夫婦2人で世界一周の旅に出発!現地から海外長期滞在の旅の様子をお伝えします。
目次Today's imagesTravel sketch食の楽しみPeopleAccommo旅行費用
Excursion移動の記録旅先で住むとしたら更新履歴日誌問合せAbout usENGLISH
北米
アメリカ合衆国
メキシコ
中米
ベリーズ
グアテマラ
コスタリカ
南米
ペルー
ボリビア
アルゼンチン
チリ
ブラジル
ヨーロッパ
スペイン
フランス
イギリス
オーストリア
ハンガリー
ブルガリア
中近東
トルコ
シリア
ヨルダン
北・東アフリカ
エジプト
ケニア
インド洋
モーリシャス
北・東アフリカ
マダガスカル
タンザニア
ウガンダ
南アフリカ
マラウィ
モザンビーク
スワジランド
南アフリカ
レソト
ナミビア
ボツワナ
ザンビア
アジア
インド
ネパール
タイ
オセアニア
オーストラリア
 
2006.11.18 Vol.2
パルミラ遺跡(午後の部)

シリア:パルミラ

 簡単な昼食をアラブ城の入り口の目の前で済ませた私たちは、さてどうしようかと休憩しながらぼんやりと考えた。

 アラブ城に人が訪れるのは、ここからの眺め、特に夕刻の眺めを目的としていると聞いていて、アラブ城の中に入ったって話はあまり聞いたことがない。

 というわけで、入場料金を支払って中を見学する気は全くわかないのだったが、さてここで時間をつぶして夕刻の風景を楽しむのがいいのか、下に降りて下で夕刻の風景を楽しむべきか。

 冬とはいえ、砂漠の昼間はひざしも強く、堅牢な岩で風がさえぎられたアラブ城の入り口付近は実に快適だった。どーしよっかなーーー。

 ゆったりとしている間にも、アラブ城は見学に訪れた人々を何組か飲み込んでいった。全てアラブ系の人々である。この城はアラブ系の人々に人気のスポットであり、その他の社会の人々には不人気なスポットのようだ。

 やがて城見学を終えて出てきた一団もやはりアラブ人。一人の女性は見事に頭からすっぽりと真っ黒なヴェールを被り、目の部分だけが切れ目が入っている。他の2人はアラブ系の顔立ちだが普通のファッションだった。城に入る時も相当ジロジロとこちらを見ていたが、城から出てきてからもメチャクチャ私たちを見ている。こんな光景はシリアに入ってきてから日常茶飯事なので慣れっこ。

 しかし、ついにその中の一人が話しかけてきたのは初めてだった。英語でどこから来たのか、という質問から、堰を切ったように彼女達はかしましくしゃべり始め、ついには一緒に写真を撮ろうとまで言い始めた。

 ヴェールを被った女性と男性が夫婦でシリア人。被っていない女性は女性の友人のヨルダン人なのだそうだ。ヨルダン人の何もイスラムっぽい服装をしていない女性がまず私と撮影。やはり彼女が一番進化している女性らしい。で、次にスカーフを被った別のヨルダン人の女性と撮影。

 この風景を見ていたシリア人の真っ黒づくめの女性は、たまらず「私も、私もー」と参入してきた。ヨルダン人の女性が「ねぇねぇ、折角だからヴェールはずして顔出しちゃおうよー」みたいなことを言ったらしく、「それもそうねぇ」とヴェールの女性は、顔の覆いをガバッとめくったのだ。

 「おおおおーーーーー」。驚いたのは私たちの方だった。いいのか?ええ?そんな事していいのお?

 ま、旦那も認めているし、本人も認めているんだからいいんだろう。それにしても、このヴェールは私たちから見ると絶対に人前でははがされることのない、宗教による防御壁みたいに思っていた私たちは、この展開にかなり度肝を抜かれた。

 一方の彼女たちは、さんざん女子撮影会を行って、「あー、楽しかった。じゃ、旅を楽しんでねー」みたいに爽やかに去っていった。私たちは、岩の上で、今起きたできことを反芻しながらも、呆然としていた。ナンだったんだ、今のは。

 この出来事の興奮も冷め遣らぬまま、次は若者の団体がぞろぞろとアラブ城にやってきた。その中から2人のちょっといかす兄ちゃんが話しかけてきた。

 彼らはアレッポ(シリア北部にあるシリア第二の都市)の大学生なのだそうだ。今日は考古学の課外授業でここを訪れた。全員じゃない。考古学の試験で点数が足りなかった者だけが、補修授業としてここにこさせられているのだそうだ。

 「点数が足りないくらいだから、考古学には興味がないってわけ。それより僕は経済に興味があるんだよね」と点数が足りなかったのを恥じる風もなく言ってのける兄ちゃんは、大学生をやりながらも会社員でもあるそうで、年若くして英語とドイツ語が話せるのでマネージャーを勤めているそうだ。もう一人の兄ちゃんが「こいつは俺のおやじよりも稼ぎがいいんだぜ」と援護射撃してくる。おやじがどのくらい稼いでいるのかわからんが、とにかくいっぱい稼いでいると言いたいらしい。

 援護射撃の兄ちゃんはなかなか洒落たファッションをしており、そのはず、彼は服飾デザインに興味があるんだそうだ。

 「成績の優秀な人は警察官になるんだ」とハマで出会った大学受験生は言った。彼が普通のシリア人だとすると、そんな社会で金儲けとファッションに興味がある彼らは、ちょっと進化した考えを持っている。その自覚もあるようだ。

 「おおい、中に入るぞー」と呼ぶ同級生を無視して、どうやらここで日本人と話すことに決めたらしい。

 イスラム社会の男女のあり方の問題点、シリア経済に対する不満、不平を次から次へとぶちまけた。

 でも、彼らは自分はかっこよくお金を稼ぎたい気持ちはあっても、率先して国を変えていこうという発想はないらしい。批判なら誰でもできる。じゃぁ、それが不満なら自分はそれに対してどうしたいのか、そのために何をしようとしているのか、そういうビジョンはないようだった。

 少なくともこういう考え方をしている人がシリアにいるってことがこの国を徐々に変えていくことになるのかもしれないが、まだ甘いなぁ。あんたねー、日本のサラリーマンがどんだけ自虐的に働いて滅私奉公して日本という経済が成り立っているのか、知ってんのかー。と言おうと思った所で時間切れ。

 「いつかシリアも日本のようになれると思うか?」と質問されて、「そうさ、なれるさ」とは答えてあげられなかった。

 アラブ城の入り口は意外に面白く、あっというまに午後2時。とはいて、日暮れまであと2時間もあるのだから、やはり山を降りて夕日は下で楽しむことにした。

 アラブ城を下りて再び遺跡に戻り、おっとっとー、もうちょっとで崩れそうという感じの列柱を見物したり、四面門の横にある取引所と呼ばれる遺跡を見学。




 また列柱の東側にある住居跡の置くにきれいな形で残っている遺跡も観察。







 午後3時をまわると、太陽は急に夕日めいてきて、影も長く伸びてきた。








 午後4時になると、あたりは赤く染まり始め、夕焼けが美しい。

 朝から夕暮れまで、本当によく歩き、よく楽しんだ。

 この夕焼けを見ながら、パルミラを存分に堪能したという満足感がパーッと広がっていくのだった。

 案外面白いんじゃない?パルミラ。特にアラブ城の入り口前で待機していると、アラブ人と絡めるかもね。



このサイトを友人に知らせる
目次About Us免責事項著作権とリンク
(c)2005-2006 海外生活実践研究会 All rights reserved