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2005.05.21 エストゥディアンティーナと過ごした夜 |
メキシコ:グナファト |
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週末の夜になると、フアレス劇場前のラウニア公園から、中世スペインの学生服を着て音楽を奏でる楽団エストゥディアンティーナEstudiantinaが、音楽を演奏しながら夜のグアナファトの街を練り歩く。同宿のカナダ人からここ2週間ほど、金曜日の夜になるとその楽団の音が宿のすぐ下に聞こえ、楽団の後をついてまわり、大変楽しい思いをしたと聞いた。
20日の金曜日の夜8時半過ぎに、フアレス劇場前を歩いていたら、確かに、白鳥の湖のジークフリード王子みたいな恰好の若者たちを多数発見。何やら始まりそうな感じである。2人王子が近寄ってきて「我々はグアナファト大学の学生なんですが、楽団について回るツアーのチケットを買いませんか?」と声をかけてきた。うーむ、N$70(約700円)かぁ、王子、それはチト高いでござるなぁ。同宿のカナダ人女性によれば、チケットなんて買わなくってもついて行けたという。もう少し様子を見てみることにした。
フアレス劇場の隣のサンディエゴ教会前に集結した王子たちは、やがて演奏を始めた。「ほほー、面白いねぇ」としゃべっていると、眼下から視線を感じた。ふと見ると、ベンチに日本人男性らしき人が座っている。「もしかして、日本人の方ですか?」と話が始まり、この男性がグアナファト在住10年のグアナファト大学教授だということがわかった。長島さんというこの男性いわく、この辺りで見ている分にはお金はいらないが、楽団にくっついていくと料金を徴収されるとのこと。チケットを購入すると、一輪挿しの本体にも口がついたような、特殊な形のワイン瓶をくれてワインを振舞ってくれるという。まぁ、歌を聴いてから考えたらいいんじゃない?とアドバイスしてくれた。
やがて、スペイン民謡なのかメキシコ民謡なのか、マンドリンやギターやベースの伴奏で歌が始まった。観客の中から2組が引っ張り出され、音楽に合わせて踊らされる。はい、どっちのチームがよかったか拍手で決めまーす!はい、同じくらいだったので、引き分けとしまーす!みたいな一幕があって、楽団はいよいよ街練り歩きツアーに出発した。ついて行くほどのこともないと判断し、近くの公園で再度回ってくるのを待った。しかし、この日はコースが違っていたみたいで、待てどもこない。少々、消化不良を感じながらも、見られたからよかったねと、宿に帰った。
そして、今日21日。午後7時ごろから花火があがり、トランペットや太鼓の音が聞こえる。ん?今日も何かあるな!そう思って、音のする方に出て行った。トランペットや太鼓の音は、ラパス広場から聞こえてきた。行ってみると、サッカーのユニフォームを来た少年たちや、背中にテコンドーとかいた胴着のチームなど、スポーツチームが群れをなして、ラパス広場にあるバシリカ(教会)にどんどん入っていく。その両脇で、起床ラッパと太鼓が威勢よく演奏しているのだった。チームの中には、花で飾られた神輿のようなものを担いでいるところもある。スポーツチームの必勝祈願大会みたいな感じだった。
これはこれで面白かったが楽団の催しはないのか?再び、フアレス劇場に向かうと、いたいた。今日は違う衣装の王子たち。夕食の買い物ついでに出てきた私たちは、大急ぎで買い物を済ませて宿に戻り、大急ぎで夕食を済ませて、また戻ってくることにした。
夕食を済ませて戻ると、今日はフアレス劇場とサンディエゴ教会の間にステージが設置してあり、ステージでは普段着のおじいちゃんがマンドリンをかきならしながら、詩の朗読のような途中で節が入るようなものを唸っていた。今日はこれが続くのか?とちょっとがっかりし始めたが、やがておじいちゃんは引っ込み、市の広報課みたいなおっさんが、グアナファトの文化と歴史とこれからの発展について熱く語り始めた。そのころには、おっさんの周りに、黒い王子の衣装の男性たちがスタンバイを始めだした。お、これこれ。
おっさんが、「さぁ、いよいよ皆様お待ちかねの!」と言って熱い演説が終わり、音楽がなると、まず子供のダンスだった。ミチョアカン州のタラスコ地方に伝わる伝統舞踊の「老人の踊り」がこれなのだろうか?ここは隣のグアナファト州だから、そうかもしれない。牛のかぶり物を被った子が、老人や老女や鬼や子連れの母と戦うような場面だった。ミチョアカンに行かないと見られないと思っていたので、ラッキーだと思う反面、同じ伝統舞踊でもバリ島のレゴンダンスと比べると、随分気楽というか、気の抜けた踊りだなぁと思った。
そして、本当にお待ちかねの王子たちの登場。今日のメンバーは王子たちというよりは、様々な年齢層の社会人と学生の混成チームだった。知らない間に最前列になっていた私たちは、地面に座ってトックリと見物することにした。昨日よりも更に艶やかな声の男性が歌う。
構成としては、いかりや長介にちょっと似たMCのマンドリンの男性と、艶やか歌声チームの高音と低音の恰幅の良い2人(マンドリンも演奏)、冗談で会場を盛り上げる係(マンドリンも演奏)、若くてハンサムな踊ってたたけるタンバリン奏者、その他マンドリンやベースなど10人くらいのチームだった。
昨日と同じく数曲歌った後、会場から2組が引っ張り出される場面になり、最前列で見ていた私たちは、ステージ中央に引っ張りだされることになった。昨日見ていたので、要領はわかっていた。夫と腕組みして踊り、相手の若いメキシコ人カップルの男性と踊る。昨日と違っていたのは、ダンスの後に男性人は客席に戻らされ、私とメキシコ人女性と何故か飛び入りのエプロン姿のおばあちゃんの3人で「どれだけ多くの楽団の男性にキスできるか大会」が始まってしまったことだ。さすがに大人の楽団。趣向が大人向きです。こんなに短時間に、こんなに多くのメキシコ人男性とほっぺたをくっつけたのは初めて。みんな髭がジョリジョリしていた、毛深ー。
思わぬ出来事に2人とも楽団を満喫。この後は、踊ってたたけるタンバリン奏者のダンスに感心したり、盛り上げ係の指示に従って、拳をあげたり、腕を左右に振ったり、飛び跳ねたりと、まぁ見ているのも忙しく、昨日とは違ってとっぷり楽団と一緒に楽しむことができた。
隣のチームは女子小学生が多く、白いタイツにエンジ色系の衣装で、歌声が可愛らしかった。が、やはり盛り上げ係のいるチームの方が参加型で面白かったので、また最初のチームに戻ってきた。
この2チームの他にもいくつかチームがあり、週末の夜は街中が、気の合った仲間と作ったチームの演奏発表会場となっているようだった。先日、マリアッチの発祥地であるというトラケパケに行った際、演奏を聞きながら食事ができる場所に行ってきたが、そちらと比べると全く違う。トラケパケは、職業で演奏しており、何だか生気に欠けるのだ。こっちは好きでやっている、楽しくて仕方がないという表情が会場全体に伝わる。仕事と思ってやるのと、好きでやるのには、こんなに差があるものかと思った。
3回のアンコールに応えた後、チームの演奏は終わった。セレナータを満喫できた夜だった。
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