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2005.01.27 vol.1 観光の大御所ミュージックセンター(午前) |
アメリカ合衆国:ロサンゼルス |
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ダウンタウンのインフォメーションで入手した"Guide to Downtown L.A."(Downtown
Center Buisiness Improvement District発行)には、ダウンタウンを12の区域にわけて、見所を紹介したページがある。その筆頭にくるのが"Bunker
Hill and Grand Avenue"。
ダウンタウン中心部のほぼ中央上寄りに位置し、ミュージックセンターと呼ばれる劇場やコンサートホール、大きな教会と現代美術館がある。そのロケーション故に、ダウンタウンを動き回る途中、バスの中からは毎回のように見ていたこの地域。しかし、こうしたいかにも観光めいた場所よりも、市場や卸売り街に興味があった私たちは、(・・・それはつまり、この地域に行くと入場料やら食費やらコストがかかりそうな香りがしていたので、足が向かなかったとも言える)ロサンゼルスに滞在して17日を迎えているというのに、いまだこの地を探索していなかった。
そして、今日いよいよですねぇ、「あぁ、そうだ、ミュージックセンターに行こう」って話になった。それは、天気予報がLAの曇りを予想し、ガイドブックで、「現代美術館が木曜日は無料だ」という情報を見つけた直後の決定だった。
計画はこうだった。まず、9時オープンのウォルト・ディズニー・コンサートホールに行き、一人$10のオーディオツアーを聞き、その後、ドロシー・チャンドラー、マーク・テーバー、アーマンソン、そして天使のマリア大聖堂を午前中に攻め、昼食。そして、午後12時のMOCA(現代美術館)の無料ツアーに参加後、午後中かけてMOCAを回る。朝食後の家族会議で決まったこの予定は、完全無欠の観光計画に見えた。よしっ。
9時3分前にウォルト・ディズニー・コンサートホールに到着したのだが、何だか様子が違う。ホール前の道路は封鎖され、あちこちに赤い旗を持った人々がいる。その一人に聞くと「今日、子供たちのコンサートデーなの。私たちは子供たちの誘導ボランティアなのよん」とのたまうではないか。そして、見る間にスクールバスが集結してきた。そして、おっきいのからちっちゃいのまで、子供の海。
確かに周りの高校生は私より女性らしい格好だ。
大爆笑の余韻を引きずりながら歩く。 |
なんだ、なんだとくっついて歩いていると、件の赤い旗ボランティアの一味のおばあちゃんが、私に寄ってきた。「ほらほら、ちゃんと列になって歩いて!」 いやぁー、ワタクシ、こう見えてもちょっと年齢がいってまして・・・と言いながら、苦笑いして近づくと、おばあちゃんも近距離で私の年齢を把握したらしく、「そんなわけないわよねぇ、あーら、ごめんなさい」と言い、二人で大爆笑してしまった。
面白い経験ではあったが、当初の計画はしょっぱなから崩れてしまった。さて、次の計画はミュージックセンターにある劇場巡りだ。劇場につくと、警備のおっちゃんが「10時になったらツアーが始まるから、またおいで」という。じゃぁ、ここも飛ばして、天使のマリアの大聖堂だ。
ここは開いていて、ようやく本日の見学が始まった。教会というより要塞に見えるこの建造物は、夫いわく、「コンクリートの打ちっぱなしに色をつけた」外壁。打ちっぱなしというと、コンクリートむき出しで、青山にあるファッションビルのコレッチオーネなんか思い出すが、グレーが砂岩色になるとだいぶ趣が変わる。中のドーンと大きなチャペルは、ヨーロッパのそれのイメージとは異なり、ステンドグラスもなく明るくモダンだった。
10時前にミュージックセンターに戻る。指定の場所で待っていると、先ほどの警備のおじさんと赤いジャケットを着た女性がやってきた。女性は、10時に到着する団体に対してツアーガイドを行う予定らしく、私たちはその団体に入って一緒にガイドを受けるという話になっていた。ひとしきり話をし、記念写真もバンバンとったのに、団体が来ない。というわけで、赤いジャケットの女性、ローズマリーさんは、その待ち合わせ場所を中心に、放射線状に私たちを見所に連れて行って説明し、一ヶ所終わったら待ち合わせ場所に戻る、という作戦に出ることになった。
くしくも、ローズマリーさんを一人占めできたのはいいが、当方の英語力で耐えられるのか?そんな心配もあったが、ローズマリーさんの英語は、すばらしくユニバーサル化されていた。難しい単語がない、発音がわかりやすい。何を言っているかが、ほぼ理解できた。ローズマリーさんは、普段は心理学者だが、月に1回、このミュージックセンターの説明ガイドをボランティアで行っているそうだ。
放射線状の動きを2回繰り返して、3回目に出かけようとした時、同じく飛び入り参加の夫婦がガイドに加わった。ノルウェーからデラウェアに住む娘夫婦を訪ねたついでに旅行している、ご機嫌な初老の夫婦だった。マーク・テーパー・フォーラムとアーマンソンシアター、ドロシー・チャンドラーと一緒に回った。ヨーロッパの人らしく、毎回、徹底したレディーファーストでドアを押さえて女性を先に行かせる旦那さんと、可愛らしく冗談をとばす奥さん。2人が繰り出す質問のお陰で、小さなツアーグループは大きく盛り上がった。それにしても、この2人は感じがいい。初めて知り合った異国の私たちと、適度な礼節を保ちながら打ち解けてくる感じ、この辺りの自然な距離感の取り方が、非常に参考になる。また、何をみても新たな感動で「ほほー」と感心し、湧いてきた疑問を素直にぶつける。その場における自分の遊ばせ方を知っているし、他の人を緊張させない余裕がある。いいなぁ。こんな大人になりたいもんです。
さて、ドロシー・チャンドラーを出ると、ローズマリーさんが本来案内するはずの団体が、「もう1時間も待っているんだぞ」と怒り口調で近づいてきた。ローズマリーさんは、慌てる様子もなく、私たちに向かって「じゃ、これで全部説明できたから、よかったわ。私は、次の説明に行くから、ここで失礼するわね、よい旅を!」と言って、ひらひらと手を振って去っていった。さすが、心理学者。人が怒っていても、動じない。
残された私たち4人は、その後ちょっと一緒に歩いてから、それぞれの見学に向かって別れた。感じのいい人たちと出会えた、中身の濃い午前だった。
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