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2006.08.24
シュタインヴァンドクラムSteinwandklammでトレッキング
オーストリア:ウィーン |
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友人から今度の休みにお父さんとハイキングに行くのだが一緒にどうかとお誘いを受けた。
彼女の住んでいるヒュッテルドルフは裏手に森林が広がり、ハイキングコースなどがある。マウンテンバイクが大好きな彼女は、休みになるとマウンテンバイクの仲間と走り回っているそうだ。
「今度一度、家の近くにハイキングに行こう」という話は前から聞いていたので、その話だと思って、「行く、行く」と返事をしておいた。
朝6時起床、朝食を済ませ、昼用のサンドイッチを作り、7時に家を出た。待ち合わせは8時に彼女の両親の家。最寄の駅に7時40分には到着してしまい、ううう、早すぎ。駅のベンチで仮眠をとることにした。あーあ、あと30分遅くても良かったなぁ。
8時きっかりにご両親の家に到着。前回訪れたときに食事した気持ちの良い庭に、再び通された。
今回お母さんは不参加だが、ケーキを焼いていてくれた。
「サンドイッチはいる?」「ヨーグルトはクーラーボックスに入れたからね、ええっとスプーンも入れなきゃ」「あなたたち、レインコートは持っているの?」「ちょっと、このトレッキングシューズがサイズが合うなら、こっちに履き替えなさい」と、隊長ぶりを発揮。
モニカは?と見ると、ハチミツを口の周りにつけて、朝食中。お父さんは着替え中。私たちはお庭でゆっくりと待たせてもらうことにした。
8時53分、準備完了。「こんな髪ボサボサなのにぃ」とお母さんはクーラーボックスに隠れるのもお構いなしに、出発前の記念撮影だ。行ってきまーす。
裏山に行くには、随分重装備だなぁと思ったら、車はウィーン市内に戻り、高速に乗って西に向かい始めた。先日ヴァッハウで訪れた時に通過したSt.Poulten方面に向かっている。
やがてマイヤーリンクMayerlingで高速を降りたのだが、そこから下の道を走り、いくつかの村を超え、やがて細い道路の周りは森を走るようになった。一体、ここはどこ?
約1時間ほど後の10時10分、到着したのはヤウゼンシュタシオーンJausenstation。ここからシュタインヴァンドクラムSteinwandklammをトレッキングするコースらしい。Steinwandklammは直訳すると「石の壁の峡谷」という地名の所だった。ガイドブックをひっくり返しても、全く出てこないこの土地は、バーデンの西側にある。
車だけで行ける所なのだが、興味がある人がいるかもしれないので、記録しておく。ウィーンから高速のA21に乗り、ハイリゲンクロイツHeiligenkreuzの先で高速を降りてB11で南東に下っていく。B18にぶつかったら左折して、Weissenbach
an der Triesting村まで行き、そこから右折してFurth an der Triestingという村に向かう。トレッキングの入り口は、その村から更に奥に入ったガストハウスJausen-Station
Reicherになる。
参考:Furth an der Triestingの地図が見られるサイト
ガストハウスの駐車場に車を停めて、10時10分出発。
ガストハウスを背にして右手に「Steinwandklamm」と矢印型の木の道しるべがある所から入っていった。
森の中の道をしばらく行くと、まさに岩の壁に挟まれた渓谷の入り口に到着。
写真じゃ迫力が伝わりにくいのだが、岩と岩の間にじぐざぐと橋がかけられていて、だんだんと登っていくようになっており、面白い風景だった。
これだけで、なかなかアドベンチャラスだ。
ゆるやかな階段状になったじぐざぐに誘われるまま、上へ上へと登っていく。大きな岩の際を通り、小さな小川の横を通り・・・。
気づいたら、結構上の方まで登ってきていた。
父「ロッククライミングの真似事をするから写真撮ってご覧!」
娘「うわぁ、面白そう。パパ、ちょっと待って、いや、もうちょっと寄って撮った方が迫力あるかなぁ」
父「は、早く。手がだんだんしびれてくる・・・。」
この親子を見ているだけで結構おもろい。オーストリア人は自然と遊びなれているのか、この親子が独創的なのか。私たちは、別に誰と競争しているわけでもないのに、トレッキングコースの途中に山があると聞くと、頂上に向かうのを無意識のうちに目標にしてしまうらしく、とにかく頂上へと一目散に歩いてしまうようだ。この親子を見ていると、途中の草花に目を止め、小川の流れに耳を澄まし、壁があればちょっと登ってみる。
トレッキングというのは、本来そうして自然と親しみながら時間を過ごすものなのだろうが、どうやら私たちは日本の会社員としての体質から抜け切れていない。南米でトレッキングした時は、途中の経過があまりに過酷だったので、こういうやり方でもよかったが、今日のようなトレッキングだったら、もっと違うスタイルで楽しみながら行くのがいいんだろうなぁ。勉強させてもらいました。
途中、左手の岩壁にかかっているはしごをよじ登るコースと、そのまま進むコースの二手に分岐する所があった。ここで左に行くのはちょっと上級向けだと書かれてあったので、私たちは迷わずまっすぐ。後で知ったのだが、ここで左に行くと、岩壁のはしごをよじ登ること数回、子供でも行けるが、冒険コースになっていたようだ。
参考写真:
http://www.mamilade.at/steinwandklamm/1014800-9-15.html
http://www.mamilade.at/steinwandklamm/1014800-9-16.html
http://www.mamilade.at/steinwandklamm/1014800-9-20.html
後は急な坂道を登り、左に小さな橋、まっすぐ進めば今まで通りの坂道という分岐点に到着した。
ここでお父さんの提案は、左手の端を渡って左に折れてまっすぐに行く、Turkenlochトルコ岩に行ってみようということだった。ここから300mくらいの先に、ちょっとした展望台的な所があるので、そこまで行ってここに引き返し、続きのコース、つまりAlmesbrunnbergという山(1079m)を目指そうという提案。いいですよぉ。行きましょう。
因みに、この分岐点の下にある注意書きには「川の流れを妨げる行為は慎んでください」と書いてあるそうだ。子供たちが、川に小さなダムを作ったりしないようにということだそうが、こうした小さな注意が自然を守っていくことの教育につながっているのだろう。ウィーンでさえ水道水がおいしく飲めるオーストリアらしい注意書きだ。
橋を渡って左手に折れ、しばらく進むと、階段があり上りきった先から洞窟に入るようになっていた。さぁ、この先には何があるのか?
うっ!
洞窟の中は何と真っ暗だった。ここで行き止まりなのか?そんなはずはない。後ろを振り返ってお父さんに聞くと、その先に階段があるはずだという答えだった。
でも、真っ暗で何も見えない。フラッシュをたいて写真撮影してみると、確かに先に階段が写っていた。そんなミステリアスな洞窟を、右手の鎖を探りながら進むと、鎖は階段の手すりへと変わり、足元に段差を感じた。数段登ると明かりがほのかに見え、洞窟を抜けられるようになっている。へー、こんな風になっているなんて!
岩のトンネルを潜り抜けると、岩にへばりつくようにできた急な階段になり、それを登ると、視界が開けた所に出る。ここが展望台というわけだ。
歩き始めて1時間。ここで1回目の休憩を取ることにした。男子は腹が減ったとお弁当のサンドイッチを1つだけガブリ。女子は、お水をゴクリ。
座っているちょっと右手の目の前には、下界の景色が広がって気持ちのよい所だった。
この先150m進むと、何とこんな山中にガストハウスがあるということだったが、我々はここから引き返して元のコースにもどることにした。
こんな山中まで入ってきて、更に上り坂。なのに、上りきってみると、ポツポツと民家が並んでいる。もちろん民家といっても密集して建っているわけではなく、広大な前庭の奥の方に家があるという感じで、道沿いにある柵で私有地なのだと気づくくらいに広い。
結構な坂道。 |
私有地の柵には「私たちはおとなしい犬なので噛み付きません。でもこの柵を越えてこようとする人に対してはわかりませんよ」という注意書きが。 |
野生のミント。葉をちぎるとフレッシュなミントの
香りがする。 |
小さな花が落ちてこんな緑のボールになった
面白い草花。 |
この民家のある辺りに、また分岐点があり、我々はAlmesbrunnbergを目指しているので、左折。
今自分達がどの辺りにいるのか、さっぱり検討がつかないが、12時を過ぎてきて、だんだんお腹も減ってきたなぁ。
今度はお父さんは、枯れ枝を拾って「森の王様ぁ〜」とか言って遊び始めた。
杖をついた年寄りの真似をして「うぅぅ、わしゃもう歩けんですわぁ」と言ってみたり、「はっはっはー、よく聞けぇ〜、私は森の王様ダァー」と演じてみたり、とにかく一番元気なのだ。そんなお父さんに、「あのー、私、腹が減ってきたんですけど」と言ってみると、じゃぁ、次に開けた所に出たらお弁当にしようということになった。
この先に二手にわかれる道があり、左に進んだのだが、頼りになる緑の印が(大抵木の幹にマーキングされてきた)見えなくなった。こりゃ、道を間違えたようだ。引き返そうとしたら、スキーストックと直径20cm、高さ20cmもあるきのこを2本持った女性がこちらに向かって歩いてきた。彼女も道を間違えて夫とはぐれてしまったというのだ。かなり焦っている。言っていることも支離滅裂だったそうだ。言いたいことだけ言って、物凄いスピードで去っていってしまった。焦っている割には、きのこは採取している辺りが何ともおかしかった。
ということで、来た道を引き返し、分岐点で右手に坂をあがっていく道へと入りなおした。ここから少し進んだ所で緑の芝生が青々と広がる丁度いい場所を発見。早速お昼ごはんにすることにした。
天気は良かったのだが、芝生はしっとりとしていて、ピクニックシートを持ってきて良かった。お昼ごはんの後は、みんなでピクニックシートに寝そべって仮眠。
辺りはシーンとして、芝生に潜む虫の声しか聞こえない。ああ、いい気持ちだなぁ。あと5分、あと5分。
ええっとぉー、頂上まで行っていないのに、もう午後2時なんですけど・・・。ちょっと空も雲が出てきて、お父さんが「もう動かないとまずねぇ」と号令をかけて、再出発することにした。
ここからトレッキングコースは頂上にいかずに、グルーッと山の中腹を回りこんで出発点に戻ることになっていた。しかし、折角きたのだからコースをはずれて頂上を目指したい。ということで、急遽、獣道のような細い道を入って山頂を目指すことにした。
人一人の幅で草が倒れている道をたどって行くと、10分ほどで山頂らしき所に到達。うーん、想像していたことだが、辺りは木立に囲まれて、のっぺりとした山頂からは、感激するような風景は見えなかった。
あははは。でもとにかく今日の目的地の山頂到達だ。山岳パーティーはここで成功を祝して、硬い握手で登頂を祝った。
獣道を戻り、トレッキングコースに入ってからはほぼ下り坂。途中また道を見誤って、トレッキングコースを迂回するように走る自動車の通れる道を歩いてしまったりしたが、何とか出発地点近くのヤーガジッツJagasitzというガストハウスまで到達。
ここにたどり着くまでによく見かけたキノコは「パラゾール」と呼ばれるキノコで、これもなかなかおいしいのだそうだ。途中で道に迷っていた女性が手に持っていたのは、このパラゾールが開いた状態になったもの。巨大なしいたけの形になってから採取して食べるのだそうだ。
というのも、傘が開いていない状態のパラゾールと、非常に良く似た形のきのこがあり、傘が開いていないとどちらのきのこか区別がつかないため、危険なのだそうだ。パラゾールは形が開いたパラソルになってから採取する。これがオーストリア人の常識らしい。後に出会ったオーストリア人も同じことを言っていた。
ヤーガジッツから出発地点までは、黄色のサインに従って歩く。ガストハウスの前にある小さな公園の先にある急な坂道を左に下っていく道だ。
こうして午後4時42分、出発してから約6時間半かけて、出発地点に戻ってきた。3時間くらいのトレッキングだと聞いていたので、かるーく参加してみたが、寄り道と休憩が多かったとはいえ、なかなか本格的に歩いてしまったようだ。
ガストハウスの庭で飼われているヤギが、「で、どうだった?」と興味深げな目でこちらをみつめていた。
「そりゃ、疲れたさ!」と答えて、我々はガストハウスになだれ込んでビールを注文。最近飲んだ中で、一番旨いビールだった。
あひるが飛び出してくるのどかな村を抜けて、車でウィーンまで約1時間。
お父さんも疲れているだろうに、わざわざ我々の家まで送ってくれた。
今日は、オーストリアの自然を本当に満喫できた。世界に名だたるトレッキングコースってわけじゃないけど、緑がいっぱい、花やきのこや小川に囲まれてのハイキングで、この国の自然と遊ぶことができた。
オーストリアの身近な自然、そしてそれをどうやって楽しむのかというお手本を見せてくれたモニカ親子に本当に感謝。それにしても、旅先でちょっと出会っただけの縁で、こうして一緒に遊んでくれるなんて、オーストリア人のホスピタリティーには頭が下がる思いである。
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