|
|
|
|
2006.07.30 vol.3
「サウンド・オブ・ミュージック」鑑賞会
オーストリア:ザルツブルク |
|
私たちがいる宿では、毎晩夜8時から映画「サウンド・オブ・ミュージック」の鑑賞会をロビーで行っていた。ここまで来て映画みるのもねぇ、と初日は思っていたのだが、昨日、今日とコンサートを聞いて満足してしまったので、今夜は宿で映画鑑賞でもしようということになった。
「サウンド・オブ・ミュージック」は、ここザルツブルクを舞台に撮影されたアメリカの映画で、原作は主人公マリアであるマリア・フォン・トラップによる自叙伝がベースになっているそうだ。マリアは修道女見習い。彼女のお転婆ぶりをどうしたらいいのかと悩む修道女たちの相談を受け、シスターはザルツブルク郊外にある大佐の家の7人の子供の家庭教師を彼女に勧めた。それからこの子供たちとその父親である大佐との心の交流などを交えて物語りは進んでいく。
(参考:Wikipedia サウンド・オブ・ミュージック)
私たちは2人ともこの映画をまだ見ていなかったので、丁度いい機会だ。午後8時前になると、わらわらと集まってきたのは、アメリカ人女子高生が大半。ピザを食べ、コカコーラを片手にかしましく映画が始まるのを待っていた。
大きな液晶スクリーンにDVDのメニュー画面が映し出されるや否や、女子高生達は、「うわー、画面きれい、すっごーい、大きいー」と大感激。
まずは、そこから感動するのか!とつっこみを入れたくなるような反応に、我々は大笑いだった。
宿のスタッフが来て、「じゃ、そろそろ始めるよ」というと、みんなで「イェース」と言う。アメリカの女子高に留学してきた子供の気分で、我々も「イェース」。
映画はのっけから見覚えのあるザルツブルクの町並みが映し出されていた。女子高生たちも、画面を指差しながら、「あ、あそこ知ってる」「おお、ここ行ったよねー」などと話している。
映画の中にも出てきたシーンの写真をいくつか紹介したい。
○レジデンス広場の噴水
初めての仕事に不安を覚えながら家庭教師先に向かうマリアが「自信を持って」を歌う場面で登場。
○フェルゼンライトシューレFelsenreitschule
たまたま行ったコンサート会場が映画の1シーンに使われていた。子供たちのいるトラップ一家が出場した合唱コンクールの舞台がここだったのだ。映画では野外コンサート会場のような雰囲気で、現在の会場とは違うが、今も屋根が開いて屋外コンサート会場になる装置がついているそうだ。映画では、第二次世界大戦の戦況が濃くなってきて、ナチに反対するトラップ大佐がオーストリアを亡命する計画を立てる。マリアと子供たちと大佐は、このコンクールの後、警備の目を潜り抜けて逃亡するという場面だ。
○聖ペーター墓地
コンサート会場から抜け出したものの、追っ手が迫ってくる。緊迫した逃亡シーンで一家が一時潜んでいた場面で登場。我々はそうとは知らずに、日曜日の朝の散策で通りかかり、気持ちの良さそうな墓地なので見学してきていた。
トラップ邸は個人の所有物なので、「外から見ることはできるが中には入れない」とインフォメーションの人に言われていたので行くことはなかった。しかし、現在トラップ邸で宿泊することも可能で、宿泊者は中に入って存分に映画のシーンに身を置くことができるらしい。
とまぁ、映画を見るとは思わなかったここ2日間だけで、これらのシーンを写真におさめていた。この映画のファンならば、全部見てまわりたいと思うだろう。そんな人にうってつけの「サウンド・オブ・ミュージックの名場面を巡るツアー」というのも開催されている。
映画は、これもそうなのか、ありもそうなのかという名曲揃いで、いかにこの映画が有名なのかをあらためて実感。JRの「そうだ、京都へ行こう」で使われている曲、ドレミの歌、エーデルワイス、何か忘れたが清涼飲料水のCMでも使われている。
主演女優ジュリー・アンドリュースの表情たっぷりな演技力や歌唱力にザルツブルクの景色があいまって、忘れられないシーンを次から次へと繰り出してくる。
それなのにねー、この一緒に見ている女子高生ときたら、本当に現代女子高生丸だしなのだ。映画の中で16歳の長女が、大好きな郵便局員と東屋で密かにデートした時に歌う「私はもうすぐ17歳」。歌い終わった後で、二人は見つめあい、軽くキス。喜びと恥ずかしさでまた踊りだしてしまう。というシーンで、女子高生全員は、「ありえないー、だってこの子16歳でしょ。キスではしゃぐなんて、バカじゃないのー」といっせいに騒ぎ立てた。はいはい、あんたたちの世界じゃありえないけど、これは清純映画ですから!!
こうして、私たちは現代女子高生の生態観察を手前に、映画を楽しむことになった。まぁ、日本の女子高生と変わらないね。
名曲揃いだし、画面も美しいけど、ストーリーが単純すぎて、女子高生じゃないけど「あり得ないだろう、世の中そんなんじゃないでしょう」という感想は否めない。ストーリーはおとぎ話だ。
子供の家庭教師として来た女性が子供の心を捉えて、ついでに大佐の心も奪ってしまうって、どうみても橋田壽賀子ドラマなら、主人公は婚約破棄された大佐のフィアンセになるよなぁ。この映画でフィアンセは、「大佐とあなたは知らないうちに魅かれあっているわ」と主人公に告げるちょっと意地悪な場面もあるが、最後には大佐が主人公に魅かれて、婚約破棄されてしまう役。そんなぁ!婚約披露パーティーまで盛大に開いておいて、それをいきなり破棄されて黙っているなんて、現実じゃあり得ない。どろどろのビシバシの葛藤と闘争シーンがあってしかるべき所なのだ。
一方の主人公は、歌が好きで、子供の心を捉えてしまったの、そして彼も好きになっちゃったのと無邪気攻撃だ。どちらかというとこっちの女性の方が怖ろしい。
いずれの女性を中心に描くにしても、大人向けストーリーならもっと深くえぐるべきだろう。もっとも、原作者のトラップ夫人や子供たちも、あまりに原作とかけ離れたストーリーにショックを受けているということだ。
ミュージカルなんておとぎ話だといってしまえばそれまでだが、あまりに能天気な内容の割には、最後にナチのことも触れたりして、どうにも中途半端な気がする。歌と背景はとってもいいのだが。
でもまぁ、とにかく名作が撮影された町で作品を見るというのは、面白い体験。今時の女子高生の反応も見られたしね。
|
|
|
|