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2005.06.03 ルチャリブレ(メキシコプロレス)観戦 |
メキシコ:メキシコ・シティ |
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グアナファトで同じ宿に泊まったある日本人一家のご主人が言った。「メキシコ・シティでは何か見たいものなどあるのですか?」
確かにガイドブックではメキシコ・シティに多くのページを割いており、色々な見所があって面白そうだが、まだ勉強不足だった我々は「特には考えてないのですが・・・」という感じだった。そのご主人から「特に目的がないのなら、ルチャリブレなんか面白いと思いますよぉ。」と言われたのが、初めてルチャリブレについて知った時であった。
ルチャリブレとは、メキシコのプロレスの試合を指し、一般には中級よりも下の所得層の市民の楽しみとうっぷん晴らしとして人気のあるスポーツだと、ガイドブックにはある。試合の行われる地域も、あまり穏やかそうではないし、だいたいプロレスに興味を持ったことがない。そのご主人から話を聞いたものの、その場では正直、自分が観戦に行くとは思ってもいなかった。
そしてメキシコ・シティで数日を過ごしたある日、今度の金曜日のルチャリブレニは日本人レスラーが参加するという話を聞いた。何?日本人レスラー?それにはちょっと興味がわいた。どんな風に戦うんだろう。観客の反応はどうなんだろう?
再び同じ宿となった、あのご一家に声をかけると2つ返事で「行きましょう」ということになり、ルチャリブレ行きが決まった。
夜8時半会場なので、7時には宿を出ようとご一家と話しながらウキウキしていたら、だんだん参加者が増えていった。最後にシャワーを浴びていたカップルも濡れ髪で「行く、行く」と参加を決めて、最終的には9名プラス生後10ヶ月のおちびちゃんという大所帯で観戦することになった。これは、面白くなりそうだ。
今日、金曜日の会場はアレナ・メヒコというところで、もう一つの近場の会場に比べると、規模も大きく、金曜日なので盛り上がるという噂だった。10名はウキウキと地下鉄を乗り継いで、会場に向かう。駅に到着して電車を下りものの、実は誰も詳しい道のりを知らない。そこで、スペイン語に堪能なご一家のご主人と奥さんが周りの人に道を聞いてくれた。幸いにも、これから観戦に行くというメキシコ人一家に出会い、一緒についておいでと誘ってくれた。うわーい、よかった、よかったと10人の日本人は、暮れ行くメキシコ・シティの街をぞろぞろとメキシコ人一家についていった。傍から見たら、ちょっと異様な光景だったかもしれない。ほどなく、車、人、屋台の喧騒が始まり、ダフ屋らしき人がだみ声で「チケットあるよ、チケット買うよ」と言っているのが聞こえてくると(ダフ屋についてはご主人の解説)、向こうに、アレナ・メヒコの建物が見えてきた。
メキシコ人一家は、既にチケット持っていてすぐに会場に入れたにもかかわらず、ひよこの様についてくる日本人をチケット売り場まで誘導してくれた。全く親切な人だ。
チケット売り場は、更に騒然としていた。1列になって歩くのもやっとな狭い歩道では、ところどころにダフ屋も立っていて、歩きにくいことこの上ない。周りの人に聞いて、チケット販売の行列に10人で並ぶ。こんなところに日本人が10人も並び、さらに小さな和風の顔立ちのベイビーまでいるとなると人目をひかないわけがない。「わー、可愛い」とベイビーとコンタクトする人、「なんじゃ、この東洋人は?」と好奇心いっぱいで見つめる人などなど。我々の前に並んでいた、仕事帰りらしい背広のしゃれた髭のお兄ちゃんが「日本人レスラーを見に来たのかい?」と話しかけてきたので、ついでにお兄ちゃんに席購入の手続きもお願いすることになった。
席は1列目から5列目まではN$154(US$14)、6列目から10列まではN$140(US$12.73)というように数列ごとに値段が安くなる。連れのご主人は恐らく一番前で見たかったのだろうが、「一番前だと場外乱闘に巻き込まれちゃったり、レスラーの汗がかかったりするんですよ」というご主人の楽しそうな発言に恐怖を感じた我々は2番目の価格帯を希望。その意見を取り入れて窓口の係りにあたってもらうことになった。
↑窓口で私たちのチケットを買ってくれている
メキシコ人会社員。
↑会場への入口は駅の改札風。 |
ところが、試合開始まであと10分を切った状況では、30列目しか空いていないということで、仕方なく30列目となった。チケット売り場を離れて右手に向かって数メートル歩くと会場の入口になる。チケットを見せて、メキシコの地下鉄と同じバーを押して中に入る式の入口を入ると、思ったよりもちゃんとしたアリーナがあった。アリーナの一角にほの暗い階段を上る扉が開いており、そこから先がアリーナのようだった。
時刻は8時半を過ぎている。試合はもう、始まっているようだった。一旦会場に入ったものの、いったいどの席なのかさっぱりわからない。入口から入ったところは、一番前の客席と2階席の丁度中間くらいだ。30列目といっても、ぐるっとリングを囲むどのあたりなのかの見当もつかない。ということで、一旦会場を出て、再びスペイン語堪能なご一家のお世話になる。すぐに、係りの人が来て、異常な速さで席までつれていってくれた。
30列目から見るとこんな感じだが、結構迫力がある。さぁ、今日は写真をトリマクルゾーと、気合を入れていたのだが、内部の写真はここまで。係員に「アミーゴ、ノー、フォト、ポルファボール(写真はだめです)」と言われてしまったのだ。だから、これ以降の写真はない。
我々の集団に気の利いたOさんという人がいて、いつの間にか今日のプログラムビラを手に入れていた。それによると、今日は5試合あって、2試合目に日本人の名前が書いてある。
日本人の入っているチームは3人組で、MR.MEXICOをチームの頭として、2人の日本人名が書いてあった。よーし、本番は2試合目だ。それぞれ、ビールも買って準備はOK。申し訳ないが1試合目はそっちのけで、どうやって掛け声をかけるかの相談が始まった。件の一家のご主人が、「岡田さん、岡田さん、掛け声決めてくださいよぉ」というので、それじゃぁと勝手に決めて、足をだんだん鳴らしましょう、声を出していきましょうと、簡単に練習などして待った。
そして2試合目、お面をかぶったMR.MEXICO(彼はメキシコ人らしかった)が、明らかにハポネス(日本人)顔の2人を引き連れて登場。練習どおり我々は声を限りに叫んだ。周りのメキシコ人は何事かと振り返っているが、「ええい、頑張れニッポン」と叫び続けた。
ルチャは善玉と悪玉がきっちりわかれていて、しかもとてもわかりやすい。日本人チームは明らかに悪玉。なぜわかるかというと、しかめっつらのワルーイ奴の表情をしているからだ。ゴングが鳴る前から、相手側に攻めていったり、3人で1人の善玉をコテンパンにやっつけたり、そりゃぁもう、悪事の限りをつくしている。それでも、会場には「悪玉ファン」の一角があって、そこだけは、何をしようとも悪玉を応援している。我々も会場のブーイングと戦いながら、「行け行け、日本、ニッポン、バンザーイ、アリバ ハポン!」と叫び続けた。あまりの悪事ぶりに、大笑いしながら応援をした。途中でこっそり、例のご主人に「実はこれって、周りのメキシコ人に反感かってませんか?実は危なくないですか?」と聞くと、「いやぁ、かなりやばいでしょうねぇ、何か飛んでくるかもしれませんねぇ」と平然と答えてきた。おお、こわ。
ちょっと怖いと思いつつも存分に応援を楽しみ、予定通りに日本チームは負けて2試合目が終わった。そして3試合目は、全員覆面の悪玉が登場し、今度はこちらが勝った。
各試合はチームのリーダーを1回倒すと1ポイント、リーダー以外の2人の場合は2回倒すと1ポイントとなり、3ポイント先取した方が勝つ。各試合の流れとしては、最初は悪玉が勝ち、徐々に善玉が勝っていくという流れである。そして全5試合の流れとしては、最初は善玉が勝ち、次に悪玉が勝ち、3試合目は悪玉のあまりの反則ぶりに善玉が試合放棄し、協議の結果、善玉の勝ち、4、5試合目は最終的に善玉が勝つという流れになっているようだった。まぁ、実際、何が何やらよくわからないのだが。
試合が後になるに従って、レスラーたちは、よりイカツイ体格になっていき、何ラウンドかのプラカードをもって水着姿でクネクネと歩くお姉ちゃんのレベルもあがってくる。レスラーの登場も派手になってきて、会場はいよいよ盛り上がっていく。
各試合の中にも起承転結があり、全体としても起承転結があり、最終的には勧善懲悪なのである。これは、とっても盛り上がる。観客はストーリー立てされているとわかっていても、本気モードで怒ったり喜んだりして、自分もそのストーリーに参加する役者を演じて、選手と観客が一体になって、この芝居を作り上げているという印象をうけた。いってみれば、観客参加型のエンターテーメントなのだ。
帰りはタクシーで帰ろうと思っていたが、多くの人が地下鉄を利用しているので、10時45分頃だったが、地下鉄で無事に帰ってきた。
いやぁ、想像以上に面白かったルチャリブレ。プロレスを知らない人でも存分に楽しめると思った。特に今回は、日本人レスラーの登場とスペイン語ができるご一家がいたから、より楽しめたのだと思う。ご一家と日本人レスラーの方々、本当にありがとうございました。 |
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