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2006.07.08 Vol.2
久しぶりの散髪は、トルコ人理髪師。
オーストリア:ウィーン |
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夫が最後に散髪したのは、今年の3月、ブラジルのイパネマでだった。あれから4ヶ月、天然パーマ系の夫の頭は収拾がつかないクリンクリン頭になってきた。季節は夏。暑苦しい、本人のみならず見ているこっちも暑苦しい。
この状況に耐えかね、今日、近所の理髪店で散髪してきた。
散髪屋のおやじさんは愛想のいいトルコ人。「カタログみたいなのはないのかなぁ?」と夫が聞くと、「子供が破ってダメにしちゃったんだよねぇ」という。仕方がないので、置いてあった雑誌の中から理想に近い写真を探し出し、こんな感じにしてちょーだいとお願いする。
まぁ、これ以外の写真といったら、新聞記事に掲載されているオーストリアの老人政治家の白髪とかになっちゃうので、これが一番理想に近いってことになるけど、「ちょっと現実と乖離しているのでは・・・」とぶつぶつ言う私に、夫は「まぁまぁ、顔じゃなくって髪の毛だから」と言う。
さて、首の周りに使い捨ての不織布を巻いて、黄色いカバーをかけたら準備完了。単純にカバーをかけて、終わったら髪が首から下の洋服に入り放題になってしまう南米よりは、かなり先進国度を感じる。
散髪屋の習いとして、お客さんとの世間話に乗り出したおやじさん。が、おじさんはドイツ語とトルコ語しかできんという。我々のドイツ語といったら幼稚園生にも劣るというのに、どんどん話しかけてくる。
「お客さんは、国ではどんな仕事をしてるんだい?」えっとー、我々は今は仕事はしていなくて、旅をしているんです。「ってことは、失業者Arbeitlossかい?」いや、そーでなくって、仕事を辞めて旅に出ているんです。「ふーん」。理解してもらえたかどうかは微妙だが、こんな会話が進んでいった。
オーストリアの失業率はわからないが、別に失業しているってことがそんなに珍しいことじゃないんだろうなぁという会話の運びだった。フランスにいる時に聞いた話では、フランスも失業率が高いが、失業保険がすぐに出るので、ちょっと働いちゃぁ失業して、を繰り返している人も多いらしい。確かに、平日の昼間にショッピングモールに行っても、働いているはずの年齢の男性が、奥さんや子供と買い物に来ている割合が日本よりも多い気がした。
おやじさんは、今度は自分のことを語り始めた。12歳から床屋修行を始めて、この世界に28年。子供は男ばっかり3人で、16歳、15歳、8歳。2番目の息子が、最近同じ職業を目指すようになったと嬉しそうに語った。へー、12歳から始めて28歳かぁ。・・・・???ってことは、40歳。私とおない年じゃないか。「なんだ、同い年かぁ」と言おうとしたが、話がややこしくなりそうなので、ちょっと考えてやめた。こうなったら、おやじさんと呼び辛い。でも、成り行き上おやじさんと呼ぶことにする。
別の仕事をしたいと思ったことはある?と聞いてみると、この仕事は気に入っているので、今までに一回もそんなことは思ったことがないという答えが返ってきた。床屋の技術をトルコで得て、国を出てオーストリアに来て、ドイツ語の勉強、自分の店を作り、家庭を作ってきた彼には、仕事が大きな支えとなってきたのだろうし、基軸の仕事を変えるなんて考えることもなかったんだろうなぁ。
20分もかからずに、散髪は終了。冒頭のモデルのヘアースタイルとはちと違うが、久しぶりにさっぱりとした頭になって、良かった、良かった。
安定した仕事、安定した生活。これを土台に生きているおやじさんは、非常に満足な人生を送っている顔をしていた。自分がどうしたら満足できるのかを知っている人、それが幸せな人生の秘訣だと思う。
「それでは次回お会いする時まで。」と大きな手を差し出してくれて、握手して店を出た。来月もいってみるかなー。
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