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2005.06.06 ついにスリに会う |
メキシコ:メキシコ・シティ |
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今までの旅の中で、一番深刻な事件が発生した。メキシコ・シティに到着した5月30日の午後、地下鉄で第2の財布をすられたのだ。被害はクレジットカード数枚、トラベラーズチェック、現金だった。各方面への連絡と警察への報告など、全ての手配の終了に4日ほどかかった。旅を始めて約5ヶ月、「気持を引き締よ」という天からの戒めだったのだと受け止め、反省を込めて、この7日間を振り返りたい。また、最後に今回の経験や同宿の経験談をもとに、注意点をまとめた。
●スラれるまでのいきさつ(5月30日)
2005年5月30日、到着するなり宿の人に頼んで、日本語のできる歯医者さんに、夕方5時半からの予約を入れてもらった。地下鉄とバスを乗り継いで行くので、余裕を見て宿を出て地下鉄に乗ったのが午後3時半近く。歯医者さん近くのバス停にたどりついた午後5時過ぎに、夫のワークパンツのももの横のポケットに入れていた財布がなくなっていることに気づいた。
宿を出た直後に、歯磨きをしていないことに気づいたので、一旦宿に戻り、歯磨きをするために室内に入った夫が、鍵を室内に置いたままオートロックの扉をしめてしまうというアクシデントがあった。通常宿にはスペアキーがあるのだが、不運なことに、私たちの前に宿泊していた人が鍵を持って帰ってしまったので、私たちの鍵がスペアキーだった。どうしようかと、金槌やら工具やら持ってきて宿の人が頭を抱えている中、歯医者の予約があるからと、そのまま後をお任せして出てきたという経緯があった。
歯磨きをする時に、その財布を部屋に置いてきたような気がする、と夫も言うし、こういう時に私は楽観的な見方に頼りたくなるのが常なので、大丈夫だろうと思い込んで、歯科医の治療に立会い、帰り道で夫の散髪に立会い、かなり疲れて宿まで戻ってきたのが午後7時半頃だった。
室内の扉が無事に開いたことを宿のご主人から聞き、ホッとして部屋に入って愕然とした。ないのだ。期待していた場所にも、部屋のどこにもない。スーッと血が引いていくのがわかった。ついにスリにやられたのだ。
●スラれた夜にしたこと
もう外は夜の景色。とにかく、反省するよりも処理が先だ。
まず、財布の中身を思い出してみる。通常は利用しない第2の財布には、使わないクレジットカード、トラベラーズチェック、現金が入っていた。まずはクレジットカード会社への連絡、そしてトラベラーズチェックのサービスセンターへの連絡、時間が遅いので明日警察に行こうということになった。
さぁ、電話だと宿を飛び出したはいいが、メキシコの公衆電話を使ったことがない私たちは、まず電話のかけ方から問題だった。メキシコでは、公衆電話はプリペイドカードのみ利用できるということは宿の主人から聞いた。近くのファーマシー(薬屋)で聞くと、国際電話用のプリペイドカードはN$30(約300円)からあるというが、いったいいくらかかるかもわからない。何を慌てているのだろうかと、再度宿に戻り、ガイドブックを見ながら落ち着け、落ち着けとお互いに言い合った。ガイドブック「地球の歩き方」には、国際電話のかけ方、そして、コレクトコールのかけ方が掲載されていた。そうか、コレクトコールだ。カードの紛失の際にはコレクトコールを受け付けてくれる。各カードのコレクトコールの番号、そしてトラベラーズチェックのコレクトコールの番号をメモして、再度宿を出た。
メキシコからコレクトコールをかけるには、「090」とダイヤルする。スペイン語のオペレータが出るが、かまわず英語で「コレクトコール トゥ ジャパン プリーズ」と言うと、市外局番を聞いてくる。東京だったので0を除いて「スリー」と答え、次に電話番号を言うように促されるので、8桁の電話番号を言う。最後に名前を聞かれるので、自分の苗字を言う。これだけだ。
しばらくすると、聞き覚えのある日本の電話のコール音が聞こえ、「○○カードでございます」と日本語が聞こえる。オペレータとクレジットカード会社の間で、このコレクトコールを受けるかどうかのやりとりが行われるのを待って、「ゴゥ アヘッド プリーズ」と言われたら、相手と話ができる。
何とすばらしいことだろう。クレジットカードはたちまちキャンセルされた。カード会社の人がシンパシーに満ちた音声で「コレクトコールでおかけでございましょうか」という所から始まって、しっかりと対応してくれるのを聞いて、徐々に安心感を取り戻すことができた。クレジットカードはまだ不正利用された形跡がなかったので、特に警察の被害届のコピーも必要ないということだった。
次に、トラベラーズチェックだ。購入した時にもらった小冊子を見ると、紛失した場合の電話番号が書いてある。メキシコの場合は、アメリカ合衆国にコレクトコールするようになっていた。同じようにオペレータを呼び出し、今度は「ユナイテッド・ステイツにコレクトコール プリーズ」。アメリカ人が出たら「ジャパニーズ スピーキング スタッフ プリーズ」。大分待たされたが、コレクトコールだから関係ない。やがて日本人女性らしき人が出て、手続きが始まった。盗難の日時、場所、経緯、盗難にあったトラベラーズチェックのナンバーなどを聞かれ、何やらマニュアルに従ってレポートを作成しているようだった。最後に、被害受付番号というのを教えてくれた。明日以降のいつでも、現地のトラベラーズチェックのオフィスに行って、この番号とパスポートを提示すれば、新しい番号のトラベラーズチェックを発券してくれるという。こちらも、警察の被害届の提出などは必要なく、この電話だけで事が済んだ。
この時点で、実際の被害としては現金US$300だけだろうと認識した。クレジットカードもトラベラーズチェックも、緊急時には24時間365日対応してくれ、内容もビシッとマニュアル化されており、対応する人も被害に会った人の気持を察した対応ができるような話し方を訓練されているという点で、本当に助かった。しかし反面、このように完璧なシステムができるほどに、世界中で日本人がだまされたり、盗難やスリにあっているのだろうかという感想も持った。
●翌日は警察に報告(5月31日)
翌日も歯医者の予約があったので、午前中に歯医者に行き、12時40分頃に宿近くの警察署に行った。
警察の場所やどのようなことを聞かれるかについては、宿に置いてある情報ノートに詳しく掲載されていた。これは、以前、ここに宿泊していた女性が盗難に会った時に書いてくれていたもので、宿のご主人が、そのページを開いて見せてくれたのだった。
入口を入って右手がカウンターになっていて、すぐに警察官が対応してくれた。情報センター出版局から出版されている「旅の指差し会話集」のメキシコ編を持っていった。この本は、イラストと簡単な文章と単語類が分類ごとに書かれている。トラブルの盗難のページを開き、「私は〜を盗まれました」を指差し、次に「トラベラーズチェック」「お金」「クレジットカード」を指差した。そして最後に「アブラ エングレーゼ?(英語を話しますか?)」と言ってみた。すると、たちまちに理解され、英語の話せるスタッフが出てきて、事務所に通されて、書類の作成が始まった。スペイン語ができるのであれば、スペイン語で状況を書いてほしいと言われたが、それは無理なので、英語で状況説明を書いた。それを担当の女性がスペイン語に翻訳し、氏名や住所や電話番号などの情報とともに被害報告書を作成してくれた。最後にパスポートをコピーして終了。我々には、警察署の上司のサインがついた被害報告書のコピーを渡してくれた。ひとしきり手続きも済んだので、メキシコの盗難やスリが多い原因について彼女と話してみた。彼女は「メキシコ経済が良くないせいだ」と言い、夫は「教育の不足だ」という。面白い展開になりそうだったが、彼女も忙しそうだったのでほどほどにしておいた。宿の情報ノートには、「2時間くらいかかり、周りの人々が皆助けてくれた」と書いてあったが、書類作成終了まで30分くらいで終了した。これも「指差し会話」のお陰だ。宿に帰って「指差し会話」の話をしたら、6組中4組が持っていて、みんなその出版社の回し者かと思うほど、口々にその素晴らしさを褒め称えた。この本は持ってきて本当によかった。
●まだまだ終わっていなかった(6月2日)
取り急ぎの手配は終了したので、6月1日はもう一度歯の治療に行き、日本食材店に行き、次の目的地の手配をし、ついでにその近くでみかけたトラベラーズチェックのオフィスに寄って、トラベラーズチェックの再発行をしてもらった。そうこうているうちに一日が終わってしまった。ばたばたしていて、サイトの更新もメールもチェックしていなかったので、2日は、一日サイト更新の作業にあてた。更新がてら久しぶりにメールチェックをすると、母からメールが来ていて、あるクレジットカード会社から電話が入っているという。あっ!そのクレジットカード会社への連絡を忘れていた。ということで、またクレジットカード会社にコレクトコールを行う。
日本時間の明け方にあたる時間だったので、日中の当番が出てくるこちらの夜8時に電話を折り返ししてくるということだった。夜8時、電話を待つが来ない。仕方がないので、こちらから電話をかけた。今回のクレジットカードは、不正利用された形跡があるということだった。ただし、2回目の不正利用時に、通常とは異なる使い方だったためにチェックで蹴られて、不正利用は1回だけだったようだ。「通常とは異なる使い方」について詳しく聞いた。安全上ここでは記述できないのだが、クレジットカード会社のチェック機能って凄いんだなぁと感心した。
それにしても、今回は不正利用金額が発生しているので、クレジットカード会社から書類を受け取り、記述して印鑑を押して郵便で返送する、という手続きをする必要があった。しかし、ここはメキシコ。皆が普通の顔で「郵便は届かないですから」というような国である。交渉の結果、FAXで書類を受け取り、FAXで返信することで了解を得た。
宿の方でFAXを受信できるのが夜の10時まで。電話でやりとりしたのが夜9時30分。「あと30分以内にFAXを送れますか?」と私が聞くと、担当者は問題ないと答えた。宿でFAXを待つがなかなか来ない。あんなに簡単に言っていたのにと少しムッとし始めた10時ぎりぎりになって、やっとFAXが届いた。カバーページ、提出書類3枚、その書き方と注意書き2枚の合計6枚だったが、カバーページには、担当者以外に3人の印鑑が捺印されていた。そうか、この印鑑を集めるのが大変だったんだなぁ、きっと。お疲れ様でした。
●やっと落ち着いた(6月3日)
ということでもう木曜日。1日ツアーのテオティワカンから戻るなり、昨日受け取ったFAXをコピーし、やっと母にもメールできる。と思いメールを立ち上げたら、母から再びメール。色々なカード会社の人から連絡が入りまくっているとのこと。やれやれ。
●終結に近づいた。(6月6日)
週末をはさんで月曜日の夜、日本は火曜日の朝だ。カード会社への連絡、書類のFAXなど一通りの手続きが9割方終了した。一連の手続きを行っていたこの期間にも、同じ宿に宿泊する日本人が、我々と同じ地下鉄のイダルゴ駅からのった電車内で、ジーンズの前ポケットに入れていたパスポートをすられるという事件が発生していた。
●スリ被害にあわないためには・・・
今回の事を反省して、我々の経験および他の人の体験などから、メキシコ・シティでスリ被害にあわないための注意すべき点を書く。
以下は、簡単なようで忘れがちなポイント。
・地下鉄に乗る時には、なるべく前か後ろの人の少ない車輌に乗る。
・地下鉄に乗る時には、ズボンのポケットに貴重品を入れている場合は、ポケットに手などを入れて常に確認をするか、ポケットを人の手が入らない壁側につけておく。
・外出時には多額の現金や貴重品は、信頼できる宿であれば宿に置いていく。
・人気のない電話BOXでナイフをつきつけられた経験談が情報ノートにあったことから、人気のない場所には昼間でもいかない。
上記のことは、ガイドブックなどにもよく書かれていることでもあるが、更に思ったのは、我々の場合も、パスポートすり被害の青年の場合も、メキシコ・シティ入りの初日に被害にあっている。
移動してきた日というのは、疲れている上に、街に慣れていないので視線が定まっていない。そういう所をプロは狙っているのだという気がした。なので、移動してきた日は、疲れていないと感じていてもメキシコ・シティでは休みを必ずとることが重要だと思った。
更に、「メキシコ・シティは危ない、危ない」とどの都市に行っても言われ、あるいは遠くアメリカからメールで知らせてくれる友達もいて、私たちは必要以上に緊張してしまったのかもしれない。普段入れないポケットに、貴重品を入れてしまったのもそのせいだった。人から何と言われようと、自分の貴重品の管理の仕方をくずすべきではなかった、という反省もあった。
以上、このスリから私たちが学んだことである。メキシコ・シティはスリがいるから行かない方が良い、と言っているのでは決してない。それどころか、テオティワカンはじめ、謎に満ちた文明のロマンスに満ちた観光の見所がある素晴らしいところである。これから向かおうとしている、中米・南米の大都市は、どこでも同じような魅力と危険が潜んでいると思う。自分たちを含め、存分に楽しむための心がけとして役立てばと思い、詳細を記した。
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