夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2005.12.29 
カテドラル山とオットー山
アルゼンチン:バリローチェ
 今までツアーで色々と見て周ったが、旅行者に人気のカテドラル山とオットー山にまだ行っていない。この2つは2日にわけて、市バスに乗って行こうと思っていた。

 28日にオットー山に行ってみた。しかし、今一つお天気が思わしくなく、これじゃぁ山の上に上がっても景色が今一つだろうと、ゴンドラの手前で帰ってきた。そして、今日29日は観光に行ける最後のチャンス。明日の飛行機でエル・カラファテに飛んでしまうからだ。というわけで、まずまずの天候を迎えた今日、一気にカテドラル山とオットー山に行くことにした。

 2つの山に行くというと、なんだか壮大なトレッキングでもするように聞こえるが、この2つの山は、両方ともゴンドラやリフトで頂上近くまで登ることができる。インドア派の自然好きにはぴったりのコースだ。

 ペリト・モレノPerito Moreno通りにある雪山飯店という、中華料理とパリージャ食べ放題の店の前がバスの発着所だと言われていってみたが、カテドラル山行きが見つからない。探してみると、雪山飯店よりも1ブロック西側のパラシオ通りPalachioと読み方がわからないがBeschtedt通りの間に"Catedral"と書いたポールが立っているのが見つかった。ポールの数メートル先には同じバス会社のオフィスがあり、そこで時刻表も手に入った。1時間に1本で毎時15分に出ていた。オフィスでチケットも購入するように言われて往復チケットを買った(片道A$2.4、往復割引は特になし)が、バスの中で買っている人もいた。バス会社としては、お釣りの受け渡しなどで時間もかかるので、事前にオフィスで買っておいてほしいなぁ、という意向があるのだろう。

 こうしてチケットを購入して、45分ほどバスを待ち、10時15分のバスに乗り込んだ。バスは観光客ばかりでなく地元の人も数多く乗せていて、最初のうちは座れない状態だった。当たり前のことだが、地元の人は可愛らしいスイス風の建物のホテルや民家には目もくれず、おそらく近所の噂話や最近の出来事を話し合い、大いに驚いたり笑ったりしている。今までツアーでばかり周っていたので、周りは感嘆の声とデジカメを開ける音に満ちていたのに、今日は自分が観光客であることを強く感じる。これもまた面白い。

 バリローチェの町中を過ぎて地元の人もだんだん減って来る頃、バスはナウエル・ウピア湖に背を向け、山へと緩やかなカーブで上がっていった。周りは紫色の花が咲き誇り、その先には所々に雪を残した山々が見える。やがてカテドラル山の麓の村が見えてきてからしばらくして、11時前に到着。ここは冬のシーズンはスキー客が訪れるためか、とても広い駐車場があり、そこから何本ものリフトやゴンドラが山の斜面を走っているのが見えた。

 とりあえず、バスを降りたところから見えた一番近いインフォメーションに行くと、カテドラル山全体の地図をくれた。地図には何本ものリフトが書かれていたが、インフォの人に聞くと、やはり冬のスキーシーズンがメインなのだろう、今の時期に動いているのは、2005年に開通したばかりのゴンドラとリフトだけだと言われた。地図には2006年開通予定のゴンドラなども線が引かれている。来年の夏はこっちが動いているのかもしれないなぁ。インフォの姉さんは、頂上に行くと12時と14時と16時からフリーガイド付きのトレッキングもやってますから、ぜひ参加してね、と教えてくれた。トレッキングで山を降りるような説明だった。ここまでは英語だったので、スムーズにいった。

 インフォメーション右のチケットブースでは、有無を言わせない雰囲気のおばはんがいて「はい、一人A$38(=US$12.67)ね」と言う。先日、カンパナリオの丘に行った時のリフト代金が往復A$15だったので、こりゃ高いなぁと思った。しかも、さっきのインフォの姉さんが教えてくれたフリーのトレッキングという話とあいまって、この金額がゴンドラだけなのか、リフトは含まないのか、往復なのかよくわからない。そこん所をスペイン語で聞いてみると、雨あられのような莫大な量の返事が返ってきたがさっぱり理解できなかった。ま、いっか、ナイストライだぞ、私。と結果が出なかった自分を慰めながらチケット2枚を購入(結局、この金額でゴンドラとリフトに往復乗れた)。

 インフォメーションブースの左裏手に入って乗るゴンドラは、まだ本当に新しくて、ゴンドラの駅舎も工事中でこれから冬までに頑張って作るぞーという工事の音が響いていた。

 動き出したゴンドラは、ゆっくりと斜面を上がっているように見えるが、降りていくゴンドラとすれ違う時、かなりのスピードで上がっていることを感じた。実際に、あれよあれよという間に斜面をぐぐぐーっと登っていき、スキー村は小さくなり、遠くに湖に半島が突き出したバリローチェらしい風景が広がり、ずっと奥には雪山が連なっているのが見えてきた。

 眼下の風景は、バスに乗っている時から見えていた紫色の花から大木の生える斜面に変わっていった。2005年にできたゴンドラというだけあって、作業をするために道路を作ったり、ゴンドラの支柱を立てたりするためになぎ倒された大木が、林の中に打ち捨てられているのがよく見えた。数年も立てば、こうした木は朽ちていき、まるで初めからゴンドラがあったような印象になるだろう。しかし、今は、人間にとって便利なように山の命を削ってゴンドラが作られた、その傷跡が痛々しい感じに残っていた。「インドア派の自然好きは、こうした山の犠牲の上に成り立っているのだぞ」と山に叱られているような眺めで、我々はこの光景にしばし沈黙してしまった。

 ゴンドラに乗ること16分、カテドラル山の中腹に到着。ここから引き続きリフトが出ていた。どうやら追加料金は支払わなくてよいらしいことを確認して、ちょっと安堵。ここまで来ると、残り雪が斜面を覆っていてクールな風が首筋をなでる。目の前には、これぞカテドラルという尖がった塔のように見える岩がニョキニョキしているのが見えた。


 ここも実は工事中の所があって、近い将来にはカフェなどもできそうだが、現在は何もなく、リフト乗り場があるのみだった。しばらくこの景色を堪能した後、リフトに乗った。

 足の下には雪。バリローチェの町中は、日中、半そでのTシャツでもいいくらいの気候だが、ここまでくると「うわっ、さむっ!」という冷え冷えした空気になっている。それでも、雪の合間を縫って、雪解け水がザーッと流れる音が聞こえ、目を凝らすと音の割には細い水の流れが見えると、決して冬ではないんだなぁと実感する。ま、このガラガラのリフトを見ても冬ではないことはわかると思うが。このリフトにも15分くらい乗ると、いよいよ歩かないで行けるカテドラルの最高地点に達する。

 リフトを降りて、先にちょっと進むとレストランに併設の気持ちの良いデッキが見えてきた。デッキに上がる階段のところにアウトドア風の兄ちゃんが2人いて「ようこそ、カテドラル山へ。フリートレッキングに参加しませんか?」と勧誘してきた。インフォの姉さんが行っていた通りだった。時刻は11時半過ぎ、12時からのトレッキングに丁度いい時間だった。しかし、内容を聞くと、山を降りるのではなく、ちょっと雪の上などを歩いて更に山を登って戻ってくる2時間のトレッキングだということだった。我々はこの後にオットー山にも行きたいし、何よりも「こんな履物なんですけど」とサンダル履きの足をちょっとあげて見せると、兄ちゃん達はとっても残念そうに「あー、それはちょっと難しいなぁ」とうなった。というわけでトレッキングは断念して、この風景をデッキから楽しむことにした。

 山の上のレストラン、ウッドデッキに出された木の椅子とテーブル、レストランからは小粋なフレンチポップスが聞こえ、そして向こうには湖と雪をかぶった山。その風景は、オードリー・ヘップバーンのシャレードという映画の最初の方の場面を思い起こさせた。あれはスイスの山だったと思うが、夫は子供の頃にその映画を見て、「世界にはこんな素敵な風景の所があって、山の上なのにこんな洒落たレストランがあって、そこに旅行で行く人がいるんだぁ」と、その岡山の映画館でかなり衝撃を受けたそうだ。自分がそんな所にいけるようになるのは、いったいいつの事になるんだろう、そんな人生になるんだろうかと思ったそうだ。「でさ、頑張って働いて、あの映画を見てから30年後くらいで、こんな所に立ってるのって、夢見たいだなぁ」と本当に嬉しそうだった。うんうん、わかるねぇ。私たちの子供の頃に見た外国の映画っていうのは、本当に別世界に思えて、自分の人生とは交わることのないような気がしてたもんね。

 そんな銀幕な気分に浸っていた私たちだが、どこからともなく炭焼きの香りが鼻をくすぐると、一瞬のうちにいつもの食いしん坊に戻った。香りのもとは、ウッドデッキに設えられた野外BBQだった。そこでは健康そうな兄ちゃんが、両手に長い包丁をもってシャッシャッと研いでいる後ろで、もくもくと煙を上げるソーセージ、ロモ(牛フィレ肉)、ハンバーグが見えた。「お昼、ここで食べちゃおう。」と即決。炭火の香り高い牛肉を挟んだサンドイッチとペプシでお昼になった。(詳しくは「本日の献立2005年12月29日」の写真をクリックしてを参照ください


 昼食を食べていると、12時発のフリートレッキングの出発時間となった。集められた人は、スキーストックを渡されて所注意を受け、雪の残る山へと出発していった。レストランのある所から見て右手の山の斜面を登って行っているのが見えた。

 レストラン裏手の雪のある所で楽しんで、40分後くらいに様子を見てみると、赤く囲ったところに一団の姿がちっちゃく見えた。随分遠くに行っちゃうもんだ。確かに、サンダル履きでは行けそうにない。
 ウッドデッキを進むと、再び階段を上る。この階段を上りきった所から先は、冬はゲレンデになっているのだろう。巨大な斜面が広がっている。我々や数組の家族がおそるおそる雪の上に上がって感触を楽しんでいたら、勇気ある子供連れの家族が、巨大な斜面に挑んでいった。と、また一家族、また一家族と、あれよあれよという間に斜面に人が増えていった。我々はサンダルなので、遠目から見ているだけだが、元気な子供は親の止めるのも聞かず、どんどんと斜面をよじのぼっていってしまった。見ていると、そこからお尻でスーッとすべってくるつもりだったらしい。しかし、予想に反して夏の雪は滑らない。遠くからみても「うあー、どうしよう」と困惑している子供の姿が面白かった。



 たっぷりとカテドラル山の頂上付近を楽しんで、13時半、リフトとゴンドラを乗り継いで下まで戻った。下っていくリフトは眼前にグティエレス湖Lago Gutierrezが広がり、この光景もまた美しかった。


 時刻は14時。14時15分のバスにのり、セントラルに向かう。15分後、運転手が「ここで降りたらオットー山に行けるよ」と教えてくれた所で降り、オットー山へのケーブルに向かった。町中とセントラルと行き来する市バスは、2経路ある。一つは湖側の道を通り、もう一つは山側の道を通る。1時間に1本のバスは、交代でこの経路をたどることになっている。オットー山に行くには山側の経路を通るバスに乗ればケーブルの麓に停留所があるが、あいにく14時15分発は湖側を通るバスだったので、そこから15分ほど歩くことになった。

 オットー山のケーブルは、駐車場を越えて、道路を越えて、斜面を登っていく。斜面もカテドラル山のように森林やゲレンデになっているというよりは、眼下にホテルや別荘が見える風景だった。

 斜面に突き出すように建てられた別荘の庭には、木製のリクライニングチェアーが置いてあり、天気の良い日にあそこに寝転んでワイン片手にナウエル・ウピア湖をながめつつ本を読んだりしたら、どんなに気持ちがいいだろうと思われた。一方で、あんなに斜面を上がってしまったら、スーパーへ買い物に行くの大変だろうなぁ、あ、でもあんな別荘を持っているんだから、車ぐらいあるよね。でも、維持費ってものがかかって大変だろうねぇ、と頭の中の独り言が止まらないうちに、頂上に到着してしまった。こちらは20分くらいの乗車だった。

 オットー山(1405m,)はカテドラル山(2388m)よりもかなり低く、湖の岸辺からにより近い所にある。従って、見えてくる風景は湖が大きく、周囲の山が目線よりも高い所にあるので、私の印象としてはいわゆるバリローチェらしい風景という感じがした。しかも、展望台は本当に山の頂上にあるので、景色が360度見える。展望台には回転するレストランがあるので、レストランは15分くらいで1周して、全部の風景を座りながらにして見る事ができるのだ。一部の人に言わせると、周る速度が速すぎて目が回りそうだということだが、我々はそこまで速いとは感じなかった。


 よくカテドラル山とオットー山、一つを選ぶならどっちに行くべきでしょうか?と聞かれることがある。難しい質問だ。こうして帰ってきてからの写真を見ると、オットー山からの写真の方がサマになる写真が撮れている。オットー山からは、トロナドール山やカテドラル山など、周囲の有名な山を見る事もできる。しかし、カテドラル山で感じたような、身を切るような清涼感は、オットー山の高さでは感じられない。体感としての気持ちよさはカテドラル山に軍配があがり、サマになる写真をとりたいならオットー山というところだろうか。

 回転レストランでアイスクリームも食べたし、そろそろ帰ろうかなぁと思っていたら、大きなリュックを背負って山道を登ってきた団体がいた。写真手前の緑色の人工芝に陣取って、皆で湖を向いて座っている。どうやら、ナウエル・ウアピ湖に向かって空の遊覧を楽しむタンデムツアーらしい。しかし、風が強すぎるので弱まるのを待っているようだった。



 こんな所を飛んだら、楽しいだろうし、少なくとも飛んでいる人を見てみたいと思う気持ちは、我々だけではなかった。ちょっとした人だかりができて、皆、興味津々で待っていたが、なかなか飛ぶ様子がない。風も強く、寒くなってきて、一人去り、二人去り、とうとう我々だけが待っていたが、やはり飛びそうもないので、オットー山を後にすることにした。それにしても、オットー山には、こうした楽しみやトレッキングコースも用意されているので、アクティブに楽しみたい人には向いているのかもしれない。

 展望台には、なぜかミケランジェロのダビデ像のコピーやピエタのコピーの置いてある美術館もあって、景色を堪能するだけでなく、ヨーロッパ美術に触れられるし、ミニチュアのお土産も買える様になっているのが、不思議だった。ま、いろんな意味でツーリスティックな所で、楽しめる。

 帰りは、カテドラルから来るのでない路線バス(A$1=US$0.33)に乗って帰った。バリローチェ最後の日、天気にもまずまず恵まれて、湖畔の景色を目一杯楽しむことができ、これで心置きなくバリローチェを発てると思うにふさわしい日となった。