夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
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2006.10.24
ラマダン明け、バイラムのお茶会

トルコ:イスタンブール
 これまで旅をしてきた中で、その土地の民族音楽に触れるのが楽しみの一つとなってきた私たちは、ここイスタンブールでもご当地音楽のCDを買おうとCD屋を訪ねることにした。

 CD店は数あるけれど、民族音楽となると国によっては専門的なお店でしか置いていないこともある。とりあえず宿に置いてあった雑誌「るるぶ」に掲載される音楽CD屋が良さそうだと、ここを訪ねたのはラマダン中の10月19日のことだった。

 スルタンアハメッド駅から路面電車の線路に沿って海峡方向に歩いて行くと、右手に目的のCD屋が見つかった。

 やや狭い階段を3階まで上がり扉を開くと、広いとは言いがたい店内の壁中に楽器がかかり、民族音楽が流れていた。奥から"May I hlep you?"と英語で声をかけてきてくれた女性が、ゼビムさんだった。

 私たちが民族音楽のCDが欲しいというと、クラシックがいいのか、スフィといわれるジャンルがいいのか、それらを現代風にアレンジしたものがいいのかと矢継ぎ早に質問してきた。まず「スフィって何ですか?」というレベルの私たちに、こいつは時間がかかりそうだと判断したのか、それでは奥で聞いてみましょうと奥の間に招いてくれた。

 奥の部屋にも楽器がずらり。ここのCD店を経営しているのは、音楽大学の教授でもある人物で、彼女もその人の歌のお弟子さんとして入門してこの店に勤めて10年になるのだそうだ。だから、彼女の知識は正確でとても深い。

 彼女が勧めてくれる様々なジャンルの音楽を聞かせてもらうことになった。

 実に10枚近くのCDを出して聞き比べ大会をさせてくれたのである。


 スフィはネイと呼ばれる斜めにして吹く縦笛と弦楽器と男性の歌声のみで構成された渋い音楽だった。また、弦楽器を使って男性が歌う弾き語りのような音楽もあり、聞かせてもらったのは、どちらも歴史の中で生き残ってきた無駄がそぎ落とされた音楽だった。

 いいんだけど、ちょっと渋すぎる?次、行ってみよう。

 次はもう少し聞きやすい感じのいわゆるクラシックの分野だった。

 スフィに比べると宗教色は失せ、大衆的なメロディアスな曲が多かった。

 カヌンと呼ばれる大正琴のような楽器が、シャララーンと華やかな音色で入ってくるし、これは聞いていて楽しい。

 次は、ややポップな感じの入ったCD群。Seven Clovesというグループは、ポップではあるがクラシックに近い感じの音楽が多く、人気も高くて現在5枚目のアルバムが出ているということだった。最新版を聞く。適度に楽しさもあるし、歴史を感じさせる音楽もある。これはいいかも。

 で、次にいくつか聞かせてもらったのは、シンセサイザーとの融合やジャズ風にアレンジしたトルコ音楽。ああ、こういうの、アルゼンチンにもあったなぁ。

 タンゴをジャズ風やテクノ風にアレンジしたもの。お店で聞いた時は物凄くカッコいいなぁと思ってテクノ風のタンゴを一枚購入したのだが、だんだんと聞かなくなってしまったのだ。料理でいうと、クノールのブイヨンをお湯で溶いたスープって最初はおいしく感じるんだけど、食べ続けいているうちに、含まれている化学成分が舌にささるようになって嫌になってくる。そんな感じに近いのだ。だから、こういう系統は今回はパスすることにした。この音楽も10年、15年くらい経ってから聴くと妙に古臭い懐メロのようになって聞こえてくるだろうという判断からだった。

 他には、教授が研究している音楽とヒーリングというテーマで、東アジア・中央アジアの音楽を集めてストレス解消になるヒーリング音楽CDなども販売しているので、聞かせてもらったが、今回は取るこの音楽CDが欲しかったのでこちらは遠慮させてもらった。

 ということで、お茶やお菓子も出してもらいながらゼビムさんと楽しくCD選びをしていると、先ほど話していた大学教授の弟さんでお店の共同経営者である男性が外出先から戻ってきた。

 この男性も音楽を演奏するそうで、楽器について話が及ぶと、「それじゃぁ、ネイでも試してみますか?」ってことになり、ネイのスモールレッスンが始まった。筒の先に黒い傘のような口がついているのだが、ここも単なる筒。つまりはビール瓶の口をフーッと吹く要領で音を出す楽器らしいのだが、これが難しい。音が全然出ないのだ。だんだん頭がクラクラしてきたので、ここで終了。

 CDを購入して店を去ろうかという時、ゼビムさんが「10月24日の火曜日、ラマダン明けを祝うバイラムのお茶会を内々で開くのですがいらっしゃいませんか?」と誘ってくれた。ほほー、そんな事があるとは。面白そうなので、また訪ねてみることにして、この日は別れた。

 そして10月24日の午後2時、先日訪ねたお店に行ってみると、教授の弟さんと他にもお客さんがいて、私たちも奥に招かれてお茶をご馳走になることになった。

 先日ゼビムさんは店の4階でお茶会を開くと言っていたので、これはまだ始まっていないんだなぁとは思ったが、お茶は出てくるし(ハチミツを入れるのだ)棗の干したお菓子は出てくるし、これがお茶会なのか?と思わせる節もあった。

 のんびりとした午後の時が流れる中、今日はクラリネットのような音がするトルコの笛やら胡弓に似た形の弦楽器などを弾かせてもらっているうちに、あっという間に午後3時が過ぎていった。

 午後3時半を過ぎる頃から、どんどんと人が集まり始め「ラマダン明けましておめでとう」という挨拶をしている(一緒に来てくれた祥子ちゃんがトルコ語がわかるのだ)。

 そして午後4時近くになって「それでは、そろそろ始めますので4階の会場の方へ移動してください」ということになった。あー、やっぱり今から始まるんだ。


彼女達もお弟子さんらしい。お揃いの靴下が可愛らしい。
左の女の子の洋服は自分の手作りだそうだ。二人ともトルコ人。
 3階からどやどやと4階へ上がっていくと、そこにもびっしりと楽器の展示。まるで博物館のようだった。

 私たちは最初からずーっと下でお茶を飲んでいたので、新しく人が入る度にお店のご主人に紹介して頂いていた。

 大抵は教授のお弟子さんで、音楽をやっていないのは私たちの側に座っている人たちだけ。本当に身内のお茶会だった。

 トルコ人の若い女性がいたり、オーストリア南部から来ている女性がいた。中でも昔からのお弟子さんでご自信もCDを出しているタタール人のご夫婦に会うことができた。

 旦那さんがアコーディオン、奥さんが歌とダンスでデビューしていたらしいが、今は引退しているようだった。タタール人の顔というのが、今までみたことのない部類の顔だった。

 目のあたりから額は西洋人なのだが鼻から下が東洋人なのだ。ふーむ。あまりジロジロ見ては失礼だと思いながら、なかなかお目にかかれない人たちなので、興味を持ってお話させてもらった。

 さて、全員が広間に揃った所で教授からバイラムのお祝いのお言葉があった。お弟子さんの一人が英語で内容を通訳してくれる。「今日は特別に日本からのお客様もお迎えし、私たちの心安らかなバイラムのお祝いに彩を添えてくださっています」という内容に、会場の視線が一斉に我々に集まる。かるーい気持ちで来てしまった割りには、実は私たちはスペシャルゲストなのだった。

 お話が終わると、それではお菓子を自由にお取り下さいと並べられたお菓子から自由に皿に取って食べることになった。

 素朴な焼き菓子や、パイ生地の間にゴマのペーストをはさんだ物を蜂蜜漬けにしたもの、人参で作ったオレンジ色のモチモチとした食感のロクムというお菓子など、トルコのお菓子満載で、どれもおいしく頂いた。

 そして、いよいよ今日のメインイベントが始まった。今日のイベントは、教授が今まで耳にして楽譜に起こした日本からモンゴル、中国、アゼルバイジャン、トルコに至るまでの音楽を、それぞれに演奏して皆で合唱しようという内容だった。

 最初は日本から、ということで配られた楽譜はソーラン節。皆、聞いたことがない曲だろうが、初見でサラサラと弾いてみて、じゃ、合わせましょうってことでソーラン節を皆で歌った。

 トルコの楽器であるネイやサズという弦楽器で奏でられるソーラン節。

 そして、次に配られたのがサクラサクラさった。こうして日本の曲を2曲演奏してもらい、特別なおもてなしを受けた上質な満足感が広がっていった。

 続いてタタール人夫婦が奏でる中央アジアの音楽。この奥さんの声が中国の山岳民族の女性が歌う歌声のように、甲高い、少しつぶしたような歌い方で、それでいてビーッとよく通る声なのだ。不思議、不思議。とても不思議な声でいつまでも聞いていたいような歌声だった。

 新しい楽譜が続々と配られては、歌う。モンゴルの牛追いの歌の時は、曲の前に好きな動物の鳴き声を叫んでくださいと言われ、皆で思い思いの動物の鳴き声を叫んでから曲が始まる。牛追いの歌ということだろうか、先生方の歌い声も荒々しい声音で、それも面白かった。

 また、トルコの曲でスフィのジャンルに入ると、お弟子さんの中から一人、二人と立ち上がって部屋の真ん中でくるくると旋舞が始まった。旋舞を見るのは始めてだったし、それもこんなプライベートな空間で目にするとは思ってもいなかった。そもそもセマと呼ばれるこの旋舞は宗教的な意味合いのあるものなので、こうしたプライベートな空間で行われてもおかしくはないのだが、今まで目にしたセマというと、白装束の男性が周っているオフィシャルな物ばかりだったので、今日のは珍しかった。

 また、このスフィは全員で基本の配られた楽譜にある音楽を合唱するのだが、途中から一人の男性が突出して異なるメロディーで入ってくる。ここで他の皆は声を落とすことになっていて、ちょっとインドネシアのバリ島のケチャのような不思議な合唱の要素を持ち合わせていた。自分もこの合唱に混じりながら、目の前でセマを見ている、これは本当に不思議で面白い体験だった。

 セマの曲が終わった時、お弟子さんが先生の前で正座してご挨拶をするのを機に、我々はお暇することにした。

 先生も立ち上がり「日本のお客様として、本日はお越しいただきましてありがとうございました」と丁重なご挨拶を受け、こんな普段着ですみませんと恐縮する私たちだった。

 最後に主要メンバーを記念撮影させていただいて、この場を去ることになった。

左からタタール人の奥さん、教授の娘さん、教授、タタール人の旦那さん、教授の弟さん

 最後にこのお茶会に招いてくれたゼビムさんと記念撮影。

 偶然にも年に一度の素敵なお茶会に招いてくれた彼女に、心から感謝した。



楽器店
otag(オタグ・ミュージック・ショップ)
サイト
http://www.tumata.com


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