夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2006.05.13
イル・ド・フランス(4)ヴェルサイユ宮殿の庭園と噴水ショー

フランス:パリ

 パリ郊外線のRERのC線で、パリ南西へ30分、ヴェルサイユ・リヴ・ゴーシュで下車した所に、「あの」ヴェルサイユ宮殿がある。

 前回、夫と訪れた時に宮殿内の見学をしたので、今回は庭園を見に行こうと、お弁当を持ってでかけた。

 宮殿に到着すると、左手にインフォメーションブースがあったので、どのチケットを購入すべきなのかを聞いてみた。

 ヴェルサイユ宮殿の庭園は、宮殿に近いフランス式庭園の小庭園と、運河やトリアノンという離宮がある大庭園に分かれている。今回の噴水ショーは小庭園で行われるために、小庭園への入場チケット(EUR7=US$8.86)が必要。大庭園への入場は無料。ただし、離宮内部の見学をする場合は別途チケットが必要だということだった。

 そこで、小庭園のチケットを購入した。どこから入るのかよくわからなかったので、宮殿の外を右手方向に進み、右手の入り口から入った。もうあたりには噴水があったりして、庭園の中に入ってきてしまったらしい。あらら?チケットのいらない抜け道だったのか?と思ったら、ちゃんとゲートが封鎖されていて、そこでチケットを見せるようになっていた。

 まっすぐに入っていくと、右手に宮殿が見える。

 宮殿は2004年から170年ぶりの大改修工事が17年間に渡って行われている真っ最中。宮殿も半分は改修工事用の足場が組まれてしまって、景観がいいとは言えない。しかし、よく見ると、改修が終了した左側の外壁は、新品のように美しくなっている。

 この改修工事が終了した暁には、宮殿はマリー・アントワネットもびっくりの美しさになるだろうことが予想された。

 で、宮殿の中央まで進んで右手に進んでいくと、噴水とフランス式庭園に続いてずっと先に大運河が見えている。


 「おお、さすがルイ14世! あっぱれ、あっぱれ」と膝を打ちたくなるようなあっぱれな庭園が広がっていた。こんなに遠くまで見渡せるようになっているとは思わなかった。パリ市内にも、庭園はいろいろとあるけれど、こんな規模で、こんなに絵になる庭園は初めて見た。

 とにかく、お昼、お昼。インフォメーションの係りの人に「庭園内でお弁当を食べても大丈夫でしょうか?」と聞くと、大きな身振りと手振りで、「もっちろんです。芝生の上でお弁当を広げると気持ちいいですよぉ」と言ってくれた。ということで、大運河までのまっすぐに続く道の端でお弁当を広げた(詳細は「本日の献立2006年05月13日昼」の写真をクリックしてご覧ください)。

 噴水ショーは15時30分。あと2時間ほどあるので、トリアノンに行ってみよう。整然と樹木が並んだ庭園は、近くで見ると1本1本の木が大きい。これがだーーーっと並んでいるのは壮観。近寄ってみても、他の公園との規模の差が歴然としている。


 大運河を右にそれてまっすぐ歩くと、マリー・アントワネットが愛したトリアノン。宮廷生活から開放されて田舎での生活を楽しみたいという目的のために作られた離宮とそれを取り巻く自然のある庭園だ。


グラン・トリアノン。コの字型の建物の回廊。
 宮殿からトリアノンまでの道のりは1.2kmと言われている。

 宮殿に一番近いラトナの泉と、大運河手前のアポロンの泉の中間でお昼を食べて、ここまでぶらぶらと散策すると30分くらいでグラン・トリアノンに到着した。

 途中で写真を撮ったり、カフェや土産物屋をのぞいていたりしたので、まっすぐに来ればもう少し短い時間で来られるだろう。

 グラン・トリアノンは、遠目にはあまり特徴のない宮殿に見えるのだが、近寄るとピンクの大理石をふんだんに使っていて、とてもラブリーだった。このピンクの回廊に立つと、王妃の気分が味わえるかも!?

 そこからプチ・トリアノンまでは、草花が美しく、整然と植えられた庭園沿いを歩く。途中に小さな建物があり、池もある。

 池には周囲の樹木が写りこんで、小さな館へ続く道のように見えた。空と雲でできた道を渡って向かいの館に行くように見える。

 今まで歩いてきた庭園は、あまりに規模が大きいので、自分の感覚におさまりきれないものがあった。大きさには感心するのだが、それらを融合して自分の中で楽しむ感覚にならない。それに対して、この辺りの景色は人間のスケール感に合っていて心地よい。

 やがてお花畑の向こうにプチ・トリアノンが見えてきた。

 グラン・トリアノンもプチ・トリアノンも内部を見学できるが、今回は噴水ショーも待っているので割愛。

 更に先の村里に向かう。

 プチ・トリアノンを過ぎると、今までとはまるで違う庭園の風景になる。イギリス式庭園というのだろうか。整然と刈られた樹木、「こっからは、はみだしちゃだめ!」と言われてお行儀よく生えている草花というフランス式庭園に比べ、こちらは野原のようだ。

 今まであまり聞こえてこなかった、自然の音がわっと発生している。特に牛蛙の大合唱。その蛙のいる池の方を、石の上からじーっと見つめる猫がいたりして、自然の営みが肌で感じられる。

 そして、この先に、池の周りに素朴な(といっても、日本の住宅にくらべたら大邸宅なみの大きさなのだが)家が建っている村里が見えてくる。

 宮殿で生活したわけではない。宮殿には足さえも踏み入れていない今日、整然とした大規模庭園の中を歩いてここにたどり着いただけなのだが、とてもホッとする空間が広がっていた。権力闘争がうずまく宮殿で生活していたら、さぞやここは気の休まる所だったろうというのは想像に難くない。ここまで歩いてきて、宮殿がいかに窮屈な所なのかを貴族的気分で考えるという体験は面白い。まぁ、貴族は歩いてはこなかっただろうけど。

 ここから来た道を引き返し、噴水ショーが行われる小庭園に戻ろう。

 先ほどまで、晴れていた空がどんどん暗くなってきてしまった。これから噴水ショーだというのに。小庭園に戻ることにはポツポツと雨が降り出し、カフェのパラソルの下に逃げ込んで、コーヒーで一息つける頃になって雨は本格的に降り出してきてしまった。あらあら。

 15時過ぎになって、20分ほど降っていた雨は雨足を弱めてきた。15時30分、庭園全体にアナウンスが流れ、噴水ショーが始まった。雨宿りしていた人たちは、霧雨になった雨の中ショーを見に出て行って、カフェには私たちと数人だけが残った。まぁ、雨も小止みになってきたし行ってみますか。

 噴水ショートいって思い出すのは、ラスベガスの噴水ショー。写真やテレビでしか見たことはないが、ラスベガスの夜空を彩るライトに照らされて、ハイテクを駆使した様々な形の水の芸術が、音楽に合わせて形を変えていく。そんなイメージがあった。

 ヴェルサイユの噴水ショーは、時間になると、小庭園にある大小さまざまな噴水から一斉に水が出て、BGMにバロック音楽が鳴り響く。


 まずは、宮殿から一番近いラトナの泉の前に立ち、しばらく見学。雨上がりの曇り空の下では、今ひとつ寒々しいのだが、豪華絢爛ではある。案内でもらっていた地図によると、午後3時半から17時までの噴水ショーで見られる噴水は27箇所あるようだった。

 これらの噴水を見て周ると、ちょうど小庭園の見所をほぼ見て周るようになっていた。我々はラトナの泉から時計回りに回って見て行くことにした。いくつか面白い噴水があったので、写真で紹介したい。

 宮殿左手にあるオランジュリーOrangerie庭園にある噴水。ここは手前の高台から見下ろすようになっているのだが、アリスのティーパーティーみたいなイメージの庭園で、唐草模様に植えられた芝生がとても面白い。



円状になった広場に巡らされた階段に水が
流れている。金の置物が豪華。

金の置物には、なさけない顔の装飾。こういう変な
顔の装飾は良くみかける。



 大きな広場の周りにアーチ形になった柱が立ち、1つ1つの柱の間に噴水が出ている。

 全体の写真ではたいしたことがないように見えるが、噴水は二抱え程もある重厚な石造りなので、そこに落ちる水の音といい、見た目の重厚さといい、ここはかなり迫力のある所だった。


 上の写真の噴水は、巨人の口から水が出ている噴水中央の装飾も面白いのだが、周りを取り囲むフェンス前の樹木に注目した。人型にカットされて、生真面目に噴水警備を勤める衛兵に見える。


 噴水ではないが、こんな滝も庭園内にある。

 こうして、ぐるっと小庭園を回って宮殿の方まで戻ってきたら、午後5時の終了まで、あと5分という時間になった。ぴったりだ。
 最後に見たこの噴水のポイントは、噴水ではなく、その後ろのヴェルサイユ宮殿。外壁の改修工事が終わったのだろう。見違えるように白く美しくなっている。以前は、もっとねずみ色だったのに。

 こうして午後5時、再びラトナの泉の前に戻ってきて、最後まで噴水ショーを見届けた。

 宝探しをするように樹木の迷路をたどって、趣向を凝らした数々の噴水を探して、庭園内を歩き回るというのがヴェルサイユ宮殿の噴水ショーだった。ヴェルサイユ宮殿というと宮殿内の見学だけに終わってしまいがちなのだが、折角だからもう1日さいて庭園をじっくり楽しみたい。

 さて、帰りにアクシデント。通常利用しているRERが先ほどの大雨の影響で一部不通になってしまっていたのだった。代替のバスが出ているという駅まで、別の地下鉄で行けという指示に従って、民族大移動。ぞろぞろと移動して、指示された駅の地上のバス乗り場にたどり着くと、、ここからバスは出ていなくて、今来た駅に戻れと言われる。またもや民族大移動。

 ようやくバス乗り場にたどり着くと、そこはミニ民族博物館かのように、色々な人種がぎっしりとバス待ちをしていた。東京に比べて、パリがいかに他国からの移民を受け入れているかを実感。

 この状態では、バスが来てもすぐに満員になって行ってしまう。私の前に立っている小柄の白人初老の女性は、誰かと待ち合わせでもしているのか、いらいらと時計を見て、手帳を見て、周りを見て、不機嫌極まりない様子。もうすぐにバスに乗れる、と思った瞬間、横から入り込んできた大柄の黒人男性たちの波に押されて、その女性も私たちもバスに乗ることができなかった。

 さぁ、おばちゃん、怒った、怒った。早速、この場を取り仕切っているお兄ちゃんを呼びつけた。黒い革ジャン、きっちり編み上げた髪、連絡用のインカムを付けて、いかにも陽気な顔をして来たお兄ちゃんは、おおよそ日本の常識の国鉄職員とはかけ離れている。ミュージシャンみたいだ。

 おばんちゃんは、「あのね、こういう時は綱とかはって整列させて、前の人から順番に乗れるように計らうべきでしょ。私、約束があるのよ、今のバス、横からどどどーって人が来て乗れなかったの、大変なのよ。早く、みんなを並ばせてちょうだい」と、身振り手振りを交えて(だから大体意味がわかった)お兄ちゃんに噛み付いた。

 「いやー、そうしたいのはやまやまなんですけど、・・・」そこから先の理由は何を言っているかわからないが、とにかく深刻な顔になることもなく、滅法陽気にその要求は受け入れられないと言っているようだった。おばちゃんとおにいちゃんの攻防は続く。と、そのうちに次のバスが来て、今度はおばちゃんの要求を取り入れたのか、私たちが待っている後部ドアは開けずに、前の扉だけ開けて人を入れている。「これで順番通り、入れるでしょ」と言わんばかり。陽気なお兄ちゃんは、どこかに行ってしまっていた。

 もう、要求を聞いてくれる人がいなくなったおばちゃん、辺りの人に同意を求めて激しく演説を始めた。中に一人、「全くその通りだと思うわ」と賛成してくれる女性がいて、エネルギーの収束先を見つけたおばちゃんは、その女性相手に話を始めて事は収まった。

 それにしても、華奢で小柄で一見やさしそうな顔をした女性だが、主張する時は激しい。フランス人の一面を垣間見た出来事だった。

 こうして、予定よりも2時間半も遅れて家に到着。ぐったりです。


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