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2008.02.21
氷河1日トレッキング
ニュージーランド:フランツ・ジョーゼフ |
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フランツ・ジョーゼフ、はてどこかで聞いたことのある名前?
そう、英語で読むとフランツ・ジョーゼフだが綴りはFranz Josef、つまりオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフの名前がつけられたこの場所は、オーストリア人探検隊によって発見された氷河なのだ。わかりやすい。
20日の夕方にこの町に到着した私たちは、さっそく翌日からの天候をインターネットでチェック。以前に南米の氷河を見に行った時に天気のいい日と悪い日では全く印象が違ったという経験があるからだ。日の光のささない氷河は暗く、寒いが、日がさすと水色に輝き素晴らしく美しい。せっかくだから思い出に残る氷河トレッキングにしたいではないか。
調べてみると翌日に行くのがいいようだ。おお、急いで申し込まなくては。
ということで午後7時になって慌てて翌日の氷河トレッキングのツアー申し込みを行ったのだった。
申し込んだのは宿のツアーデスク。ツアーデスクの先は氷河ツアー専門会社につながっていて、フランツ・ジョーゼフのどこで申し込んでもこの会社につながる、つまり独占状態になっているようだ。
フランツ・ジョーゼフでの氷河トレッキングはお値段の高い順に
・ヘリコプターで上空から見る
・氷河で氷壁を登る1日氷河トレックと氷壁クライミング
・1日氷河を歩き回るトレッキング
・半日氷河を歩き回るトレッキング
と3種類ある。私たちは水色に光る氷のトンネルの写真に魅せられていて、これをやれるのは1日ツアーだと聞き、1日ツアーに参加することにした。1日ツアーのお値段は一人N$140(=US$110.24、2008年2月18日現在の換算レートUS$1=N$1.27を使用)、これには町から氷河までの往復バス料金、ツアーガイド料金、衣類等のレンタル料金が含まれており、飲食は自分持ちとなる。
レンタルされる衣類はニットキャップ(暑くて未使用)、ゴアテックスのウィンドブレーカー(氷のトンネルの中を歩くのにとても役立った)、ゴアテックスのパンツ(要求すれば貸してくれる。私たちは要求しなかったので未使用。晴天ならばいらない)、ブーツ、アイゼン(ブーツにつける氷をがっしり噛む爪付きの靴)、靴下。氷上を歩いている途中ストックも貸し出してくれた。
ここまで完璧に貸してくれるので、今回のように晴天だったらサンダルにTシャツと短パンで出かけても大丈夫なくらい。本当に至れりツクセリのレンタルだ。
集合は町中にあるFranz Josef Glacier Guidesという会社のオフィスに朝9時15分。行ってみると、猛烈な人数が集まっていた。カウンターで昨日宿で申し込んだ時にもらったチケットを見せるとグループ番号が告げられて受付が終了する。
ここにはヘリコプター組み、1日組みなど全ての種類の参加者が集められて、当日担当するガイドが決定するとグループ番号を叫んで同じグループが集まるということになっている。
グループが集まると、受付の左手から裏に入り右手方向に回遊して、まずブーツと靴下、ニットキャップ、ゴアテックスジャケットとカフェテリア形式で受け取ってもとのフロントのある場所に戻ってくるようになっている。
外に出ると、昨日の夕方には曇って何も見えなかった方向に青空を背景に氷河がくっきりと見える。やったー、大正解だ。
ここから氷河までは専用のバスで20分くらい。晴天ということもあり、誰もがニコニコでハイテンション。昨日までいたアーサーズパスは一人静かにトレッキングするタイプが多いので静かな感じだったが、今日はうってかわってパーティーな雰囲気だった。同じアウトドアでも場所とやる事によってかなり感じが変わってくる。
バスを降りてから散策コースにもなっている普通の道を歩いて、そこから藪の中(ガイドは「うちの会社の特別な秘密の道」と言っていたが)を抜けると目の前に氷河が見える地点に到着する。ここまでたったの13分。
ここからの眺めが氷河全体が見渡せるし、この時期は午後から夕方になると曇ってくる傾向があるので朝のこの時間が一番いい写真が撮れた。私たちは今日、この時点で左手から山の陰が伸びている部分の上の辺りまで行く。
氷河が見えたことで一気にムードが高まるのだが、実はここから氷河トレッキングの出発地点まではなかなか遠い。
川原の道を歩いて、そこから氷河に近づくために右手の斜面を梯子や階段をつかってどんどんと登って行き、最後に梯子を降りると出発地点に到着。
今は最盛期ということもあって、とにかく人が多い。この細い道は人で渋滞になってしまい、途中で進めなくなることがしばしばだった。
お陰で休憩ができるので、全部で1時間くらいかかって到着したが全く疲れない。
これに比べると南米はアルゼンチンのエル・カラファテでの氷河トレッキングは過酷だったなぁ。氷河に降り立つまでに5時間くらい歩いたんだっけ。当然帰るのも5時間。あれから比べたら、こっちの氷河トレッキングは楽ちんこの上ない。
今日の1日氷河トレッキング参加者は60人程度。これを6人〜7人くらいの小グループにわける。「体力派」「中間派」「虚弱体質派」とまず3組に自己判断でわかれ、その3組から更に3組に分かれていく。こういうグループ分けの作業も手順がしっかりしていて、とてもスムーズでこの会社、良かった。
私たちは「虚弱体質」派の中でも一番虚弱を自負するグループに入ることにした。だって、周囲を見てもみーんな私たちよりも10〜20歳は若そうだもんね。
集まったメンバーは・・・虚弱そうな男性や、太り気味の女性や、英語があまりわからない外国人など、ふさわしい面子。ああ、これならやっていけそうだと妙に安心できる面子だった。(実際は自己評価が低すぎた。あまり上まで行けずちょっと不満。中の下くらいのグループにすれば良かった。)
グループが決まったら各グループガイドのそばでアイゼン(クランポン)の装着。ガイドがヒモの縛り方を説明した後、各自装着。ガイドが最終確認する。レンタルシューズを使う場合はアイゼンがフィットするのだが、うちの旦那は自前のシューズを使っていたために途中でアイゼンがはずれることがあった。シューズは借りた方がいい。
装着が終了していよいよトレッキング開始。
最初は目の前にそびえる大きな氷の塊に作られた階段を登る。この辺りは一番下の部分なので氷はグレーで美しいとは言えないが遠くから見ていたのとは違って氷の厚みを肌で感じられる所だ。
こんなに見上げるような厚みのある氷の上を歩くなんて、つまりクレバスに落ちたらこの高さの分落ちていくのだという、このゾクゾクするスリルを高められる場所である。
10分も歩くと、すでに氷の塊に取り囲まれ、部分部分には美しい水色も見え始める場所になってくる。
氷河というのは川が凍ったものだが、天候によって氷に亀裂が入って上からの圧力に耐え切れなくなった部分がバキッと割れて下にむかってめくりあがる。そうして、山脈のような形が造られていくのだそうだ。
ガイドはこの小さな山脈から人間が歩いて行けそうな足場を見つけ、不安定な足場はピッケルで掘って造り、グループメンバーがクレバスに落ちないように監視もしなければならない。いやー、見ていると大変なお仕事ですな。
こうして氷の塊の中をどんどんと上がって行くのは楽しい。登っていく両側が氷にはさまれているのでかなり運動していてもあまり暑さを感じないのも快適だし、暑くなったらちょっと横の壁に触ってみればすぐに冷える。ニュージーランドの夏季氷河トレッキングは気持ちいいなぁ。
青空を背景に氷が青く見える部分が益々増えてきて氷河を満喫していると、ガイドは私たちをちょっとした谷間に誘った。どうも彼が何かを探している風だなぁと思っていたら、皆がくぐって歩けるトンネルを探してくれていたのだった。
どうやってできたのか、人一人が横になってくぐれる穴が開いたトンネルが見つかり、皆で順番にくぐる。堆積した冷たい青のトンネルは中に入る直前に見る色が一番美しい。中に入ってしまうと白い氷に見えるのだ。トンネルくぐりは初めてだったし、これがやりたくってここまで来たので、うっれしー!
大分上の方まで上がってきて周囲には黒い汚れた氷が少ない状態になってきた。上方を見ると大きな流れの中にいるのが実感でき、下方を見ると自分たちが歩いて来た川原が小さく見えて随分上がってきたことがわかる。
空には雲がプカプカ浮かんで汗ばむ陽気なのに、どこからともなくヒンヤリトした風が常に頬をなでていく。そして明るい太陽に照らされてどこもかしこもまぶしい。これが氷河トレッキングの雰囲気だ。
午後1時近くに川の端の岸壁に近い方によった場所で持参のお弁当を広げる。岸壁に近い部分は両岸の岩を削って巻き込んだ氷なので見た目は砂利道のように見えるし、砂利があたたまっているので座る場所もあり昼食には好都合な所だった。
昼食後の午後1時20分からトレッキング再開。ガイドは氷のトンネルを探しているようだった。
コースは時に平らな氷の上を歩く。大抵はそそり立つ氷と氷の間や尾根のような道を歩いているので、こんな風に足元がクリアな所を歩くと、下からずっと堆積しているとは思うのだが、このどこかでバリバリと氷が壊れて下に落ちることはないのだろうかとちょっとゾクゾクする。
氷のトンネルを求めて上にいったり下にいったり、私たちは氷河の上を歩き続けたのだった。
そして見つかった2つ目のトンネルがこれ。出入り口でジャージャーと水が垂れてくるのでゴアテックスのジャケットが大変に役立ったトンネル。
ここはあまり水色ではなく白っぽい。
3つ目のトンネルは幅がとても狭くて、横向きになって氷の壁に体をこすりつけながらやっと通れるくらいの場所だったが、これもゴアテックスジャケットのお陰で全く濡れずに澄んだ。この幅の狭いトンネルは先ほどと比べると水色に光ってとても美しい。
そして本日最後4つ目のトンネルはかがまないと先に進めないような高さのものだったが、長さがあって屈折しているので中に入るとまるで水色のネオン管の中に入ったような気分になれる素敵なトンネルだった。
私の前を行く男性はフランス人ゲイカップルの彼女?の方。「わー、見て!ステキねぇ」「ね、ね、ここも見逃しちゃだめ、絶対によく見ないとだめよ」と何度も私を振り返って感動を伝えてくるのが可愛らしい人だった。絶対に私よりもフェミニンだから参っちゃうなぁ。
そういえばアルゼンチンの氷河トレッキングの時もフランス人ゲイカップルがいて、その彼女の方に階段を降りる時に手を貸してもらったのを思い出した。あの人のお洒落もセンスがあったなぁ。どうも私は氷河でフレンチ・ゲイに出会うということになっているらしい。
こうしてトンネルを堪能した午後3時20分、下っていくことになった。
日が当たったり風が吹いて氷河の状況は刻一刻と変わっているので、同じ道を帰ることができないようで、帰りは帰りで道を探しながら造りながらの行進。一番汗をかいているのは間違いなくガイド氏だ。
午後5時に氷河切れる場所まで戻ってきてアイゼンをはずした。アイゼンは途中で私と夫のが部品破損。ガイドが予備の部品を持っていてくれたので助かった。あとは氷のトンネルに頭をぶつけてタンコブを作ったイスラエル人の彼女が一名。さすが「虚弱体質の中の虚弱組」だ。あとは問題もなく無事に戻ってこられた。
氷河上にいる時には氷の壁に隠れて他のチームは全く見えなかったのだが、この時間にぞくぞくと集まってくる。その数は120人以上。半分は1日ツアーだが後の半分は半日ツアーの午後出発組みだそうだ。狭い梯子は大渋滞で、戻るのにも1時間近くかかった。
バスに乗って出発地点のツアー会社オフィスに戻ってきたのが午後6時15分。借りたものを返却してツアー終了だ。好天に恵まれて、体力的にも全然辛くない。南米のエル・チャルテンの12時間トレッキングに比べたら楽勝、十分に楽しめる氷河トレッキングだった。もっともチャルテンの氷の方がきれいなんだけどね、あそこは日帰りすべきじゃなかった。
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