夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2006.01.06 
フィッツ・ロイの麓、ロス・トレス湖へのトレッキング
アルゼンチン:エル・チャルテン
 エル・チャルテンに到着して2日目。朝6時に起床して空を見上げると、まずまずの晴れだったので、ロス・トレス湖へのトレッキングに行くことにした。

 今日は、エル・チャルテンを出発して、まずカプリ湖まで1.5時間、そこからリオ・ブランコ・キャンプ場まで1.5時間、リオ・ブランコからロス・トレス湖まで1時間、つまり目的地まで4時間かかるコースだ。行きと帰りで8時間、ロス・トレス湖で休憩2時間として、10時間コース。そんな長い時間を歩き続けた経験あったかなぁ?と、不安もあったのだが、最後の登り1時間以外は、起伏の少ない平坦なコースだと聞いていたので、大丈夫だろうと出発することにした。

 昨日、スーパーで買っておいたパンにバターをぬって、レタスとチーズとハムを挟んだサンドイッチ、そしてゆで卵を作ったら、お昼の準備はOKだ。

 山の天気は変わりやすいと聞いているので、温かい格好をして、いざ出発。夫もガッツポーズでやる気満々だ。

 まずは、村の北はずれの登山口まで行くと、フィッツ・ロイ山周辺の地図の書かれた案内板があり、いよいよここからトレッキングが始まるのだ。

 エル・チャルテンは、フィッツ・ロイ山などがある所とは、大きな岩山で隔てられている。この岩山が山々を渡ってくる強風をブロックして、村としての機能に支障がないようにしてくれているのだろうと、到着した初日に思った。で、今日気がついたんですけど、トレッキングとなると、この岩山をまず越えていかなきゃなんないんだなぁ。しょっぱなから平坦じゃなくなるだろうという想像は、もっと前にしておくべきだった。

 岩山のてっぺんまで登るわけじゃなくて、岩山の真ん中くらいかなぁ、その辺りの高さの道まで上がって、岩山に沿ってぐるっと向こう側へ行くようになっていた。朝、宿を出るときにはうす寒かったので、ロングコートまで着込んでいたが、岩山を迂回する道に出たころには、顔はすっかり上気し、あれもこれも脱いでTシャツ1枚になっていた。

 この辺りになると、人の手の入っていない自然ばかりの風景で、またある程度の高みに上っているので目の下の風景がいい。蛇行する川を渡る冷たい風も運動の後では気持ちよく、「おお、これがトレッキングの醍醐味ってやつですねぇ。」などと、いっぱしのトレッカーぶったりできる所である。


 目の前が開けた道になってからも、全く平坦ということはなく、ちょっと上がったり下がったりを繰り返しながら進んでいった。

 登山口から1時間弱で、カプリ湖へ行く道とそのままロス・トレス湖に行く道の分岐点にやってきた。このまままっすぐに進んで、帰りにカプリ湖に寄ることもできるだろうが、我々はここで左折して、ちょっとカプリ湖を見てから行くことにした。この分岐点からカプリ湖近くのキャンプ場まで10分、そこから5分でカプリ湖に到着した。

 カプリ湖の写真は宿の壁にポスターが貼ってあり、湖にはフィッツ・ロイ山の姿が写り込んで、それは美しい風景が見えるはずだった。しかーし!朝、晴れていた空には雲が立ち込め、湖はどんよりと暗い緑色、かなたに見えるはずのフィッツ・ロイも見えず、もちろん写りこみもない。おまけにポツポツと雨までぱらつき始めた。熱かった体は急速に冷えてきて、再びコートを羽織ることになった。本当に山の天気は変わりやすいのだ。カプリ湖では残念な景色だったが、この変わりやすい天気ならば、いい時もあるだろうと期待して、さらに先に進むことにした。

 カプリ湖からロス・トレス湖へは湖沿いに道がある。湖水沿いの道は、やがて湖から離れて、先ほど分岐した道と合流する方向に進んでいった。

 ここも本来ならフィッツ・ロイの姿が臨める所なのだろうか?しかし、ガスって向こうに山は見えなかった。ごめんね、というように虹がかかって見えるのが、せめてもの救いだった。

 ここからは平坦な道が続き、林の中を通り過ぎると、湿原のような所に出た。1時間前に雨が降っていた空は、切れ間から青空が見えるように回復しつつあった。湖水は鉱物を帯びているのか赤錆色なのだが、深さがあまりなく、水が澄んで美しいために湖の中に生えている鮮やかな緑色の水草が透けて見えている。それにかぶさるように、空の青と雲の白も写り込んでいる。

 空の青さと、台地の緑、赤錆色の澄んだ水の中に、緑色の水草。全てがあいまって、何ともいえない風景が、凛とした空気の中に存在していた。


 やがて分岐した道との合流点に到達。この看板の向こうに、切り立った岩山が見えてきた。しかし、惜しい!ポインセノットは見えるが(中央やや右手に巻いているような形の山)、その左側にあるフィッツ・ロイは見えない。季節は夏だというのに、山々の麓には白い雪の塊が見えた。この辺りも氷河なのだ。我々は一体どこまで近づくのだろうか?天気は晴れるのだろうか?様々な気持ちが渦巻く。歩き始めて2時間ちょっと。まだまだ疲れは出ていない2人だった。

 尚も湿原を進むうちに、リオ・ブランコが見えてきた。「お一人ずつ渡ってください」と注意書きされた丸太の橋を、用心深く渡ったり、尾瀬のような丸太の並ぶ長い通路を歩いたり、変化に富んで面白い所だった。

湿原には木の橋がかかっていて、
尾瀬のような感じになっている。

手前の川は赤錆色だが、
奥の川リオ・ブランコ(白い川)は無色透明。
川の合流地点できっぱりと色が分かれている
 リオ・ブランコはその名の通り、今まで見てきた川と違って無色透明。歩いて火照っている今、ここに飛び込みたい!という衝動に駆られたが、実はロングコートまで着込んでいる状態。本当に入ったら、寒くて凍えてしまいそうだった。ここからポインセノットのキャンプ場まで行き、今度はかなり速い流れのリオ・ブランコを渡ると、キャンプ場のリオ・ブランコに到着。


 ここまで2時間50分。3時間の予定だったので、まずまずのペースである。後は、1時間の急な上り坂で到着だ。

 と思ったのだが、ここからの上り坂は半端ではない。

 しょっぱなからズーッと斜面なのだ。山を回りこむとかではなく、本当に山の斜面にジグザグと適当に道を書いて作りましたって感じの道。

 ヒーハー、ヒーハーと夫の荒い息を背中に受けつつ20分も登ると、かなり視界が開けてきた。いやー、人間の足の力って凄いなぁ。こんなに上に自力で登ってきたんだなぁと、ひとしきり自画自賛したが、まだ20分しか経っていなく、あとこの2倍の時間登り続けることを思うと、早くも胸が苦しくなってきそうだった。

 そこから10分後、ちょっとした平らなところに出た。ここから上を見上げると、今までとは違って大きな岩がゴロゴロとしている。最後の10分は、これらの岩を乗り越えていかなければならなかった。

 ひえー、これを果たしてトレッキングというのだろうか?私の中でのトレッキングは「お散歩」の範疇だったが、これはまさにアドベンチャーの初級に属するではないか。インドア派夫妻の衝撃は、精神的にも肉体的にもピークに達しようとしていた。

 目的地の風景は、ぎりぎりになるまで見えなかった。今日の場合、だから頑張れたというのもある。登りきって視界が開けた所、そこには鉛色の湖と氷河、その背後は一面曇った景色だった。ええええ?こんなに頑張って登ったのに、これ?

 もう、がっかりすること山の如しであった。とにかく、山の天気は変わりやすいという言葉を信じて、ここで待機して少しでも雲が晴れるのを待とうということになった。それにしても、日が差さないこの辺りは、風も強く恐ろしく寒い。何と行っても風の方向は常に氷河からくるのだ。いままでリュックに潜めていたセーターを着込み、ジーンズの上からダウンパンツを履き、毛糸の帽子を被って、更にコートのフードも被った。

 それから10分後、フッと空が明るくなった。湖の向こうはまだ曇っているが、湖自体が日に照らされると、それまで鉛色だった湖面が、エメラルドグリーンに変わり始めたのだった。

 パタゴニアの雲は本当に流れが速い。雲がかかると鉛色に、そして晴れた所からエメラルドグリーンに移り変わり行く湖の色を眺めながら、尚も曇っている山をみつめ続けて待った。

 フィッツ・ロイ山およびポインセノット山、その右手に見える岩山は全て、ガリガリと削られたような岩山で、この尖った切っ先に雲がぶつかると、雲は山の内側に巻き込んできて、まるで雲が煙を吐いているように見える。先住民がフィッツ・ロイ山を「エル・チャルテン(煙を吐く山)」と呼んでいたというガイドの説明は、フィッツ・ロイ山では見ることができなかったが、その右手の小さめの岩山では見ることができた。本当に、火山の噴火で煙を吐いているように見えるのだ。

 ずーっと上を見上げていると、雲が異常に近くに見える。近くに見える雲がさーさーと非常なスピードで流れていくのだ。

 こうして雲が来て、流れて、次の雲が来て流れて。ここに到着してから1時間20分後の写真、これが我々の本日のベストショットだ。


 因みに、3日後にトーレ湖に向かう途中でもっとましなフィッツ・ロイ山が見えた。上の写真のずっと右手から見た写真がこれである。

 相変わらず右手のフィッツ・ロイ山には薄く雲がかかっているが、この姿がこの日は全く見えなかったのが残念である。

 この後40分見続けて午後2時20分になった。これ以上に晴れることはなかっく、もう少し見ていたい気分もありながら、また帰りに4時間歩くことを考えて、降りることにした。


 登りに比べると下りは息はあがらないが、足はがくがくになる。やはり小一時間かかってしまった。

 後ろを振り返ると、フィッツ・ロイどころかポインセノットさえも見えなくなって、全体が真っ白になってしまっていた。本当にあれが限界の晴れだったのだ。それにしても、雲は後ろからどんどんどんどんわいてきて、やがてこちらにも来てしまいそうだ。悪天候にならないうちに帰りたい。急がなくっちゃ。

 途中、馬で帰る人に出会った。先頭はガイドのおじさん、後ろの2人が観光客だ。馬はエル・チャルテンからポインセノットキャンプ場まで行って帰ってくるようだった。

 確かにポインセノットまで馬で行って、そこからロス・トレス湖を目指したほうが体が楽かもしれない。しかし、慣れない馬に乗ってその後急な坂を1時間も登れるのかどうか、そこは疑問なところである。足ががに股の形のまま、しばらく直らないようならば、坂は登れないだろう。それにしても、君たちが落としていった糞をよけながら歩くのが結構大変なんだよねー。と、疲れてくるとろくな事を考えなくなる。そう、時刻は午後4時。だんだん疲労蓄積してきた。

 5時になろうかという頃から雨がポツポツ降り出し、やがて本降りになりだした。雨具を持たずに出た我々だが、幸いにも分厚いコートは防水が効く。なんとか体まで濡れずに歩いていたが、コートから垂れる雨水がジーンズにしみこみ、膝から下のふくらはぎがぐしょぐしょになってきた。おまけに、トレッキングコースがぬかるんで、アキレス腱の辺りは泥がはねあがり不愉快なことこの上ない。時々木陰で休憩をとりながら進んだが、雨の日のトレッキングくらい不愉快なことはない、あーあ、何で天気予報を見てこなかったんだろうと、2人でブツブツと文句を言いながら歩いた。

 午後5時半過ぎ、おなじくげっそりした顔で前を歩いていたアルゼンチン人の若いカップルが、立ち止まって谷の方を見ているので、何かと思ったらまた虹が出ていた。


 雨もどうやら止み始め、すでに空には青空が見え始めてきた。この虹の地点から15分ほど歩いた所の木々の隙間から、いとしいエル・チャルテンの村が見えた。

 この風景は、雨の中を歩いてきた人にとっては、闇夜に見えた町の明かりに等しい。そこを行過ぎる誰もが、今日はここで思わずカメラを取り出してシャッターを切っていた。

 そして午後5時48分。ようやくエル・チャルテンの北登山口に到達。

 今朝、ここを出発したのは7時半だった。ロス・トレス湖で2時間過したのを入れて全部で10時間18分のトレッキングとなった。宿から北登山口まで我々の場合片道徒歩7分だったので、それを入れると約11時間のトレッキング。いやはや、我ながら良くやった。宿に帰ってシャワーを浴び、隣のレストランにかけこんだ。いやー、ビールのおいしかったこと(食事は「本日の献立2006/1/6夜」の写真をクリックしてご覧ください)。これもトレッキングの楽しみの一つなんだろうなぁ。


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