夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2008.02.12
トンガリロクロッシング〜1日トレッキング

ニュージーランド:チュランギ

 チュランギにやってきた目的は唯一つ、トンガリロ国立公園でのトレッキングだった。ここでのトレッキングが面白いというのは、ある個人のサイトで知った。

 秋場研(http://homepage2.nifty.com/treknz/index.html)というサイトなのだが、主催の日本人男性はニュージーランドに長期滞在(ワーホリか?)している間にトランピングしまくったようで、その詳細な情報を掲載していてくれたのだった。そうそう、ニュージーランドではトレッキングのことをトランピングと言う。イギリス人に聞くと英語の古い言葉で「歩く」という意味があるのだそうだ。イギリスではもう日常的には使われない言葉なのだそうだが、ニュージーランドではいまだに生きた言葉として使われているのが面白い。

 秋葉さんのサイトの中でトンガリロ国立公園でのトレッキングと南島のテアナウという町から出発するケプラートラックKepler Trackが面白いと書かれてあったので、更にインターネットで調べてみると人気なのは1日で8時間のコースを歩くトンガリロクロッシングと数日かけてトランピングするノーザンサーキットらしいとわかった。更に、最近は「ロード・オブ・ザ・リング」のロケに使われたとうこともあり、人気に拍車がかかっているのだそうだ。

 「ロード・オブ・ザ・リング」かぁ。ちゃんと見たことはないが、細切れの記憶に薄暗い森や垂れ込める曇り空の下の殺伐とした荒野などが浮かぶ。ふむふむ、行ってみようではないか。

 ということで、ロトルアの次にトンガリロ・クロッシングを行ってウェリントンから南島に渡ることにしたのだった。

 トンガリロ・クロッシングを行おうとするには拠点となる町がいくつか考えられるが、私達は自分達のルートとして最も安く行けそうなチュランギを拠点にすることにした。チュランギ以外に拠点となれる町は、

・ワカパパ村Wakapapa Village→トランピングするには一番近い村だが、この村に行くために交通費がかかることと、自炊するための安い食材を売っている店がなさそうなので却下。

・ナショナルパーク村National Park Village→ドミトリーのあるホステルもあり、自炊のための食材調達も安くできそうだったが、ロトルアからウェリトンに移動する動線上にないので立ち寄るための交通費がかかるため、却下。この村からトンガリロ・クロッシングへの往復バスサービスはNational Park Backpackers(www.npbp.co.nz)から出ている。

・タオポTaupo→トンガリロ・クロッシングへの往復バスサービスを出している町としては一番規模が大きく、観光客にも人気のある町だ。人気の理由は湖畔で風光明媚だという他に、バンジージャンプやロックンロープというドキドキするアトラクションやカヤックやセイリングなどの水辺の遊び、丘をボードで下るマウンテンボーディングなどが用意されている。そんな場所だけに宿泊料金や自炊用の食材が高いことが懸念され、またツーリスティックな町だとドミトリーにろくな人間が集まらないという経験から避けた。

 チュランギに到着して、Extremeという観光案内所の向かい(といっても間に空き地があるので50mは離れているが)にある宿に到着すると、宿のお母さんがさっそくトンガリロ・クロッシングの説明に入った。まぁ、とにかく部屋に入って荷物をおろさせて欲しいと言いたかったのだが、説明が終わるまで何者もの介入を許さじという勢いだったので最後まで荷物を持ったまま話を聞くことになった。

 宿のお母さんによれば宿からトンガリロ・クロッシングまでの往復バスの手配ができるということで、値段は往復N$35(=US$27.56、2008年2月11日現在の換算レートUS$1=N$1.27を使用)。これは事前に調べた通り。天気予報は数日後まで低気圧が続いているので、宿側としても天気が回復するまでバスは出さないことを理解して頂きたいという話だった。チュランギには他にも素敵なお散歩道がいくつかあって、とここで地図を取り出して、いくつかある散策コースの説明。全ての説明には10分くらいかかった。ふー、やれやれ。

 低気圧が来ているとはいえ山の天気は変わりやすい。到着した翌日の11日の早朝、期待をこめて朝からキッチンでお弁当を作って待機していた。バス出発時間の朝7時までには、そんな期待に満ちて完全装備した客が7〜8人になっていたのだが、宿のお父さんが天気予報図を持ってダイニングに入ってきて「今日も天気が悪そうだねぇ、でも行きたい人がいたらバスを出すけど」と予報図を壁に張り出したのを見ると、全員がっかり。どう見ても難しそうなのだ。ということで、11日は待機の1日となった。

 チュランギは村といってもいい規模の町で、観光案内所の周りには10軒ばかりの商店が集まったショッピングモールと大型スーパーと酒屋のある場所にガソリンスタンドもあって、それで終了という所だ。宿泊者の目的はトンガリロでのトレッキングに他ならず、11日は皆、宿で本を呼んだり、ビデオを見たり、日記を書いたり、おしゃべりしたりして過ごした。どうしても気になるのは明日の天気だ。集まれば天気の話、そんな1日だった。

 そして翌12日、今日も朝からお弁当を作ってトランピングの装備で朝7時を迎えた。皆、緊張の面持ちでダイニングで待機しているとニコニコ顔のお父さんが天気予報図を持って入ってきた。「みんな、今日まだ曇りは続くが、何とか大丈夫そうだぞ!」

 昨日1日で生まれた連帯感というのだろうか、「うわーい!」と私達は皆で小躍りして出発することになったのだった。

 この宿ではスキーストックを無料で貸してくれる。日帰りトランピングとはいえアップダウンも多いコースなので、私達も1本ずつ借りていくことにしたのだった。

 チュランギを出た7時40分は青空の広がる快晴だったのに、山々を回りこんでトンガリロ・クロッシングの出発点に到着した8時半、空は厚い雲に覆われた暗い天気になっていた。どうなるんだろうか、今日の天気。

 シャトルバスはトンガリロ・クロッシングの終点地に午後4時半に迎えに来てくれるので、それまでにゴールして欲しいと言う。宿での説明では午後4時半と6時半の2本あると言われていたのだがと聞くと、この時期は1本しかやっていないと言われた。8時間かかるトレッキングの迎えが8時間後で大丈夫なのだろうか。皆口々に不安を述べたのだが、運転手は「大丈夫、大丈夫。そんなに時間はかからないから」と言って去っていってしまった。

 出発地点にはトイレと案内図があり、これからのコース説明がされていた。やはり、全部で8時間半かかるようだ。因みに赤い点線がノーザンサーキットで2泊3日とか3泊4日かけて歩くんだそうだ。ニュージーランドのトランピングの宿泊所は本当に寝るための場所と水しか用意されていないので、自分で食品も調理器具も持って歩かなければならないのが厳しい。今回日帰りにした大きな理由はそれだった。


 8時間で歩ききれるのかという心配もあったが、たかだか20人くらいしかいないので置いてきぼりになることはないだろうと、歩き始めたのだった。

 最初の30分はほぼ平坦な道を歩くコース。

 曇り空というのもあるが、周囲は枯れたような色合いの草が生い茂った中に、スモーキーなピンクやグリーンの草や花が見られる風景だった。

 ニュージーランドの自然の中に初めて入り込んだ第一印象。それは「渋くてスタイリッシュ」ということだった。枯れているように見えるのだが、決して魅力がないというわけではなく、都会のフラワーアレンジメントのプロがドライフラワーなどで苦心して作り出した世界が、天然で目の前に存在している、そんな感じの風景なのだった。

 歩き始めて30分を越える所から、急坂を上がっては小休止という場所がいくつか出てくる。思ったよりもきつい上り坂もあり、なかなか大変なのだが、その分、視線がどんどんと上がって振り返った時の楽しみが大きい。

 振り返って見れば、枯れ草のような中を歩いて来たと思っていたのだが意外にも緑の絨毯のように見える景色が広がって驚いた。山を上がり始めてから黒々とした大きな岩がゴロゴロと見られ、いよいよロード・オブ・ザ・リングの世界に近くなってきた。

 途中から川沿いを歩く部分があるのだが、この坂道もきつい。70代と思われる白人の老夫婦はここまで厳しい道だとは思っていなかったらしく、「今日はここで断念するわ」とさっさと下山していってしまった。

 確かに出発地点の高低差を現した表では、この場所はまだまだ平坦といってもいいくらいの線で描かれていて、この後、もっと急な坂道を上ることになっていた。

 でも、この後の急な坂道は急だけれどちゃんと道があるので歩きやすかったが、この坂道は道なき道を行くという感じだったので、そういう意味ではここが一番の難所だったのかもしれない。

 今日の私たちはストックという強い味方もあって、こうした坂でもさほど苦痛なく上がって行けた。ここのトランピングにはストックを借りていった方がいい。

 坂をいくつか上ると曇り空がますます近くに感じられるようになった。周囲は黒い岩がゴツゴツと転がる中に枯れた芝生のような草が生えていて、遠くの山は深い緑の絨毯と黒い岩に覆われて霧でしっとりと湿って見える。

 薄暗く、湿って陰鬱な世界観。まさに小人が現れてきそうなロード・オブ・・・の世界が迫ってきた。ニュージーランドにいる間に一度くらい見なくっちゃなぁという思いが募ってくる(この後、ニュージーランドの旅ももう終わる頃にマウントクックのホステルで見ることができた)。

 歩き始めて1時間、9時半にSoda Springという場所(標高約1350m)で10分ほど休憩した。ここにはトイレも用意されている。

 ここから次のポイントのSouth Crater(標高約1675m)まで40分で一気に上る。ほぼ平坦な場所がない上れ上れの道だった。

 当然、目線はぐいぐいと上がる。振り返った景色の先が平野なので視界がどんどん開けていって登り甲斐のある場所だ。

 まるで荒野の山道を行っているように見えるが細く道がついていて、自分で道を模索しながら登っていくわけではないので見た目よりも簡単。でも足に負担は大きいのでストックが再び大活躍の場所だ。

 坂の途中でちょっと一息入れて、再び上を目指す。坂は上に行くと上に伸びて見えていつまでたってもずーっと上り道が続いていくかのように見えるのはいつものことだ。

 10時10分、とうとう上りきった場所から振り返ると遠大な景色が見渡せた。




 ここから先は、今までの坂道が嘘のようになくなって真っ平らの部分を歩くことになる。遠い先がまた坂道になっているのが見え、右手には標高2291mのMt. Ngauruhoeがゆらりと見えていて、左手も持ち上がっている。

 つまり360度丸く縁が持ち上がったお盆の中を横切るような感じになっている。ここで、この場所の名前がSouth Craterだったと思い出す。クレーター、つまりここは噴火口だった場所なのだ。お盆の中は今まで登ってきた道とは違って細かいベージュの砂が敷き詰められたようになっている。

 こんなに大きな穴からドーンと溶岩が噴出して周囲に赤く燃える石を飛び散らせ、それがゆっくりと冷え固まって黒い石に変わっていったのだろう。その間にもクレーターにはゆっくりと砂が降り積もって、雨が降って平らにならして今の形になっていったと思われる。

 ここに至った時に、道中で目にした風景が「途方もない時間の長さ」という重みを加えて思い出されるのだった。トレッキングの面白さの一つは、自分が通ってきた地形から長い時間の流れを物語として体感できることにある。今日もまた、大昔に起こったであろう大噴火からゆっくりと現在の形になるまでの「時間」の物語が自分の中で怒涛のように押し寄せてくるのを心地よい身体の疲労と共に感じた。

 休憩ともいえるクレーター散策が終わると、道はまた上りになった。クレーターの縁を上がりながら左方向に回り込んでいくと、今度は上からクレーターの全景を見渡すことができる。赤い線をズーッと歩いて来たことになる。


 クレーターの縁が持ち上がった左側は再びガクッと斜面になって下がり、それが下まで続く荒野となっている。草木はなく荒々しい土の色がある部分は黄色く、ある部分は黒く、赤く様々な色にグラデーションしていた。


 クレーターの縁は左に行くほど坂がきつくなり、とうとう見上げるような坂道になる。いつの間にか雲がなくなって目線の先に青空が広がっていて、空に向かって歩いているような気分になれるのが救いの坂道だった。


 上りきって振り返ると、更にクレーターの全景がよく見えるのだが、もう少し先に進んでみると目の前には驚くような色の風景が広がっていた。ここが標高1886mのレッドクレーターだ。本当に赤い。そして上の方は黒い。赤と黒。こんな色合いの山は見たことがない。いやー、ここまで登ってきて良かったなぁと心から思えた。

 道はここから左へとずれ、赤と黒のクレーターを正面に見るようになる。正面から見ると右手に岩がまるで破れた紙袋のように薄く壁になって見える部分がある。岩山を溶岩が突き破って出てきてこんな風になっているのだろうが、岩をプラスチックのように溶かしてしまう高温というのは一体何度なのだろうか。真ん中から左側はグニャッと前側に垂れたような岩になっている。赤い色が熱を連想させるというのもあるが、物凄い自然の力を感じる風景だった。クレーターの左側や下の方をのぞくと、まだシューシューと白煙をあげている穴がいくつかあり、辺りは硫黄の匂いが漂っていて、まだまだマグマが足元でくすぶっているというのが益々力を感じさせる。私たちは、ここの風景に見とれてしばし休憩を取った。


 ここで今日のトレッキングコースの高低表を表示する。レッドクレーターが一番高い場所だということがわかる。ここまで来たら、後半戦はほぼ下りだ。


 レッドクレーターを正面に回り込んだところから下る道の先には、こんな曇り空の下にもかかわらず驚くほど美しい湖が2つ見え、その先の上がった所にも湖が見えている。

 手前がエメラルドレイク、奥がブルーレイクだ。今日のトランピングのハイライトとも言えるエメラルドレイクは、近づいて行くと乳白色でトロッとした水であることがわかる。晴れていればもっと緑が濃く見えるはずなのが残念だ。


 12時まであと15分という丁度いい時間ということもあり、多くの人はここでお昼ご飯を広げて休憩。私たちも張り切って作ってきたお弁当を広げて、おにぎりを食べ始めたその時、雨がポツリ、ポツリ。オー、ノー!


 おにぎり1口だけ食べて、すぐに出発せざるを得ない状況になった。

 雨脚はいよいよ強くなるばかりで、あたりには雨を避けられる場所は1つもない。私たちは雨の中で、この旅で購入したウォータープルーフのジャケットとパンツを着込んで帽子を被ってフードもかぶり手袋もした。雨によって気温もグッと下がって急に寒くなっていったからだった。

 これで、上は半袖のTシャツ、薄手のフリース、ブリーザブル(通気性があって)でウォータープルーフのウィンドブレーカー、下は夏用のトレッキングパンツの上に私はウォータープルーフのパンツを持っていないので日本のユニクロで購入した中綿入りのパンツ、夫は完全防水の薄手のパンツを重ね着。この時期の大雨の中でこれだけ着込めば寒くはなかった。

 ウィンドブレーカーも夫のウォータープルーフパンツも南アフリカのケープタウンでK-wayというブランドのものを購入した。今まで雨の中で使ったことがなかったので丁度いいテストだ。

 ヨーロッパでゴアテックスのウィンドブレーカーは300ユーロ、つまり4万5千円くらいしていたのだが、K-wayは独自の技術を使って1万円くらいだった。表の生地は親水性があって濡れてきてしまうのだが、中に防水性の生地が使われているらしく激しい雨にうたれたが中は全く濡れないし、通気性があるのでむれない。まさに体内から出た湿気は外に出し、外からの雨は中に通さないというゴアテックスと同じ機能を持っているのだった。いやー、いいウィンドブレーカーを買ったなぁということがわかったのだった。ウォータープルーフパンツは見た目も内部がビニールのようになっているのに蒸れない。もちろん全く水は通さない。いやはや、素晴らしいのだった。

 ということで、雨にたたられてはいたが南アで買った製品の良さを実感できて、かなり気分よく雨の中をじゃんじゃんと歩いたのだった。エメラルドレイクを過ぎてブルーレイクまでは上りなのだが、ブルーレイクからはもう最後まで下りだ。

 登ってきた道に比べれば緩やかに下っていく道で、どこまでもウネウネと下まで続いているのが見えた。

 途中の山の上にあるのはKetetahi Hutという山小屋。あそこまで行けば雨宿りができると歩いているうちに1時間ほど降り続いた雨はやんでしまった。

 午後1時22分、エメラルドレイクから1時間30ほどでハットに到着。ハットには雨宿りする人がたくさんいて、座る場所もない程だったが、雨も止んできたので20分もすると皆どんどんと思い思いの方向へと去っていった。

 そこで私たちはようやくお昼ご飯をゆっくりと食べることができたのだった。

 ここから最終地点の駐車場までは2時間半と案内板に書かれていたが、最初に見た案内板の時間よりかなり速いペースで歩いているので午後4時半のピックアップに間に合うためには、午後2時に出ればいいだろう。ハットでゆっくりと休憩して、午後2時に出発した。

 ハットを出てしばらくは、左手の斜面から所々煙のあがる場所が見られた。先ほどのレッドクレーターで見たのと同じく、マグマの活動がいまだに活発な場所がいくつかあるようだ。

 小さな小川に手をつけると確かに温かい。日本人としてはすぐに温泉を作ればいいのになぁと考えてしまうのだが、最初の案内図版でこの温泉の沸く部分だけ「私有地」とされている。先住民のマウイの人々の聖地かなにかになるのかもしれない。

 でもね、このハット近くの小川にはどうみても人一人が入れる穴が掘られているんだよねー。お風呂のないハットの近くで、この穴。絶対に宿泊客の誰かがここでお風呂に入っているに違いないと思ったのは私だけではあるまい。

 ハットからこちら側は朝の道に比べるとビシッと整備してあって非常に歩きやすい。下っていく道もぐるーっと迂回して緩やかな斜面を歩かせるようにしていて、トランパーの健康にも配慮している。まっすぐ降りたら短い時間で行けるだろうともどかしい気持ちもあるが、確かに翌日の足の状態を考えるとこうやって迂回した方がいいのだろう。

 途中には小さなショベルカーが停車してトラックの補修中。このトンガリロは国立公園なのだがトランピングするのに一銭もかからない。にもかかわらず、こういう修復工事をしてくれるというのはありがたいことだ。

 下るにつれて植物も賑やかになって、最後はとうとう森の中を歩く道になった。この頃になってやっと青空が見えてきて、太陽の光も照っていたので、この木陰は気持ちいい。

 途中には小川もあったりして涼しげだが、朝のぼってきた急な斜面、広い火口、真っ赤なクレーター、エメラルドグリーンの湖という変化に富んだ景色に比べると、ハットから駐車場までの道のりはかなり退屈だった。

 あー、退屈だ。いつになったら終わるのかなぁと思いながら歩いていると、突然にして終了。午後3時35分。ハットからここまえ1時間半だ。

 このトラックは途中に「○○まであと何キロ」という表示が少なすぎるので、一体自分がどこまで歩いたのかがわかりにくい。それも退屈というか疲れる原因の一つだった。

 終了地点は駐車場。屋根の出た場所でまだ少し濡れていた手袋や靴下やズボンなどを広げて乾かしているうちに、他の人々も集まってきた。

 バスは色んな方面から色んな時間にやってきて人を乗せては去っていく。私たちのバスも午後4時26分に登場だ。

 全員、挫折することなくここに到着したようだった(前半で断念したのは私たちのグループではないご老人だった)。みんなでバスに乗り込んでチュランギまで戻った。

 チュランギ到着は午後5時。

 冷蔵庫に冷やしておいたビールを取り出して飲む。うーん、旨い!トレッキングで疲労した体に冷たいビールがツーッと入っていく瞬間は、別の意味でトレッキングのハイライトだ。トンガリロのハイライトを歩くトンガリロクロッシングは噂どおりなかなか面白いコースだった。ただ、思いのほかアップダウンがあるので、ストックを借りていくのをお忘れなきよう。


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