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2006.09.09
オペラ座で3回連続オペラ体験!
オーストリア:ウィーン |
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7月、8月と市庁舎前に設えられた大きなスクリーンで、数々の名コンサート、名オペラを毎晩無料で楽しんできた。オペラに全くなじみのなかった私達だが、現代有名なオペラ歌手の顔を大写しのスクリーンで見ているうちに、すっかり我が家はオペラブーム。音楽をやっている学生と知り合いになって、様々な知識をつけてもらったのも大いに影響した。
そして、いよいよ9月にオペラシーズンの開幕を迎えた。7月に購入しておいたチケットは大切にバッグに入れて持ち歩いて(持ち歩かない方がいいと皆に言われたが)、時々取り出してニンマリしていたために、すっかり汚れてきちゃなくなっていた。このちょっと汚れたチケットで、これから我が家のオペラウィークが始まる。
オペラチケットの購入をどうしたのか、どのくらいの値段はどんな舞台の見え方なのか、たった3回、されど3回の体験から得た情報をご報告。
まずは、チケットをどうやって買ったかって所から。
今回は、9月3日「セビリアの理髪師」、9月7日「運命Osud」と「妖精ヴィッリLe
Villi」の2本立て、9月8「ラ・ボエーム」を買ったんだ」けど、最初の「セビリア」だけはインターネットから予約。どうしていいかわからなかったので、とりあえず一番安い席(EUR9)を2枚予約してみた。
参考:オペラ座サイト(日本語版)
支払いはクレジットカード。すると、発注番号が書かれた折り返し確認のメールが来る。この番号と名前を言うと、チケットを発券してくれるのだ。どこで発券してもらえるのかがわからなかったので、メールで英語で問い合わせた所、すぐに親切な内容のメールが帰ってきた。対応はとてもいい。当日ならば、公演の1時間前から開くアベントカッセAbentkasse(夜の窓口)で発券、事前に発券するならオペラ座の昼間の窓口か、オペラ座の向かいにあるボックスオフィスに行けばよい。
私たちは事前に発券したいと、ある日の昼間、オペラ座向かいのボックスオフィスに行った。発注番号と名前でサーっと印刷して渡してくれた。そこで、もっとチケットを購入しておこうと、他の2本も購入することにした。「9月7日のチケットEUR9で一番いい席を2枚ください」というと、係りの兄さんは、「EUR9のチケットだと舞台は見えませんよ。音だけ聞きたい学生さんならともかく、オペラを楽しみたいのなら最低EUR25じゃないと難しいですね」と言う。何?だって今EUR9のチケット買っちゃったじゃない。でもまぁ、兄さんが営業トークしているとも限らない。ここは一つ、EUR9とEUR25の違いを試してみようってことで、OsutとLe
VilliはEUR25の席、ラ・ボエームは安い席は売り切れてしまって、現在一番安いのがEUR44ということで、それを2枚購入した。
オペラのチケットは、演目によってAカテゴリー、Bカテゴリーに分かれていてチケットの値段が違うが、8段階に分かれていることに変わりはない。最低はEUR9あるいはEUR10で、そこから1ランク上と2ランク上のチケットを買ったことになる。さて、どーなることやら。
○「セビリアの理髪師」
音楽学生いわく「アルマヴィーヴァ伯爵役のテノーラーは必見(聴)です!」だそうだ。
そのテノーラーの名はオトカー・クラインOtokar Klein。
ストーリーは、「フィガロの結婚」の前作にあたり、フィガロも登場する。フィガロというと「フィガロ、フィガロ、フィガロ、フィガロ、フィーガロー」というフレーズを思い出す人が多いが、この台詞は「フィガロの結婚」じゃなくて「セビリア」で出てくるのだ。
ストーリは、Wikipedia「セビリアの理髪師」に譲るとしよう。
オトカー・クラインは高めのいい声。セビリアでは、伯爵とその恋人のアリアで、コロラトゥーラというコロコロと音程が変わる曲が嵐のように多用されていた。ちょっとやり過ぎな感もあるけど、よくあんなにこぶしを聞かせて、しかも美しい声で歌い続けられるものだと、めちゃくちゃ感心した。全体としてコメディー調なので、会場から笑いも起こり、これはとっても楽しい作品だった。
EUR9の席ステージから4番目から最高に身を乗り
出してこの程度の見え方。 |
たーだーしー!チケット販売の兄ちゃんの「EUR9じゃぁステージ見えません」はブラフじゃなかった。本当に見えない。どんなに身を乗り出してもせいぜい半分しか見えない。深く座ると全く見えない。それもそのはず。私たちの席はギャラリエといわれる6階?一番上の席の、ステージから3番目と4番目だったのだ。5番目から9番目まで座席が空いているのをいいことに、さりげーなくずれて8番目と9番目までずれたので、ちょっとましになったが、それでもきつかった。あーあ。よりによってセビリアをEUR9にしてしまったのは、本当に惜しまれた。もっとちゃんとした席で、もう一回見たい作品だった。
ちなみにこの日は、友人の学生たちも立見席で見る、ということで幕間に、会場の中央階段の絨毯の上で落ち合う約束にしていた。ところが、席についてあたりを見回すと、同じ階の中央あたりで手を振っている人がいる。同じ階だったからすぐに出会えてしまったというわけ。
立見席はカテゴリーAの場合はEUR3。彼女達の狙うのは、オーケストラの音が一番良く調和して聞こえる最上階のど真ん中。立ち見でこのポジションをゲットするのに2時間並んだという。2時間並んでオペラが3時間。ふー、大仕事だ。しかし、EUR9よりもずっと舞台が良く見える位置なので、脚力に自信があるか3脚椅子を持参している人にはとってもお勧めする。
幕間に友人と落ち合うと、「それでは特等休憩室にご案内します」と更に1つ上の階に連れて行ってくれた。
客席はない階なのだが、ソファーがいくつか置いてある休憩場所になっている。彼女達は何とおにぎりまで用意していてくれた。生まれて初めてのウィーンのオペラ座。おにぎり付き。いやー、素晴らしい。しかも中には紀州の梅干入り。感激でございました。
おにぎりを食べた後は、館内ご案内。2階には魔笛をモチーフにしたゴブラン織りの絵が壁を埋め尽くすロビー。マーラーが演奏旅行に持ち歩いたという小さなピアノも展示されている。同じフロアーからは正面玄関上にあたるバルコニーにも出られ、シャンパングラスを片手に夜風に吹かれながら今日のオペラの感想を語り合う紳士淑女の姿が見られた。
幕間の後は後半戦。セビリアは本当に楽しい作品。セビリアを見てからフィガロを見ると、なんでフィガロの結婚をお医者さんが阻止しようとしていたのかが腑に落ちるので、尚面白いね。
○「運命Osud」と「妖精ヴィッリLe Villi」
こちらのお勧めは「妖精ヴィッリLe Villi」の妻を裏切る旦那を演じるホセ・クーラJose Curaだそうだ。
「運命Osud」はレオシュ・ヤナーチェク作曲なのだが、ストーリーがメチャクチャかつ落ちがなく、面白くない。「妖精ヴィッリ」は結婚式を控えた男性が妻を置いて別の町に用事ででかけ、そのまま浮気して戻らなくなった。女に捨てられて戻ってきた夫は、妻が悲しみのあまり死んでしまったことを知る。家に戻った夫の前に、妖精となった妻が現れ、夫を死に至らす。というストーリー。「運命」を見た後では、ストーリーも曲もわかりやすくてホッとした。
救いはいずれも舞台演出がとても面白かったこと。斬新な衣装や舞台設定はファッションショーとか現代建築を見るのと同じ楽しさがある。
席は昨日よりはましなEUR25。同じくギャラリエという最上階の真ん中より一つ舞台に寄った所。
でもちゃんと座ると舞台3分の1が切れるので、ちょっと乗り出さないといけない。うーん、この値段の席もどーなんでしょう。
ホセ・クーラは腐ってもホセ・クーラと言われているそうで、顔と声がいい。しかし、この席からではオペラグラスなしには顔は判別できず、声のいい小太りのおっさんにしか見えなかったのは残念だった。
○「ラ・ボエーム」
これはパリが舞台。芸術家をめざすボヘミアンの青年4人が暮らす所に、お針子のミミがろうそくの火を貸してほしいと訪ねてくる。たまたま1人でいた詩人のロドルフォは早速恋に落ちる。しかし・・・後のストーリーはWikipedia「ラ・ボエーム」に譲るとして、この作品はフィルムコンサートで見たのでストーリーやメインの曲は頭に入っていた。
プッチーニはウワーッと盛り上がる曲調で泣かせるのが上手いと思う。この話も悲劇で、美しいメインのメロディーが出てくるたびに、ウルウルしそうな心のざわつきを感じさせられる。華やかな場面が少ないのだが、しっとりとして人気があるのがわかるオペラだ。
今日は最後のオペラにして、購入した中では最高(といっても下から3番目、上から6番目なのだが)の席。どーでしょうか?席を係りの人に訪ね歩いて、結局3階だということがわかった。側面の席だけで数えれば2階だ。おおお、大出世。今まで天井とお友達だったのに、今日は地上の方が近い。
しかも、ボックス席なので、こういう扉の並ぶ一つを開けて中に入るんですねぇ。
いやー、いよいよオペラに来たって感じが高まる。そうかぁ、オペラに来たという楽しみを味わえるのは、このクラスの席からなんだなぁ。
で、扉を開けると、おおおおおーーーーーーっとぉ、前室がある。小さいながら、席の手前に洋服をかけるフックと壁鏡と椅子の置いてある空間があるのだ。しかも壁が赤。
ここでコートを脱いだり、幕間にロビーに出る前にちょっとお化粧直ししたりできるのだろう。社交界的この空間に、我々は大興奮だ。
幸いにも同じボックスの人はまだ来ていない。きゃー、社交界みたい、きゃー、前室があるなんて。と、出たり入ったり、写真とったりして、はしゃぎまくりだった。
この前室の向こうが観劇する場所。最前列3人、2列目と3列目が2人ずつと合計7人が座る。私たちは2列目だ。ここまで知るとちょっと興奮が冷める。7人分にしちゃー狭い。最前列の席のチケットを手にした巨大な白人のお父さんが、ヒェーヒェーと鼻息も荒く入って来た時に、その心配は更に高まった。椅子は普通の椅子なので自由に動かせる。まず太っちょのおっさんが座れるように私の椅子を引く。で、ちょっと左にずらす。これでおっさんもゆったりと座れるし、私も人と人の間から舞台が見えるようになった。それでも狭いな。これがEUR45のチケットの実体だ。
しかし、舞台への角度はバッチリだ。どこも死角がないので、全ての舞台の動きが見える。ここに至ってやっと満足できる席になった。私たちが満足できる席、それは下から3番目ということになる。今後、機会があったら次のランクも試して、コストパフォーマンスを確認してみたいと思う。
席が良いと気分も舞い上がる。今日は幕間にビールでも飲んでみよう。
1本EUR3.6はさすがにオペラ座値段だが、この値段でかなりハイソな気分になれるなら許容の範囲だ。おつまみは、友人からもらったプレッツェルの子袋。通りがかりの紳士淑女が「お、気の利いたおつまみ、それはどこで売っているの?」という目つきで(本当は「ま、そんな物持ち込むなんて貧乏くさい」という目つきかもしれないが、解釈は自由だ)過ぎ去っていく。
こうして3回のオペラは、くしくも徐々にチケットの値段が高くなっていったので、いろいろな席を経験できることになって、とても良かった。
ウィーンにいて、夏の間のフィルムコンサートと生のオペラの両方を楽しんだ。
フィルムコンサートは既に終了したオペラから選りすぐりのものばかりを見せてくれる。カメラワークで歌手の表情もばっちり見える。飲み食いしながら見られる。椅子の上でだれた姿勢で座っても恥ずかしくない。何といっても無料というのがアドバンテージ。
一方のオペラ座は、始まる前、前半、幕間、後半、カーテンコールという時間があるので、そういう時間含めて楽しめる。おしゃれしたい人はどこまでもおしゃれしてよし。幕間にはウィーンのハイソサエティーの社交の場を生で見ることができる。会場がすばらしい。というのがアドバンテージ。しかし、公演によっては夏休み明けでオケがぼけぼけだったり、歌手の調子が悪いという不調公演を見る可能性もある。席はかなりお金をかけないと肉眼で表情までみるのは不可能だろう。
ということで生のオペラを絶対に見るべきだという感想はない。私たちは8月、9月と両方みることができたので、今回は初めての体験としてはなかなかよかった。しかし、オケが休み明けでぼけているという感想は否めなかったので、もしかしたら6月、7月の滞在にして、こなれたオケで生を楽しみ、後からフィルムコンサートを見るという順番の方がいいのかもしれないと思った。
いやー、それにしても、こんなにオペラが魅力的だとは思わなかった。かねてより嗜みとしてオペラくらい少しは知っておきたいと思っていたが、知れば知るほど奥が深い。演じている人は現代の人なので、作品は古くとも人、舞台などに新しさがある。これもオペラの魅力なんだろうな。1作品3時間くらいかかるので、見るといってもなかなか機会がないかもしれない。しかし、ストーリーを頭に叩き込んで、1幕ずつ楽しんでいけば、馴染んでいけるのはないだろうか。
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