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2005.11.25
ラ・クンブレへの日帰りツアー |
アルゼンチン:コルドバ |
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今日は、コルドバ北部の風光明媚な保養地を巡るツアー。朝9時にピックアップされて、戻ってきたのが19時半。実に10時間以上のツアーなのだが、ほとんどが快適な道路のドライブなので、全然疲れないツアーだった。1人A$65(=US$22.11)で、これだけたくさんの景色を見せてもらえるなら、リーズナブルではないだろうか?
コルドバからやや西にサン・ロケというダムがある。そこからほぼ真北に行って、Capilla
del Monteでお昼ご飯。同じ道を南下して折り返し、サン・ロケ岸辺の保養地、カルロス・パスが最終停車地だった。
全工程で9回、車を乗り降り。時間と場所の経過ごとにまとめてみた。
@09:52 La Calera
ホテルでピックアップされたのが9時、今日一番目のお客さんだった我々は、そこから2つのホテルに停車して合計7名のグループになったのが9時20分くらいのことだった。我々以外の5名のうち、4名は一昨日23日のツアーでも一緒だったイタリア人夫妻2組。彼らが宿泊しているのは、コルドバで一番歴史があるといわれているサセックスホテルだった。「このホテル、一番歴史があるんですよね!」と私がいうと、イタリア人の旦那さんの一人が、「歴史がなんだってんですか!ある日は水が漏れると文句をつけたら、今日はトイレの水が流れない。私は歴史にお金を払っているわけじゃぁないんだ!」と、朝から元気いっぱいに対応してきた。そんな陽気なイタリア人4人と、もう一人は物静かなオランダ人青年1名だった。
コルドバを出て20分ほども走ると、田舎の風景が広がってきた。La Caleraはそんな中にある保養地の一つ。とある教会の前に停車して説明を受けたが、スペイン語なのでようわかりませんでした。ま、雰囲気はいい感じ。
A10:25-35 Dique San Roque サン・ロケ湖
アルゼンチンでは主たる電力を水力発電でまかなっているということで、コルドバにもいくつかのダムと貯水湖がある。ここはその一つ。ダムを見学する前に、電力発電所の見学もあり、水を長くて太い管を通してダムから落ちる水を電力に変えているのだろう。
こうしたダムの見学をコルドバで行うとは思わなかった。ダムの見学をすると、なぜか小学生の課外学習を思い出してしまうのは、私だけであろうか。社会見学のような気持ちになった。
B11:00-06 Cosquin コスキン
コスキンも保養地の一つだが、コスキンが有名なのは年1回1月に開催されるフォルクローレの会場になっているからだそうだ。
その会場となっている所に車を停めて、会場を見学。周りの通りは、いかにも郊外のひなびた町並みなのだが、会場は広々として立派だ。いかにこのフェスティバルに多くの人が集まるのかが想像される。アルゼンチンのフォルクローレというと、北アルゼンチンのガウチョミュージックなのだろうか。この会場にガウチョの衣装の人があふれ、物売りがいて、大勢のアルゼンチン人が大騒ぎしているのは、是非見たいものだ。今日の会場は人っ子一人いない。先ほどのダムにしろ、この会場見学にしろ、何となくピントがぼやけたツアーだなぁと感じ始めていた。
C12:15 La Falda ラ・ファルダ
可愛らしい建物が多くて、車で走っていても楽しい町だった。気候も涼しげだし、この中の一軒のホテルに滞在して保養したら、さぞかし気持ちがいいだろうと思われた。
ラ・ファルタの市街地を抜けて、とある大きな敷地にバスは入っていく。Eden
Hotelと書かれたその建物は、もう廃墟となっていて、今は使われていないようだった。建物の中を覗き込むと、アーチ状の柱が塗料もなくむき出しになり、床には草が生えつつあって寒々しい。イタリア人カップルの旦那さんに「いやぁ、何とも素晴らしい所ですねぇ」と冗談めかして言うと、彼もそれを受けて「廃墟巡りとは、珍しいですよね」と言ってきた。ところが、一緒にいた、別のイタリア人カップルの奥さんの方が「本当に素晴らしい所だわ」と真面目に感心している。おかしいなぁ?どういうことだろう。一体ここで何を見ればいいのだろうと、不思議に思っていたら、その奥さんが語り始めた。
この奥さんは、幼い頃、おばあさまと家族と一緒に、毎年この町に保養に来ていて、その定宿がこのエデン・ホテルだったというのだ。かれこれ60年近く前のことになるという。当時のエデン・ホテルは、豪華絢爛で、エントランスの階段には敷物がしかれ、優雅な貴婦人や紳士が大きなスーツケースを持って訪れると、中からボーイがサーッと出てきて、荷物を運んでくれたそうだ。近くには、小さな滝があって、よく泳ぎにいったものだったわ。と、その奥さんは当時を思い出すように、目を細めて語った。で、今日は特別にこのホテルを組み込んでほしいとリクエストしたということらしかった。なるほど、彼女の目には、60年前のエデン・ホテルがオーバーラップしているから、素敵に見えたのだろう。
歴史ある保養地というガイドブックのキャッチコピーが、急に生命を持って私に迫ってきた気がした。車窓から見る可愛らしい建物を見て、爽やかな空気を感じて、なるほど保養地だなぁとは思っていたが、こうしてヨーロッパからわざわざ保養しに来ていた人の口から聞くと、またこの町が違って見えた。
D13:00-30 Deque El Cajon カホン湖
コルドバからだいぶ遠いところまで来た。またダム見学?と思ったが、今回は野趣に富んだ面白い風景の所だった。
溶岩が流れて固まった大きな岩は、ボリビアでたくさん見た風景だったが、あそこには水というものの存在が感じられなかった。ここには岩と水と青々とした木がある。
水がせきとめられた一方の側は、岩が水際まで迫る湖だった。そこから段差を経て、ちょうど勢いよく放水されている水の彼方下には川が流れている。この川とその周りの風景が、とても絵になる感じだった。
日も高くなり、高原とはいえ、じりじりと日光が肌を刺すこの時間、この川に入って水浴びできたら、どんなにいいだろうと思った。実は、そんなこともあろうかと、下に水着は着ていて、準備は万端だったのだが、誰もそんな提案はしなかったし、時間もないようだった。やはり、ツアーで短時間で訪れるのは、あまり面白くない。ここに至って私が出した結論である。確かにこうした風景は、見ておくのはいいだろう。しかし、本当は、渓谷の近くに滞在して、ゆっくりと川辺で時間を過ごすのが理想的なのだ。ま、今回は仕方ないけどね。
「さ、お昼、お昼。お腹空いてきたぞ」とイタリア人の旦那さんがガイドを促すと、ガイドは「その前に、どうしても上って頂きたい丘があるのです」と言う。ええ?まだどこかに行くの?とさすがに悠長だったラテン系のイタリア人もちょっと呆れ気味だった。しかし、丘は目の前。ちょっと行って見ましょうと、皆で上り始めた。
El Zapat(靴)という名前の看板があるこの丘を登ると、靴の形をした巨大岩があった。これかぁ。もし、ボリビアに行っていなかったら、この景色もなかなか見ごたえのあるものだったに違いない。しかし、こうした景色を見ると、どうしてもボリビアのウユニ塩湖他4日間のツアーで行った壮大な景色と比べてしまう。あっちと比べてしまうとねぇ・・・という感想は免れなかった。
E14:10 Capilla del Monte カピージャ・デル・モンテ
靴の岩を見てから車で20分ほど走り、更に奥地の保養地の町にやってきた。ここでやっとお昼ご飯。やれやれと案内されたレストランに入って食事となった。アルゼンチンのツアーでの昼食時間は常に2時頃になる。どうして夜のレストランが8時や9時にならないとオープンしないのか、それはお腹が空かないからだ、ということを否が応でも理解させられるのだ。ツアーでは、アルゼンチンの文化・習慣も身をもって体験させてくれるのである。そうした意味でも、ツアー参加は意義深いともいえる。
この町ではレストランに車を横付けして、食事をしたらすぐに車に乗り込んでしまったので、写真もない。もう少し先に行くと渓谷があるはずなのだが、今回のツアーはここで折り返しとなった。
F15:35-16:20 Los Cocos ロス・ココス
ロス・ココス名物?なのかどうかはわからないが、小高い丘に登るケーブルがあり(スキーリフトのような物)、イタリア人たちは下でお茶しているからとこなかったが、我々とオランダ人のマイケルは登ってみることにした。
オランダの風車小屋を思わせる真っ赤なチケット売り場。リフトの先の丘の上にも、同じく真っ赤に塗られた建物が建っていた。リフトのチケットは往復で1人A$8
( = US$2.72)だった。丘の上に到着すると、甘いコーヒーとこの辺りの名物らしい柔らかめのクッキーでキャラメル味のクリームをはさんだお菓子をくれる。これもチケット代金に含まれているそうだ。
それにしても、アルゼンチン人にとっては、この金額は高いと映るらしい。母娘が「A$8ですって、高いわねぇ」と眉をひそめて語っていた。たしかに、アルゼンチン経済が破綻してドルとアルゼンチンペソの固定相場がくずれたからこそ、我々はこうして楽しんでいるが、かつての1対1の相場だったら、そのままUS$8ということになるから、確かに高いかもしれない。
少し上がっただけかと思っていたが、上からの風景は思いのほか見晴らしがよく、今日のツアーの中で、一番面白かったのではないかと思えた。高い所に登るとか、水につかるとか、おいしい物を食べるという経験をすると、満足する性質である。
G16:40-50 La Cumbre ラ・クンブレ
「今日のツアーはラ・クンブレ他の保養地を巡るツアーです」と旅行代理店から紹介されていた、そのラ・クンブレに到着したのは、今日も終わるかという午後遅い時間だった。この事実が笑える。半ば、ラ・クンブレには行かないんじゃないかとも思えてきていたので、ガイドが「さ、次の目的地はラ・クンブレです」と言った時には、やっぱり行くのかと逆に驚いたくらいだった。
ラ・クンブレは、今まで見た保養地の中では一番保養地らしい雰囲気を出していた。というのも小さな町の周りには、鬱蒼とした森が続いているのだが、その中に瀟洒なホテルがいくつも見えている風景だったからだ。我々は、そんなホテルの中でも、とびきり保養地気分を盛り上げてくれそうなGran
Hotelの前に停車した。
こんな素敵なシャレー風ホテルなのに、一泊A$120 (=US$40.82)しかしないと聞いて、イタリア人旦那は、またもや憤慨しはじめた。「私のホテルは水も出ないのにA$90するというのに」。次回は、絶対にこちらに泊まるぞと息巻いていらっしゃった。そうそう、長い時間のバカンスをどこで過ごすか検討するためにこのツアーに参加するのは、意味のあることのようだった。
こうしてラ・クンブレの町中を車で周りながら、保養地の雰囲気を楽しんだ。それにしても、先日のラ・クンブレシータのツアーといい、今日のツアーといい、コルドバの保養地での人気は、ホテルからカバーニャと呼ばれる個室というか戸建のキャビンに移りつつあるようだ。ラ・クンブレのホテルもシーズン前だからなのか、こうしたトレンドを受けてなのか、開いていないホテルもいくつか目にした。もしかしたら、カバーニャ人気に負けて、閉店してしまった所もあるのかもしれない。巨大ホテルのエデン・ホテルが廃墟になった姿を見て、新しく建築される多くのカバーニャを見て、閉じかけているプチホテルを見て、コルドバの保養地事情を目の当たりにできたというのも、中々面白い体験だった。
H18:10 Villa Carlos Paz ビジャ・カルロス・パス
最後の停車地は、先日自分たちもバスに乗って行ったカルロス・パスだった。我々は町外れのバスターミナルに到着し、町外れの湖のほとりを散策し、町を通り越したやや郊外の川辺に行ってしまったので、今日カルロス・パスの町を車で走って、こんなに栄えた所なのかと驚いた。
アルゼンチンではマル・デル・プラタというブエノス・アイレス近郊の海岸に続く第二の保養地がカルロス・パスなのだと聞いて、熱海を思い出した。映画館、レストラン、古びたホテル、カジノなどが並んだメインストリートは、一昔前の保養地の様相だった。
そんな町中で車が停まると、どうぞどうぞと、ある菓子店に案内された。差し出されるままに、さっきスキーリフトで上がった所でも出たのと同じお菓子を配られ、それをかじりながら、お菓子製造工程をベルトコンベアを見ながら説明された。といっても店の奥の4m四方くらいのスペースにコの字になった簡単な機械があり、「はい、ここからお菓子が出てくると、自動的に包装紙がかけられて、ここでシールが貼られます」みたいな説明。この機械の一体なにが凄いというのだろうか。機械の国、イタリアと日本から来た我々は、「はぁ?」という感じだった。
要は、ツアー会社とこのお菓子店が組んで、プロモーションを行っているようなのだ。運転手さんが妙にはりきって説明してくるのは、キックバックでもあるのだろう。自分で会社をやっているというイタリア人の夫妻は、そこの所の気持ちをくんでか、説明を熱心に聞いて2箱購入してあげていた。
この菓子店の前の三叉路には、ちょっとした広場があり、そこにある鳩時計が毎時と毎半時に出てきて鳴く、という方が興味があった。店から出ると18時27分。私とオランダ人のマイケルは、カメラをスタンバって、鳩時計の前ににじりよった。
おしい。扉が閉まるところ。
ここで鳩の写真が撮れたら、それはそれで
尊敬にあたいする。 |
そして18時半。バタンと扉が開いて、「ぽっぽっ!」とそっけなく1鳴きした鳩は、再びバタンと扉を閉めて家に入っていった。で、終了。1回だけなの?と、あまりの展開に呆然と立ち尽くす私とマイケルに、周囲の人が、「毎半時は1回だけなんだよ、毎時になるとその時間の数だけ鳩が出てくるから、あと30分待つといいよ」と慰めてくれた。
思えば、今日のツアーは始終こんな感じだった。波がないというか、だらだらしているというか、リラックスしているというか。あげくの果ては、鳩1回鳴きだ。今日の締めくくりにふさわしいではないか。
こうしてマイケルと大笑いした後、車に乗り込んで30分でコルドバに到着。ツアーはまずまずだったが、メンバーが面白かったので、よしとしよう。
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