夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2005.12.01 
ボデガ La Ruralを訪問
アルゼンチン:メンドーサ
 アルゼンチンはワイン生産国としては世界第4位だそうだ。そんなアルゼンチンの大半のワインを生産しているのが、ここメンドーサ。メンドーサにいて、ワイナリーに行かないわけにはいかない。

 ということで、ここの一つ前の滞在場所、コルドバにいる時に、メンドーサ在住のアルゼンチン人が同じ宿にいたので、とっくりとどのワイナリーに行くべきかを聞いておいた。彼の情報によると、La RuralとChandonがお勧めだということだった。

 そこでメンドーサに着いた初日、インフォメーションでLa Ruralについての情報を収集した。La Ruralは市バスで行くことができ、予約なしで個人が訪れても、ワイナリーツアーに無料で参加できるということだった。インフォメーション嬢は愛想はいいのだが、何となくいい加減な雰囲気を醸し出していたので、情報を聞いたその足でバス停まで確認のために赴くと、案の定、バス停は1ブロックずれた場所にあった。やっぱりなぁ。でも、この先の情報は確認できない。後は行ってみるしかない。

 メンドーサ3日目、天気も良好なワイナリー日和だった。朝9時半過ぎに、宿からタクシーでバス停まで向かった。今いる宿は、中心地から少し離れているので、中心地市街のにあるバス停までは歩くと40分くらいかかりそう。タクシーだとA$3(=US$1)くらいで到着する。バス停は地元の人がいっぱいいた。

 バス停はSALTAとGARIBALDIの交わる所にある。メンドーサのバスは大番号と小番号がついていて、大きな番号10番の小さな番号172、173、174のいずれかに乗ると、マイプー郊外のインフォメーション前で降りることができ、そこからLa Ruralまでは徒歩ですぐということだった。

 バス停には該当するバスは1本だけ、172の数字しかなかったので、それを待った。9番系列の162番が頻繁にやってくる。10分ほど待っていたが来ないので、バスを待っていた女性に尋ねると、9-162はマイプーの町中に行くので、そこからタクシーで郊外のワイナリーに行くこともできると教えてくれた。じゃぁ、もう9-162に乗ってしまおうと、バスのタラップに足をかけた瞬間、後続に10-172のバスが来ているのが目に入り、目的のバスに乗ることができた。バス停到着が9時少し前で、バスに乗ったのが10時10分過ぎだった。

 メンドーサとマイプーをつなぐ広い幹線道路を通り、マイプー郊外のブドウ園が目に入ってからしばらくすると、運転手さんが「ここだよ」と教えてくれてバスを降りた。インフォメーションでもらったマイプーの地図によると、バスを降りた目の前のこの小屋がインフォメーションだ。確かに「i」というマークがついている。その辺りでうろうろしていたら、小屋から「何かお探しですか?」と人が出てきた。ここで再度、近辺のワイナリー情報を聞いた。La Ruralのみならず、ここから4〜5キロまでの間には、7〜8軒のワイナリー、それからオリーブ農園もあるそうだ。

 魅力的だ。インフォの姉さんの助言では、歩いて周るには広すぎるので、バスを使うかインフォメーション小屋のすぐ脇にある貸し自転車を借りて周るのがいいだろうということだった。自転車を借りて、マイプー郊外をサイクリングしながらワイナリーをいくつか巡ることができたら、どんなに気持ちがいいことだろう。

 しかしその時点で、我々は問題を一つ抱えていた。実は持ち歩いていたパソコンが昨日から動かなくなってしまったのである。ワイナリー巡りをしたいのはやまやまだったが、今日はLa Ruralだけ行って帰って、パソコンをどうにかしなきゃいけない。インフォでは情報だけ頂いて、ワイナリーには徒歩で向かうことにした。

 La Ruralはバスを降りて、右手の方を見ると看板が出ている。そこから右に折れて、両脇に気持ちのいいブドウ園や家がぽつぽつと並ぶポプラ並木を歩いて500m程いった左手にある。今までワイナリーや他のお酒工場見学というと、車で入り口まで連れて行かれて、建物の中の蔵を見たりする場合が多く、こうして、ブドウ畑の中の気持ちよい道を散策して、ワイナリーに近づいていくのは初めてだった。このアプローチがとても気持ちがいい。ここから既においしいワインの世界に包まれている気分がした。

 明るいサーモンピンクの柱が見えてきたら、そこがワイナリーだ。写真に見えている門から、更に先に進んだ右手から入れるようになっている。
 入り口から入った中庭には、かつてブドウを運んだ馬車の荷台や、古びたワイン樽が展示してあって、ワイナリー情緒たっぷりである。

 右手の建物に入るように指示されると、英語の話せる小柄な女性が「丁度、英語のツアーが始まったばかりなので、そこに入ってください。」と言われた。奥に入ると、昔使っていた道具類が並べられているワイン博物館のような空間になっていた。英語で説明しているグループがあったので、そこに加わることにした。グループといって白人のおじさん2人だけだったので、我々を含めて4人のグループである。

 ここではまずブドウの摘み取りの話だった。ブドウの収穫は、今も昔も手摘みで、職人は北アルゼンチンのフフイやサルタ、あるいはペルーやボリビアからの季節労働者だそうだ。1籠摘むごとに労働者はトークン(コイン)を貰い、集まったコインの数に従って賃金を貰うそうだ。昔は、賃金として衣類や食料品をもらっていたが、現代ではもちろん現金。しかしトークンの制度は未だに行っているという説明だった。ボリビアのウユニの町で見たような人々が、ここに来てブドウ摘みをして、それがワインになって遠くヨーロッパの洒落たワインバーなどで出されているという絵が、さーっと頭の中をよぎった。で、思い出したのが日本の毛筆メーカーの話。日本では書道が下火になって毛筆メーカーが売り上げの伸び悩みに苦しんでいた。ところが、その優秀な筆の質に、ヨーロッパのある化粧品メーカーが目をつけ、化粧につかう筆としてその毛筆メーカーに発注してからというもの、一流化粧品メーカーが、こぞってその会社に発注するようになったので、売り上げが伸びつつあるというテレビのレポートだった。映像では、日本の昔ながらの作業場で丹念に筆用の毛を選別する地元のおばちゃんの顔が映し出されて、その横には、シャネルやらディオールやらと書かれた洒落た箱が並んでいた。今のワイナリーの説明は、この映像を思い出させた。

 次の説明からはスペイン語チームと合体。ガイドは最初にスペイン語で説明してから、英語で説明するというバイリンガル体制になった。
 クーパーという樽作り専門の職人が使っていたという、数々の道具の展示があった。クーパーは今はもうLa Ruralにはいなくて、樽はフランスとアメリカから輸入しているそうだ。現在クーパーを使っているのは、一部のブティック・ワイナリーと呼ばれるワイナリーだそうだ。少量の良質ワインを生産して、高価に販売するようなワイナリーはブティック・ワイナリーと呼ばれている。部屋数が少ないけれど、重厚なサービスを行う高級ホテルをブティック・ホテルと呼ぶのと同じ流れだ。

 博物館の説明が終わると、現代のワイン生産現場への案内が始まった。今まで見てきた木製や鉄製の道具にかわって、こちらはピカピカの世界。

 写真上の電車の模型みたいな入れ物は、中に白ブドウを入れてジュースを絞る機械だそうだ。La Ruralは上質ワインしか造らない。だから白ワイン用のブドウは、ぎゅうぎゅうと搾るのでなく、空気の入ったボールを使いながらソフトにしか搾らないのだそうだ。当然搾りカスにはまだたくさんのジュースが残っている。それは2級品を作っているワインメーカーに売っているということだった。老舗で生き残ってきたということは、おいしいワインをただ作ってきただけでなく、商売もうまかったんだということを意味するんだなぁ。ふむふむ。

 ソフトに搾られたジュースは、金属製の巨大な容器に入れて15日から20日間保存され、その間に発酵を済ませてから瓶詰めされるそうだ。

 続いてワイン樽の並ぶ倉庫で赤ワインの生産工程の話があり、いよいよ試飲となった。ところで、一緒に回っていたおじさんたちは、異常にハイテンションなチェコ人たちだった。何を言っても、17、8の娘のように笑いこけ、ガイドが説明すると「チェコではねぇ」と自分の国のワインガイドを始める。一体何者?と気になってはいたのだが、この試飲会場でおしゃべりして、ようやくその正体がわかった。二人はオーストリア寄りのチェコのある町から来ている事業家。一人は代々家族で経営するホテルのオーナー。もう一人は旅行代理店の社長で、おそらく趣味の範囲だと思うがワインショップも持っているということだった。なーるほど。そんな二人だからこそ、ワインには一家言あるのだろう。陽気なのは事業がうまくいっているからか?いずれにせよ、楽しい人たちだった。「どうだい、我々とこの後、もう一つワイナリー巡りしないかい?」という魅力的な誘いを断るのには、かなりエネルギーが必要だった。しかし、動かないパソコンを考えるとお断りするしかなかった。面白そうな人たちだったのに、残念だったなぁ。


 これでワイナリー見学はおしまい。11時から12時くらいまでの所要1時間だった。試飲させてもらったワインを購入して、ワイナリーを出ると「ランチはいかがですか?」とフライヤーを渡された。丁度バス停の近くにあるレストランなので、そこで昼食をとって再びバスで帰ってきた。時として、こうしたフライヤーにあるレストランにははずれもあるのだが、今回は当り。とてもおいしく、とてもリーズナブルな、気持ちの良いレストランだった。(詳しくは「本日の献立2005年12月1日昼食」を参照)

 パソコンが動かなくなって、かなり気持ちが落ち込んでいたのだが、ワインを飲んだら「まぁ、パソコンが動かなくなっても命に別状があるわけでもなし!」と超前向きな気持ちに転換。ほろ酔い気分の間は、落ち込みがなくなりました。