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2006.07.21
コンサート(6)市庁舎前広場のフィルムフェスティバル
オーストリア:ウィーン |
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夏のウィーンの風物詩の一つに、、市庁舎前で行われるフィルムフェスティバルがある。(http://www.wien-event.at/)
ウィーンに到着して韓国人宿にいる時、7月1日の朝に、宿のおかみさんから行ってみたらどうかと勧められていた。
日中に早速行ってみると、市庁舎前に大きなスクリーンが掲げられていて、その前に座席が並んでいる。手前には、色々なレストランが料理を出しているブースがあり、テイクアウトした料理を食べられるように椅子とテーブルも用意されて、辺りはお祭りムード。
そういえば、昨年、メキシコの第二の都市であるグアダラハラに滞在していた時、オーストリアとの文化交流期間だった。町の中心にある広場では、やはり大きなスクリーンが掲げられて、同じようなフィルムコンサートが行われていたっけ。
あの時は、生のコンサートではなく、録画のコンサートを皆で見るという企画が滑稽に感じられて、「本場オーストリアなら生の演奏なんだろうにねぇ、メキシコだからフィルムになっちゃうんだねぇ」と話していた。ところが、どっこい。本場がフィルムなんだということが今回わかった。なるほどぉ、この企画をそのままメキシコに持って行ったってわけですね。グアダラハラの時はカラヤンのコンサートだったが、スペイン語読みだと「カラチャン」になる。「えー、今日はかの有名なカラチャンの指揮による・・・カラチャンは世界的に有名な・・・それではカラチャンの演奏をお楽しみください」とカラチャンを連呼していた。著名な指揮者が急に身近に思えてきた。
ウィーンの開場では、各月のフィルムコンサートプログラムが無料でおいてあり、見ると毎晩夜9時半頃から行われている。演目はクラシックコンサートやオペラやクラシックに関する映画など。
今日は金曜日で、為替マーケットの勉強も今週は終了。息抜きに、フィルムコンサートに行ってみることにした。
演目は2006年、今年のニューイヤーコンサート。今年の年初はアルゼンチンのエル・カラファテという所にいて、1日から氷河を見るツアーに出かけていたので見ていなかった。丁度いい。
夜9時過ぎに市庁舎に向かう路面電車は、大勢の人で込み合っていて、市庁舎前は、あまり人がいない昼間とは打って変わって、飲めや食えやの大賑わい。
そんな飲食通りを通ってフィルムコンサートの会場に行くと、ここにも大勢の人がコンサートの開始を待って座っていた。
今回のニューイヤーコンサートは今までとちょっと見る目が違う。ほんのつい先日、自分もあの会場でコンサートを聞いてきたと思うと、壮麗な天井画も舞台も花で飾られた席も見覚えがあり、おとぎ話の世界が現実に見えてきた。
グアダラハラでは、観客はフィルムと一緒になって拍手して盛り上がっていたが、ここに集まっている観光客はやや冷ややかで、「何で映像に向かって拍手しなきゃならないの」という態度で、拍手も起こっていなかった。
しかし、シュトラウスの軽快なポルカや華麗なワルツが何曲も披露され、最後はお決まりの「美しき青きドナウ」、「ラデツキーマーチ」になる頃には、そんな冷ややかな態度を取っていたことをすっかり忘れて、映像といっしょになって手拍子が起こった。
ウィーンフィルの素晴らしい演奏が、映像ということを忘れさせる臨場感を出してくれていたのだと思う。今までウィーンに来て聞いたコンサートの中でとびっきり素晴らしい。当たり前に思われるかもしれないが、ウィーンフィルのレベルの高さを実感した日だった。生で聞いたらいかばかりだろう。9月3日のウィーンフィルのコンサートチケットを買ってある。席は舞台よりも天井の方が近い席だが、それでも楽しみだ。
コンサートの映像が終了して、さ、皆帰ろう、帰ろうと席を立って市庁舎に背を向けたころ、今まで真っ暗だった市庁舎に上の階から順々と明かりがついていった。
そして、BGMは「ウィーナブルートWiener Blut」。日本語では「ウィーン気質」として知られるオペレッタの最後に流れる曲だ。
この粋な演出に、帰ろうとしていた人も振り返り、中には曲に合わせてワルツを踊りだすカップルもいた。
来た時よりも更に盛り上がっている飲食通りを通って、気持ちの良い音楽に送り出されて家路に着いた。最初は「フィルムコンサートなんて」とちょっと侮っていたのだが、なかなかどうしてやってくれる。私たちの中で、少しずつウィーンへの愛着がわいてくるのを感じた夜だった。
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