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2005.12.25
トロナドール山見学ツアー |
アルゼンチン:バリローチェ |
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トロナドール山は、地理上のそして政治上の国境としてチリとアルゼンチンにまたがっている山である。バリローチェのあるリオ・ネグロ州では最高峰の山で3554mあるそうだ。
今日のツアーでは、このトロナドール山の麓まで行き、黒い氷河を見ると聞いた。
バリローチェから258号線を南西に下り、マスカルディ湖Lago Mascasrdiの南端まで行ったら、V字を描くように北西に上っていく。パンパ・リンダPampa
Lindaを経由して、トロナドール山まで行って帰ってくるコースらしい。ガイドブックには、このツアーはマスカルディ湖の南端から西にまっすぐ行ったロス・アレルセスの滝Cascada
Los Alercesにも行くと書いてあったので、こちらに行かないのか聞いてみたところ、現在ロス・アレルセスへの道が土砂崩れか何かで通れなくなっており、ツアーでは行かないことになっているということだった。バギーカーなどで問題の箇所を乗り越えて行けるらしいが、もしここで事故が起きても、国立公園の管理当局としては責任を持たないというお達しがあり、ツアー会社は一斉に行くのをストップしている状況だそうだ。
ロス・アレルセスの滝に行くとしたら、もっとツアーの金額が高くなったのかもしれない。ガイドブックよりも低い金額だった。その割には1日たっぷりと時間を使ったツアーだったので、他の見所に停車する、ゆったりツアーだったかもしれない。
このマスカルディ湖を途中からフェリーで行くというツアーもあったが、毎週火曜日にしか催行されていないということで、日程が合わず、またフェリーは別のツアーで乗ったからいいや、ということで全行程バスで行くツアーにした。実際に行ってみた感想としては、こちらもフェリーにするのも良かったかもしれない。というのもマスカルディ湖をV時で折り返してからは道が未舗装なのだ。ガタガタ、ガタガタと車が揺れる事この上ない。船ならば半分くらいの道のりはこの揺れなしで行けるのでいい。ま、その分ツアー代金が割高になっているが。
バスは右側の列に座るほうがお勧めだ。最初のグティエレス湖もマスカルディ湖も右手に見えるからだ。もちろん、帰りは左列にずっと湖が見えるのだが、やはり行きに景色を堪能してトロナドールに向かう方が面白いと思う。
10時に宿にピックアップだったが、それから様々な宿を巡って、バリローチェを出たのは10時半近くなっていたかと思う。バリローチェからグティエレス湖Lago Gutierrezまではほんの20分ほどだった。
日曜日でクリスマスの今日、気温も高く、BBQやら湖水浴を楽しもうという家族連れや友人連れが、既に湖畔のあちこちに車で乗り付けていた。水もとてもきれいで、こんな景色の中で1日ゆっくり湖畔で遊べるなんて、何と贅沢な休日だろう。
グティエレス湖の向こうに、細くとがった峯が何本も突き出ている山が見えてきた。それがカテドラル山だった。確かに教会の小塔のように見える。
バリローチェから市バスが出ている所なので、時間があったら行ってみようと思っていた山だ。こうして遠くから見た姿も見られてよかった。
グティエレス湖が終わって、マスカルディ湖に向かう所で数キロメートル未舗装の部分があった。未舗装の所からまた舗装道路に出たので、ショートカットのような気がする。この舗装された道路をしばらく進むと、国立公園のインフォメーションに到着する。通常なら、ここで入場料金A$12を支払うのだが、今日はクリスマスでサンタさんからのプレゼントということで、入場無料だった。
ここからビューポイントを巡っての観光が始まった。
Aキャンプ地
最初のビューポイントはキャンプ場だった。サンダルで湖に入っていくと、冷たくて気持ちよかった。でも泳ぐのにはちょっと冷たすぎる。
ここで楽しもうという家族がいて、車から椅子を運んできたり、小型のボートで釣りをする為に湖に乗り出していったり、準備にいそしんでいた。
ここで10分ほど過して、次の目的地に向かった。
Bキャンプ地
このキャンプ地は先ほどよりも大きな規模で、湖と湖から流れ出した水がエメラルドグリーンに見える川に挟まれた所で、川のせせらぎが気持ちよく響くキャンプ場だった。
車を停めたのは、川にかかる橋を越えて、キャンプ場の横のコーヒーの飲めるカフェを併設した売店の近く。ここでコーヒーを飲んだり、トイレにいったりして休憩。
奥の湖まで散策してみると、湖近くにたくさんのテントが見えた。どのテントも、レンガでコの字に囲ったカマドが近くにある。12時半近くのこの時間、2時頃の昼食に向けてか、あちこちのカマドには木がくべられて、モクモクと白い煙をあげていた。中には子羊を丸ごと開きにして、火にかざしているグループもあって、豪快な眺めだった。
あるグループに、こうしたキャンピングの用具はどうしているのか聞いたところ、そのグループは地元の人なので家にある用具を持ってきたということだった。どこかで貸してくれるのなら、我々のような旅行者でもこうした楽しみを味わえるのだが。どこかでやってみたくなってきた。
C展望台
Bのキャンプ場で20分ほど滞在し、12時半過ぎに出発。15分走った所が展望台だった。ここは、目の前にイゼル・デ・コラソン(ハートの島)と呼ばれる小さな島がある。
美しいグリーンの湖面に、この島の森林がくっきりと映りこみ、その背景に後ろの山の森林が映りこむ。そんな二重の映りこみが湖面に見えた。
国立公園の入り口でもらったパンフレットに、黒い氷河の由来が書いてあった。いわく、「氷河期にナウエル・ウアピ湖は氷に覆われていた。この氷がブルドーザーのように何もかもを巻き込みながら低地に流れてできたのが黒い氷河。気温の変化により、現在はトロナドールの山頂にしか残っていない」。私たちが黒い氷河を見たのは山頂ではなく、麓の方だ。この
Dパンパ・リンダ
湖が終わり、鬱蒼とした森林の中を走っていたが、トロナドールが近づくに連れて、丈の低い草木が広がる草原のような風景に変わってきた。パンパと呼ばれる風景だ。パンパ・リンダに到着する前に、パンパの川の岸辺でまたもや写真撮影。平原の草花と川とかなたに見えるトロナドールが、ここの景色だった。
そして14時半近くなり、「お腹がへったー」という考えばかりが頭を巡る頃、パンパ・リンダに到着。ここで1時間の休憩だと告げられた。チラと彼方に目をやると、大分姿が大きく見えてきたトロナドール山があった。しかし、とりあえずお昼、お昼。駐車場の目の前にレストランが一つ。そこに入って接客を待つも、給仕係がちっとも注文を聞きにこない。お店は前の団体も入っていてとても混んでいるのに、ゆっくりとお会計のお客さんと雑談を楽しんだりしている。こりゃだめだな。とさっさと諦めて隣の軽食スタンドでハンバーガーを食べることにした。
トロナドール山が見える、緑の芝生の木陰でパクつくハンバーガーは、時間を気にしながら食べるフルコースよりもよかった。さっさと昼食を済ませ、もっと近くにトロナドール山が見えるスポットを探しに、散策に出かけた。
駐車場からもっと山に近づく道を歩いていくと、そちらにも一軒、ホテル兼レストランがあり、何とこのレストランからはトロナドール山が目の前に見えるではないか。しかも、空いている。あぁ、どうしてこちらに来なかったのだろう。我々の欠点としては、お腹がすくと目の前の物に飛びつく傾向にあることだ。もっと我慢して考えればよかったと思うことがしばしばある。
このレストランの前からのトロナドール山は、今回のツアーの中で山全体を見るとしたら一番近い眺めになる。これ以降は近すぎて全体が見えなくなるからだ。
富士山よりやや低いトロナドール山は、間近で見ると、中腹に厚い雪の層が途中からガッスリと落ちている所が見え、その下には光る黒い地面が見えていた。その辺りが黒い氷河に違いない。
E黒い氷河へ
昼食を終えた15時20分、車で更にトロナドール山に近づき、25分後に黒い氷河の展望台に到着した。駐車場から少し下った所には、ミルクを入れたコーヒー色の川に、グレーや黒の塊がプカプカと浮いて、その上の方にはよく見る氷河の形にギザギザとした氷の塊があるんだけど、本当に真っ黒な氷が見えてきた。
右手に目を移すと、大きな岩がごろごろと川の中に見えて、これもよく見ると全部氷の塊だった。
右:右手のトロナドール山から黒い氷河
が流れてきている。
上:左手に目を移すと、黒い塊が川に
うずくまっている。 |
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最初に見た展望台から左手の遊歩道に従って歩いていくと、やがて遊歩道はしきられてこれ以上行けないという所までくる。
ガイドさんはここまで誘導した後、そこに腰をおろした。我々は、まぁ、ここでゆっくりと見物しろということなのだろうと、再びカメラを取り出して撮影などを行っていた。その時、中腹の厚く積もった雪の層の下の部分から、パウダーのような雪が下に向けてパラパラとくずれた。パウダーは一度崩れると、動きをやめてしまった。「どこどこ?」と見損ねた人が見た人に場所を確認していると、再び同じ所からパラパラと雪のパウダーが落ちた。さっき見損ねた人も「ああ、あそこね」と確認できたその時、雪の塊がその部分からガスッと落ち、たちまち液体のように斜面を伝って流れているのが見えた。雪崩だ。
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左上:雪崩が始まった瞬間。中央の雪の層から雪の塊が落ちるとすぐに液体のように流れ始めた。
右上:雪崩は見る間に黒い斜面を滑り落ちる。
左下:幾つかの筋に分散されて雪崩は勢いを失った。 |
雪崩を肉眼で見るのは初めてだった。液体のようになった雪の流れの勢いは、この雪崩から1000mも下だろう私たちの所からでも感じられた。雪山などに登って、この雪崩を間近に感じたとしたら、どんなに恐怖だろう。
「雪崩も見られたことですし、バスに戻りましょう」とガイドのウィリアムが皆を促した。バスに戻ると、ウィリアムはトランシーバーを構えるゼスチャーで「はいはい、こちら下のウィリアムです。無事に雪崩観測終了しました。上の作業も終了してください。ラジャー」と言った。本当に山の上でスイッチを入れたかのように、タイミングよく雪崩が発生したので、バス内はこのジョークで大いに沸いた。
F更に上のカフェへ
黒い氷河を展望できる所から、更に1km上に進んだカフェが最終ビューポイントだった。
駐車場からは、また違ったトロナドールの峰が見えていた。ここにはシャレー風のカフェと売店もあり、喉をうるおしたりトイレにいったりできる。また300mほど離れた所まで行くミニトレッキングもあるので、元気のある方はお試しください、と言われ、大半の人はバスを降りると、すぐにそのコースに向かった。
森の中を抜け、ゆるやかな坂を上って5分ほど歩くと、駐車場から見えていた峰から、細い滝が何本も落ちていて、それが川となって傾斜のある斜面を流れている所に出た。
雪、山、樹木、川。強い午後の日差しの中で、何もかもが色鮮やかに輝き、耳には心地よい瀬の水音、雪解けの冷たい水の上を渡る涼しい風が頬に当る。
私たちはサンダル履きなので、そのままジャブジャブと川の中に入った。冷たさで、すぐに足先がじーんとしびれてくる。熱くなった石に足を置いて温めては、水に足をつけて冷たさを楽しんだ。やがて、靴を履いていた人たちも、靴下と靴を脱ぎ捨て川の中に入ってきた。何と言う気持ちの良いところだろう。
細い滝が何本も落ちている様子。 |
川上から川下を撮影。水量が豊富で楽しい。 |
ここでの滞在時間は1時間。川でたっぷりと時間を過ごして、カフェでお茶をして丁度時間となった。
最後にバスに乗る直前に振り返ると、こんなフォトジェニックなトロナドールが別れを告げてくれた。バリローチェの湖を楽しみ、トロナドールの自然に触れられる、本当に楽しいツアーだった。
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