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2006.08.16 vol.1
フィルムコンサート(カール・ベームのレクイエム、アイーダ)
オーストリア:ウィーン |
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ウィーンの市庁舎前で行われているフィルムコンサートは7月、8月、9月初旬までの夏の期間に行われている。
ウィーンに滞在して1ヶ月半が経ち、ウィーン市内で行われている生演奏のコンサートにもしばしば足を運んでみたが、観光客相手の生演奏の多くは、音楽そのものを楽しむというよりは、ハプスブルク家などが残したウィーンの素晴らしい建築物のコンサートホールを体感する方に主眼が置かれている。
一方のフィルムコンサートは、生演奏ではない録画だけに、演奏そのものの質の高さに焦点を絞っているので、レベルはとても高いと感じた。
ということで、8月に入ってからはできるだけフィルムコンサートに行くことにした。毎晩、夜9時前後から1時間半から長い場合は3時間くらい行われている。8月に入ってから天気がくずれがちだったので、毎日というわけにはいかなかったが、8月前半でかなりの作品を見ることができた。
クラシックの大ファンというわけではないが、こうも毎日素晴らしい演奏を聞いていると、やはりクラシック音楽は素晴らしいねぇと実感。また、指揮者やオペラの内容など知れば知るほど楽しくなってくるのも魅力だ。このスケッチは、そんな音楽との出会いを忘れないための備忘録でもある。
○8月2日(水)
演目:レクイエム Requiem
作曲者:モーツァルト W.A.Mozart
指揮者:カール・ベーム
オーケストラ:ウィーン交響楽団 Wien Symphoniker
ザルツブルクの祝祭劇場Festspielhauseにもその名のホールがあるくらい著名な指揮者、カール・ベーム。中でも、「モーツァルトのレクイエムは、モーツァルト最期の心底をのぞかせる様な深い解釈により評価が高い。」(Wikipedia カール・ベームの項目より)とある。
コンサートはウィーンのピアリステン教会Piaristenkircheで行われたものだそうだ。
レクイエムは、映画「アマデウス・モーツァルト」で、仮面を被った注文主からレクイエムの作曲を頼まれたモーツァルトが、半狂乱状態になって作曲する場面で使われていたと思う。
あの映画の演奏に比べると、カール・ベームはもっとテンポがゆっくりとして重々しい。教会の雰囲気と相まって、荘厳さに満ちている演奏だった。
7月からの晴天続きの最期とあって、人出は頂点に達していて、9時からの演奏なので8時半にいったら既に席がなく、一番前の地面に座って鑑賞することになった。私たち以外にも地面派多数。中にはちゃんと寝袋を広げて、寝っころがって見ている人もいた。
○8月4日(金)
演目:オペラ「アイーダ」AIDA
作曲者:ベルディ Giuseppe Verdi
演奏場所:St. Margarethenの野外オペラ劇場
出演者:Eszter Sumegi (Aida), Janusz Monarcha (Konig), Kostadin Andreev
(Radames), Cornelia Helfricht (Amneris), Pier Dalas (Ramphis), Igor Morosow
(Amonasro)
録画年:2004年
今日はアイーダ、アイーダ。以前、東京の初台にあるオペラシティーでアイーダの衣装展というのをやっていて、エジプトのゴージャス衣装だった記憶があるが、内容はさっぱり知らなかった。
事前に調べてみると、エジプトとエチオピアが戦っている最中の話。エジプトに捉えられて王女付きの奴隷となっているエチオピアの王女アイーダと、彼女の身分を知らないエジプト軍の若き指揮官ラダメスは相思相愛にある。ところがラダメスは、エチオピア征伐の司令官に任命されてアイーダの父と戦うことになる。やがてラダメスは勝利を収めて帰国。同時にアイーダの父、エチオピアの王は捕虜として連れて帰ってこられた。父娘が密かに対面し、父はアイーダに恋人のラダメスから次のエジプトの動きを探り出すように命令する。アイーダがラダメスから次の作戦を聞き出した所で父登場。愕然とするラダメス。父と娘はラダメスと逃げようと誘うが、ラダメスは国に残り死刑の判決を受けることになる。死刑のために牢獄に入ると、そこには愛するアイーダが。そして2人は一緒に死んでいく。という悲劇だった。
この話の中には、ラダメスに思いを寄せるエジプトの王女アムネリスも大きな役割で、アイーダ、アムネリスともに20歳の美しい女性ということになっている。さぁ、どんな歴史絵巻を見せてくれるのか。
会場は、地図で確認するとウィーン南西に車でハンガリー国境方面に1時間行った所あたりのようだ。
舞台の後ろに遺跡のような大きな石の柱が立っていて、それが舞台をとても広く見せていた。総勢400人を超える出演者に、象まで出てくるというおおがかりなセットで、話のスケールに引けをとらない舞台演出だった。
主役のアイーダ |
恋人のラダメス |
エジプト王女のアムネリス |
最初に登場する女性は、エジプト王のお妃かと思ったら王女のアムネリス。傍らにひざまずく妙に体格のいい女性がアイーダ。そして、恋人のラダメスは軍隊の司令官なのに、ぽっちゃりとした色白のお坊ちゃん。濃い目のシャドーを頬に塗って、細面に見せようという演出も、会場で見ている分にはいいのだろうけど、現代映像技術の前においてはバレバレになってしまう。
ビジュアル的には想定通りにならないのがオペラなのだ、とこの時始めて知った。
しかし、難しいアリアを大声量でどんどんと歌いこんでいくのをみるうちに、見た目の第一印象とは違ってイメージの登場人物に近づいて見えてくるのが、この人たちの素晴らしいところだろう。
後で人から聞いた話では、アイーダの役は、大抵体格のいい女性になるそうだ。確かに、全編大声量で歌いまくりだから、なまじの体力の人には勤まらないだろう。
全編150分の上演時間だが、ストーリー、演出、音楽、歌と、全てにおいて壮大なスケールというキャッチコピーがぴったりなオペラで、飽きることがない。いやー、凄かったアイーダの声。
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