夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2005.07.20 トロピカル・ハリケーン"EMILY"の爪あと
メキシコ:プラヤ・デル・カルメン

 18日、月曜日の朝7時半過ぎ、窓から入った雨水と葉っぱで、やや外チックになってしまった部屋はさておき、外の状況を確かめに出た。

 まだ停電したままなので、とりあえずやることのない観光客がカメラを片手に出てきていて、ハリケーン明けの朝の街は、意外に人出が多かった。

 とりあえず浜に行ってみると、あんなにコバルトブルーが美しかった海は、鈍い色に濁り、ハリケーンの余波で波がうねりを見せていた。強い風にあおられて、波しぶきがあたり一面に飛んでいて、全てが煙って見える。ハリケーンが過ぎ去っても、まだこのような有様だということは、昨晩の怒涛は如何ばかりだったろうかと、恐ろしくも見てみたかったなぁという気持になる。この分だと1日、2日は海には入れないだろう。

 街中は、一部の道路で水が溢れているところもあったが、大抵の道は水がたまることもなく、水害は免れたようだった。

 しかし、あちこちで看板が落ちたり、養生をしっかりしていなかった土産物屋のガラスが全部割れていたり、瓦屋根がずれて落ちていたり、街の案内板を立てていた鉄の棒がぐにゃりと曲がっていたりして、ハリケーンEMILYの凄さを物語っていた。


 ショックなのは、それまで街の通りを散策する際に、気持の良い木陰を提供してくれていた木々達が、軒並みやられてしまったことだ。朝8時前から、待機していたらしい軍隊風の迷彩服の男性たちが、次々に道に倒れ掛かった木々の幹や枝を伐採していく。悲しい光景だった。


 根こそぎ倒された樹木は、8時半頃に到着したトラクターに引きずられて、街を去っていった。

 この街の木々が元に戻るまで、しばらくかかってしまうことだろう。


 旧バスターミナルに行ってみると、当然封鎖でバスは1台もなかった。詰め寄って事情を真剣に確認しているのは、メキシコの地元の人たちばかりで、皆、商用絡みのようだった。観光客で急ぎの人は、とっくに自国に帰っているか、あきらめて、我々のように見物をきめこんでいる。こうした自然の猛威とともに生活していかなければいけないという状況は、なかなか大変なことだ。

 それにしても、そうして眉間にシワを寄せている人は、バスターミナルでしか見なかったように思う。月曜日というのに、ソカロ近辺には、仕事が休みになったのだろう、大勢のメキシコ人がぼんやりと座っていたり、新聞で被害状況を読んでいたりしていた。昼近くになると、お父さんがお休みになったからか、近郊から家族連れでやってきて、まだ荒れ狂う海を背景に、家族写真なんか撮っちゃってたりして、ちょっとしたイベントを楽しんでいる人さえいる。CNNが報じた、先日のジャマイカの映像とは大分様子が違う。メディアがより悲惨な部分だけを切り出して、ドラマチックに見せようとしている意図を差し引いたとしても、やはりメキシコは、政府がちゃんと機能しているまっとうな国なのだという気がした。こうした被害になっても、しかるべき組織が街に出てきて、正常な状態に戻そうと必死で働いているからだ。

 とはいえ、停電は月曜日の夕刻まで続いた。このまま停電だと、ロウソク生活2日目になってしまう、と悲観していた夕方、スイッチをつけっ放しにしていた電化製品が、いっせいに動き始めたのだった。どこかから、拍手と歓声も沸き起こっていた。

 電気は、その後、一旦停電になったが、すぐに回復。部屋の板は、安全を見て、月曜日はそのままにされ、翌19日の火曜日に一斉にはずされた。うっとうしかった数日間から開放されて、ホッとした。

 このスケッチを書いている20日の夜現在、宿の水を汲み上げるモーターは何とか回復したものの、お湯が出てこない状態が続いている。夜8時を過ぎて、ケーブルテレビが復活。CNNはとっくに別の地域の別の事件を報じていた。

 そうそう、電気が止まって水がでない間、トイレが流せないのが一番困った。月曜日も大雨が降ってきたので、ゴミ箱に雨水をためようとして、雨どいの下で天を仰いで水を貯めた。それ以来、お腹が痛い。どうやら雨水が口に入ってしまったらしい。水道水を間違って飲んでも、屋台のカキ氷を食べても、海水を飲んじゃっても大丈夫だったのに、ここに来て雨水にやられるとは・・・。皆さん、雨水は飲まないようにしましょうね、って、普通は飲まないですから。

 こうしてハリケーンEMILYは、過ぎ去った後も、その余韻を私の体内に残していった。私のEMILYは、まだ胃袋でチクチク暴れている。早く出て行け〜!