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2005.09.13 キューバ航空でスーツケース壊れる! |
コスタリカ:サン・ホセ |
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●2005年9月8日(木)
グアテマラのラ・アウロラ国際空港から、コスタリカのフアン・サンタマリア国際空港に向かうキューバ航空の機内で、キューバン・リブレ(ラム酒のコーラ割り)を飲み、かなりいい気分でコスタリカに到着。
しかし、たとえほろ酔い気分でも、バゲッジクレームでスーツケースを受け取った後のチェックは忘れられなかった。というのも、かつて飛行機に乗った後にスーツケースが壊されていたのに、ホテルに到着してから気づいたために被害届を出せなかった、という経験があるからだ。その時は結局、自分で買い直さざるを得なかった。同じ轍を踏まないためにも、今回は絶対にチェックしようと思っていた。
さーて、今回はどうだろうか?と詳しく見るまでもなく、私のスーツケースの破損がみつかった。背の部分が本体から乖離し始めている。おおお、何てわかりやすい破損だ。
どうしたらよいのかと、キョロキョロと見回すと、人々が出て行こうとする列の出口に向かって右側に、各飛行機会社のカウンターが並んでいる。どうやらここでクレームすればよいようだ。しかし、キューバ航空のカウンターがない。そうか、グアテマラでも、チェックインカウンターが他航空会社とは隔離されたような隅っこにあったもんなぁ。こんなところにお金かけて、カウンター出さないよなぁ。どうしようか?
そこでユナイテッド航空のカウンターにいる兄ちゃんに、だめもとで聞いてみた。「キューバ航空のカウンターってどこにあるんでしょうか?」
「ああ、キューバ航空はカウンターがないんですよねぇ」という答えくらいは想像と許容の範囲だったが、兄ちゃんは「僕は、キューバ航空に働いているわけじゃない」と言ってきた。これには、カチンときたねぇ。だから、「そんなことはわかってる。だけど、あんたも空港に働いているのだから、それくらいわかるかと思って聞いたんだ。一体、カウンターは、どこにあるのか、知っているのか、知らないのか、それを答えてほしいんだ」と英語でまくしたてたら、こちらの剣幕に恐れをなしてか、スーツケースを引き上げるあたりを指差し、その近くに立っている赤いネクタイの男性がキューバ航空の人だと教えてくれた。そうよ、そうよ、それを早く言えばいいだけなのよ。ったく、日本人をなめるなよ!と威嚇風な表情を作って「サンキュー」とお礼をいった。
さて、赤いネクタイの若い男性にスーツケースを見せると、「これは、ひどい」とつぶやいている。なかなか素直な反応に、好感が持てた。彼は、さきほどのユナイテッド航空のカウンターの隣あたりにある、名前のないカウンターの裏から書類を取り出し、さらさらと被害状況を書いた。複写になっている被害届のうちピンク色の1枚をこちらに渡し、明日以降にこの紙に書いた人に電話してほしいという。おそらくその人とアポイントを取って、壊れたスーツケースを見せて対応が決まるだろうということだった。
まぁね、この場で対応してくれるとは思ってなかったけど、自分で電話してアポイント取らなきゃならないってのがちと面倒だ。もし時間がなかったら、たいした金額のスーツケースでもないし、それよりも観光の時間を削減される方がもったいないと考え、ここで諦めるただろう。それを予想して、なかなか事が運ばないようになっているのが、クレーム処理の場合の常套手段というのは世の常識にも近い。が、幸い今回のサン・ホセでは時間がたっぷりあるのです。うしし。どーなるか、ちょっと楽しみにさえなってきた。
壊れたスーツケースを抱えて宿に到着。夕方落ち着いてから宿の主人に話をすると、明日といわずに今すぐ電話してみましょうといってくれて、コスタリカ人の奥さんがキューバ航空から教えてもらったところに電話してくれた。12日の月曜日の10時以降にオフィスに来てくれれば対応します、ということになった。それまで丸々3日間もある。やはり引き伸ばし作戦なのだろうか?
●2005年9月12日(月)
さて、待望の月曜日になった。郊外に滞在している我々は、バスで朝9時45分にはサン・ホセ中心部に到着して、キューバ航空から教えてもらった住所から事務所を探し始めた。教えてもらった住所には交差する通りの名前が2本とビルの名前が書かれている。Avenida
CentralとCalle Primeraだ。ということは、図の薄緑色の4箇所のどこかにある、という意味になるらしい。例えば、「マクドナルドから何mどちら方向に向かって左折して・・・」とかいう説明がないところが日本と違う。これもクレーム交渉の気分をそぐ一つの手段なのだろうか?そんなことされると、ますます燃えちゃうぞー!と、言いつつも、壊れたスーツケースを抱えながら、このブロックをグルグル周ったが見つからない。くー、悔しい。荷物を持ってくれていた夫の機嫌が崩れ始めている。まずい。幸い、今の宿の主人のトラベルエージェンシーのオフィスが近いので、そこにスーツケースを置かせてもらって出直すことにした。空身で探したらすぐみつかった(地図の赤丸のビルの5F)。そういうもんなんだなぁ。イライラしていると、見える物も見えなくなるのかもね。
ということで、スーツケースはないけれど、とりあえずオフィスを訪ねてみた。入ると右手に受付カウンターがあり、目の前が応接セット、その右手に机が2つ並んでいて、各机に男性がこちらを向いて仕事中という事務所だった。近いほうの男性に向かって「スーツケースが壊れた件で来たのですが」とピンクの被害届を見せると、担当者が不在なので午後2時にもう一度来てくれという。
木曜日の電話で決まったことは「月曜日の10時以降に来てくれ」という内容だった。「このような表現の場合、まず10時に会える事はありませんね」と宿の主人から言われていた。さすが!大当たりだ。不愉快な事態というのは、予測できているとそんなに不愉快でない。シャツの第二ボタンまで胸元を開けて、ゴールドのネックレスと胸毛がセクシーに絡み付いているのを見せているこの男性は、逃げ腰に違いない。さーて、どう切り替えそうか。
まず、10時にアポイントを取ったと強固に言ってしまおう。すると、男性は担当者がなぜ不在なのかを申し述べ始めた。昨日到着するはずの便が今朝到着にずれこんで、担当者は今空港に行って大忙しなので、午後にならないと対応できないということがわかった。それでは、午後になって暇になるかどうか、どうしたらわかるのか?2時になったら絶対に担当者は戻っていると言えるのか?と聞くと、「それじゃぁ、午後1時にここに電話してください。確認しますから」という。更につっこんで、「じゃぁ、午後1時にここに来ますから、あなたから担当者に確認の電話をしてくれますか?」と言ったら、なんだか急に立ち上がって、「今、彼に連絡してみましょう」と受話器を取り始めた。なんだ、連絡取れるじゃないですか。
電話口で彼が「韓国人みたいな、アジア系の人がきて・・・」とスペイン語で言っているらしいので、横から「ハポネサ(日本人よ)」と突っ込みを入れて訂正させたりしながら、回答を待った。結局、すぐにスーツケースを持ってきたら、修理工に見せて修理するか新しいのを買うかを明日の午後までに判断する、ということになった。この男性が不在を決め込まないように、夫を監視役として事務所に残し、私は走ってスーツケースを取りに戻った。
ということで、スーツケースは置いていくことになった。「それじゃぁ、明日の午後に連絡ください。」と、男性はやれやれ終わったという表情で言ってきたが、ちょっと待ったぁ。スーツケースをそちらに預けたという預り証として、今日の日付と彼のサインをピンクの被害届に書いてもらうことにした。彼は「オスカー・ゲバラ」という名前だった。アメリカの有名な賞と、キューバ革命家をくっつけたこの名前はかなり覚え易い。「オスカーとゲバラかぁ」と感心していると、彼も「そう、あの"ゲバラ"といっしょなんですよ」と笑った。担当じゃないといっているのに強引に仕事をさせて、悪いなぁという気持もあったので、こうした会話で彼が笑ってくれてホッとした。だからというわけではないが、「このスーツケースは修復できるダメージではないと思うし、その場合、そちらで同じようなスーツケースを購入されても困るので、キャッシュで弁償してほしい」と和やかな雰囲気で申し出てみた。オスカーは、「まぁまぁ、とにかく修理工に見せてからですね」と答えた。
修理されようと、新しいのを買い与えられようと、それは我々の希望ではない。旅に出てから、私は2代目、夫は3代目のスーツケースを使っており、US$100前後の布製スーツケースについては2人とも 一家言ある。自分たちの目で見て、納得したスーツケースじゃなきゃ嫌にきまっている。ということで、キューバ航空からの結果は出ていないけど、スーツケースを買っちゃうことにした。
バスに乗ってサン・ホセの青山といわれる地区のショッピングモールMall San
Pedoroに行くと、1件だけスーツケースの専門店があり、品揃えも豊富だったのでここで買うことにした。前回メキシコのカンクンで探した時よりも、同じレベル商品の価格が安い。やはりコスタリカの方がこうした物価も安いようだ。今回、この値段付近の各社スーツケースの作りを見て、やはりサムソナイトは有名ブランドだけあると思った。車輪の大きさと収納の仕方、引っ張って歩く時のハンドルを収納する金具と本体の接合部分の構造、本体内側の強化板のはり方など、同じような価格の無名ブランドと比べるとよく研究されていて、今まで壊れた原因をカバーするようになっている。なるほどねぇ、これがブランドの信頼ってやつか。丹念に検討した結果、サムソナイトのUD$90のに決めた。現金で買うといったら5%引きにしてくれた。いい値段だ。
●2005年9月13日(火)
今日もサン・ホセに出て、次の目的地ペルーのリマへのフライトの価格調査なんかしていたが、昼前に用事は終わってしまった。オスカーは午後に連絡してくれ、っていってたけど、ちょっと事務所によってみるか。すっかり行きつけになったキューバ航空の事務所に行くと、今日は鮮やかな黄緑色のシャツで、やはり第二ボタンまであけてゴールドネックレスを見せているオスカーがいた。オスカーは我々の姿を見ると、席を立って近寄ってきた。結果はもう出ていて、修理は不可能、US$100までの同様のスーツケースを購入してレシートを持ってきてくれればその金額を支払ってくれるということになっていた。オスカー、ありがとう。聞いていないようで、彼はちゃんと私達の希望を叶えてくれたのだった。実はスーツケースはもう購入している。しかし、彼の手前そうは言えない。
ということで、またバスに乗ってモールに行き、昨日の店で領収書を今日の日付に書き換えてもらえないか相談しに行った。担当の男性は真面目な人で、「そういうことは、ちょっとできないですねぇ」と渋ってきたが、店のオーナーらしき人に相談したら、あっさりと書き換えてくれた。しかも、領収書の宛先がキューバ航空というのを見て、即座に状況を判断したのか値引き前のUS$90という領収書を切ってくれた。なかなか粋な店主である。
キューバ航空の事務所に引き返して、領収書を見せると、オスカーはUS$100という上限を10ドル下回ってきた私達をちょっと感心したようにニッコリと笑って眺め、「エクセレント!」と言った。事務所の左手に個室になっている上司のオフィスでサインをもらって、事務所内の会計係りに渡して、US$90の小切手を切って持ってきてくれた。パスポートを持って指定の銀行に行くと現金に換金してくれるということだった。指定の銀行の場所は、個室の上司の部屋から見えるということで、上司の部屋にお邪魔して銀行の場所を教えてもらった。上司はパイロットのような方に紺の飾りベルトの付いた白いシャツに紺のネクタイ、紺のパンツをはいており、いかにも航空会社の人という服装をしていた。キューバ航空本社派遣の社員と、現地採用の社員という違いなのだろうか。オスカーの方がいかにもキューバという感じがするけど。
以上で手続きが終了。空港に到着した9月8日から5日めに解決したことになる。中に土日がはさまっているので、3営業日で3回訪れて解決だ。オスカーは最後に、置いていくスーツケースに何か私物は残っていないか検査した方がいいと言ってくれたので、再検査。何も残ってはいなかった。せっかくだから、記念写真を撮りたいというと応じてくれ、別れ際に「今回のことではご迷惑をおかけしました。これからもキューバ航空をご利用ください。それではよい旅を!」とスラスラといってのけた。最初の印象から考えると、最後にこんな言葉が聞けるとは思いもよらなかった。
スペイン語が流暢なら2回の訪問で済んだろう。予想以上に、普通の対応で、国を代表する航空会社、キューバ航空はやはりちゃんとしているんだなぁと感心した。
このスケッチを書いている9月16日現在、まだ小切手は換金していない。が、ここまでいけばもう大丈夫だろう。今アレナル火山に小旅行で来ているが、サン・ホセに戻ったら換金してもらおう。因みに、前回メキシコのカンクンで購入したスーツケースもUS$90だった。今回の件で、同じ金額の真新しいサムソナイトになったということになる。終わりよければ全てよし、でございます。
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