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2005.02.08 vol.3 剪髪11ドルの世界 |
アメリカ合衆国:ロサンゼルス |
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海外にいて困ることの一つは、Hair Cutである。長期の滞在としては、ドイツとマレーシアを経験しているが、ドイツでは日本人の髪質を理解している日本系の美容室にいくと、法外なカット料金を請求され、夫婦共に嫌気がさしてしまった。以来、テレビショッピングで購入した、掃除機のホースに接続するホームヘアーカッター「フラウビー」を購入して、夫婦でカットしあっていた。マレーシアでもフラウビーは活躍。しかし、今回の旅にフラウビーはいない。大きすぎて連れてこられなかったのだ。
ロサンゼルスの滞在も1ヶ月を過ぎた。そろそろ髪の毛を切りたいと思いながら、今日も昼食を求めて中華街を歩いていると、「剪髪 $7.00
Men & Women」という看板が目に入った。いい値段だなぁと思うものの、どうみても、そこは床屋である。夫はいいかもしれないが、私はちょっと抵抗があった。ベリーショートが似合う痩身ならともかく、危険すぎる。
というわけで、昼食後の予定は美容室探しに決まった。ほどなく2軒目に遭遇。こちらの看板には「髪型設計 電髪$25」とある。「設計」が入っている分、美容室の香りが漂う。とりあえず、「剪髪」の値段を確認しようと、地下に降りていくと、パーマネントのお釜が並び、シャンプー台、大きな鏡の前にならぶ椅子、と一応安心できる体裁を整えた店内が見えた。「何か?」と問いかける女性に値段を聞くと、「男性$9、女性$11」と言われる。地上に戻って2人で相談し、ここに入ることに決めた。
「どうしますか?」と聞かれ、説明に困った。日本の美容室ではヘアーカタログもたくさん置いてあるし、有名人の共通認識もある。また、美容師さんのお勧めに従えば、無謀な冒険にもならずに新しいスタイルに挑戦できた。でも、ここは違う。参考写真でも持参すれば別だが、そうでない限り、言葉でイメージを伝えなければならない。そんな風に考えて、説明がしどろもどろになった。でも、ここはアメリカ。レイヤーにして、上を軽めにして、など基本的には日本と同じ技術が行き渡っており、何とかこちらの意図を伝えることができた。
やや大胆なハサミさばきに不安を覚えつつも、最初は無言だった美容師さんとの会話が始まった。ここら辺は日本の美容室と同じ感じ。この美容師さん、年齢は50代前半と思われるが、1980年にベトナムから渡米してきたそうだ。子供は娘ばかりの3人。「なぜ3人だと思う?」と聞かれた。彼女が言うには、ベトナムでは10人くらい生むのだという。なぜなら、アメリカのように年金制度がないから子供が親を扶養するしかない。3人じゃぁ不安だけど、10人生んでおけば、1人くらいは親の面倒を見る甲斐性のある子に育つからだという。アメリカでは10年勤労すれば年金を受けられる制度があるから、そんなに子供はいらないのだという。思わぬところで、年金制度と少子化理論が展開された。日本で年金制度が崩壊したら、子供の数は増えるのか?自分の老後の蓄えを作るために、ますます少子化が進みそうな気もする。それにしても10年働けば年金がもらえるというシステムは、やる気がわく。日本では25年払い込まないと受け取れない。「10年働けばいいのかぁ」とつぶやくと、美容師の女性は「でも、体が丈夫なうちは働かなきゃだめよ。10年だけ働いたくらいじゃ、あまりもらえなから。」と言って笑った。豊かな老後を送りたいというのは、共通の願いだ。みんな、それぞれ真剣に考えている。
さて、できあがりは?こちらの意図が伝わりきっていなかったせいもあって、予想とは異なる髪形になったけど、許せる範囲内。何よりも、ベトナムから移民してきた人の話を聞けたのがよかった。夫の感想は?「日本ではQBハウスの10分1000円を利用していたが、それと全く同じ方式でのカット。それで$9とは100円得した気分。」と満足の様子。
ホテルに帰って、「チャイナタウンでカットしてきた」とキッチンにいた女性たちに伝えると、賛否両論、意見が飛び交った。中には、別の店でざんぎり頭にされたという経験者もいた。私は運がよかったらしい。夕方には、伝え聞いた別の人からも「悪くないねぇ」と、ちょっとからかい半分に言われたりもした。大方の反応から、チャイナタウンでのカットはトレンディーとは受け取られていない。あはは、当たり前かぁ。
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