夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2008.02.19
アバランチ・ピークに登る日帰りトレッキング

ニュージーランド:アーサーズパス

 南北に細長いニュージーランドは中央に2000m級の山々があって東側から西側に行くのが難しいのだが、もともとマオリの人々が使っていた道でゴールドラッシュ時代にアーサー氏によってヨーロッパに紹介されたアーサーズパスという抜け道がある。東側のクライストチャーチから西側のグレイマウスに抜けるこの道は、雪をかぶった山々や湖があって特にトランツアルパインという列車で行き来するのが観光客に人気となっている。もっとも、私たちは時間が合わなくてバスで移動したのだが、バスでも景色は十分楽しめた。

 当然、アーサーズパスは山に囲まれているために、ここではいくつかの初歩的なものからガイドを連れての本格的なものまでレベルに応じたトレッキングが楽しめるので、列車のアーサーズパス駅を中心にパラパラと宿が集まっているのだった。

 私たちはバスがYHAに停車するために、そのままYHAに宿を予約。カイコウラからクライストチャーチでバスを乗り換えてやってきたのだが、山中で食料品店もないだろうからとクライストチャーチで食料を買い込んできたのは正解だった。YHAの隣には食料品店兼レストラン兼バーもあるのだが、肉は冷凍、野菜はなく、パスタや缶詰があるばかりで値段も高かった。

 到着した夕方、宿から1km離れた列車駅近くの観光案内所に向かったものの既に閉まっていたが、地図があったのでトレッキングのコースの種類を見ることができた。ガイドブックと照らし合わせて、近くに滝を見に行くコースト3時間程で戻ってくるコースの2つを1日で行えばいいかなぁという感じで見ていると、ストックを手にした白人男性がやってきた。彼はアバランチ(なだれ)という山の頂上まで登って降りてくるアバランチ・ピークコースを終えて戻ってきたのだそうだ。山頂まで行って降りてくると聞いて、「そりゃぁ無理だなぁ」と言うと、「いやいや君達なら大丈夫だよ!山頂からは向かいに氷河が見えてそれは面白い。絶対にいくべきだ」と言う。彼は50歳くらいかなぁ。初対面なのに快活に太鼓判を押されて、何かやれそうな気持ちがムキムキと沸き起こって、行ってみようかってなことになってきた。

 2日目、まだ確信が持てないまま、でもお弁当は必ず必要だろうとまずは弁当作り。隣のショップで翌日のグレイマウス行きのバスチケットを購入して9時に観光案内所に再度出かけた。

 ここの観光案内所はニュージーランドでいくつか訪ねた案内所の中では最も素敵だった。というのも、どの人も周辺の山の知識が豊富で、どんな質問にも打てば響くように答えてくれるし、その答えがアーサーズパスに対する愛情に満ちているのがとても良く感じられたからだった。

 アバランチ・ピークへのトレッキングは行きは急な道を登っていき、帰りはゆるやかな道を下っているのが定番で、上りに3時間、下りが距離が長いので4時間。休憩も考えると8時間くらいが平均的な所要時間だそうだ。

 山頂は場所が狭いし、人が多い場合や風が強い場合は少し下の広い部分で待機してから行くといいそうだ。この時間から出発すれば、まだそんなに人はいないだろうから、「あとは風の強度だけだね」といって案内所の人はパチパチとコンピュータを叩いた。どういう事になっているのかわからないが、現時点の風の強度などがわかるようだ。ハイテク・・・。で「あ、大丈夫だ!」とニッコリと笑った。現在地点が934mなので1833mまであがるってことは、899m登るってことだ。むむむ。まぁ、今までの経験から言うと1日で登るとヘトヘトになるけどできるって高さだ。

 考えていると、ここでも「是非いってらっしゃい、絶対に楽しいから」と太鼓判を押されて、アバランチ・ピーク行きが決定。9時半に観光案内所の少し先からトレッキングを始めることになった。因みに、ここの観光案内所は付近の山々の紹介も展示してあってミニ博物館の要素もあり、トレッキングしなくても訪ねると楽しいと思う。

 観光案内所から近い場所から裏手の道に入り、砂利の敷かれた遊歩道を数分歩くと、山中に向かって矢印が書かれた看板がある。「アバランチ・ピークへ」。って、こんな所に道があるのか?という場所から始まる。

 そんでもって、この矢印からすぐにアバランチ・ピークを目的地にしたことへの後悔が始まる。というのも斜面はかなり急で、がれきのような石が転がった道。ちゃんとしたトレッキングシューズでないと足を痛めそうな道なのだ。

 そのかわり目線はぐんぐんと上に上がる。林の中を歩いているのであまり気付かないのだが、林が切れる場所にくると、もうこんなに上がってきたのかと驚くのだった。山中に入って10分で観光案内所がかなり下に見えた。

 開けた場所にはちょっとした滝が見られて、火照った体を目が冷やしてくれる。ニュージーランドの森の色はスタイリッシュだなぁと、初めてトレッキングしたトンガリロクロッシングで思ったのだが、ここでも又スタイリッシュだなぁという思いがする。尖った針葉樹、上が平らになったアフリカのアカシヤのような木、白、オレンジ、グレーの岩。全体としてスモーキーでどこか色あせた感じが都会的な雰囲気を思わせるのだ。

 まぁ、登っている時の私たちは都会的とかスタイリッシュとかという状況からは程遠くて、「ああ、騙されたー、こんなに急だとは思わなかったぁ」「もう駄目ー、やーめーてー!」「ああ、限界だぁぁぁ」など文句を言いっぱなし。汗だくで、両手を使って登るので手も土だらけになっていく。

 幸いなのは林の中を歩いていることだ。ふと休憩で立ち止まると涼しい風が頬に当たっていくのが気持ちいい。文句をいいながら上がるのは毎度のことなんだけど、本人たちは言う程不愉快だとは思っていない。一歩進むごとに今日戻った時の満足感へと近づいているってのを知っているからだ。

 トレッキング慣れしているヨーロピアンになると、こういう急斜面の上りでも楽しそうにおしゃべりしながら歩いているのは尊敬に値する。あーあ、いつになったらああやって楽しみながら上がれるのか。しかし、年経るごとに体力も落ちていくわけで、一生無理なのかもしれない。せめて、楽しそうなヨーロピアンがいる時には文句を控えるのが礼儀ってものだろう。

 こうして約1時間上りに上りつめると林が終了する。目線はいよいよ高くなり、右を見ても左を見てもまさに「アーサーズパス」という景色に出会える。「やったー!」とここまでの成果を楽しみながら休憩。




 ここからの道沿いは急に膝丈までくらいの草花に変わり、尾根沿いを歩きながら登っていくことになる。

 尾根はラクダのコブのようになっていて、とにかく目の前に見えているのは近いコブなので「ほら、ここまでだから、頑張れ、頑張れ」と言っているように見える。コブの上まで到着すると、「ごめーん、実はもっと上があるのよねーん」と次のコブが見えてくるといった次第で、山にちょっと騙されながらも上に上に登っていくという気持ちになる。

 登り始めて2時間後、少し平たくなった場所で休憩。周囲の山の頂上に目線が高くなってきているので更に気持ちいい。

 ここから15分、いくつかのコブを越えて、もういい加減終わるかなぁと思った最後の最後に、ちょっとめまいを起こしそうな砂利山がドーンとそびえてくる。まさか、まさか、これを登るのか?と思うと上の方に蟻んこのように人が縦列して歩いているのが見えて、やっぱり登るのだというのがわかるしかけになっている。さっき休憩してから15分しか経っていないのだが、あまりのショックに再び休憩しちゃったりする場所だった。

 しかし、今までは真っ直ぐに山を登ってきたのに対して、この砂利山はジグザグを繰り返しながら登るので、今までこなしてきた道を思えば遠目から見たほど辛くはない。

 植生もまた変わって可憐な白い花やみっちりと甲羅のように硬く密集しているコケなどが珍しかった。休憩がてら写真を撮ったりしているので、そんなに苦しいと思わなかったなぁ。




 しかし最後には急な瓦礫の道が少しある。ここを10分ほどかけて乗り越えると、目の前にはあっと驚く景色が広がっていて、今までの疲れが全部吹き飛んでしまう。

 氷河だ。

 目の前に、本当に目の前に氷河が横たわっているのだ。そりゃぁ世に名だたる有名氷河に比べたら途中で終わっちゃっている小さな規模だけど、こんな間近に見られるというのが興奮する。しかも、この氷河を見るにはこの山に上らなければ見えないってのが遣り甲斐があるではないか。




 ところが、この地点はまだ頂上ではない。ここから更に15分弱緩やかに登った先に人が集まっている場所があり、そこが頂上なのだった。

 よし、あともう少し!

 しかし、ここからの15分弱の道のりが怖い。両側が45度くらいに切り立った尾根沿いの人一人通るのがやっとという細い道が尾根の両側にくっついていて、その頼りない道を探しながら歩かなくてはいけない。風がほとんどない日だからよかったものの、これで強風だったらかなり恐ろしい場所だ。

 トレッキング前に観光案内所で風の強さを気にしていた理由がここでわかった。

 こうして一番高い場所に到着。ここからは当然360度見渡せる素晴らしい景色だ。





 存分に景色を楽しんでから、ここでお弁当を広げることにした。山頂はとても狭くて、どんどんと人が上がってくるのでここでお弁当を広げるのは迷惑な話だ。しかし、この景色の中でおにぎりを頬張りたいではないか!

 ということで、お弁当を広げて10分で昼食終了。一応、周囲に配慮してみました。思いは同じらしく、私たちのようにしっかりしたお弁当を持ってきている人はいないのだが、皆その辺に腰掛けてクッキーやチョコレートを頬張っていた。


キアの向こうにアーサーズパスが見える。
 その匂いをかぎつけて邪悪な声でバサバサと飛んでくる鳥、それがオウム系のキアKEA。、オウム特有のまん丸な目で緑茶の表の羽を広げると中に美しい水色の羽がのぞき、やってきた時は「おお、キアだ、キアだ」と山頂は歓迎ムードで写真もバチバチと撮影されるのだが、すぐにキアがするどい爪とクチバシでのし歩いて私たちの食べ物を狙っていることが判明し、誰もがリュックのチャックをきっちりと閉め始めた。5分後には「キア、可愛くない」という発言が出始める。キアは私たちを歓迎して飛んできたわけでもないし、可愛いと言われたいわけでもない。でも、人間ってのはどうしても動物に対して勝手な思い入れをしがちなんだなぁ。

 山頂にはどんどんと人が上がってくるので滞在時間は30分で切り上げて、下山することにした。

 登ってくる時もドキドキだったが、下りはより景色が見えるのでもっとドキドキする尾根道を下り、登ってきた道とは異なる左手の道を選択していくところになるとやや道幅は広がって、左右に転げ落ちる恐怖感はなくなった。

 しかし、上りほどきくつはないが下りの道もかなり傾斜度が高い道。ストックがあったら楽なのに、今日は持っていないので膝に負担がかかる。

 潅木の坂道を下ると芝生のような平原の場所があり、そこから左右にアーサーズパスが見渡せる。ここで休憩。この場所でお昼ご飯にしている人も多かった。

 平原の先からは林の中になる。林は時々なくなって目の前が開ける場所がいくつかあるのだが、自然の風雨に晒された木々がまるで人間が形作った植木のように格好良い形になっていて、しかも色も葉の種類も様々に入り乱れているので、よく作られた庭園の中にいる錯覚に陥る場所がいくつかあった。やっぱり、ニュージーランドの森ってかっこいい。

 林の中に入ってからも割合段差のある木のコブと石で作られた階段があったりして、「下りは楽」というのはあくまで「上りに比べて」という条件付きの表現だったことを痛感する道だった。

 12時40分に下り始めて、舗装された道路に出たのが午後3時なので2時間20分。ここから舗装道路沿いに宿のある場所まで徒歩20分。下りにかかった時間は合計3時間弱だった。4時間かかると思っていたので思ったよりも早く降りてこられた。

 ということで、朝9時半からスタートして終了が午後3時20分終了だから、6時間で行って帰ってこられた。今日は昼食休憩も短かったし、もっとゆっくりと休憩してもよかったので、7時間もあれば十分だろうな。

 帰ってきて真っ先にしたこと。

 YHAの冷蔵庫を開けて、キンキンに冷やしてあったビールをグビリ。

 プハー!最高です。

 で、隣のカフェに行ってアイスクリームを1スクープ。ここで特筆すべきは、1スクープを注文すると同じ種類だけど3スクープしてくれること。これはアーサーズパスに立ち寄った人は必食です。必食!

 ということでアーサーズパスの目的達成。いやー、満足。満足。

 今日登ったアバランチ・ピークのアーサーズパスをはさんで向かいにある同じくらいの高さの山も難易度がもう少し高くて面白いトレッキングらしい。同じ宿に宿泊していてロングステイでニュージーランドに何度も訪れているトレッキングベテランの日本人男性が教えてくれた。


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