夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2006.04.07 
夜のフラメンコショー

スペイン:マドリッド

 昨日は世界三大美術館の一つといわれるプラド美術館とティッセン美術館をはしご。当たり前のことだが、パリのルーブル美術館と比べると、ゴヤ、ベラスケス、ダリ、ピカソ、ミロなどスペインの画家の作品が多く、美術館としての印象がかなり違う。ダリやミロの作品は、奇想天外で色使いも面白く何も知らずに見ても素直に楽しめるのだが、今までゴヤやベラスケスの何が素晴らしいのかよくわからなかった。

 しかし、今回、彼らの作品の素晴らしさがわかるできごとがあった。それは、絵画の勉強をしている学生さんが作品の前にイーゼルを立てて模写しているのを見た時だった。そう、学生さんが模写した作品と本物の作品を見比べることができたのだ。なるほどぉ。同じように描かれているにもかかわらず、本物の作品の人物の生き生きとした表情、光のあたったレースの感じ、ビロードのドレスの柔らかな感触が手に伝わってきそうな描き方。こういうものを描くということが、どんなに難しいかを見せてもらえてのだった。

 絵画の楽しみ方は人それぞれだろうが、今回のできごとを通じて感じたのは、良い作品鑑賞はワインのティスティングと似ているってこと。ある程度いいワインにあたると、舌でおいしいと感じると、その感情が体中を巡ってしみじみと幸せ気分に満たされる。私はこれを「幸せ汁が出る」と言っているのだが、今回のプラドでは絵画でも「幸せ汁が出る」ことを発見た。画家の卵の学生さんの模写のお陰である。

 とまぁ、昨日はちゃんと観光したのだが、今日は天気も悪いので宿でネット三昧。ここの宿はPC持込の場合は無料でネットが使えるのだ。イースターの休みを利用してきている他の宿泊客たちは観光に余念がなく、日中の宿は私たちの独占場。いやー、ホステルだけど、自分の家みたいだ。

 今夜は前からチェックしていたフラメンコショーでも見に行こう。フロント係りのマノロ君に聞いたら、ここのタブラオ(フラメンコのライブハウス)がお勧めだといわれた所だ。店の名前はLas Carboneras。

 公園に面した建物なのだが、公園に面した所には入り口はなく、公園に立って建物を見た時に左側の壁面に入り口があるのがポイント。簡単なポスターがかかっていて、入り口の扉の上にわかりにくい店名が書かれているだけの隠れ家的な店だった。昼間の間に場所も下見してきたので、夜は迷わず行ける。

 スペインナイトにふさわしく、夕食は魚貝類たっぷりのパエリアにした。いつも買いすぎてしまうのが、私たちの欠点でもあるが、今回もてんこ盛りのパエリアになってしまった。調理中にキッチンを訪れた人は、東洋人がパエリアを作るのを珍しそうに見つめていた。というか、旅行中に気合を入れてパエリアを作っている人が珍しかったのかもしれない。皆、たいていはピザを買ってきて温めたり、サンドイッチを作ったりする程度だからだ。

 こうしてたっぷりのパエリアの夕食を終えて、8時過ぎに宿を出た。タブラオまでは徒歩10分、最初のショーは8時半からなのだ。

 昼間見た時とは違って、オレンジ色の街灯に彩られた石畳のタブラオ周辺はスペインの雰囲気がたっぷり。店内への扉を開けると、小さなホワイエ(玄関ロビー)の奥に照明を落としたダイニングが広がり、右手にステージが見えた。受付カウンターで飲み物とショーだけを注文し(1人EUR29=US$34.99)、ウェイターがステージ左手の席に案内してくれた。

 そんなに広くない店内のテーブルは既に結構埋まっていて、その話しぶりやしぐさから、観光客が多いことがわかった。

 ツーリスティックな所なのか、と少し残念な気持ちになった。グラナダなどに行けば、もっと泥臭い場所でのフラメンコも楽しめるだろうが、ここはマドリッドの中心部ということで、どうしてもソフィスティケートされてしまい、ツーリストも多くなるのはやむを得ないのだろう。

 そうこうするうちに、飲み物のオーダーを取りにウェイターがやってくる。ワイン、ビール、ジュース、サングリアなどから好きな1品を選べる。私たちは赤ワインを注文。すると、物凄い量のグリーンオリーブ付きで大きなグラスにたっぷり入った赤ワインが運ばれてきた。

 こういう太っ腹な感じがスペインらしくて嬉しくなる。

 8時半を7分過ぎたところで照明が落とされ、何の前触れもなくステージ前の小部屋から音楽隊の男性とダンサーの女性がさらさらと出てきてステージにあがった。女性たちの衣装やヘアースタイルは思ったよりもずっとシンプルなんだなぁと思った瞬間、のっけから激しく力強いダンスが始まった。
 床を強く踏み鳴らし、怒りとも哀しみとも思える眉間に皺を寄せた表情でステップを踏む。ある時はスカートをいまいましそうにたくしあげ、ある時はそのまま華麗に回りながら。そこからほとばしるエネルギーは、強烈なメッセージとなってこちらに塊で体当たりしてくる。店の印象からツーリスティックだと思っていた考えは吹き飛び、プリミティブな、土の香りのする期待以上の素晴らしい踊りだった。店内の他の観客もあまりの迫力に唖然としている様子で、わずかにフラメンコ通と思われるスペイン人カップルだけが、暗闇に目を光らせてじっと見守っていた。

 そういえば、こうした表情はアルゼンチンのブエノス・アイレスで見たタンゴダンスにも共通する。スペインの血がタンゴを生んだことが素直に理解できるのだった。そういえば、ブエノスでタンゴレッスンを受けた時に先生が「一番大切なのは、コラソン(心)ですから、それを絶対に忘れないように」と何度も言っていた。まずコラソン。フラメンコでもコラソンが大切なのは言うまでもないだろう。これらの振り付けとコラソン抜きで踊られても、ちっともこちらに伝わらないのだろう。

 ダンサーの女性はソロで踊ったり、2人組で踊ったりしていたが、最後に黒髪の若いダンサーのソロになった。この人の踊りがまた一段エネルギーに満ちたもので、踊っている途中に歌舞伎の役者のように見得を切る場面や、相撲のしこを踏むように腰を落としてゆっくりステップを踏む場面があり、なぜか日本の伝統芸能に共通する物を強く感じた。
 単に手を上げただけなのに、単に足をあげておろしただけなのに、これだけの重力をかんじさせるというのは何故なのだろう。相当早い激しい動きも多いのに、最後に残る印象は「重み」なのだ。不思議だ、とても不思議だったが、とにかく脳天から胸に突き刺さるようなステージだった。

 最後は4人のダンサー総出で踊る。

 それぞれの持分を踊り終わって、ホッとしたように楽しみながら踊るダンサーたちと、それを支えてきた音楽隊の男性に、我々観衆は惜しみない拍手を送って、ショーは1時間で終了した。

 1時間はショートしては長い時間ではないが、それでも見ているこちらがくたくたになるほどの迫力で、十分に満足だった。

 夜9時半、マドリッドではまだ宵の口である。ディナーの最中のオープンレストラン街を通って、宿までブラブラと歩いて帰った。

LAS CARBONERAS
Pza. Conde de Miranda, 1. (Esquina Pza. Conde de Barajas)
91-542-8677
マイヨール広場から徒歩3分くらい。


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