夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2005.07.06 大富豪気分で楽しもう!ガラフォン国立公園
メキシコ:イスラ・ムヘーレス
 月曜日にでもガラフォン国立公園に行こうと予定していたのに、トロピカル・サイクロンのCINDYがユカタン半島に居座って、月曜日と火曜日は天の底が抜けたかと思われるほどの、大雨となった。水曜日にサイクロンはアメリカ合衆国に抜けて、青空が戻ってきたが、この分だと海の中は荒れていて、シュノーケリングが楽しめないかもしれない。できれば、2日くらい海が静まるのを待って、金曜日に行くのがいいだろうと思っていた。

 ところが、である。CNNの天気予報が、今度はトロピカル・サイクロンのDENNISの到来を告げていた。金曜日には、ユカタン半島の東海上を通過する。やれやれ、カンクン一帯は、そろそろ雨季になろうとしているのである。CINDYとDENNISに促されて、ガラフォン国立公園は木曜日決行になった。

 先日下見に行って決めたように、ツアーは使わずに、ガラフォン国立公園単独で訪れることにした。途中までバスで行ってそこからタクシーに乗り換えると安くいけるかも、と思っていたが、たいした金額でもないので、宿からタクシーで公園に向かうことにした。

 ガラフォン国立公園のチケットは、テーマパークのようになっていて、入園料金と基本施設の利用のみのベーシックチケットがN$165(US$15)、入園料金と基本施設と全てのアクティビティーと全ての場所でのフリードリンク、フリーフードとロッカーとタオルの全部込みのチケットがN$484(US$44)である。どっちにする?ガラフォンでは、島の南端まで行ってそこからの景色を眺めるのと、シュノーケリングポイントで楽しむのが目的だ。、ベーシックチケットで南端までは行けるし、シュノーケリングギアはUS$10、ロッカーもUS$2の追加料金を支払えば借りられる。ランチを持参すれば、ベーシックチケットで充分だね、ということで、出発の朝、スーパーに行って、パンとチーズとハムを買ってきた。昨日から凍らしてあったペットボトルの水を冷蔵庫代わりに、ハムとチーズとマヨネーズを同じビニール袋に入れて、パンも入れて、タオルも持った。準備OK!

 タクシーはN$44(US$4)だった。例のごとく助手席には子供を抱えた奥さんが座っている。先日プラヤ・ランチェロスに行ったのとほぼ同じコースを途中まで行き、今回は、そのまま島の東海岸沿いの道を進み続けた。島の真ん中あたりは庶民的な民家が並ぶ風景だったが、それ以降は、大きな別荘や隠れ家ホテルのような建物が点在する風景。モダンな家もあったりして、一体どんな人が持ち主なのだろうかと興味をそそられる風景だった。

 さて、島の北側のダウンタウンからタクシーで15分ほどで、島の南側にあるガラフォン国立公園の入口に到着。ベーシックチケットを購入して、簡単なガイドを受けて中に入ろうとしたら、荷物チェックがあった。こんな所にも、テロを警戒するチェックがあるとは!とちょっと驚きながらも手提げ袋を開けると、たちまちに我々のパンの入った袋が指摘された。この検査、「食物を持っていないか検査」だったのだ!理由は、園内の動物に食物を与えるなど、自然保護に反する行為を未然に防ぐため、ということだった。おおお、自分たちが生態系破壊テロになるとは思わなかった。というわけで、マヨネーズもチーズも全部カウンターに預けて中に入ることになった。「ペットボトルは持って入ってもいいですよ」と言われたのだが、「いやいや、これは冷蔵庫ですから」と言って預かってもらった。意味がわからなかったのか、案内嬢はあいまいなスマイルを浮かべていた。

 公園は、丘の上の入口から下って海のレベルまで続いている。途中にインフォメーションセンターやロッカー、シャワー、トイレ、レストランのある建物があった。この建物からさらに下ると、海辺にプールがあり、その前は岩場でその先がシュノーケリングポイントになっている。海の色は、北側に比べると深さがあるせいか、やや濃いブルー、その先が深い紺色で、ずっと先にはカンクンのホテル群が見えている。これを見ただけでも来た甲斐があったと思えるくらい、とにかく美しい風景だ。

 まずは島の南端にある遺跡を目指して散歩することにした。プール前から島の南端まで、海の際に遊歩道が続いている。手すりもなく、道には波が少しかぶるようなワイルドな遊歩道がつづら折に続く、面白そうなコースだった。が、先日のCINDYのせいで、途中から工事中となり、行けないようだった。仕方がないので、丘の上の道を行くことにした。入口まで戻って、一体公園を出て、車道を歩くこと5分、モダンなモニュメントが点在するスカルプチャー・ガーデンが見えてきた。この先に入るだけでも入園料N$28(US$2.55)が必要だが、ベーシックチケットにはこれは含まれているので、そのまま入ることができた。

 スカルプチャー・ガーデンの入口の小屋の左側はイグアナスと言う名前のところで、体調1mほどのイグアナが数匹のそのそと歩く駐車場のような空間。ここから島の南端を眺めると、島を形成する切り立った岩と海が入り組んでいて、巨大な立体地図を見ているようだ。

 ここにモダンな彫刻を置こうと考えた人は、なかなかセンスがある。コバルトブルーの美しい海を背景に、無機質な鉄の塊と青々と繁る草が調和している。そんな風景を楽しみながら、ゆるゆると島の南端に近づいて行くと、海沿いの遊歩道に下りる道があったので、下っていった。

 この道は、最初に行こうとした遊歩道からずっと続いている道で、島の南端に回りこんで、そこで終わる道である。島は南北に長いといっているが、正確には、南南東と北北西に長い。従って、島の南側の端には、「Cliff of dawn(直訳で「夜明けの崖」)」という看板があり、メキシコで最東端であることが説明されている。最東端と聞くと、千葉県出身の私は銚子を思い起こす。千葉県人は、初日の出を銚子で見ようと、大晦日から銚子に向かう人が多い。というのも、銚子の灯台が、本州最東端だからだ。私も独身の頃は、友人たちと何度も初日の出を見に行った。あまりの交通渋滞に、海岸までたどり着けずに、車中で初日の出を迎えてしまったこともあった。大晦日に、メキシコ人もイスラ・ムヘーレスのこの岬に大集合するのだろうか?メキシコで数ヶ月過ごした勝手な想像では、天文学に造詣が深かったマヤ人ならともかく、現代メキシコ人はこうしたイベントにあまり興味がないだろう。キリスト教に関する祭典には熱心な人たちだが、自然現象はどうだろうか?日本人が躍起になって初日の出を見るのには、自然信仰みたいなものが無意識にあるのかもしれない。

 島の南端までの散歩は、想像以上に楽しかった。スカルプチャー・ガーデンまで戻ると、見晴らしのよいレストランがあり、あまりの景色のよさにそこでお茶することにした。レストランはまるで、高級リゾート!カンクンは高級リゾートなのだが、島でしみじみと暮しているとそれを忘れてしまう。今日は、久しぶりに思い出した。白い帆布に木製の骨のキャンバスは、青い空と海に映え、恐ろしく腰の低いウェイターが注文を聞きにくる。午前中のレストランは、我々だけの貸切状態で、ゆっくりと喉を潤し、贅沢な時間を過ごすことができた。

 さて、11時ではあるがお腹すいちゃった。ガラフォン公園の入口に戻って、預けたランチを受け取る。園の外でランチできそうな場所といっても、適当にはなかったが、公園の低い塀とくっついてあるゴミ箱の上が平らで丁度良かったので、そこにランチを広げて海を眺めながら食べることにした。パンを開いて、ハムとチーズをはさんでマヨネーズを塗って。パクついていたら、視線を感じた。塀の中からイグアナがじーーーーっと見ているのだ。だめだめ、あんたに餌をあげちゃいけないって言われて、ここでこうして食べているんだから、ここであげたら意味ないでしょ!とか言いながら食べる。なおもジーっと見ているが無視して食べていたら、今度は別のイグアナが足元に近寄ってきた。これは、まずい。自転車で通りかかったアメリカ人夫婦が面白そうに見ている。アメリカ人奥さんが「あなたのサンドイッチを狙っているのよ。彼らはフライドポテトが好きみたいだから、マフィンもいけるわよ」とけしかける。生態系をくずしちゃいかんとは思うものの、そのあまり、自分の足を食われたのではかなわない。これは正当防衛だと、マフィンのかけらをちぎって投げた。映画ジュラシックパークで見た恐竜並みの素早さで、イグアナはクルッと向きを変えて、マフィンのかけらに飛びついた。小さいながら迫力は満点である。グッと飲み込んで、またこちらを向いている。今度はもっと遠くに投げた。遠くに行く。そして3回目にもっと遠くに投げた時、イグアナはパッと行きかけて動きをとめ、ゆっくりと、いぶかしげにこちらに首を向けた。それは「おかしい、何だか遠くにいかされている気がする。俺を追い払おうとしているのか?むむむむ」と言っているようで、かしこい様子が面白かった。しかし、所詮イグアナ。食欲には勝てずに3回目のマフィンにもとりかかった。私との距離は5mは離れた。彼(彼女?)がゆっくりと戻ってくる間に、食事は終わった。かさかさと片付ける音に反応しているのか、臭いがしなくなったからなのか、こちらに戻りかけていたイグアナは、自分の居場所に帰っていった。こうして、やや緊迫の食事を終えた後、園内に戻ってぶらぶらとしていると、食後の休憩に丁度いい場所を発見。

 やしの木が繁る砂の上には、リクライニングの木の椅子とハンモックが設置され、木陰で涼みながら、コバルトブルーの海とその先のカンクンのホテル群をのぞめる場所だった。南国の楽園と聞いて想像するいくつかの絵のうちの1つに、こういうのって入ってませんか?私は想像には入っている。うわぁー、楽園、楽園と喜んでハンモックに30分ほど揺られた。

 さぁ、そろそろシュノーケリングでもするか。ベーシックチケットにはライフジャケットレンタルも含まれている。N$111(US$10)でマスクとチューブとフィンを借り、N$22(US$2)でロッカーを借りた。午前10時〜午後2時までは、私たちも参加を考えたツアー客でシュノーケリングポイントが混む。午後1時過ぎの今、やや人は引いてきたものの、まだまだ多くの人で賑わっていて、海に入る桟橋は、入る人とあがってくる人が慣れないフィンをつけておおはしゃぎの状態だった。岸から近い部分は岩場で、ブイと綱が張ってあって立ち入り禁止区域となっている。シュノーケリングは、写真で見えている小屋から左手に向かって広がっている。許される範囲内の終わりにも桟橋があるが、そこからUターンしてゆっくりと戻ってきた。所要時間1時間である。魚は美しい熱帯魚がちらほらといる場所が1ヵ所、グレーの大きめの魚が20〜30匹群れをなしている場所が1ヵ所あるくらいで、たいしたことはない。ガラフォンが「リーフ」と呼んでいるサンゴ礁も美しいとは言えなかった。シュノーケリングが目的で来ていたら、満足できなかったかもしれない。

 体も冷えてきたので、陸にあがった。あとは、海辺のプールでゆっくりと景色を楽しんだ。こうした海沿いのプールというコンセプトは、カンクンのホテルゾーンにあるホテルでよく目にした。プールにつかりながら、コバルトブルーの海を眺めるってのは、ちょっとやってみたかった。ここで実現できて、満足した。プールからあがって、レストランでコーラを飲んでいると、隣のテーブルに、前の客が食べ残したラビオリが置きっ放しになっている。野鳥がそーっとやってきて、ラビオリの1枚を引っ張り出して食べ始めた。そして、もう一羽、もう一羽。従業員は片付ける気配もない。人に生態系を壊すからと食物持込を制限しておいて、自分たちこそ野鳥のコレステロール値を平気であげているではないか。全くいい加減なものだ。

 それにしても、今日のガラフォンは大満足だった。レストランで上品な対応を受け、ハンモックに揺られ、プールに入って海を眺めていると、自分の庭でくつろいでいる大富豪気分になれる。ガラフォンはツアーで立ち寄るのでなく、単独でゆっくり過ごすのが正解だ。ツアーガイドに「はい、こっちでーす」とか言われて、列に並んだ瞬間に大富豪の幻想は消えるだろう。ゆっくりと自分のペースで楽しむことで、豊かな時間を味わえる。チケットもベーシックで良かったと思う。フリーフード、フリードリンクというのは、贅沢な響きがあるが、人員配置を誤っているのか、ブラブラと暇そうな従業員がいるにもかかわらず、食事係りは大忙しで、飲み物・食べ物ブースではかなり待たされる。食べ物ができるのを立って待っているのって、全然優雅じゃない。だったら、持参して公園に行って食べる方が優雅になれるだろうと思う。

 本当の大富豪で、本当に自宅だったら、他の観光客をウォッチングすることもないだろう。それはそれでつまらないことである。