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2006.07.22 vol.1
王宮博物館とミュージアム・クォーターMQ散策
オーストリア:ウィーン |
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町の中心部にあるホーフブルグ王宮は通りかかったものの、まだ中にある展示物を見ていなかった。
ガイドブックを見ると、王宮はモデル散策ルートの一つに含まれているに過ぎず、マドリッドやフランスのヴェルサイユのように、そこだけに時間を割くような書き方がされていない。しかし、されど王宮。何かあるに違いないと、朝お弁当のサンドイッチを作って王宮に向かった。
美術史美術館のある側の入り口から入って、大きな門をくぐると、右手に立派な建物が見えてくる。これが国立図書館だそうだ。
図書館を右手に進むと、メインの建物の真ん中にくり貫かれた通路を通ることになる。
この通路の先は、もう王宮の出口。あれあれ?いわゆる「王宮」を見学するにはどこに行けばいいんだろう。建物の柱に掲げられた地図を見ても、○番は国立図書館、○番はスペイン乗馬学校、○番はシシー(エリーザベト)ミュージアムと個別の博物館、美術館はあるものの、「王宮」ずばりが見つからない。
早くもショートテンパーな夫が切れ始める。「だからガイドブックに王宮はどこだって書いてあるの?こんな地図見ていても埒があかないでしょう。ガイドブック開けよ、ガイドブック」。なぜ、こんな所で切れるのかわけがわからん。栄養は十分すぎるほどちゃんと取っているはずなのに。同じく栄養十分の私も切れる。「じゃぁ、ガイドブック見てみなさいよ、どこにそんな事書いてあるのよ!」とガイドブックをグイと夫の前につきだした。
つまる所、ホーフブルグ宮には、他の都市の王宮のような「王宮見学コース」というのはないのだ。しかし、それに当たるのが、カイザーアパートメント(皇帝居室)、シシーミュージアム(皇帝フランツの奥さんエリーザベトの愛称がシシー)&シルバーカマー(銀器博物館)Kaiserappartements,
Sisi Museum & SilberKammerという展示コース。まぁ、正確といやぁ、正確に展示物の内容を示しているんだけど、夫婦喧嘩のネタになるから、まるめて「王宮博物館」という名称にでもしといてもらいたかった。
行くべき所が定まった夫は、嵐の後の晴天のようにケロっとして、「じゃ、いこーか」と上機嫌に前を歩いていく。この転調ぶりは毎度のことだ。
建物の真ん中を貫く通路の左手から入って、窓口でチケットを購入して入場(一人EUR8.9)。時刻は11時近かった。
ここでも無料でオーディオガイドの機器を貸し出してくれる。日本語の解説が聞けるのでとても便利だ。最初のシルバーカマーでは王制が廃止されてから、王家で使われていた食器を展示しているコーナーで、陶磁器、銀器、リネン類などが山ほど展示されていた。
陶磁器や銀器を製造しているメーカーの展示室と違うのは、これらの食器が実際に使われていた物だったということだ。銀の皿をよく見ると、ナイフの傷跡も残っていて、そういう意味では、歴史を感じさせてくれて面白い。
しかし、後半に入るまでは、王家といってもかなり地味な食器類が多く、後半にフランス王朝などから送られてきたセーブルや、ドイツから送られてきたマイセンのような華やかな食器が出てくると、やはりこちらの方が見ごたえがある。
特にイタリアに発注して作らせたというセンターピース(食卓の中央に置く飾り)は、驚くほど豪華絢爛だった。
実際には、このセンターピースに花やボンボンが飾られたということだ。
正直、率直な第一印象は、「これじゃ、ご飯を置くところがないじゃない」ということ。センターピースがテーブルの領域の大半を占めているように見える。ご飯がおいしくないから、品数が少ないから、絢爛豪華な装飾品で食卓を飾っているのかなぁ、なんて思いながら見ていた。後からの説明で、晩餐会には13品くらい料理が出るという話だったので、その想像は正しくないってことがわかったけど、私とては、ボンボンを見ながらご飯は食べたくないあなぁ。食文化に対する「豪華」の尺度が違うという点が面白かった。
食器のコーナーだけで、説明を聞きながら周ると45分かかった。ここで一旦、お庭でお弁当休憩しようと思ったのだが、休憩するにはオーディオガイドの機器を一度返却しなきゃならない。このまま持って出るとアラームがなっちゃうらしいのだ。
ところが、「今日は人出が多いのから、オーディオガイドは出払っていています。一旦返却すると、もう借りられないかもしれないので、このまま持っていた方がいいと思いますよ」と博物館の人が教えてくれた。博物館内にはお弁当を食べられるような所はない。ということで、空腹ながらも、引き続き見てしまうことにした。
お次のコーナーはシシーミュージアム。映画にもなったこの王妃の人生をまとめて展示している所だった。少女の頃からイタリアで暗殺されるまでの彼女の人生を年月をおって説明してくれる。肯定的でも否定的でもなく、客観的に説明してくれているのがいい。アメリカのハリウッド映画で歪んだシシー観(可愛そうな悲劇の王妃)を正そうとする目的なのかもしれない。解説の中で、「シシーは、その死後になってオーストリア人も注目するようになったが、生前は王宮を不在にすることも多く、人々からあまり感心を持たれていない王妃だった」という説明があった。
後日、オーストリア人の友人宅を訪ねた時に、友人とその両親に「王宮のシシーミュージアムに行ってきましてね」と話をしたのだが、彼らは王宮でそんな展示が行われていることすら知らなかった。現代においてもシシーに対するオーストリア人の関心ぶりは彼女の生前の頃と対して変わってないんじゃないかと思ってしまった。シシー、シシーと騒いでいるのは、どうも外国人ばかりのような気がする。
シシーミュージアムに引き続き、皇帝の居室の展示。シシーの旦那さんだったフランツ・ヨーゼフは質素な生活を好んでいたということで、ヴェルサイユ宮殿などと比べると、本当につつましい。これが「王宮見学コース」と銘打っていない大きな理由だろう。しかし、こうしたつつましさもオーストリアという国を知る上で、貴重な展示だと思う。やはり「王宮見学コース」っていう名前にしてもいいんじゃないかなぁ?
王宮の庭でお弁当を食べたら、お次はミュージアム・クォーターMQ。美術史博物館を抜けた向こう側にある。
この日は特に扱った。王宮からほんの数分歩いただけなのに、サンドイッチ食べすぎもあって、夫はフラフラになってしまった。クーラーのきいたクンストハレの建物の中の椅子に座って休憩。ここの床が面白い。
近くで見ると、手書きの曲線がウネウネしているだけのように見えるのだが、遠くに目を移すと床に敷いた布に皺が寄っているように見えるのだ。
どうやってこれを作ったのか。皺の寄った布を写真に撮影して、コンピュータで模様にしたのを、実際の床に書いてみているんだろうけど、とても興味が引かれた。
結局MQはこの椅子で休んだだけで、今日はもうギブアップ。ここにある美術館は又機会があったらこようということで、今日の散策を終了。暑い、それにしても暑いオーストリアの夏の一日だった。
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