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2006.07.19
コンサート(5)オペレッタ「ウィーン気質」in シェーンブルン宮廷劇場
オーストリア:ウィーン |
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夏のウィーンはオペラがオフシーズンとはいえ、夏しかやっていないイベントも数多くある。日本語の情報誌「月刊ウィーン」のコンサート予定表を見ていて、そんな夏しかやっていないイベントの一つに、シェーンブルン宮廷劇場で行われている「ウィーン気質」を見つけた。7月14日から8月27日まで、月曜日を除く毎日午後7時半からやっている。
「ウィーン気質」はオペレッタと呼ばれるジャンルの歌劇。オペレッタは、台詞も多く、ストーリーもコミカルで社会風刺がきいた内容になっていて、特にヨハン・シュトラウスの「ウィーン気質」はとても人気の高い作品である。こんな予備知識は持っていて、しかも10年くらい前に友人がビデオを貸してくれたこともあったのだが、あの頃は日々の雑事に追われていることを理由に見ることもなかった。
興味はあったし、友人への罪悪感も沸々とわいてきた。ここはウィーン、オペレッタの本拠地。劇場はシェーンブルン宮殿内にある劇場だ。友人への罪滅ぼしにはうってつけの舞台が整っている。さぁ、オペレッタ、見に行きましょう!
知人に聞いた所、シェーンブルン宮廷劇場はとても小さな劇場なので、一番安いチケットで後ろの方でも大丈夫だという話だった。チケットはEUR35、45、65、85。事前に買うのなら、オペラ座右手に出ているチケットブースやオペラ座左手の道をはさんで向かいにあるチケット屋、7月14日のシーズンが開幕してからなら、午後7時くらいに劇場に行けば、劇場の窓口でも買うことができるだろう。当日立ち見の席ならEUR10で劇場窓口で買うこともできる。
じゃぁ、チケットでも買いに行こうかなと思っていたら、今回は知り合いの計らいでEUR10でチケットを都合してもらえることになった。有難い、有難い。
「今夜のチケットが取れましたよー」と当日のお昼頃連絡を受け、夕方に家を出て、宮殿に午後6時半に到着。
夕日に照らされたシェーンブルン宮殿は、見学の時間帯も終わってひっそりと静まり返っていた。
しかし夜になると、宮殿の正門入って右手の宮廷劇場では、オペレッタ、そして左手のオランジェリーでは、シェーンブルン宮殿オーケストラ
とシェーンブルン室内アンサンブルが日替わりでヨハン・シュトラウスとモーツァルトのコンサートを行っており、夏の間はいずれもぞくぞくと観光客が集まることになっている。昼間の見学とコンサートが始まるまでの、わずかな時間の静寂だった。
正門右手のカフェ伝いに右手奥に進むと、「Wiener Blut」とタイトルが下がった劇場の入り口が見えてきた。窓口には数人の人が並んでおり、当日券を買っているようだった。
これがなかなかゆっくりしている。係員は2人いるのだが、一人がお客さんと対応して、希望の価格帯を聞く。それを受けて、隣に座っている人がコンピュータ画面で空き席を確認して、対応している人に伝える。対応している人は、それをお客さんに伝える、という伝言ゲームのようなことをしているので、大層時間がかかっているのだった。宮廷風と言えなくもない。
私たちの順番。友人に予約してもらっていることを告げると、奥にある箱から封筒を引っ張り出してきてくれた。中に入っているチケットに座席番号は書かれておらず、この時点での空き席から選んでチケットに席を書き込んでくれているようだった。聞いてみたら、前から2列目。あまりの良い席にびっくりとして固まっていたら、係りの人が「お友達がオーケストラにいるんでしょ?顔が見える席の方がいいと思って。」と言ってくれた。はぁ、凄い。
開場までまだ時間があるので、外のベンチに腰掛けて、徐々に会場にやってくる人をながめていた。
会場の外には立ち席のテーブルが出ており、ワインやちょっとしたお菓子が販売されている。ここでゆったりとゼクト(発砲ワイン)や白ワインを飲んで、観劇の時間を待つというサービスで、こういう所で洒落ていてヨーロッパ的だ。
訪れる人たちの中には、とてもお洒落をしてきている人もいて、「オペレッタを観に行く」というのは、その演奏やストーリーを楽しむだけでなく、お洒落を楽しみ、開場前の雰囲気を楽しみ、全体をイベントとして楽しんでいる人も多い。ウィーンのコンサートなどに行く度に感じることだが、クラシックコンサートやオペラは、こうした社交の楽しみがあるから、今日まで長続きしているというのもあるんだろうなぁと感じる。
午後7時過ぎに開場。一歩開場に入ると、外側のさっぱりとした外見とのあまりの違いに驚く。
宮廷劇場の名にふさわしい絢爛ぶり。
友人から聞いていた通り、あまり大きな劇場ではないので、一番後ろの席でも十分に楽しめる。2階席からなら、全体が良く見えるし、オーケストラボックスの中も見えるだろう。我々は1階席の2列目なので、舞台を見るには最高の席だが、オーケストラボックスの中で演奏している人の姿はほぼ見えない。好みによって席を購入するのがいいだろうと思う。
来ているのは観光客、しかも年配の白人の方で、ドイツ語圏の人が多いようだった。というのも、オペレッタは台詞の部分も多いので、言葉がわかった方がより楽しめるからだろう。我々はドイツ語がそんなにわかるわけではないので、事前にストーリーを頭に叩き込んでからのぞんだ。
(インターネットでストーリーを紹介してくれている人がたくさんいるので、いくつかのサイトを参考にさせてもらった。キーワードは「ウィーン気質」。
参考:http://www.geocities.jp/music_yomoyama/wiener.htm)
幕が開くと、のっけから愛人と召使の軽妙な会話と歌が始まり、ああ、これがオペレッタなんだとわかる。それにしても、愛人役の女性の張りのある歌声がビンビンと耳に響く。芝居の表情も面白く、具体的に細かく何を言っているのかはわからなくとも、叩き込んだストーリーと彼女の表情から十分に楽しむことができた。
今回の舞台で、私たちの中でヒットだったのは首相役。ウィーンに出張に来ている堅物のドイツ人という役柄で、この人が出てくるだけでコミカルな雰囲気になる。
ひょろりとした体系にどんぐり眼という、そもそもの風貌がおかしい上に、演技もこの役者さん独自の役作りで、彼が出てくるだけで、何だかおかしい気持ちになってくる。
幕間で、休憩に出ていた首相を激写。写真からはあまり面白みが伝わってこないかもしれないが、劇中に写真を撮れないので、これが唯一の写真だ。
「首相、おいしすぎるよね。主役を完全に食っちゃってるよね」と我々は早くも首相のファンになってしまった。
他のお客さんも、ウィーン訛りがちっとも理解できない首相が。愛人の父親(ウィーンっ子)と話す場面では、「一体何をいっているやら???」という展開になるところで、大爆笑。ここが一番面白かったらしく、手をたたきながら大笑いしている人もいた。
正妻と愛人と愛人候補のお針子が出てきて、話がこんがらがっちゃった最後、主役の伯爵が「これはシャンパンの飲みすぎですな」というと首相が「いや、これがウィーン気質ってもんですよ」と言って、シュトラウスの「ウィーン気質」を皆で合唱して幕。って、こんな安易な終焉でいいのか?とストーリーを読んだ時に思ったのだが、舞台上ではそのまんまのことが行われた。あららぁ、本当にこんな終わり方なのねぇ。
歌はオペラの発声法で、曲はシュトラウス、台詞は面白いし、バレエダンサーも出てくる。インド映画もびっくりの娯楽性が大きい楽しい劇だった。帰り道も「楽しかったねぇ、面白かったねぇ」とずっとつぶやいてしまうくらいに、本当に面白かった。
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