からの水は勢いを増して、ついてにはシュワーーーーっと高い水柱になって上に吹き上がったのだった。
ほー、上がる上がる。皆写真を撮る、撮る。勢いはすぐにマックスになってそこから2分くらいでじょじょに高さが収まってくるのだが、それでも5分してもまだまだ高さのある水が上がっていた。
間欠泉の見物が終了して、いよいよWai-O-Tapuに移動だ。車を降りるとプラスチックで固められたオレンジ色のカードを渡された。これがチケットだそうだ。入り口で渡したら手元には何も残らないのだが、何回も使えてエコロジカル。ちょっと気に入った。
入り口でパンフレットを受け取ってみると、なかなか広い範囲に渡って散策できる。どのコースも環状になっていて入り口に戻ってくることができるのだが、一番遠くまで行くと75分かかることになる。入ったのが10時40分で、帰りの集合時間が12時。1時間20分ってことは80分しかない。ぎりぎりではないか。
早速もらった地図に従って歩き始めた。
道は幅広くて緩やかにアップダウンしながら進んでいた。両脇にはえぐられたような穴がいくつかあり、そこから硫黄や他のミネラルが噴出しているらしく黄色やオレンジ色に染まってるのが見られた。
見所には名前がつけられていて、手元の地図には番号と名前を見ると自分の現在地がわかるようになっている。1つずつの見所の間は距離があり、全部で25もの見所があり、これはなかなか充実した散策になるなぁと最初の段階で思った。
ネーミングは「硫黄の洞窟」のようにそのまま状況説明したもののあるが、「悪魔のインク壷」のようにちょっと考えられたものもある。そのセンスがニュージーランド的だという視点からも景色を楽しめた。これを見て、日本人だったら何と命名するだろうか。
ゆるゆると坂を上がってここまで来ると、眼下に「アーティスト・パレット」と命名された景色が広がる。広々とした場所は薄く水が張っているようなのだが、全体がクリーム色のキャンバスに一部エメラルドグリーン、一部レモンイエローの円形模様があり、右奥にはモクモクと白煙を上げるグリーンとオレンジの湖が見ていてた。
手前左の緑色の池の方から時計回りに回り込む道があって、だんだんと下りながらベージュのキャンパスに近づいていく風景が、今日の散策コースの中で一番わくわくする部分だった。
緑の池も近づくと白煙をあげていて、温度が高いことがわかる。
道はやがてキャンバスを横切る橋の上を渡っていよいよ奥に見えていた湖へと続いていくのだった。
湖は面積も広く白煙に覆われていて本当に近づくまでよく見えないのだが、湖畔まで到着すると、湖の縁が見事なオレンジ色の岩になっていて、湖があやしく深い澄んだ緑色になっていることを知って驚いた。
時折サーッと風が吹いて白煙が一層され、延々と続くオレンジと緑の縁がグルーッと見える一瞬があり、また次の瞬間には白煙に覆われていく。この一瞬の晴れ間を見たいがゆえに、誰もがここに釘付けになってしまうのだった。
オレンジと緑の池で引き返すこともできるのだが、私たちはもっと先に進むことにしよう。
林の中を抜けると、眼下に薄いグリーンの沼というか湖が段状になっている場所が見える。下に小さく人影が見えることから、どうやら散策路はあそこに降りていくようだ。
降りていく道の前に注意書きがあったように、ここから先は散策路は狭くなり、車椅子などでの歩行は無理となる。また、左右はジクジクとした場所が多く、近くの池からは無数の泡が上がっていたり、流れる川の温度が高かったり、足元に硫黄がたまっている場所があったりと、なかなかワイルドな道になってきた。
普通に歩く分には、別に難しい散策路ではないのだが、より地球の鼓動が感じられるという場所だ。見た目は地味なんだけどね。
写真で見ると地味になってしまうけれど、あっちからボコボコと湯があがっていたり、煙があがっている温泉荒野ともいうべき中を散策していくと、温泉に丁度いい円形のオイスタープールと名づけられた場所なんかもある。もちろん、こういう誘惑を感じる人に向けて「入っちゃ駄目」マークがばっちりと付いている。
また、この辺りから噴出した成分で様々な色に染まってしまった洞窟、圧巻なのはオレンジ色に染まってしまった木の枝などを見ながら、最終的に散策路はエメラルドグリーンの湖に到着して終点となる。
ここから、引き返していくのには途中から別の散策路が設けられていて飽きないようになっている。その散策路は緩やかに上る坂なのだが、右側が水の薄い川になっていて、流れる川に含まれる石灰だろうか、長い時間をかけて堆積してヴェールのようになっている部分があった。
トルコにパムッカレという石灰が堆積して棚田のようになった世界遺産の場所があるのだが、あれに比べる色もグレーがかって段差もあまりないので、「お見事!」という感じではないのだが、よく見ると模様が美しく、途中に硫黄が噴出して黄色のアクセントを付けている場所もあって、これはこれで面白い。
このヴェールの川を上りきると、オレンジと緑の湖に到着。ここから今度はキャンバスの反対側を回って散策終了となる。時計を見るとかなり時間が経過してしまって、後はかなり急ぎ足になってしまいそうだ。
それでも、このオレンジ色がどうしても魅惑的で、またまた多くの写真を撮影してしまった。ここが私たちとしてはハイライトだ。
ここから先はもうあまり驚くべきものないらしいと、相変わらず白煙をあげる穴を覗き込んだり、鉱物で赤く染まる岩を見ながら歩いていったのだが、最後に「悪魔の風呂(デビルズ・バス)」という名の黄緑色の沼の色にはびっくりした。
透明度0パーセント。まったりとインクを溶かしたような、そのトロミの質感が見るだけで伝わってくるようなこってりとした色の風呂、いや沼だった。
周囲が白い岩壁なのも、沼の色を一層引き立てている。美しいというよりは、自然の中にあるのに妙に人工的に感じられてその不調和が「ぎょっ」とするのだ。これが最後に見られるなんて心憎い演出だ。
ということで、集合時間ぎりぎりにバスに戻ってみれば他の人はもう着席している。みなさん、意外にパンクチュアルでいらっしゃる。
待ち時間なしでバスは出発し、ロトルアの宿に戻ってきたのは12時半過ぎだった。午前中だけのツアーだから軽い、軽いと思っていたが散策が入るので充実した気分で帰ってこられる。このツアーに参加して、夕方からスパに行くという順番が良かったかもしれない。
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