夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2005.03.13 バイヤー気分でオープンハウス見学
アメリカ合衆国:ロサンゼルス
 社会人3年目の時、1ヶ月程テキサスにいたことがある。ヒューストンから車で1時間程かかる田舎にホームステイしていたのだが、そこのホストファミリーが余興で近所で販売中の新築の家に連れて行ってくれたことがあった。昔の話で少々記憶も曖昧なのだが、5部屋くらいの平屋の家は、一つ一つの部屋がとても広くてバスルームも2つはあった。当時のレートで換算して価格が2000万円くらいだった。田舎ということもあるが、日本の家屋と比較してこの豪邸がそんなに安いのかと驚いたことは、今でも鮮明に覚えている。私の中では、アメリカの家は広くて安いというイメージができあがったのはこの時だった。

 今回の旅の中で、このイメージはロサンゼルスにおいては誤りだということを指摘した人がいた。その日本人男性は渡米して40年くらいになるそうだが、1年半前に私の宿泊しているホテルに入ってきたそうだ。最初は、次のアパートが決まるまでの仮の宿のつもりだったのに、この1年半の間に家賃がみるみる上がって行き、とうとう1年半経ってしまったということだった。そういえば、地元の日本語情報誌でも、不動産投資の広告を毎日目にする。今、ロサンゼルスは不動産バブルの状態に入っているらしい。

 そんな中、ケーブルテレビの60チャンネルに住宅専門番組があるのを夫が見つけた。HGTV(http://www.hgtv.com)というこのチャンネルでは、30分区切りで様々なリフォーム番組を放映している。日本でもいくつかリフォーム番組があるが、あれを一つの局が朝から晩まで放映しているのだ。ティーンエイジャーが予算5万円で自分の部屋のデコレーションを変更するレベルから、300万円でバックヤードを全面的にデザインするレベルくらいまで、様々なリフォームがあって、見飽きることがない。特にDesign to sellという番組が興味深い。家を売りたい人が、より高価で売れるようにリフォームしていくという内容だ。リフォーム前に鑑定してもらって市場価格を出してもらう。大抵はその価格の低さに家主はがっくりするシーンが写される。そしてリフォームの細かいシーンが続き、最後にオープンハウス(購入したい人に向けて家を公開すること)の後、結局いくら高く販売できたかが発表され、番組側のコーディネーターと家主がニッコリ笑って番組が終わる。

 アメリカに滞在してはいるものの、なかなかお宅を拝見する機会がない私たちにとって、オープンハウスは格好の見学チャンス。「見てみたいなぁ、アメリカのお家」と頭の隅で思っていた。

 そんな今日、日本食スーパーを訪ねた帰りにぶらぶらと歩いていると、「オープンハウスはこちら」という看板を見つけた。「お?これは・・・。」夫と顔を見合わせた。彼はもちろん「Go! Go!」という目つきだが、先方を訪ねて「いくらくらいのご予算で?」「現在はどちらにお住まいで?」「アメリカにはどのくらいいらっしゃる予定で?」なんて質問が飛んできた時に、確実に矢面に立たされるだろうことを想像して、私は渋った。今回は、私は絶対にそんな質問に答えませんからね、という念押しをした後、オープンハウスに向かうことにした。

 大通りから横道に入って5分ほど歩いただろうか、目的のオープンハウスがあるコンドミニアムが見えてきた。数組のカップルが一つのドアから出入りしている。あそこに違いない。門を開けるときにすれ違った女性が「私は今回のオープンハウスを扱っている不動産会社の者です。ゆっくり見て行ってくださいね。」と会社のパンフレットを渡された。中には、家主らしいラテン系の50代後半の女性がいて、訪問客は私たちを含めて3組いた。入口で訪問簿に名前とメールアドレスを記入して、後は自由に見て周るという手順らしい。内部の撮影が許されなかったのが残念だが、心配していたややこしい質問など全くないのにはホッとした。家はテレビで見たオープンハウスの日の場面と同じように、至るところに花などが飾られ、家主もスーツを着込んで、やる気に満ちている。私がかつて見た田舎の豪邸とは違って、2ベッドルーム、2バスルーム、プールなし、家具なしの113u。1991年の物件なので築14年ということだが、キッチンも小さいながらリフォームしているようできれいだった。さて、気になるお値段は?US$535.000。え?え?もう一度確認したが変わらない。た、高いじゃないか。そんなに高いの?やはり、バブルなんだろうか?

 挨拶して家を後にした私たちは、なんだかがっかりした。HGTVで見たような素敵に広い家ではなかったことにがっかりしたのか、買う気もないのにその価格の高さにがっかりしたのか、かつての日本と同じようにバブルになっている状態が馬鹿馬鹿しくて腹立たしいのか、よくわからないけど面白くない。もっとないかなぁと期待して更に歩くと、また見つかった。今度は平屋の一戸建てだった。先ほどより多くの人々が出入りしている。家主らしい人は見当たらず、受付には不動産エージェントが2人いて、同じく名前と住所とメールアドレスを書かされた。先ほどと同じく玄関を入るとリビング。リビングの裏側にベッドルームが3つとキッチン、バスルームは1つ、バックヤードにはガレージとジャグジーがあった。建物の広さは103u、敷地の広さは532u(161坪)とある。敷地としては広いのだが、家が狭くて天井も低いのでシャビーな感じがする。そして値段は、US$699.000。そりゃぁ、ジャグジーもあったし、中の内装やフロアもおしゃれだけれど、それにしてもこの価格は納得がいかない。もしかすると、こういったパンフレットには家主の最高希望価格を掲載しておいて、結局は2分の1くらいで落ちるっていうことになっているのかもしれない、などと勝手に想像したがよくわからない。

 すっかり疲れた私たちは、さっさとバスに乗って帰ることにした。バス代用の小銭がなかったので、見かけた店で買い物をして小銭を作ることにしたのだが、折角だからその店のインド系の主人に聞き込み調査を試みた。私たちが見てきた家の写真付きのちらしを見せて、この価格は希望価格であって、本当はもっと安い値段で取引されるものなのかどうかと尋ねると、店主は「とんでもない」と答えた。彼の友達はやはりこの近所で、この家よりももっと狭い物件を70万ドル以上で購入したそうだ。彼いわく、この物件は拾い物かもしれない。絶対にバブルだ、これは。食品の価格や航空料金など他のアメリカの物価と比較して、住宅は突出している。とりあえず、この辺りの物件がどの程度の価格で取引されているかがわかったので、納得してバスに乗り込んだ。ホテルに近い通りに入ると、またまたオープンハウスの看板を2つもみつけてしまった。もうこうなったら、見て歩こうってことになって、バスを降りた。因みに、私は納豆と永谷園の「ゆうげ」が入った日本食スーパーのビニール袋をずっと持ち続けている。地元っぽいという見方をされるか、全くのひやかしの貧乏人と思われるか、ちょっと気になったが、今までの2件では問題なく見学できた。

 さて、看板に従って歩いていく。やがて見えてきたのは、レンガとトタンを組み合わせたモダンな外観のマンション。写真右側の玄関を入ると左右に長いセメント床のワンフロアになっていて、左側がオープンキッチン、右側が暖炉付きのリビングになっている。今度も不動産エージェントだが、スーツではなくポロシャツと綿パン姿できれいな髭をたくわえたの男性が迎えてくれた。ちらしの表現としてはメゾネット付きの2階建てだが、建物の高さは3階建てと同じくらいある。リビングの上部分に天井の低いメゾネットがあるが、キッチンの上は通常の2階部分を吹きぬけたようになっている。キッチンはリビングに向けて流しのカウンターがあるアイランド型、、その背後にガス台などのカウンターとなっている。キッチン左手からガス台の裏に周ると、食品が置けるストレージとワイン貯蔵庫とトイレがあった。隠れ家的なバーレストランとしても成立しそうな、スタイリッシュな空間にワクワクした。フロア中央から右向きに上がる木板の階段を上がると、デスクとチェアのみの空間。オープンハウスは現在住んでいるままに公開されているので、住人の書籍や写真から持ち主の様子が知れるようになっている。この家は、デザインやアートに興味があるリッチな30代前半の夫婦らしい。3階へと続く階段の途中には、ブルーの大きなS字型の変形本棚。「これいいなぁ、気に入っちゃった。あ、このS字キャビネットは含まれないのかぁ」とちらしを見ながら確認していると、もはやバイヤー気分である。3階には2ベッドルームと2バスルーム。それらをつなぐ廊下からは1階が見下ろせる。インテリアといい、木の梁がむき出しの天井といい、新しい感覚で、今日見た家の中では一番面白かった。まぁ、欲を言えばベッドルームはもっと広い方がいい。1999年の物件なので築6年で広さは183u。さてさて、お値段は・・・。US$1,379.000。あはははは、もう笑ってしまった。そうですか、そうですか、どうりで名前を書けとも言われなかったわけだ。「それにしても、あの天井の梁は右と左で5mmもずれていた。日本でそんな仕事をしていたら1億円の物件としては失格だな」と夫は棟梁みたいなことを言っている。

 この後も1件見たが、1億円強の物件とは思えない小屋風の家だった。以前、ドイツ人が「アメリカの家は安普請でいけない」というのに憤慨したアメリカ人は「でも、価格がこなれているので、どんな人でも何回も建て替えることができる」という反応をしていたのを見たことがある。今の状況であの議論になったら、アメリカ人はもう反論の余地がなくなるだろう。

 「アメリカの家は広くて安い」の幻想は壊れた。それでも家具やフロアの素材やインテリア小物使いなど、生の生活が見られたのは面白かった。ここでもらった資料にあるサイトに行ってみたが有料会員にならないと、オープンハウスの情報は入手できないらしい。ベニスビーチ・サンタモニカ界隈のオープンハウスを見学したかったら、不動産エージェントBULLDOG REALTORSのAbbot Kinney通りのオフィスを週末に訪ねれば、オープンハウスの情報をプリントアウトしてくれる。
BULLDOG REALTORS アボットキニーオフィス
1209 Abbot kinney Blvd. Venice

数日後、登録したメールアドレスに他の物件の情報リストがどんどん送られてくる。いずれも1億円レベルの物件だ。その日の夕方、ロサンゼルスの不動産バブルがちょっと落ち着きをみせはじめたというニュースをテレビで見た。私たちが見学した物件は、この競争を逃げ切ることができるのだろうか?私としては、熾烈なレースに参加するよりもオープンハウスを冷やかしている方が、ずっと楽しい。
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