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2006.02.01
人気のお教室でタンゴレッスン |
アルゼンチン:ブエノス・アイレス |
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昨日のミステリアスなタンゴレッスンで面白い体験をさせてもらった我々は、今日は人気の先生が担当するタンゴレッスンをのぞいてみようと、第二回目のタンゴレッスンに挑戦した。
住所を頼りにバスに乗ってやってきた場所は、1階にカフェのある劇場のホールのような所だった。実際には、一つ手前の住所と角にあるこのホールのような所の間にあるはずなのだが、存在しない。おかしい、おかしいとぐるぐると歩き回っていたが、埒が明かないので、警備員らしき人に聞くと、このホールのエレベーターで3階に上がった所にその住所があると教えてくれた。
なになに?と不思議に思いながらも3階(日本の4階にあたる)に到達すると、レッスンが行われるスタジオの名前の看板が出ていた。内装工事中のギャラリーのような所を抜けて、やっとそのスタジオに到達することができた。
途中で下が吹き抜けになっている様子から、ああ、ここはガレリア・パシフィコの中じゃないか、ということに気付いた。
繁華街のフロリダ通りに面したガレリア・パシフィコは豪華な作りのショッピングモールで、中に入っているショップも高級感のある店が多い。地下のフードコートも、フードコートといえども、周りのレストラン並みの値段で洒落ている。
今日は反対側の通りから入ったので気付かなかったのだが、ここはそのショッピングモールの上層階にあたる部分なのであった。
宿のフロントのホセからもらった今月のタンゴレッスン・スケジュール表を見てみると、今日のスタジオは様々な先生が、様々な時間帯でレッスンを行っている人気の場所だということがわかる。特に今日の先生は人気のある先生だそうだ。さて、どんなレッスンになるのだろうか。
受付で初心者でもOKだということを確認し、1.5時間のレッスン代金2人分でA$29(=US$9.06)を支払って手続きは終了。後はレッスン開始まで外のベンチで待つように指示された。時間が近くなると、ぞくぞくと生徒が集まってきた。ざっと見ても15人以上はいるだろう。
ベンチの隣に中華系の青年が座ったので、「あなたもレッスンを受けるの?」と聞いてみると、青年はきれいな英語で答えてきた。台湾系ブラジル人の彼は、昨年3ヶ月間この先生のレッスンを受けていたが、仕事が忙しくて中断。今年に入って再び通い始めているのだということだった。小学生までアメリカンスクールに通っていたが、中学校からは地元の高校、大学と進学した。今はアメリカの会社で働いているので、同僚と毎日英語で話しているために、英語に慣れているのだと語っていた。通勤用の靴からダンスシューズに履き替えて、なかなかやる気満々なのであった。
他のメンバーは国籍も年齢も様々な人々で、どちらかというと女性が多かった。
時間が過ぎても、前の教室が終わらず、ちょっと送れてスタジオが明け渡された。
昨日の喫茶店レッスンとは違い、壁中に大きなガラスが張り巡らされ、床はピカピカの板張りで、いかにも羽振りのいい人気スタジオという感じだった。
先生は30代後半といった感じの女性の先生で、見るからに明るく人気がありそうな人だった。本当に初心者というのは、実は私たちだけのようで、先生がくるなり、初心者グループは鏡の前で準備運動のようなポーズの練習、もう少し上のグループは準備運動的に男女で組んで軽く踊る体制になった。どうしていいのかわからない私たちが突っ立っていると、先生が来て、どの程度のレベルか聞いてきたので、昨日1階授業を受けただけだと答えて、先生に昨日覚えたステップを披露した。それで、一応基礎ステップは知っているということになり、準備運動後に、今日のステップの講習がいきなり開始された。
先生がフロアの真ん中に立ち、左側が女性、右側は男性にわかれる。まず男性のステップから。はい、ウノー、ドスー、トレース、クワットローとこう来て、ここでターンして、はい、こーなって、こう。はい、やってみて。うっわー、何て速いレッスン展開だ。それで、何度か復習してみたら、はい、男性は自習していてくださーい。今度は女性のステップでーす。と同じようなスピードで女性のステップを教えられた。何が何やらわからないまま、言われる通りにやるしかなかった。これを15分くらいやったら、はい、今度は組になってー。今日は女性が多いので男性1人に2人の女性がついて下さいねー。ということで3人1組を作ることになった。
私たちは、ここで全体のグループからはずされた。レッスン2日目にしてはあまりに難しいステップ。前半は何とかわかったのものの、後半で私が夫の足の間を蹴り上げるところが全くわからない。まぁ、この部分がいわゆるタンゴっぽい所なのだが。そこで、先生は私たち用に後半は基本ステップに戻る簡単バージョンにしてくれて、それを2人で復習するように言ってくれた。
組になって踊る練習が形になってきた所で、音楽に合わせて実際に踊ってみましょうということになった。わけがわからず、ぐちゃぐちゃになってしまった私たちに教えてくれたのは、初級者クラスにいるけれど、本当は中級でもいいのではないかと思われる年配のカップルだった。ゆっくりとステップを見せてくれて、教えながら踊ってくれて助かった。
それでもなかなかリズムに乗ることができすに難しかった。ここで一旦自習は中断され、皆集まって、今度は今日のステップとは別にタンゴのワンポイントレッスンになった。それは、昨日の先生の所でも言われた「音楽を心で聴いて体で表現する」ということだった。タンゴというのは、習ったステップをやみくもに繰り出すものではない。音楽によってステップが変わってくるし、テンポも心の持ちようで速くなったりゆっくりなったりする。ということを、やや上級の生徒を相手に、実際に音楽を聞きながら踊りながら説明してくれた。
私たちがグアテマラで少し習ったサルサにはそんな要素はなかった。もう、とにかくアップテンポに次から次へと間断なくステップを繰り出していく躍動感がサルサだった。それに比べると、もっとムードというか音楽と心に重点を置いてステップを変えていくタンゴは大人のダンスなんだなぁ。
ワンポイントレッスンが終了すると、後は最後の仕上げで、今日のステップを踏みながら、反時計周りに周って全員で踊る練習。まぁ、私たちは輪の外で自習しているのだが。
最後の10分、皆で集まって質問コーナーになった。次々と質問が出てレッスン終了の時間を過ぎてもなかなか質問はやまなかった。みんななかなか熱心なのである。1時間半なんてあっという間のことだった。「もう、次のレッスンの時間になってしまっているので、今日はここまででーす。お疲れ様でしたー。」とバタバタとレッスンが終わっていった。
実にあわただしいレッスンだった。いくら腕のいい先生だからといって、一度に20人もの生徒を教えようと思ったら、一人ひとりを綿密に見ることはできない。ある程度基礎ができている人がここにきて、ちょっと違うステップを覚えるとか、今までの癖を直してもらう、という意味合いでくるのならいいだろう。又、レッスンの終わりに、先生に個人レッスンをしてもらいたいという話をしている人がいた。この人のように個人レッスンを受けたい先生を探すためのお試しのレッスンとしても受けるのも、安価に先生の技術に触れられるのでいい手だと思う。逆を返せば、このレッスンだけを受けて上達するとは到底思えないレッスンだった。
そもそも我々は見学程度の体験レッスンだから、このくらいの内容で丁度いいと思った。先生もそんな我々に対して、「どうせ観光客の物見遊山で来ているんでしょ」という態度ではなく、ある程度真面目に接してくれたので、よかったのではないかと思う。
宿に帰ってから、同じフロアでタンゴを勉強している男性にこのいきさつを話したら、そういう集合レッスンでは、本当の初心者はレッスン中何も教えられずに他の人を見ているだけで終わってしまったという例も聞いているので、まぁ少しは教えてもらえてよかったのではないかと言ってくれた。しかし、私が今日習ったステップを見せたところ、もし真剣に習うつもりがあるのなら、今のままだと全く基礎ができていなくて、続けると腰を痛めるような踊り方なので、危ないだろうとも言われた。
ブエノス・アイレスにはそれこそ山のようなレッスンが存在する。どの程度真剣に取り組むか、自分が何をしたいのかをはっきりわかっていないと、お金を取られて体を壊すことになる。そんな世界がちょっとだけ見えたレッスンだった。
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